DPP-4阻害薬(インクレチン関連薬)インスリン分泌促進

2020年8月8日

DPP-4阻害薬は、食後のインスリン分泌を促進する

【参考資料】糖尿病診療ガイドライン2019/一般社団法人日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、DPP-4阻害薬の特徴について、次のようにまとめている。

「血糖値に依存して食後のインスリン分泌を促進させると同時にグルカゴン分泌を抑制する。その結果、主に食後の高血糖を改善させる」。p.75

参考)グルカゴンの主な作用は、肝においてグリコーゲン分解と糖新生によるブドウ糖の産生・放出を促進し、血糖を上昇させることである。「糖尿病治療におけるグルカゴン分泌制御の重要性」(日本大学医学部)https://www.med.nihon-u.ac.jp/department/dmet/research/subject_dpp-4.html

食後のインクレチン分泌とDPP-4阻害薬の働き

インスリンの分泌機構を二段階に分けて考える

インスリン分泌促進作用は、次のような二段階で考えると分かりやすい。

  1. インスリンの分泌⇒惹起経路(SU薬とグリニド薬による)
  2. インスリンの増幅⇒増幅経路(DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬による)
    (実践薬学2017,p.381「インクレチン関連薬によるインスリン分泌促進作用」)

インクレチン(消化管ホルモン):GLP-1とGIP

  • インクレチン(GLP-1):グルカゴン様ペプチド-1
  • インクレチン(GIP):グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド

インクレチン(GLP-1)は、「食事の摂取により小腸下部のL細胞から分泌される消化管ホルモンである」。「血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞からの過剰のグルカゴン分泌を抑制する」。(実践薬学2017,p.379-380)

食事によって分泌されるインクレチン(GLP-1)は、膵臓からのインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる作用を有している。ただし、インクレチン(GLP-1)は、酵素DPP-4(dipeptidyl deptidase-4)によって速やかに分解されてしまう(半減期2~3分)ため、血糖降下作用は長続きしない。

DPP-4阻害薬は、酵素DPP-4の働きを阻害することによって内因性のGLP-1濃度を高め、血糖依存的に血糖降下作用を発揮する。(児島2017,p.51)、(実践薬学2017,p.380)

なお、インクレチン(GIP)は、「食事摂取により小腸上部のK細胞から分泌される」消化管ホルモンである。「血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞では、グルカゴンの分泌を促進する」。(同上p.381)

インクレチン(GLP-1とGIP)によるインスリン分泌増幅作用

「GIP並びにGLP-1が膵β細胞上に発現するGIP受容体、GLP-1受容体に結合すると、アデニル酸シクラーゼが活性化され、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)が上昇する。これが、Epac2(exchange protein directly activated by cAMP)やPKA(protein kinase A)を活性化し、惹起経路によるインスリン分泌の開口放出を増幅させる」。(実践薬学2017,p.380)

高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(糖尿病治療薬)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」
(以下、引用)

高齢者糖尿病では安全性を十分に考慮した治療が求められる。特に75歳以上やフレイル・要介護では認知機能や日常生活動作(ADL)、サポート体制を確認したうえで、認知機能やADLごとに治療目標を設定※すべきである。
※2016年に日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同委員会により高齢者の血糖コントロール目標(HbA1c値)が制定。(糖尿病治療薬)

