バイアスピリンとそのほかの抗血小板薬の比較

2020年8月22日

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、血管内で血栓ができにくくする性質を持っている。
主として心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的として使用される薬物である。

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、抗凝固薬と抗血小板薬の二つに大別され、対象となる血栓のでき方(病態)によって明確に使い分けられている。

抗凝固薬と抗血小板薬の使い分け

バイアスピリンなどの抗血小板薬は、生活習慣病の患者でよく使用される。

生活習慣病の患者では、動脈硬化の進展に伴って生じたプラークが、はがれたり破れたりすることがある。
そして、そこに血小板が集まり血栓を生じやすい状態になっている。
そこで、血液が固まらないように抗血小板薬を使用するのである。

ワルファリンは、代表的な抗凝固薬であり、不整脈がある患者などでよく使用される。

不整脈や心不全のある患者では、血液の流れが滞って血液が固まりやすくなる。
こうしてできた血栓が心臓や脳の血管を詰まらせると突然死につながる恐れがある。

そこで、血液が固まらないように抗凝固薬が使われるのである。
具体的には、心房細動(不整脈の一種)による心原性脳塞栓症を防ぐ目的や、肺塞栓を予防するために深部静脈血栓症に対して用いたりする。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗血小板薬)

特に抗血小板薬の項はないものの、NSAIDsとの併用に関する注意がなされている。

  • 抗血小板薬や抗凝固薬、糖質ステロイドの併用患者ではNSAIDs潰瘍のリスクが上昇するため、これらの薬剤を使用する場合は、なるべくNSAIDsの変更・早期中止を検討する。(消炎鎮痛薬の項より引用)

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

医薬品各種(抗血小板薬)

チエノピリジン系抗血小板薬は、いずれもプロドラッグである。

チエノピリジン系抗血小板薬は、いずれもチエノピリジン骨格を有している。
一つの薬物で過敏症を起こした場合、そのほかの薬物でも過敏症を起こす可能性が高い。

薬疹が出た場合には、そのほかの系統の薬物に変薬すべきである。
チエノピリジン系同士で変薬した場合には、その後、倦怠感や急激な肝機能障害が起こる可能性がある。

(どんぐり2019,p.28)

バイアスピリン(一般名:アセチルサリチル酸、アスピリン)

アスピリンは、歴史的なNSAIDsであり解熱鎮痛薬として広く用いられている。

アスピリンは、血小板のシクロオキシゲナーゼ(COX1)を不可逆的にアセチル化することによって、トロンボキサンA2(TXA2)の合成を阻害する。
つまり、アスピリンには血小板凝集抑制作用があり、心筋梗塞の発症予防効果が証明されている。

アスピリンは血小板に不可逆的に結合するため、アスピリンの投与を中止しても、抗血小板作用は血小板の寿命(7~10日)と同じ期間持続する。
したがって、手術、心臓カテーテル検査又は抜歯などの予定がある場合は、7~10日前に投与を中止する。

バイアスピリン錠100㎎は、アスピリンを抗血小板薬として低用量で長期間(半永久的に)使用するために工夫された薬剤である。
腸溶錠とすることで、胃の負担を軽くして出血のリスクを低下させている。

  • バファリン配合錠A81(抗血小板剤):アスピリン81mg/ダイアルミネート33mg
  • バファリン配合錠A330(解熱鎮痛消炎剤):アスピリン330mg/ダイアルミネート150mg

パナルジン(一般名:チクロピジン)

世界初の血小板機能抑制をターゲットに開発された抗血小板薬(チエノピリジン系)である(1977年)。

血栓形成には、血小板が周囲からの刺激に反応してアデノシン二リン酸(ADP)を放出することが重要な役割を果たしている。

このADPが血小板膜上のADP受容体(P2Y12)に結合すると、抑制性GTP蛋白質を介してアデニル酸シクラーゼを抑制し、血小板内cAMPレベルを低下させる。
その結果、細胞内カルシウム濃度が上昇して血小板凝集が促進される。

チエノピリジン系抗血小板薬は、ADPのP2Y12受容体への結合を阻害することによって血小板内cAMP産生を高め、血小板の凝集と血栓の形成を抑制する。

チエノピリジン系抗血小板薬は、いずれもプロドラッグである。

内服後に体内で代謝を受けて活性体となり、P2Y12受容体と不可逆的に結合する。
そのため、薬剤の効果は血中濃度が低下しても持続し、効果は約1週間持続する(血小板の寿命は7~10日)。

手術予定などがある場合は、術前10~14日には投与を中止する。

さて、パナルジンは血小板機能抑制効果が高い反面、副作用の多い薬物である。
緊急安全性情報(イエローレター)が過去2度出されている。1999年6月、2002年7月。

【警告】血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用が主に投与開始後2ヵ月以内に発現し、死亡に至る例も報告されている。(パナルジン錠100mgの添付文書より)

投与開始2か月は2週間に一度血液検査を実施する。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP):歯ぐきの出血、鼻血、発熱、皮下出血、青あざなどに注意する。

チクロピジンは、CYP2B6阻害薬(弱い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

チクロピジンは、CYP2C19阻害薬(強い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

プラビックス(一般名:クロピドグレル)

