セファロスポリン系抗生物質(フロモックスなど)

2020年11月18日

セフェム系抗生物質(概略)

βラクタム系抗生物質:
作用機序(細胞壁合成阻害作用を有する)。
(βラクタム系、グリコペプチド系、ホスホマイシン系が同様の作用を有する)
細胞壁のない「マイコプラズマ属」には効果がない。

PK/PD理論(時間依存性、time above MIC):
βラクタム系(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など)の抗菌薬は、時間依存性に抗菌力を発揮する。
できるだけ長い時間、一定濃度(最小発育阻止濃度:MIC)以上の薬物血中濃度を保つ方が効果的である。
1日量を複数回に分けて服用する。
参考)濃度依存性→ニューキノロン系、アミノグリコシド系など。

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

セフェム系抗生物質の投与量調節に関しては、日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」付表:腎機能低下時の薬剤投与量←(どんぐり2019,p.196)

  • セフェピム(注射用第四世代セフェム系薬):腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。(バンコマイシン塩酸塩、アミノグリコシド系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬、アシクロビルなども同様である)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)

CKD患者へ腎排泄性薬物を投与する際に,有害事象の減少を目的とし,腎機能に応じて適切な投与方法・量に変更することを強く推奨する。

腎排泄性薬物としては,一部の抗不整脈薬,抗菌薬(βラクタム系やアミノグリコシド系など),抗真菌薬(フルコナゾール),抗ウイルス薬の多く(本章CQ3参照),ヨード造影剤(本章CQ5参照),ビグアナイド系薬,抗がん薬の一部,直接経口抗凝固薬(本章CQ4参照),ガバペンチン,プレガバリン,炭酸リチウムなどが代表的な薬剤としてあげられる。

腎機能に応じた薬物投与方法は,具体的には1回投与量の減量・投与間隔延長・投与中止があげられ,薬剤の血中濃度測定が可能な薬剤については,治療薬物モニタリングを実施することで,薬剤の特性に応じて血中濃度測定による最適な投与計画を行うことが重要である。

薬物投与計画を行う際に参照すべき国際的ガイドラインとして,2012年にKDIGOが発表したCKD診療に関するガイドラインaがあり,上記の腎排泄性薬物を投与する際の指針が示されている。

近年,わが国からも薬物投与に関連した腎障害診療ガイドラインが複数発刊されており,鎮痛薬・抗菌薬・免疫抑制薬に関しては「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」b,抗がん薬に関しては「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016」cで詳説されている。
各薬剤の具体的な投与量調整に関しては,日本腎臓病薬物療法学会が特に注意すべき薬剤に対する指針dを発表している。
加えてCKDステージG3b~5のハイリスク症例においても参照すべき診療ガイドラインeが発表されており,これらを参考に投与量調整を行うことが望ましい。

セフェム系抗生物質の投与量調節に関しては、日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」付表:腎機能低下時の薬剤投与量←(どんぐり2019,p.196)

医薬品各種(セファロスポリン系抗生物質)

フロモックス(一般名:セフカペン)

経口用第三世代セフェム系薬:
「プロドラッグ。腸管壁で代謝されてCFPNになる」。(今日の治療薬2020,p.55)
「本剤は腎排泄型の薬剤であり」。(フロモックス添付文書)
「セフカペンはほとんど代謝されることなく主として腎から排泄される」。(同上)

βラクタム系抗生物質:
作用機序(細胞壁合成阻害作用を有する)。
(βラクタム系、グリコペプチド系、ホスホマイシン系が同様の作用を有する)
細胞壁のない「マイコプラズマ属」には効果がない。

抗菌スペクトル:
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、インフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属、バクテロイデス属、プレボテラ属(プレボテラ・ビビアを除く)、アクネ菌
効果がない菌:百日咳菌、マイコプラズマ属、レジオネラ属など