  • 高齢者では、生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら、低用量から使用を開始するなど、慎重に投与する。
  • 高齢者はシックデイに陥りやすく、また低血糖を起こしやすいことに注意が必要である。
  • インスリン製剤も、高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える。
  • SU薬(グリメピリド[アマリール]、グリクラジド[グリミクロン]、グリベンクラミド[オイグルコン、ダオニール]など)のうち、グリベンクラミドなどの血糖降下作用の強いものの投与は避けるべきであるが、他のSU薬についてもその使用はきわめて慎重になるべきで、低血糖が疑わしい場合には減量や中止を考慮する。
    SU薬は可能な限り、DPP-4阻害薬への代替を考慮する。
  • メトホルミン[グリコラン、メトグルコ]では低血糖、乳酸アシドーシス、下痢に注意を要する。
  • チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン[アクトス])は心不全等心臓系のリスクが高い患者への投与を避けるだけでなく、高齢患者では骨密度低下・骨折のリスクが高いため、患者によっては使用を控えたほうがよい。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール[セイブル]、ボグリボース[ベイスン]、アカルボース[グルコバイ])は、腸閉塞などの重篤な副作用に注意する。
  • SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン[スーグラ]、ダパグリフロジン[フォシーガ]、ルセオグリフロジン[ルセフィ]、トホグリフロジン[デベルザ、アプルウェイ]、カナグリフロジン[カナグル]、エンパグリフロジン[ジャディアンス])は心血管イベントの抑制作用があるが、脱水や過度の体重減少、ケトアシドーシスなど様々な副作用を起こす危険性があることに留意すべきである。
    高度腎機能障害患者では効果が期待できない。
    また、中等度腎機能障害患者では効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断する。
    尿路・性器感染のある患者には、SGLT2阻害薬の使用は避ける。
    発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
  • インスリン製剤やSU薬以外でも複数種の薬剤の使用により重症低血糖の危険性が増加することから、HbA1cや血糖値をモニターしながら減薬の必要性を常に念頭においておくべきである。
  • SU薬やナテグリニド[ファスティック、スターシス]は主にCYP2C9により代謝されるので、CYP2C9阻害薬との併用に注意する。
  • SGLT2阻害薬は脱水リスクの観点から利尿薬との併用は避けるべきである。

DPP-4阻害薬の副作用やクラス分類について

SU薬やインスリンとの併用で低血糖のリスクが高まる

DPP-4阻害薬は、「単独投与では低血糖のリスクは極めて少ないが、SU薬やインスリンとの併用の際は、低血糖の発症頻度が増加する可能性があり、併用薬の減量を考慮すべきである」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.75)

DPP-4阻害薬は、「血糖依存性にインスリン分泌を増幅。SU類併用時はSU類の減量を検討する」。(今日の治療薬2020,p.381)

DPP-4阻害薬の発売(2009年12月)直後から、SU薬への上乗せによる重症低血糖が散見されたため、専門医らによるRecommendationが発表された。

その後、シタグリプチンでインスリンとの併用療法の効能が追加された(2011年9月16日)ことを受けて、提言はさらに改善されている。(インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会(旧「インクレチンとSU薬の適正使用に関する委員会」)2011年9月29日修正)

副作用として、急性膵炎や水疱性類天疱瘡などに注意する

DPP-4阻害薬は、「大血管症の発症を増加させず、基本的には安全性が高いと考えられる。急性膵炎や水疱性類天疱瘡などの発症に関しては注意が必要である」。(ガイドライン2019,p.75)

【重大な副作用】類天疱瘡(頻度不明)、例えばジャヌビア添付文書(2016年4月21日 薬生安発0421第1号 別紙6)
「水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと」。

【重要な基本的注意】、例えばスイニ―添付文書(2018年3月20日 薬生安発0320第1号 別紙4)
「急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること」。

結合様式(結合ポケット)の違いによるクラス分類

DPP-4阻害薬は、結合様式(結合ポケット)の違いによってクラス分類が可能である。無効例があった場合の変薬候補を考える際などの参考になるであろう。(実践薬学2017,pp.386-390)

  • クラス1:シアノピロリジン系が結合する
    ビルダグリプチン(エクア)、サキサグリプチン(オングリザ)
  • クラス2:非ペプチド型が結合する
    アログリプチン(ネシーナ)、リナグリプチン(トラゼンタ)、トレラグリプチン(ザファテック)
  • クラス3:シアノピロリジン系以外のジペプチド型が結合する
    シタグリプチン(グラクティブ、ジャヌビア)、テネリグリプチン(テネリア)、オマリグリプチン(マリゼブ)、アナグリプチン(スイニー)はシアノピロリジン系だが結合様式が異なる

