ACE阻害薬(レニン・アンジオテンシン系)

2019年11月23日

レニン-アンジオテンシン(RAAS系:昇圧システム)

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System, RAAS)

1)レニン

レニン・アンジオテンシン系は、血圧を上昇・維持して生体の機能を維持するために働いている。

そこで、血圧低下や交感神経興奮、あるいは血漿ナトリウム低下に伴う循環血液量の低下が起こると、腎臓(糸球体輸入血管壁)の傍糸球体細胞からレニン(タンパク質分解酵素)が血中に分泌される。

2)アンジオテンシノーゲン⇒アンジオテンシンⅠ

腎臓から分泌されたレニンは、主に肝臓で作られるアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに作り替える。

3)アンジオテンシンⅠ⇒アンジオテンシンⅡ

血中から肺循環に入ったアンジオテンシンⅠは、主に肺の血管内皮表面に存在するアンジオテンシン変換酵素(ACE)の作用を受けて、活性型のアンジオテンシンⅡに変化する。

4)AT1受容体

アンジオテンシンⅡは、血管平滑筋に存在するAT1受容体と結合することによって、強力な末梢血管収縮作用を発揮する。その結果、血圧は上昇する。

5)アルドステロン

アンジオテンシンⅡは、AT1受容体に結合すること以外に、副腎皮質から糖質グルココルチコイドであるアルドステロンの分泌を促進する。

「アルドステロンは、主に腎臓の遠位尿細管でナトリウム(Na)を再吸収することで水分を貯留し、血圧を高めて維持する働き」がある。(児島2017,p.30)

ACE阻害薬

ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬:Angiotensin Converting Enzyme Inhibitors)

ACE阻害薬の作用機序

ACE阻害薬は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)と結合することによって、強力な昇圧物質であるアンジオテンシンⅡの産生を抑制する。その結果、降圧作用を示す。

ACEは、キニナーゼⅡ(ブラジキニンの不活性化酵素)と同一の酵素である。つまりACE阻害薬は、キニナーゼⅡと結合することによって、「ブラジキニンの不活化」を抑制する。その結果、血管拡張作用を持つブラジキニンが増加して降圧作用を示す

なお、ブラジキニンにはアレルギーを引き起こす働きがあり、そのため空咳(痰を伴わない咳)を誘発する。つまり、空咳はACE阻害薬の代表的な副作用の一つである。しかしながら、その空咳が、近年増加している高齢者の誤嚥性肺炎の予防策として役立っている。

アンジオテンシンⅡは、血圧上昇に加えて心血管系組織障害をもたらす生理活性ペプチドである。ACE阻害薬は、アンジオテンシンⅡの働きを阻害することによって、冠動脈疾患患者における血圧以外への効果が認められている。

ACE阻害薬の積極的な適応:糖尿病、心不全、心筋梗塞、左室肥大、軽度の腎障害、脳血管障害、高齢者
禁忌:妊娠、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄

トラフ・ピーク(T/P)比/降圧効果の持続性を判定する

高血圧の治療では、朝目覚めた時の急激な血圧上昇(早朝高血圧:morning surge)を防ぐことが大切となる。なぜならば、「こうした血圧の急上昇は、朝の脳卒中や心筋梗塞などの大きな要因と考えられて」いるからである。(児島2017,p.22)

血圧は、24時間を通して安定的に下げることが重要である。その目安となるのが、trough/peak ratio(T/P比)である。(以下、図共にトーアエイヨウ/循環器用語ハンドブック参照)

  • トラフ値(trough値:谷)
    血圧日内変動から降圧効果が最も減弱している時点の拡張期血圧の下降度(一般に服薬直前値)
  • ピーク値(peak値:峰)
    降圧薬投与後最大降圧が得られた時点での拡張期血圧値の下降度(一般に服薬後2~4時間後)
  • ここで下降度とは、実薬投与後の効果からプラセボ効果による降圧値を引いた値のことである。

トラフ・ピーク(T/P)比が100%に近い程、トラフ値とピーク値に違いが無いことを意味している。つまり、24時間にわたって薬の効果に変動が無く降圧効果が持続していることを示している。

米国食品医薬品局(FDA)は、できるだけ長時間安定した降圧効果が得られる降圧薬が望ましいとして、T/P比50%以上の降圧薬を選択することを推奨している。

  • T/P比が小さい(50%未満):血圧の変動幅が大きい
  • T/P比が大きい(100%に近い):血圧があまり変動しない

医薬品各種

エースコール(一般名:テモカプリル)

高血圧症、腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症

レニベース(一般名:エナラプリル)

本態性高血圧症、腎性高血圧症、腎血管性高血圧症、悪性高血圧
下記の状態で、ジギタリス製剤、利尿剤等の基礎治療剤を投与しても十分な効果が認められない場合
慢性心不全 (軽症〜中等症)

T/P比:40~64%前後
空咳:2.13%

タナトリル(一般名:イミダプリル)

高血圧症、腎実質性高血圧症
1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症

T/P比:55%前後
空咳:4.76%

ロンゲス(一般名:リシノプリル)

高血圧症
慢性心不全(軽症〜中等症)
本剤はジギタリス製剤,利尿剤等の基礎治療剤と併用すること

コバシル(一般名:ペリンドプリル)

高血圧症

T/P比:75~100%前後
ACE阻害薬の中で一番24時間安定した降圧効果が得られる。
空咳:8.3%

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)