  • 中耳炎や副鼻腔炎(主な起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ菌)⇒βラクタム系
  • 呼吸器感染症(百日咳、マイコプラズマ属が起炎菌の場合)⇒マクロライド系
    百日咳(菌)は、エリスロマイシンでは適応(菌)となっている。
    クラリスロマイシンでは適応となっていない。
  • 肺炎(レジオネラやクレブシエラ属が起炎菌の場合)⇒ニューキノロン系
    (児島2017,p.188)あくまでも参考

セフカペンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.194-197、服薬指導例・薬歴記載例有り)

高度腎障害患者(週3回の血液透析)
歯茎の腫れ・痛みが気になり、近医(歯科)受診。
セフカペンピボキシル錠100mg、1回1錠、1日3回毎食後、5日分
ロキソプロフェンナトリウム錠60mg、1回1錠、疼痛時、5回分

フロモックス添付文書の用法・用量は以下のとおりである。

【用法・用量】
通常,成人にはセフカペン ピボキシル塩酸塩水和物として1回100mg(力価)を1日3回食後経口投与する。なお,年齢及び症状に応じて適宜増減するが,難治性又は効果不十分と思われる症例には1回150mg(力価)を1日3回食後経口投与する。

ただし、添付文書には記載されていないが、腎機能障害患者では1日投与回数を減らす必要がある。
参照)日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」付表:腎機能低下時の薬剤投与量←(どんぐり2019,p.196)

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1回100mg、1日3回食後(最大1回150mg)
  • CCr(10~50mg/dL未満)
    1回100mg、1日2回
  • CCr(10mg/dL未満)
    1回100mg、1日1~2回
  • 透析(HD)
    100mg、1日1回(透析日は透析後投与)

なお、ロキソプロフェンは、もし鎮痛薬が必要であれば、アセトアミノフェンに変更する。
そして、短期間少量投与。

セフゾン(一般名:セフジニル)

経口用第三世代セフェム系薬:
「黄色ブドウ球菌、レンサ球菌属などに強い抗菌力」。(今日の治療薬2020,p.52)

メイアクトMS(一般名:セフジトレン)

経口用第三世代セフェム系薬:
「セフジトレンに代謝されて抗菌力を示すプロドラッグ。経口セフェム剤として初めてバクテロイデス属、百日咳の適応。インフルエンザ菌、肺炎球菌に特に良好な活性」。(今日の治療薬2020,p.53)

バナン(一般名:セフポドキシム)

経口用第三世代セフェム系薬:
「プロドラッグ。腸管壁で代謝されてCPDXになる。特にグラム陰性菌に対する抗菌力が強い」。(今日の治療薬2020,p.55)

オラセフ(一般名:セフロキシム)

経口用第二世代セフェム系薬:
「エステル型プロドラッグ。生体内でCXMとなり抗菌力を発揮」。(今日の治療薬2020,p.52)

腎機能低下時の用法・用量(セフロキシム)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ケフレックス、ラリキシン(一般名:セファレキシン)

経口第一世代セフェム系薬:
「グラム陽性菌、大腸菌、クレブシエラ属などに抗菌力」。(今日の治療薬2020,p.50)

L-ケフレックス(一般名:セファレキシン)

経口第一世代セフェム系薬:
「ケフレックスの持続性製剤(胃溶30%、腸溶70%)」。(今日の治療薬2020,p.51)

ケフラール(一般名:セファクロル)

経口第一世代セフェム系薬:
「CEX参照」。(今日の治療薬2020,p.51)
CEX:ケフレックス。

L-ケフラール(一般名:セファクロル)

経口第一世代セフェム系薬:
「ケフラールの持続性製剤(胃溶40%、腸溶60%)」。(今日の治療薬2020,p.52)

セフテム(一般名:セフチブテン)

経口第三世代セフェム系薬:
「グラム陰性菌に強い抗菌力」。(今日の治療薬2020,p.53)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)