医薬品各種(DPP-4阻害薬)

「胆汁排泄型のリナグリプチンやテネリグリプチンは薬物動態にさほど影響を受けないため透析を含めて腎機能障害時の用法、用量の変更は必要ない。しかし、その他の薬剤は腎排泄型のため、腎機能に応じて用量調節をする必要がある」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.76)

DPP-4阻害薬は、現在9成分10品目が上市されている。これらは、患者の服薬状況(投与回数)や腎機能・肝機能に応じて使い分けられる。(実践薬学2017,p.383-385「日本で使用されているDPP-4阻害薬の一覧」)

Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット/澤田康文
腎機能低下者に通常用量でシタグリプチンが処方(事例104)
https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/104/?route_no=6674

下記各品目の第1行目は、実践薬学と澤田康文及び各薬剤添付文書の数値を突き合わせて作成した。

グラクティブ、ジャヌビア(一般名:シタグリプチン)

1回50mg/1日1回投与(増量可)、主に腎排泄型(尿中未変化体排泄率79~88%)、CCrなどに応じて用量調節。

酵素DPP-4を阻害する

DPP-4阻害薬は、酵素DPP-4の働きを阻害することによって内因性のGLP-1濃度を高める。
その結果、血糖依存的に血糖降下作用を発揮する。

重大な副作用⇒低血糖
単独投与では低血糖のリスクは極めて少ないが、SU薬、グリニド薬やインスリンとの併用の際は、低血糖の発症頻度が増加する。

副次的な副作用⇒GLP-1濃度の上昇による
「GLP-1には、消化管の蠕動運動を抑制し、幽門筋の収縮力を高め、経口摂取された食物の十二指腸への流入を遅延させる働きがある。
胃腸障害は副次的な薬理作用であり、GLP-1濃度が高くなると腹部膨満吐き気便秘などの胃腸障害が起こりやすくなる」。(どんぐり2019,p.20)

「(副次的な薬理作用によって胃腸障害が起きることがあります)。
しばらく飲み続けると体がお薬に慣れてきて、症状がなくなることが多いので、ひどくなければ、このまま飲み続けてください。
ただ、腹痛や吐き気がしたり症状がひどくなるようなことがあれば、我慢せずにすぐご連絡ください」。(同上p.26)

酸化マグネシウム(便秘)がシタグリプチンと併用されている場合、シタグリプチンの副作用も考える。

(どんぐり2019,pp.19-26)

腎機能低下時の用法・用量(シタグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日1回50~100mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1日1回25mg、最大1日1回50mg
  • CCr(15~30mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日1回12.5mg、最大1日1回25mg

用量調節(割線入り製剤)と投与禁忌の解除

以下、グラクティブの事例を抜き出してみた。

まず、新発売後数年を経て、割線入り製剤(25mg錠)への変更が行われた。そのことによって用量調節が可能となり、重度腎機能障害のある患者で、投与禁忌から慎重投与に変更となった。さらに引き続いて、割線で分割しなくても済むように、最小mg数の錠剤(12.5mg錠)が新発売となった。

  • 2009年12月、グラクティブ錠25mg、50mg、100mg新発売
  • 2013年6月、グラクティブ25mg錠の割線入り製剤への変更の承認を取得
  • 2013年8月、「血液透析又は腹膜透析を要する患者を含む重度腎機能障害のある患者」への投与禁忌が解除となり、慎重投与に変更
  • 2013年11月、グラクティブ錠12.5mg新発売

この間の事情については、下記の文章(小野薬品工業株式会社、2013年8月2日付け)が分かりやすい。

「グラクティブは、重度腎機能障害のある患者さんへ投与する場合には、通常用量50mgの1/4量(12.5mg)への用量調整が必要ですが、12.5mg が投与可能な製剤がないことから禁忌となっていました。しかし、今年6月に25mg錠の割線入り製剤への変更の承認を取得し、用量調整が可能となったため、重度腎機能障害のある患者さんへの投与禁忌が解除となり、慎重投与に変更されました」。

