DPP-4阻害薬(インクレチン関連薬)インスリン分泌促進

2020年3月25日

DPP-4阻害薬は、食後のインスリン分泌を促進する

【参考資料】糖尿病診療ガイドライン2019/一般社団法人日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

糖尿病診療ガイドライン2019は、DPP-4阻害薬の特徴について、次のようにまとめている。

「血糖値に依存して食後のインスリン分泌を促進させると同時にグルカゴン分泌を抑制する。その結果、主に食後の高血糖を改善させる」。p.75

参考)グルカゴンの主な作用は、肝においてグリコーゲン分解と糖新生によるブドウ糖の産生・放出を促進し、血糖を上昇させることである。「糖尿病治療におけるグルカゴン分泌制御の重要性」(日本大学医学部)https://www.med.nihon-u.ac.jp/department/dmet/research/subject_dpp-4.html

インスリンの分泌機構を二段階に分けて考える

インスリン分泌促進作用は、まず惹起経路(SU薬とグリニド薬による)においてインスリンが分泌され、それが次の増幅経路(DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬による)において増幅されるという二段階で考えると分かりやすい。(実践薬学2017,p.381:図19インクレチン関連薬によるインスリン分泌促進作用)

食後のインクレチン分泌とDPP-4阻害薬の働き

インクレチン(消化管ホルモン)GLP-1とGIP

インクレチン(GLP-1)は、「食事の摂取により小腸下部のL細胞から分泌される消化管ホルモンである」。「血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞からの過剰のグルカゴン分泌を抑制する」。(実践薬学2017,p.379-380)

注)インクレチン(GLP-1):グルカゴン様ペプチド-1

食事によって分泌されるインクレチン(GLP-1)は、膵臓からのインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる作用を有している。ただし、インクレチン(GLP-1)は、酵素DPP-4(dipeptidyl deptidase-4)によって速やかに分解されてしまうため、血糖降下作用は長続きしない。

DPP-4阻害薬は、酵素DPP-4の働きを阻害することによって内因性のGLP-1濃度を高め、血糖依存的に血糖降下作用を発揮する。(児島2017,p.51)、(実践薬学2017,p.380)

なお、インクレチン(GIP)は、「食事摂取により小腸上部のK細胞から分泌される」消化管ホルモンである。「血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞では、グルカゴンの分泌を促進する」。p.381

注)インクレチン(GIP):グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド

インクレチン(GLP-1とGIP)によるインスリン分泌増幅作用

「GIP並びにGLP-1が膵β細胞上に発現するGIP受容体、GLP-1受容体に結合すると、アデニル酸シクラーゼが活性化され、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)が上昇する。これが、Epac2(exchange protein directly activated by cAMP)やPKA(protein kinase A)を活性化し、惹起経路によるインスリン分泌の開口放出を増幅させる」。(実践薬学2017,p.380)

SU薬やインスリンとの併用で低血糖のリスクが高まる

DPP-4阻害薬は、「単独投与では低血糖のリスクは極めて少ないが、SU薬やインスリンとの併用の際は、低血糖の発症頻度が増加する可能性があり、併用薬の減量を考慮すべきである」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.75)

DPP-4阻害薬は、「血糖依存性にインスリン分泌を増幅。SU類併用時はSU類の減量を検討する」。(今日の治療薬2020,p.381)

DPP-4阻害薬の発売(2009年12月)直後から、SU薬への上乗せによる重症低血糖が散見されたため、専門医らによるRecommendationが発表された。その後、シタグリプチンでインスリンとの併用療法の効能が追加された(2011年9月16日)ことを受けて、提言はさらに改善されている。(インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会(旧「インクレチンとSU薬の適正使用に関する委員会」)2011年9月29日修正)

副作用として、急性膵炎や水疱性類天疱瘡などに注意する

DPP-4阻害薬は、「大血管症の発症を増加させず、基本的には安全性が高いと考えられる。急性膵炎や水疱性類天疱瘡などの発症に関しては注意が必要である」。(ガイドライン2019,p.75)

【重大な副作用】類天疱瘡(頻度不明)、例えばジャヌビア添付文書(2016年4月21日 薬生安発0421第1号 別紙6)
「水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと」。

【重要な基本的注意】、例えばスイニ―添付文書(2018年3月20日 薬生安発0320第1号 別紙4)
「急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること」。

医薬品各種(DPP-4阻害薬)

「胆汁排泄型のリナグリプチンやテネリグリプチンは薬物動態にさほど影響を受けないため透析を含めて腎機能障害児の用法、用量の変更は必要ない。しかし、その他の薬剤は腎排泄型のため、腎機能に応じて用量調節をする必要がある」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.76)

DPP-4阻害薬は、現在9成分10品目が上市されている。これらは、患者の服薬状況(投与回数)や腎機能・肝機能に応じて使い分けられる。(実践薬学2017,p.383-385、表10日本で使用されているDPP-4阻害薬の一覧)

