抗真菌薬(白癬治療・外用薬)

2021年1月27日

抗真菌薬(白癬治療・外用薬)概要

(児島2017,pp.209-212)

水虫(白癬)の治療に使う抗真菌薬(外用薬)には様々な種類がある。
主な薬物に、アスタット、ルリコン、ゼフナート、ラミシールがある。
ただし、白癬治療において、基本的には効果や安全性に大きな違いはない。
(カンジダ症などでは、第一選択薬が決まっている場合もある)

いずれの薬物も、マイコスポール(イミダゾール系、ビホナゾール)と比べて、同等の効果・安全性を有している。
そして、強い抗真菌力(MICが小さい)を持っている。

したがって、剤形の違い(軟膏・クリーム・ローションなど)や医師の経験上の判断によって選択される。
軟膏:刺激は少ないが、べたつき感がある。
外用液:べたつき感は少ないが、刺激を感じることが多い。
クリーム:上記2者の中間くらい。

また、効果がなかった場合には、系統を変えることも考えられる。
その場合には、メンタックスやペキロンも対象となる。
(イミダゾール系、チオカルバメート系、アリルアミン系、ベンジルアミン系、モルホリン系)

薬の選択よりも、薬を正しく使うことの方が大切である

抗真菌薬は、真菌が完全に消失するまで使い続ける必要がある。
赤みやかゆみといった自覚症状が治まった段階では、真菌はまだ皮膚に残っていることが多い。
ここで治療を中断していると、水虫を何回もぶり返すことになる。

抗真菌薬は、自覚症状のない部分にもしっかりと塗ることが大切である。
真菌は、赤みやかゆみのない部分にも潜んでいるからである。

抗真菌薬は、症状のない部分も含めて、両足全体に塗る必要がある。
1か月分の分量は、軟膏・クリームで30~40gが一般的である。

水虫にステロイドを使用することもある

一般的には、水虫の赤みやかゆみに対してステロイドは使わない。
理由は、以下のとおりである。

水虫は、白癬菌による感染症である。
そして、ステロイドは、免疫抑制薬である。
したがって、水虫に対してステロイドを使うと、白癬菌を抑える免疫が弱まり、かえって症状を悪化させることになるからである。

ただし、患部の炎症やかゆみがひどい場合には、抗真菌薬を使うことができない。
そうした場合には、一旦ステロイドを使って炎症やかゆみを抑えてから、抗真菌薬を使い始めることがある。

つまり、水虫にステロイドを使わないのは原則ではあるが、例外もある。

医薬品各種(白癬治療・外用薬)

アスタット(一般名:ラノコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):
「高い抗真菌活性。良好な角質浸透性・貯留性」。(今日の治療薬2020,p.130)

軟膏(1%10g)、クリーム(1%10g)、外用液(1%10mL)

ルリコン(一般名:ルリコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.131)

軟膏(1%10g)、クリーム(1%10g)、液(1%10mL)
爪外用液(5%、ルナコック)

ゼフナート(一般名:リラナフタート)

表在性抗真菌薬(チオカルバメート系):
「皮膚貯留性が良好」。(今日の治療薬2020,p.131)

クリーム(2%10g)、外用液(2%10mL)

ラミシール(一般名:テルビナフィン)

深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系):(今日の治療薬2020,p.128)

錠(125mg)、爪白癬に適応有り(内服)
クリーム(1%10g)、外用液(1%10g)、外用スプレー(1%10g)

テルビナフィンは、CYP2D6阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

メンタックス、ボレー(一般名:ブテナフィン)

表在性抗真菌薬(ベンジルアミン系):
「持続性。皮膚への浸透性良好」。(今日の治療薬2020,p.131)

ペキロン(一般名:アモロルフィン)

表在性抗真菌薬(モルホリン系):
「持続性が良好」。(今日の治療薬2020,p.132)

エンペシド(一般名:クロトリマゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.129)

マイコスポール(一般名:ビホナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.130)

ニゾラール(一般名:ケトコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):
「高い抗真菌活性。角質親和性が高いため皮膚貯留性が高い」。(今日の治療薬2020,p.130)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
(日本では内服無し)

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
『サリドマイド事件(第7版)』
世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか(図表も入っています)

www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00V2CRN9G/
2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)