副腎皮質ステロイド(点鼻薬)

2020年11月4日

アレルギー性鼻炎(適応)

ステロイド点鼻薬は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに有効である。

「ステロイド点鼻薬は、症状がひどくなってから使う切り札ではなく、初期の軽い症状のうちから使うべき薬としてガイドラインでも定められています」。(児島2017,p.153)
「通年性アレルギー性鼻炎における軽症例から重症例、花粉症においても初期治療から重症例まで、鼻噴霧用ステロイドが単独ないしは併用で使用が推奨され、重要度が増している」。(今日の治療薬2020,p.1073)

ステロイド点鼻薬は、症状の悪化を防ぐため継続的に使う薬物である。
そのため、症状が治まってもしばらくは使い続けることになる。
その点、ステロイド点鼻薬は、眠気(抗ヒスタミン薬の副作用)や全身への影響が少ない(バイオアベイラビリティが低い)ので、長期間使いやすい薬物である。

ただし、ステロイド点鼻薬は、鼻づまりにはやや効果が弱い。
鼻づまりには血管収縮薬が最も有効であるが、症状の重いとき、1~2週間に限って使用すること。

点鼻薬は、鼻の通っているときに使う

最近のステロイド点鼻薬は、1日1回投与になっている。
通常は(大人では)、1回に各鼻腔2噴霧ずつ、合計4噴霧となる。

1日のうちでできるだけ鼻のとおりが良い時間帯に使用する。
朝起きてすぐでも風呂上りでも、いつでも何の問題も無い。

使用する前にはよく鼻をかんで、鼻水を取り除いておくことが大切である。
大人(1回2噴霧)の場合、左右交互の噴霧を2回繰り返すようにするとよい。
右なら右を2回連続して噴霧すると、液垂れしやすくなる。

噴霧した後は、鼻から息を吸って口から吐く。
ここで、鼻から息を吐くと、薬剤が奥まで届かなくなる。

使い初めには空打ちが必要である。(アラミスト、ナゾネックス、下記参照)
フタを閉め忘れていた(5日以上経過)、あるいは長い間(30日以上)使っていなかった場合には、再度空打ちをしてから使う必要がある。

医薬品各種(副腎皮質ステロイド・点鼻薬)

アラミスト(一般名:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)

定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤(点鼻液):
「1日1回投与の横押し型噴霧薬。全身的影響は少ない」。(今日の治療薬2020,p.1077)

1日1回のステロイド点鼻薬である。
受容体への結合力が非常に強く、眼症状(目のかゆみ・赤み・涙など)の改善効果が期待できる。
バイオアベイラビリティ、0.5%(全身への影響は少ない)。
ベンザルコニウム塩化物などの添加物を含んでいる(ナゾネックスも同様)。
(液体状の製剤であり、細菌の繁殖を防ぐため)
2~5歳未満、1日1噴霧、15歳以上、1日2噴霧。
使い始めの空打ち、6回。

フルチカゾンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

フルナーゼとの違い

同じGSKには、1日2回のフルナーゼがある。

有効成分の側鎖が違うことによって、グルココルチコイド受容体(GR)との結合親和性が高くなっている。
フルチカゾンと同等以上の有効性および安全性を有する。
1日1回投与で安定した効果がより長時間持続する。
フルナーゼ特有のにおいがない。
フルナーゼに比べて、ミスト状に噴霧される。

ナゾネックス(一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)

定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤(点鼻薬):
「1日1回噴霧薬。全身的影響は少ない」。(今日の治療薬2020,p.1076)

1日1回のステロイド点鼻薬である。
バイオアベイラビリティ、0.2%未満(全身への影響は非常に少ない)。
ベンザルコニウム塩化物などの添加物を含んでいる(アラミストも同様)。
(液体状の製剤であり、細菌の繁殖を防ぐため)
3~12歳未満、1回1噴霧、12歳以上、1回2噴霧。
使い始めの空打ち、10回。

エリザス(一般名:デキサメタゾンシペシル酸エステル)

粉末噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤(点鼻薬):
「国内初の粉末製剤の1日1回噴霧薬。全身的影響は少ない」。(今日の治療薬2020,p.1077)

1日1回のステロイド点鼻薬である。
バイオアベイラビリティ、14.0%未満(全身への影響は少ない)。
乳糖以外の保存料や防腐剤が使われていない粉状の製剤である。
(鼻粘膜に対する刺激が少なくなっている)
16歳以上、1回1噴霧。

フルナーゼ(一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル)

1日2回のステロイド点鼻薬である。
同じGSKには、1日1回のアラミストがある。

フルチカゾンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)