抗結核薬(イソニアジドなど)
抗結核薬(概略)
リファンピシン:
作用機序(DNA、RNA合成阻害作用を有する)。
(キノロン系、リファンピシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが同様の作用を有する)
細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用しRNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
動物細胞のRNAポリメラーゼは阻害しない。(抗菌薬インターネットブック)
リファンピシンは、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬である。
感染症TODAY(ラジオNIKKEI)2019年2月20日放送
『結核医療の基準』2018年の改定のポイント
http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-190220.pdf
イソニアジド、リファンピシン、ストレプトマイシン、ピラジナミドなど併用療法での長期間投与として使用される。(今日の治療薬2020,p.34)
薬物動態学から
分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)
テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(一般名:イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg
医薬品各種(抗結核薬)
イスコチン、ヒドラ(一般名:イソニアジド)
抗結核薬:
「代謝には遺伝的多様性があり、人種差がみられる」。(今日の治療薬2020,p.90)
- 分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)
イスコチン錠、670mL/kg - 非選択的モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)→選択的~(エフピー)
リファジン(一般名:リファンピシン)
抗結核薬:
「細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、RNA合成を阻害。単独では耐性菌出現しやすい」。(今日の治療薬2020,p.92)
リファンピシンは、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬である
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
IC(CYP3A4)7.7倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬
- 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬
リファンピシンは、強力なCYP3A4誘導薬であると共に、CYP2C9の強力な誘導薬でもある。
リファンピシン併用開始1週間以内に抗凝固作用の減弱が認められ、ワルファリンの用量を2~3倍にする必要があった(複数報告)。(PISCS2021,p.154)、相互作用の記載はリファジンには無い。
リファンピシンは、OATP1B1阻害薬(かつ誘導薬)である
リファンピシンは、OATP1B1(取り込みトランスポーター)阻害薬であり、かつ誘導薬でもある。
薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019/PharmaTribune:
「リファンピシンは、OATP1B1の阻害剤でもあり、かつOATP1B1の誘導により肝取り込み能力が上昇することで、基質薬物の血中濃度が低下することが報告されている。従って、反復投与時に基質薬物を同時投与する場合は、阻害・ 誘導両方の作用が見られることから、その影響の予測は容易でないと考えられる」。⇒詳細は「オイグルコンとリファンピシンの併用で低血糖が起きたのはなぜ?」pp.85-87
リファンピシンは、P-gp誘導薬である
リファンピシンは、P-gp(排出トランスポーター)誘導薬である。
リファンピシンとジゴキシンを併用(経口投与)すると、小腸においてリファンピシンによって誘導されたP-gpが、ジゴキシンを腸管内にくみ出すため、ジゴキシン血中濃度の上昇が抑えられる(AUCは有意に減少、BAは30%減少する)。p.105-106
エサンブトール(一般名:エタンブトール)
抗結核薬:
「結核菌の核酸合成経路を阻害し、分裂を抑制」。(今日の治療薬2020,p.92)
腎機能低下時の用法・用量(エタンブトール)
- 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(85%)、減量法の記載無し。
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
- CCr(60mg/dL以上)、常用量
1)肺結核及びその他の結核:1日0.75~1gを分1~2
2)MAC症を含む非結核性抗酸菌症:1日0.5~0.75gを分1
1日15mg/kgを分1、最大1日量750mg、初期2か月は1日20 mg/kgを分1、最大1日量1000mg(結核診療ガイドライン・改訂第3版) - CCr(15~60mg/dL未満)
減量して連日投与(結核診療ガイドライン・改訂第3版) - CCr(15mg/dL未満)
1 回15~20mg/kgを48時間毎 - HD血液透析・PD腹膜透析
1 回15~20mg/kgを48時間毎、HD患者ではHD日にはHD後に投与
ミコブティン(一般名:リファブチン)
抗結核薬:
「RFPに比べてCYP3A4の誘導は弱い」。(今日の治療薬2020,p.93)
腎機能低下時の用法・用量(リファブチン)
- 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)
リファブチンは、CYP3A阻害薬である
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)
厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例
( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)
CYP2C9
【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
CYP2C19
【基質】
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、オメプラール、オメプラゾン)
ランソプラゾール (プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケプロン)【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
CYP3A
【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート
- 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。- 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
- 本表はすべてを網羅したものではない。
実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
- ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。- 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。
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⇒サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。
Web管理人
山本明正(やまもと あきまさ)
1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)