DPP-4阻害薬は、結合様式(結合ポケット)の違いによってクラス分類がされている。無効例があった場合の変薬候補を考える際などの参考になるであろう。

  • クラス1:シアノピロリジン系が結合する
    ビルダグリプチン(エクア)、サキサグリプチン(オングリザ)
  • クラス2:非ペプチド型が結合する
    アログリプチン(ネシーナ)、リナグリプチン(トラゼンタ)、トレラグリプチン(ザファテック)
  • クラス3:シアノピロリジン系以外のジペプチド型が結合する
    シタグリプチン(グラクティブ、ジャヌビア)、テネリグリプチン(テネリア)、オマリグリプチン(マリゼブ)、アナグリプチン(スイニー)はシアノピロリジン系だが結合様式が異なる

グラクティブ、ジャヌビア(一般名:シタグリプチン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日1回50~100mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1日1回25mg、最大1日1回50mg
  • CCr(15~30mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日1回12.5mg、最大1日1回25mg

エクア(一般名:ビルダグリプチン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日1回25mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1日1回12.5mg
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日1回6.25mg

ネシーナ(一般名:アログリプチン)

トラゼンタ(一般名:リナグリプチン)

適応症:2型糖尿病(以下、トラゼンタ・インタビューフォームより)
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。
未変化体で胆汁中に排泄(尿中未変化体排泄率、0.6%)。
日本人健康成人男性に本剤5mgを12日間反復投与した定常状態における見かけの分布容積(Vz/Fss)は11300Lであった。
t1/2:終末相での半減期(105hr)
本薬の薬物動態的な特徴を表すと考えられるAUCの累積係数から算出した半減期は12.2時間であった。

リナグリプチンの半減期は105時間と非常に長くなっている。これは組織移行性の大きさ、つまり分布容積が非常に大きいことによるものである(t1/2=0.693×Vd/CL)。ただし、この半減期は終末相のものである。(実践薬学2017,p.383)

「半減期が長いから、効果が発現するまでに時間を要するのかというと、そうではない」。「AUCの累積係数から算出した半減期は12.2時間」であり、「1日1回タイプの他のDPP-4阻害薬と変わらない」。(同上、pp.383-384)

もっとも、この長い終末相の半減期によって、効果が持続する可能性を示すデータがある。

胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤(リナグリプチン)トラゼンタ(実践薬学2017,p.167)

テネリア(一般名:テネリグリプチン)

スイニー(一般名:アナグリプチン)

オングリザ(一般名:サキサグリプチン)

ザファテック(一般名:トレラグリプチン)

ネシーナ+フッ素(F)⇒半減期延長
世界初、週1回投与の経口血糖降下薬である
ザファテックの禁忌から高度の腎機能障害や透析の患者が削除(2019年9月)

「週1回の薬で、かえって飲み忘れが増えることもある」。(児島2017,p.53)

本剤の服用を忘れた場合:(ザファテック・インタビューフォーム)
「気づいた時点で決められた用量を服用し、その後はあらかじめ定められた曜日に服用す
る。次の予定日以降に気づいた場合は、気づいたときに1錠のみ、以降は予定通り服用す
るように指導すること。絶対に2錠まとめて服用しないこと」。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    100mgを1週間に1回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    50mgを1週間に1回
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌 (主に腎臓で排泄されるため、排泄の遅延により本剤の血中濃度が上昇するおそれがある)

マリゼブ(一般名:オマリグリプチン)

週1回投与の経口血糖降下薬である。
マリゼブは、「腎臓でいったんろ過された後、大部分が再吸収され、血液中に戻る」。薬が長く体内を循環するため、効き目が1週間続く。(児島2017,p.52)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    25mgを1週間に1回
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    eGFR60~80mL/min/1.73m2の軽度腎機能低下患者に比しAUCが1.42倍に上昇するため慎重投与。ただし軽度腎機能低下例では腎機能正常者の0.94倍になることも考慮し、慎重に判断されたい。
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    eGFR60~80mL/min/1.73m2の軽度腎機能低下患者に比しAUCが1.66倍に上昇し、透析患者では2.1倍に上昇するため透析患者では12.5 mgを1週間に1回。ただし、軽度腎機能低下例では腎機能正常者の0.94倍になることも考慮し、慎重に判断されたい。

エクメット配合錠(一般名:ビルダグリプチン/メトホルミン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回1錠を1日2回朝夕
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    禁忌(中等度以上の腎機能障害では腎臓におけるメトホルミンのの排泄が減少する)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(透析患者(腹膜透析を含む)ではメトホルミンの高い血中濃度が持続するおそれがある)

イニシンク配合錠(一般名:アログリプチン/メトホルミン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回1錠を食直前又は食後
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌

1日1回1錠を食直前又は食後

メトアナ配合錠(一般名:アナグリプチン/メトホルミン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回1錠を1日2回朝夕
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌

カナリア(一般名:テネリグリプチン/カナグリフロジン)

メタクト配合錠(一般名:ピオグリタゾン/メトホルミン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回1錠、朝食後
    女性の場合は、ピオグリタゾンとして1日1回15mgから投与を開始することが望ましい
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌(腎機能障害(軽度障害も含む)では、腎臓におけるメトホルミンの排泄が低下する)

リオベル配合錠(一般名:ピオグリタゾン/アログリプチン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回1錠を朝食前又は朝食後
    女性・高齢者の場合は、これまでのピオグリタゾンの投与量を考慮のうえ、ピオグリタゾンとして1日1回15mgからの投与開始を検討する
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌(腎機能障害(軽度障害も含む)では、腎臓におけるメトホルミンの排泄が低下する)

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)