狭心症治療薬(硝酸薬など)

「狭心症の治療は、高度狭窄病変による狭心症発作を予防することの他、普遍的に存在する内膜肥厚内のプラークを安定化させて心筋梗塞への移行を阻止することも目標となる」。(今日の治療薬2020,pp.637-638)

「狭心症は心筋梗塞を予防することが最も大事である。何よりも普段からの血圧や脂質異常症、糖尿病の管理、禁煙などを心がけることが大切である」。(同上,p.644)

狭心症の分類(p.637)

狭心症では、胸の痛みやしめつけ、息苦しさなどの症状があらわれる。

発作発現メカニズム

  • 労作性狭心症
    冠動脈の基質的病変により冠血流の増加が制限され、酸素供給量が酸素需要の増大に間に合わないために起こる。
  • 安静時狭心症(異型狭心症)
    冠動脈スパズム(攣縮)による血流量の低下が主体となって起こる。
  • 労作性兼安静時狭心症
    両者が組み合わさって起こる。

発作様式

  • 安定狭心症
    経過が安定し、発作はあまり出現しないか、または出現しても一定の条件下で出現し、予測がある程度可能である。このような場合は予後が良好で、発作のコントロールも1~2製剤で可能な場合が多い。p.643
  • 不安定狭心症
    最近発症あるいは再発した狭心症で、経過中重症型(安静時や軽度の労作で誘発される、頻発する、持続が20分以上、冷汗、吐き気などの随伴症状)に増悪する狭心症をいう。

医薬品各種(硝酸薬など)

硝酸薬は、心臓の冠動脈を広げて血流量を増やし、心臓に酸素などを補給したり全身の血管抵抗を減らすことで心臓の負担を軽くする薬物である。

硝酸薬は、体内で一酸化窒素(NO)を生成することによって血管拡張作用を発揮する。

ニトロペン(一般名:ニトログリセリン)

速効性硝酸薬。

舌下錠は、ニトログリセリン(NTG)の揮発性を抑えた安定な製剤である。

舌下錠を服用すると、口腔粘膜(舌下の静脈)からニトログリセリンが吸収され、肝臓を経由することなく直接循環血液中へ移行する。その結果、速やかな効果が得られる。

ニトログリセリンは、初回通過効果(First-Pass Effect)が大きい薬物として知られている。ニトログリセリンを内服すると、大部分が肝臓で分解されてしまうため、その効果を発揮することはできない(決して内服しないこと)。

「1)投与後、数分間で効果をあらわすが、効果があらわれない場合には更に1~2錠を追加投与すること。
2)1回の発作に3錠まで投与しても効果があらわれない場合、発作が15~20分以上持続する場合には、直ちに主治医に連絡するよう患者を指導すること」。(ニトロペン舌下錠添付文書)

「ニトロペンは一般的には1~2分で効くんですが、口が渇いていたりすると、ちょっと効きがおそくなることがあります。少し口の中を湿らせてから、ベロの下に置いてください。そして、追加するときは、5分間は空けるようにしてください」。(実践薬歴,p.48)

「NTGは胸が痛い時に寝た姿勢あるいは座った姿勢で舌の下に含ませる。約5分毎に1錠ずつ3回追加しても無効なら、心筋梗塞の危険があるため直ちに医師に連絡するよう指導する」(今日の治療薬,p.644)。

起立性低血圧やめまい・失神などに注意するため、立ったまま服用しないこと。なお、「主な副作用として頭痛、脳貧血、血圧低下、熱感、潮紅などが認められる」。 (ニトロペン舌下錠・インタビューフォーム)

ニトロダームTSS(一般名:ニトログリセリン)

持続性硝酸薬(NTG)。

ニトロダームTSSは放出抑制膜を利用し、24時間持続的に一定量の放出が可能である(パッチ製剤)。

【効能又は効果】
狭心症
〈効能又は効果に関連する使用上の注意〉
本剤は狭心症の発作緩解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使
用すること。(ニトロダームTSS添付文書)

【用法及び用量】
通常、成人に対し1日1回1枚(ニトログリセリンとして25mg含有)を胸部、腰部、上腕部のいずれかに貼付する。
なお、効果不十分の場合は2枚に増量する。(ニトロダームTSS添付文書)

ニトロールR(一般名:硝酸イソソルビド徐放剤)

長時間作用型硝酸イソソルビド(ISDN)製剤。
硝酸イソソルビド徐放錠20mg(イソコロナールRカプセル20mg)。

Rカプセルは、長時間作用持続型の製剤で主に発作予防に使用する。
錠剤は、発作時(舌下投与)と発作予防のどちらにも使用する。

【効能・効果】
狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患
〈効能・効果に関連する使用上の注意〉
本剤は狭心症の発作寛解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用すること。(ニトロールR添付文書)

前負荷、後負荷の軽減作用
冠血管拡張作用

フランドル・テープ(一般名:硝酸イソソルビド徐放剤)

テープ剤は、主に発作予防で使用する(通常は1回1枚、胸部、上腕部又は背部のいずれかに貼付する)。

アイトロール(一般名:一硝酸イソソルビド)

一硝酸イソソルビド(ISMN)は、硝酸イソソルビド(ISDN)の活性代謝物であり、血中濃度のバラツキが少ない持続製剤となっている。効果はISDNよりも強力である。

硝酸イソソルビド(ニトロール、フランドルなど)に比べ肝臓での代謝を受けにくく、肝機能による治療効果の違いが少ないとされる。(日経メディカル/処方薬事典)

【効能・効果】
狭心症
<効能・効果に関連する使用上の注意>
本剤は狭心症の発作寛解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用すること。(アイトロール添付文書)

一硝酸イソソルビドは、冠血流の増加作用に加えて静脈還流量の減少による前負荷減少作用と全末梢血管抵抗の減少による後負荷減少作用が心筋酸素需給のアンバランスを改善して抗狭心症作用を発現すると考えられ、主にcGMPによって媒介される静脈血管の弛緩作用が重要であると考えられる。(アイトロール添付文書)

ペルサンチン(一般名:ジピリダモール)

そのほかの冠拡張薬。
血小板凝集抑制作用、血栓・塞栓の抑制、尿蛋白減少作用を有する。

コメリアン(一般名:ジラゼプ)

そのほかの冠拡張薬。
アデノシン増強作用を有する。

シグマート(一般名:ニコランジル)

そのほかの冠拡張薬。
ATP感受性Kチャネル開口作用と亜硝酸薬の両方の作用を有し、難治性の冠攣縮性狭心症や虚血時の心筋保護薬として使用される。

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)