エクア(一般名:ビルダグリプチン)

1回50mg/1日2回投与、血中内で加水分解(尿中未変化体排泄率22.7%)、中等度以上は1日1回投与。

ネシーナ(一般名:アログリプチン)

1回25mg/1日1回投与、主に腎排泄型(尿中未変化体排泄率73%)、CCrなどに応じて用量調節。

腎機能低下時の用法・用量(アログリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日1回25mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1日1回12.5mg
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日1回6.25mg

トラゼンタ(一般名:リナグリプチン)

1回5mg/1日1回投与、未変化体で胆汁中排泄(尿中未変化体排泄率0.6%)、用量調節不要。

Tmax:中央値6.00(最小最大値2.00-8.00)(h)、Cmax:幾何平均値9.00(幾何変動係数40.6%)(nM)、t1/2:幾何平均値105(幾何変動係数8.26%)(h)
1日1回5mg服用、24時間/105時間=0,2⇒定常状態がある薬物
定常状態に達するまでの時間、105時間×5=525時間⇒約22日
(どんぐり2019,p.235)

「半減期が長いから、効果が発現するまでに時間を要するのかというと、そうではない」。「AUCの累積係数から算出した半減期は12.2時間」であり、「1日1回タイプの他のDPP-4阻害薬と変わらない」。(実践薬学、pp.383-384)

適応症:2型糖尿病(以下、トラゼンタ・インタビューフォームより)
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。
未変化体で胆汁中に排泄(尿中未変化体排泄率、0.6%)。
日本人健康成人男性に本剤5mgを12日間反復投与した定常状態における見かけの分布容積(Vz/Fss)は11300Lであった。
t1/2:終末相での半減期(105hr)
本薬の薬物動態的な特徴を表すと考えられるAUCの累積係数から算出した半減期は12.2時間であった。

リナグリプチンの半減期は105時間と非常に長くなっている。これは組織移行性の大きさ、つまり分布容積が非常に大きいことによるものである(t1/2=0.693×Vd/CL)。ただし、この半減期は終末相のものである。(実践薬学2017,p.383)

もっとも、この長い終末相の半減期によって、効果が持続する可能性を示すデータがある。

胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤:トラゼンタ(リナグリプチン)。(実践薬学2017,p.167)

テネリア(一般名:テネリグリプチン)

1回20mg/1日1回投与(増量可)、肝消失2/3,腎排泄1/3(尿中未変化体排泄率21.0~22.1%) 、用量調節不要。

スイニー(一般名:アナグリプチン)

1回100mg/1日2回(増量可)、主に腎排泄(尿中未変化体排泄率49.9%)、重度・末期は1日1回投与。

腎機能低下時の用法・用量(アナグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

アナグリプチンの用法・用量を考える

70歳女性、体重43kg、血清クレアチニン1.0mg/dL
糖尿病と診断され、アナグリプチンが追加投与された。

ビソプロロールフマル酸塩5mg、1回1錠、1日1回朝食後、14日分
ベザフィブラート徐放錠100mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分
アナグリプチン錠100mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分

(どんぐり2019,pp.129,254)

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-70)/(72×(1.0+0.2))}×43×0.85
=(70/86.4)×43×0.85
=29.6mg/dL

重度腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全の患者:用量調節すること。排泄の遅延により本剤の血中濃度が上昇する。
重度腎機能障害患者/末期腎不全患者:クレアチニンクリアランス(mL/分)Ccr<30、投与量100mg、1日1回。
(スイニー添付文書)

重度腎機能障害のある患者(Ccr<30)に該当するので、投与量は1日1回(100mg)が適当である。

尿中未変化体排泄率(fu)

fu=尿中未変化体排泄量/(投与量×バイオアベイラビリティ)

健康成人男性 6 例にアナグリプチン 100mg を空腹時単回経口投与したとき、投与 72 時間後までのアナグリプチンの尿中排泄率は 49.87±8.39%(平均値±標準偏差)であった。
健康成人男性 6 例に[14C]アナグリプチン 100mg を空腹時単回経口投与したとき、総放射能の尿中排泄率からアナグリプチンの吸収率は少なくとも 73.2%と見積もられた。
(スイニー・インタビューフォーム)

