アルドステロン拮抗薬/カリウム保持性利尿薬

2020年9月13日

アルドステロン拮抗薬

アルドステロン拮抗薬の作用機序

アルダクトンAとセララについて教えてください(日本心臓財団)
https://www.jhf.or.jp/pro/hint/c5/hint011.html

アルドステロンは、「レニン・アンジオテンシン系」(昇圧システム)の最終産物であり、腎臓に存在するアルドステロン受容体を介して、ナトリウムや水分を体内に保持して昇圧作用を示す。

アルドステロン拮抗薬は、アルドステロンの働きを阻害することによって、利尿作用や降圧作用を示す。しかしながら、その作用はあまり強くはない。

最近の研究において、「アルドステロンは単なる電解質ホルモンではなく,血圧を介さない心臓,腎臓をはじめとした直接的臓器障害作用を持つ心血管系疾患のリスクホルモンであることが注目されるようになってきた」。
https://www.igaku.co.jp/pdf/resident1003-1.pdf

アルドステロン拮抗薬は、単独で降圧薬として使用されるよりも、臓器保護効果(主に心臓や腎臓)を期待して、ARBやACE阻害薬あるいはCa拮抗薬などと併用されることが多い。

また、カリウム保持性(ナトリウムのみ排泄しカリウムの排泄を抑える)であることから、サイアザイド系利尿剤やループ利尿剤などの使用によって生じる低カリウム血症を予防する併用剤として有用である。

アルドステロン・ブレイクスルーについて

「アルドステロン・ブレイクスルー」とは、ARBやACE阻害薬によってRAS系をブロックしているにもかかわらず、一旦低下していた血漿アルドステロン濃度が、再び上昇し始める現象のことをいう。

RAA系阻害薬を長期間(6か月以上)投与しているときに起こりやすい。
ACE阻害薬を投与した患者の10~50%、ARBを投与した患者の40~50%に起こるとされている。

アルドステロン拮抗薬は、「アルドステロン・ブレイクスルー」現象を阻止する作用を有することが報告されている。
また、オルメサルタン(ARB)も同様の作用を持つことが分かっている。⇒ARB(レニン・アンジオテンシン系)

レニン-アンジオテンシン(RAAS系:昇圧システム)

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System, RAAS)

1)レニン

レニン・アンジオテンシン系は、血圧を上昇・維持して生体の機能を維持するために働いている。

そこで、血圧低下や交感神経興奮、あるいは血漿ナトリウム低下に伴う循環血液量の低下が起こると、腎臓(糸球体輸入血管壁)の傍糸球体細胞からレニン(タンパク質分解酵素)が血中に分泌される。

2)アンジオテンシノーゲン⇒アンジオテンシンⅠ

腎臓から分泌されたレニンは、主に肝臓で作られるアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに作り替える。

3)アンジオテンシンⅠ⇒アンジオテンシンⅡ

血中から肺循環に入ったアンジオテンシンⅠは、主に肺の血管内皮表面に存在するアンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用を受けて、活性型のアンジオテンシンⅡに変化する。

4)AT1受容体

アンジオテンシンⅡは、血管平滑筋に存在するAT1受容体と結合することによって、強力な末梢血管収縮作用を発揮する。その結果、血圧は上昇する。

5)アルドステロン

アンジオテンシンⅡは、副腎皮質から糖質コルチコイドであるアルドステロンの分泌を促進する。

「アルドステロンは、主に腎臓の遠位尿細管でナトリウム(Na)を再吸収することで水分を貯留し、血圧を高めて維持する働き」がある。(児島2017,p.30)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(高血圧治療薬

高齢者においても降圧目標の達成が第一目標である。降圧薬の併用療法において薬剤数の上限は無いが、服薬アドヒアランス等を考慮して薬剤数はなるべく少なくすることが推奨される。

(高血圧治療薬)

注)アルドステロン拮抗薬/カリウム保持性利尿薬は、リストには含まれていない。

  • Ca拮抗薬(アムロジピン[ノルバスク、アムロジン]、ニフェジピン [アダラートCR]、ベニジピン[コニール]、シルニジピン[アテレック]など)、ARB(オルメサルタン[オルメテック]、テルミサルタン [ミカルディス]、アジルサルタン[アジルバ]など)、ACE阻害薬(イミダプリル[タナトリル]、エナラプリル[レニベース]、ペリンドプリル[コバシル]など)、少量のサイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)が、心血管疾患予防の観点から若年者と同様に第一選択薬であるが、高齢患者では合併症により降圧薬の選択を考慮することも重要である。
  • α遮断薬(ウラピジル[エブランチル]、ドキサゾシン[カルデナリン]など)は、起立性低血圧、転倒のリスクがあり、高齢者では可能な限り使用を控える。
  • β遮断薬(メトプロロール[セロケン]など)の使用は、心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対して考慮する。
  • Ca拮抗薬の多くは主にCYP3Aで代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤との併用に十分に注意する。
  • ACE阻害薬は、誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者には誤嚥予防も含めて有用と考えられる。
  • サイアザイド系利尿薬の使用は、骨折リスクの高い高齢者で他に優先すべき降圧薬がない場合に特に考慮する。
  • 過降圧を予防可能な血圧値の設定は一律にはできないが、低用量(1/2量)からの投与を開始する他、降圧による臓器虚血症状が出現した場合や薬物有害事象が出現した場合に降圧薬の減量や中止、変更を考慮しなければならない。
  • レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬など)、利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]、スピロノラクトン[アルダクトン]、 トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。(消炎鎮痛薬の項より引用)

その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【アルドステロン拮抗薬】

  • スピロノラクトン[アルダクトンA]、エプレレノン[セララ]
  • 高カリウム血症
  • 適宜電解質・腎機能のモニタリングを行う
    特にK高値、腎機能低下の症例では少量の使用にとどめる

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

医薬品各種

アルダクトンA(一般名:スピロノラクトン)

カリウム保持性利尿薬:(今日の治療薬,p.609)

アルダクトンAはアルドステロン受容体への選択性が低い。
そこで、アンドロゲン(男性ホルモン)やプロゲステロン(女性ホルモン)といった性ホルモン受容体なども阻害してしまう。
その結果、長期服用すると女性化乳房(男性の場合)や月経不順(女性の場合)などの副作用が生じる場合がある。

女性化乳房の回復には、投与中止後1~2か月くらいかかる。(どんぐり2019,pp.29,229)

セララ(一般名:エプレレノン)

カリウム保持性利尿薬:
「スピロノラクトンと異なり、女性化乳房などの性ホルモン関連の副作用は少ない」。(今日の治療薬2020,p.610)

セララは、アルダクトンAの副作用を減らした薬である。
アルドステロン受容体への選択性が非常に高く、性ホルモン関連の副作用は非常に少ない。

  • 糖質コルチコイドの受容体に対する親和性:1/20以下。
  • アンドロゲン(男性ホルモン)の受容体に対する親和性:1/100以下。
  • プロゲステロン(女性ホルモン)の受容体に対する親和性:1/100以下。

エプレレノンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.207-210、服薬指導例・薬歴記載例有り)

腎機能低下時の用法・用量(エプレレノン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

エプレレノンは、CYP3Aの基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬

ミネブロ(一般名:エサキセレノン)

カリウム保持性利尿薬:
「非ステロイド型でエプレレノンと同じく選択的MR拮抗作用。心不全の適応なし。エプレレノンでの投与禁忌疾患の一部にも投与可能」。(今日の治療薬2020,p.610)

腎機能低下時の用法・用量(エサキセレノン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)