バイアスピリンとそのほかの抗血小板薬の比較

2019年11月26日

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、血管内で血栓ができにくくする性質を持っている。主として心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的として使用される薬物である。

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、抗凝固薬と抗血小板薬の二つに大別され、対象となる血栓のでき方(病態)によって明確に使い分けられている。

抗凝固薬と抗血小板薬の使い分け

バイアスピリンなどの抗血小板薬は、生活習慣病の患者でよく使用される。

生活習慣病の患者では、動脈硬化の進展に伴って生じたプラークが、はがれたり破れたりすることがある。そして、そこに血小板が集まり血栓を生じやすい状態になっている。そこで、血液が固まらないように抗血小板薬を使用するのである。

ワルファリンは、代表的な抗凝固薬であり、不整脈がある患者などでよく使用される。

不整脈や心不全のある患者では、血液の流れが滞って血液が固まりやすくなる。こうしてできた血栓が心臓や脳の血管を詰まらせると突然死につながる恐れがある。

そこで、血液が固まらないように抗凝固薬が使われるのである。具体的には、心房細動(不整脈の一種)による心原性脳塞栓症を防ぐ目的や、肺塞栓を予防するために深部静脈血栓症に対して用いたりする。

抗血小板薬各種

バイアスピリン(一般名:アセチルサリチル酸、アスピリン)

アスピリンは、歴史的なNSAIDsであり解熱鎮痛薬として広く用いられている。

アスピリンは、血小板のシクロオキシゲナーゼ(COX1)を不可逆的にアセチル化することによって、トロンボキサンA2(TXA2)の合成を阻害する。つまり、アスピリンには血小板凝集抑制作用があり、心筋梗塞の発症予防効果が証明されている。

アスピリンは血小板に不可逆的に結合するため、アスピリンの投与を中止しても、抗血小板作用は血小板の寿命(7~10日)と同じ期間持続する。したがって、手術、心臓カテーテル検査又は抜歯などの予定がある場合は、7~10日前に投与を中止する。

バイアスピリン錠100㎎は、アスピリンを抗血小板薬として低用量で長期間(半永久的に)使用するために工夫された薬剤である。腸溶錠とすることで、胃の負担を軽くして出血のリスクを低下させている。

バファリン配合錠A81(抗血小板剤):アスピリン81mg/ダイアルミネート33mg
バファリン配合錠A330(解熱鎮痛消炎剤):アスピリン330mg/ダイアルミネート150mg

パナルジン(一般名:チクロピジン)

世界初の血小板機能抑制をターゲットに開発された抗血小板薬(チエノピリジン系)である(1977年)。

血栓形成には、血小板が周囲からの刺激に反応してアデノシン二リン酸(ADP)を放出することが重要な役割を果たしている。

このADPが血小板膜上のADP受容体(P2Y12)に結合すると、抑制性GTP蛋白質を介してアデニル酸シクラーゼを抑制し、血小板内cAMPレベルを低下させる。その結果、細胞内カルシウム濃度が上昇して血小板凝集が促進される。

チエノピリジン系抗血小板薬は、ADPのP2Y12受容体への結合を阻害することによって血小板内cAMP産生を高め、血小板の凝集と血栓の形成を抑制する。

チエノピリジン系抗血小板薬は、いずれもプロドラッグである。

内服後に体内で代謝を受けて活性体となり、P2Y12受容体と不可逆的に結合する。そのため、薬剤の効果は血中濃度が低下しても持続し、効果は約1週間持続する(血小板の寿命は7~10日)。

手術予定などがある場合は、術前10~14日には投与を中止する。

さて、パナルジンは血小板機能抑制効果が高い反面、副作用の多い薬物である。
緊急安全性情報(イエローレター)が過去2度出されている。1999年6月、2002年7月。

【警告】血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症、重篤な肝障害等の重大な副作用が主に投与開始後2ヵ月以内に発現し、死亡に至る例も報告されている。(パナルジン錠100mgの添付文書より)

投与開始2か月は2週間に一度血液検査を実施する。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP):歯ぐきの出血、鼻血、発熱、皮下出血、青あざなどに注意する。

プラビックス(一般名:クロピドグレル)