尿中未変化体排泄率49.9%は経口投与時のデータであり、バイオアベイラビリティで補正をする必要がある。
つまり、「体内に吸収された薬物量(投与量×バイオアベイラビリティ)」と「尿中に未変化のまま排泄された薬物量(尿中未変化体排泄量)」の比を求める。

尿中未変化体排泄率(fu)=200×0.499/200×0.73(1日投与量200mgとして)
=0.6835⇒約68.4%(腎排泄型)

注)(どんぐり2019,p.129,254)では、なぜだか、動物試験データ(ラット、イヌ、サル)から、バイオアベイラビリティ:60%(50.2%~77.7%の幅の平均値として)を採用している。

Giusti-Hayton法より、補正係数(G)を求める。

補正係数(G)=1-尿中未変化体排泄率(fu)×(1-対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr)
=1-0.684×(1-29.6/100)
=0.5185

腎機能低下患者の投与量=常用量×補正係数(G)
=200×0.52⇒104mg/日

以上から、Cockcroft&Gaultの式(→添付文書)やGiusti-Hayton法共に、
アナグリプチンの投与量は、1日100mgが適当であることを示している。

なお、併用薬のビソプロロール、ベザフィブラート共に糖尿病用薬との併用注意(併用に注意すること)となっている。

結論)疑義照会をする。
薬理作用の過剰発現による重大な副作用である低血糖症状を避けるため減量する。

オングリザ(一般名:サキサグリプチン)

1回5mg/1日1回投与、肝腎(尿中未変化体排泄率15.8%、活性代謝物22.2%)、中等度以上は1回2.5mg投与。

腎機能低下時の用法・用量(サキサグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ザファテック(一般名:トレラグリプチン)

1回100mg/週1回投与、主に腎排泄(尿中未変化体排泄率76%)、CCrなどに応じて用量調節。

ネシーナ+フッ素(F)⇒半減期延長
世界初、週1回投与の経口血糖降下薬である
ザファテックの禁忌から高度の腎機能障害や透析の患者が削除(2019年9月)

「週1回の薬で、かえって飲み忘れが増えることもある」。(児島2017,p.53)

本剤の服用を忘れた場合:(ザファテック・インタビューフォーム)
「気づいた時点で決められた用量を服用し、その後はあらかじめ定められた曜日に服用する。次の予定日以降に気づいた場合は、気づいたときに1錠のみ、以降は予定通り服用するように指導すること。絶対に2錠まとめて服用しないこと」。

腎機能低下時の用法・用量(トレラグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    100mgを1週間に1回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    50mgを1週間に1回
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌 (主に腎臓で排泄されるため、排泄の遅延により本剤の血中濃度が上昇するおそれがある)

マリゼブ(一般名:オマリグリプチン)

1回25mg/週1回投与、主に腎排泄(尿中未変化体排泄率74%)、重度・末期は1回12.5mg投与。

週1回投与の経口血糖降下薬である。
マリゼブは、「腎臓でいったんろ過された後、大部分が再吸収され、血液中に戻る」。薬が長く体内を循環するため、効き目が1週間続く。(児島2017,p.52)

腎機能低下時の用法・用量(オマリグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    25mgを1週間に1回
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    eGFR60~80mL/min/1.73m2の軽度腎機能低下患者に比しAUCが1.42倍に上昇するため慎重投与。ただし軽度腎機能低下例では腎機能正常者の0.94倍になることも考慮し、慎重に判断されたい。
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    eGFR60~80mL/min/1.73m2の軽度腎機能低下患者に比しAUCが1.66倍に上昇し、透析患者では2.1倍に上昇するため透析患者では12.5 mgを1週間に1回。ただし、軽度腎機能低下例では腎機能正常者の0.94倍になることも考慮し、慎重に判断されたい。

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)