クロピドグレルは、パナルジンの副作用を少なくした改良型のチエノピリジン系抗血小板薬(薬価収載2006年4月)。血液検査の必要は無く、適応範囲が広いという利点がある。

  • 脳:虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制
  • 心臓:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
    急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
    安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
  • 末梢:末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制

クロピドグレルにアセチル基を導入したのが、プラスグレルである。
2剤ともチエノピリジン骨格を有し、一方で薬物過敏症を起こした場合には、他方でも過敏症を起こす可能性が高い。(どんぐり2019,p.226)

クロピドグレルは、CYP2C19の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

クロピドグレルは、プロドラッグである。CYP2C19で代謝され活性代謝物を生じる。

日本人の場合、CYP2C19の働きが遺伝的に弱い人が約20%あり、プラビックスの治療効果に個人差が生じる原因の一つと考えられている。

なお、手術予定などがある場合は、術前14日には投与を中止する。

クロピドグレルは、CYP2C8及びCYP2C9阻害薬として作用する

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)なお、この表には記載無し。

クロピドグレルの代謝経路はもう一つある。ここで主代謝産物を生ずるが活性は持たない。
ただし、CYP2C9阻害作用を有する。
また、グルクロン酸抱合体が有り、強いCYP2C8阻害作用を有する。

CYP2C8阻害作用⇒レパグリニド(実践薬学2017,pp.125-128)

クロピドグレルは、CYP2B6阻害薬(弱い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

エフィエント(一般名:プラスグレル)

プラビックスの個人差を小さくした改良型のチエノピリジン系抗血小板薬(販売開始2014年5月)。
肝臓の代謝酵素(CYP2C19)をはじめとする代謝酵素や、肝機能・腎機能、喫煙の有無などによる効果の差が無い。
注)チエノピリジン系抗血小板薬はいずれもプロドラッグである。

エフィエントは、遺伝的素養や持病・生活習慣などによる個人差が出にくく、幅広く安定した効果を発揮することのできる薬物である。
ただし、新しい薬物であり薬価が高く適応範囲が狭い。
なお、手術予定などがある場合は、術前14日には投与を中止する。

  • 心臓:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
    急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
    安定狭心症、陳旧性心筋梗塞

プラスグレルは、クロピドグレルにアセチル基を導入した薬物である。
2剤ともチエノピリジン骨格を有し、一方で薬物過敏症を起こした場合には、他方でも過敏症を起こす可能性が高い。(どんぐり2019,p.226)

ブリリンタ(一般名:チカグレロル)

チカグレロル(直接的P2Y12阻害薬)は、チエノピリジン系抗血小板薬(パナルジン、クロピドグレル、プラスグレル)とは異なる骨格を持つ薬物である。

チカグレロルは、P2Y12受容体と可逆的に結合して阻害するので、未変化体の血中濃度と連動して薬効が出現し消失する。
また、チエノピリジン系抗血小板薬(いずれもプロドラッグ)とは異なり、未変化体が直接受容体を阻害するために阻害効果の発現が早い。

アストラゼネカ チカグレロルが米国心臓病学会および米国心臓病協会の急性冠症候群治療ガイドラインで推奨を受ける。
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2016/20160405.html#
注)米国心臓病学会(ACC)、米国心臓病協会(AHA)

チカグレロルは、CYP3A4の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

「チカグレロル及びその主代謝物であるAR-C124910XXはシトクロムP4503A(CYP3A)分子種の基質かつ弱い阻害剤でもある(invivo)。
またp糖蛋白質の基質であり、阻害剤でもある」。(ブリリンタ添付文書)

代謝酵素の影響を受けない(個人差が少ない)

ブリリンタは、酵素による代謝を必要としない。
したがって、チエノピリジン系薬物と違って代謝酵素の働きがあるかないかによって個人差が生ずることは無い。(児島2017,p.94)

可逆的阻害作用(休薬期間が短い)

手術や内視鏡処置・抜歯など、出血の恐れがある処置を受けるときは、事前に薬物を中止あるいは減量しておく必要がある。

チエノピリジン系薬物の血小板上のP2Y12受容体との結合は非可逆的である。
したがって、血小板が完全に入れ替わるまで薬効が持続する(血小板の寿命は7~10日)ので、一般的には処置の7~14日前から休薬しておく必要がある。

ブリリンタのP2Y12受容体への結合は可逆的であるため、血中薬物濃度の低下に伴って薬効は弱まっていく。
そこで、ブリリンタの休薬期間は、最短5日と短くてすむ。

服薬回数が多い(1日2回)

ブリリンタの服用回数は、1日2回であり、いかにしてきちんと飲み続けられるかが課題となる。
アドヒアランス不良の場合、臨床試験どおりの効果を得ることは難しくなる。

適応症は狭く用量によって異なっている

  • ブリリンタ錠90mg:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)(ただし、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る)
  • ブリリンタ錠60mg:以下のリスク因子を1つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合
    65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患、又は末期でない慢性の腎機能障害

バファリン配合錠(アスピリン+ダイアルミネート)

アスピリン81mg,330mg/ダイアルミネート

タケルダ配合錠(アスピリン+ランソプラゾール)

アスピリン100mg/ランソプラゾール15mg

コンプラビン配合錠(アスピリン+クロピドグレル)

アスピリン100mg/クロピドグレル75mg

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)