プラビックスは、パナルジンの副作用を少なくした改良型のチエノピリジン系抗血小板薬(薬価収載2006年4月)。血液検査の必要は無く、適応範囲が広いという利点がある。

  • 脳:虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制
  • 心臓:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
    急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
    安定狭心症、陳旧性心筋梗塞
  • 末梢:末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制

プラビックスは、肝臓の代謝酵素(CYP2C19)で代謝されて初めて薬効を発揮するプロドラッグである。日本人の場合、CYP2C19の働きが遺伝的に弱い人が約20%あり、プラビックスの治療効果に個人差が生じる原因の一つと考えられている。

なお、手術予定などがある場合は、術前14日には投与を中止する。

エフィエント(一般名:プラスグレル)

プラビックスの個人差を小さくした改良型のチエノピリジン系抗血小板薬(販売開始2014年5月)。肝臓の代謝酵素(CYP2C19)をはじめとする代謝酵素や、肝機能・腎機能、喫煙の有無などによる効果の差が無い。注)チエノピリジン系抗血小板薬はいずれもプロドラッグである。

エフィエントは、遺伝的素養や持病・生活習慣などによる個人差が出にくく、幅広く安定した効果を発揮することのできる薬物である。ただし、新しい薬物であり薬価が高く適応範囲が狭い。なお、手術予定などがある場合は、術前14日には投与を中止する。

  • 心臓:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患
    急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)
    安定狭心症、陳旧性心筋梗塞

ブリリンタ(一般名:チカグレロル)

チカグレロル(直接的P2Y12阻害薬)は、チエノピリジン系抗血小板薬(パナルジン、クロピドグレル、プラスグレル)とは異なる骨格を持つ薬物である。

チカグレロルは、P2Y12受容体と可逆的に結合して阻害するので、未変化体の血中濃度と連動して薬効が出現し消失する。また、チエノピリジン系抗血小板薬とは異なり、未変化体が直接受容体を阻害するために阻害効果の発現が早い。

アストラゼネカ チカグレロルが米国心臓病学会および米国心臓病協会の急性冠症候群治療ガイドラインで推奨を受ける。
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2016/20160405.html#
注)米国心臓病学会(ACC)、米国心臓病協会(AHA)

代謝酵素の影響を受けない(個人差が少ない)

ブリリンタは、酵素による代謝を必要としない。したがって、チエノピリジン系薬物と違って代謝酵素の働きがあるかないかによって個人差が生ずることは無い。

可逆的阻害作用(休薬期間が短い)

手術や内視鏡処置・抜歯など、出血の恐れがある処置を受けるときは、事前に薬物を中止あるいは減量しておく必要がある。

チエノピリジン系薬物の血小板上のP2Y12受容体との結合は非可逆的である。したがって、血小板が完全に入れ替わるまで薬効が持続する(血小板の寿命は7~10日)ので、一般的には処置の7~14日前から休薬しておく必要がある。

ブリリンタのP2Y12受容体への結合は可逆的であるため、血中薬物濃度の低下に伴って薬効は弱まっていく。そこで、ブリリンタの休薬期間は、最短5日と短くてすむ。

服薬回数が多い(1日2回)

ブリリンタの服用回数は、1日2回であり、いかにしてきちんと飲み続けられるかが課題となる。アドヒアランス不良の場合、臨床試験どおりの効果を得ることは難しくなる。

適応症は狭く用量によって異なっている

  • ブリリンタ錠90mg:経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞、ST上昇心筋梗塞)(ただし、アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る)
  • ブリリンタ錠60mg:以下のリスク因子を1つ以上有する陳旧性心筋梗塞のうち、アテローム血栓症の発現リスクが特に高い場合
    65歳以上、薬物療法を必要とする糖尿病、2回以上の心筋梗塞の既往、血管造影で確認された多枝病変を有する冠動脈疾患、又は末期でない慢性の腎機能障害

バファリン配合錠(アスピリン+ダイアルミネート)

アスピリン81mg,330mg/ダイアルミネート

タケルダ配合錠(アスピリン+ランソプラゾール)

アスピリン100mg/ランソプラゾール15mg

コンプラビン配合錠(アスピリン+クロピドグレル)

アスピリン100mg/クロピドグレル75mg

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)