抗パーキンソン病薬(レボドパ含有製剤など)

2022年7月13日

抗パーキンソン病薬(レボドパ含有製剤など)

パーキンソン病治療薬として、レボドパ(L-ドパ)は依然として最も有効な薬物であることに変わりはない。

「パーキンソン病診療ガイドライン2018」においては、「ドパミンアゴニストを第一推奨薬としていた以前のガイドラインと比較して、より積極的なL-ドパ使用に舵を切っている」。
同ガイドラインにおいて、「それぞれの運動症状、非運動症状に対する薬物療法、非薬物療法がQ&Aで記載されており、これに準拠した治療選択が推奨される」。(今日の治療薬2020,p.944)

医薬品各種(抗パーキンソン病薬)

ネオドパストン配合、メネシット配合(一般名:レボドパ・カルビドパ(10:1)配合)

レボドパ含有製剤:
「レボドパ脱炭素酵素阻害薬の併用で、中枢以外での脱炭酸反応を抑制してレボドパの末梢性副作用を軽減、脳内への移行を高める」。(今日の治療薬2020,p.948)

「パーキンソン病ではドパミンが減少しているので、レボドパ(L-ドパ)を投与してドパミンを補う治療法が最も理に適っている」。(今日の治療薬2020,p.942)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

ビ・シフロール、ミラペックス(一般名:プラミペキソール)

ドパミン受容体刺激(作動)薬(アゴニスト):
「D2受容体ファミリーに強い親和性。非麦角系D2受容体刺激作用」。(今日の治療薬2020,p.952)

「ドパミンアゴニストは軽症・若年発症者の初期治療薬として有効であるが、現在主流となっている非麦角系アゴニストでは突発性睡眠の副作用が看過できず、(中略)MAO-B阻害薬やアマンタジン、あるいはL-ドパでの治療開始を選択肢として考えるべきである」。(今日の治療薬2020,p.944)

「警告:前兆のない突発性睡眠・傾眠等を患者に説明。服用中は自動車運転、機械操作、高所作業等危険を伴う作業に従事不可」。(今日の治療薬2020,p.952)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

腎機能低下時の用法・用量(プラミペキソール)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)パーキンソン病:1日0.25mgより開始し、2週目に1日0.5mgとし、1週間毎に1日量として0.5mgずつ増量。標準維持量1日1.5~4.5 mg。1日量が1.5 mg 未満は分2、朝夕食後、1.5mg以上は分3、毎食後。最大1日量4.5mg
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    初回1日0.25mgを分2。最大1日量2.25mgを分2
  • CCr(20mg/dL未満)
    初回1日0.125mgを分1、最大1日量1.5mgを分1
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    十分な使用経験がないので, 状態を観察しながら慎重投与

エフピー(一般名:セレギリン)

モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬:
「脳内ドパミンの代謝を抑制、ドパミンモジュレーターとして治療効果を延長。覚醒剤原料」。(今日の治療薬2020,p.949)

選択的モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO-B阻害薬、MAO阻害薬)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

アーテン(一般名:トリヘキシフェニジル)

副交感神経遮断(抗コリン)薬:
「震戦などの初期症状に有効。認知症症状を来たしやすいといわれており、高齢者での使用は注意を要する」。(今日の治療薬2020,p.954)

抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、抗コリン作用があることを示している。

アキネトン(一般名:ビペリデン)

副交感神経遮断(抗コリン)薬:
「トリヘキシフェニジル参照+抗振戦・抗硬直・抗カタレプシー作用」。(今日の治療薬2020,p.955)

抗コリン作用リスクスケールに関してもトリヘキシフェニジルに準ずる。

シンメトレル(一般名:アマンタジン)

ドパミン遊離促進薬(NMDA受容体拮抗薬):
「抗パーキンソン作用、抗Aインフルエンザウイルス作用(但し大部分が耐性)、ドパミン放出促進作用、ジスキネジア抑制作用あり。軽症患者での治療導入、レボドパ補助薬として使用」。(今日の治療薬2020,p.955)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

腎機能低下時の用法・用量(アマンタジン)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載有り。
透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)パーキンソン症候群:初期量1日100mgを分1~2、1週間後に維持量1日200mgを分2、最大1日量300mgを分3
    2)脳梗塞後遺症:1日100~150mgを分2~3 → インフルエンザ感染症は別途
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1回100mgを2~3日毎
  • CCr(15mg/dL未満)
    1回50~100mgを7日毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    禁忌

コムタン(一般名:エンタカポン)

カテコール・Oメチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬:
「レボドパの代謝を阻害、その血中濃度を保ち、脳内移行を増加」。(今日の治療薬2020,p.950)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

レキップ(一般名:ロピニロール)

ドパミン受容体刺激(作動)薬(アゴニスト):
「D2受容体系に選択的に作用する非麦角系。ジスキネジア発現遅延効果及びレボドパ製剤併用例(進行期パーキンソン病患者)で症状が悪くなる(off)時間の短縮効果」。(今日の治療薬2020,p.953)

ロピニロールは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ノウリアスト(一般名:イストラデフェリン)

アデノシンA2a受容体拮抗薬:
「アデノシンA2a受容体拮抗薬」。(今日の治療薬2020,p.954)

イストラデフェリンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

レグナイト(一般名:ガバペンチン)

レストレスレッグス症候群治療薬:(今日の治療薬2020,p.957)

腎機能低下時の用法・用量(ガバペンチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【パーキンソン病治療薬】

  • トリヘキシフェニジル[アーテン]、ビペリデン[アキネトン]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)】

  • トリヘキシフェニジル[アーテン]、ビペリデン[アキネトン]
  • 認知機能低下、せん妄、過鎮静、口腔乾燥、 便秘、排尿症状悪化、 尿閉
  • 可能な限り使用を控える。代替薬:L-ドパ

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

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2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)