多価不飽和脂肪酸:EPA製剤(中性脂肪TG低下作用)

2020年8月8日

多価不飽和脂肪酸(EPA製剤)

脂質とは、加水分解して脂肪酸を生成するものをいう

「人間の身体になくてはならない栄養素のうち、エネルギー(カロリー)源となる「たんぱく質・脂質・炭水化物」を『エネルギー産生栄養素』と呼んでいます。以前は、三大栄養素とも言われていました」。(e-ヘルスネット/厚生労働省、最終更新日:2019年6月12日)

糖質(炭水化物)やタンパク質が化学構造によって定義されているのに対して、脂質は物性によって定義されている。(以下「」内引用:菊川清見,オレオサイエンス 第1巻 第1号(2001) pp.75-82)

すなわち、脂質とは「水に溶けず、エーテル、ヘキサン、クロロホルムなどのいわゆる脂溶性溶剤に溶けるもの」と定義されている。

「脂質を上述のように定義すると、化学構造的に異なる多くの成分が含まれることになり、実際の取扱において、大変複雑になってくる。そこで、一般的には、狭義の定義によって、脂質は加水分解して脂肪酸を生成するものとして取り扱うことが多い」。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂質の定義(上記の狭義)によれば、脂質には必ず脂肪酸が含まれていることになる。

脂肪酸には、分子中に二重結合を含まない飽和脂肪酸と二重結合を含む不飽和脂肪酸がある。

不飽和脂肪酸には二重結合の位置によって、ω3-系脂肪酸(脂肪酸のメチル末端から3番目の結合の意味)やω6-系脂肪酸(同じく6番目)があり、それぞれn3-系あるいはn-6系とも呼ばれている。
なお二重結合の数は、一つ(一価不飽和脂肪酸)の場合もあるが、二つ以上(多価不飽和脂肪酸)の場合が多い。

これらの脂肪酸は、各食品にそれぞれ異なった割合で含まれており、それぞれ体の中での働きも異なっている。
中には必須脂肪酸(人間の体内では合成できない)も含まれているので、それぞれの脂肪酸を過不足なく、バランスよく摂取することが大切である。

なお、「総合医療」情報発信サイト(厚生労働省)では、オメガ3脂肪酸のサプリメントに関して、次のような翻訳を紹介している。

「普段の食事に海産物を取り入れることは健康によいです。ただし、オメガ3脂肪酸サプリメントが効果的かどうかは不明です」(米国:オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと)。

TG:トリグリセライド(中性脂肪)

TG(トリグリセライド:中性脂肪)は、生体内で重要な脂肪(脂質)の一つであり、グリセロール(グリセリン)に脂肪酸が三つ結合した形をしている。

中性脂肪は「体内にエネルギーを貯蔵する」という大切な役割を担っており、主たるエネルギー源であるブドウ糖の不足を補う形で利用される。
しかし、エネルギー源として使われなかった(余分の)中性脂肪は、肝臓や脂肪組織、皮下、血中に蓄えられることになる。

血液中の中性脂肪の値が150mg/dl以上になると「高トリグリセライド血症」とされ、メタボリックシンドロームの診断基準にも盛りこまれている。
(e-ヘルスネット(厚生労働省)のメタボリックシンドローム診断基準では、“高トリグリセリド血症”)

多価不飽和脂肪酸(EPA、EPA+DHA)は食直後に服用

多価不飽和脂肪酸は、「肝でのVLDL合成を抑制し、また異化系を促進し、TGを低下させる」。(今日の治療薬,p.395)

「本剤は空腹時に投与すると吸収が悪くなるので食直後に服用させること」。(エパデール添付文書)

ごちそうさまのタイミング、つまり食直後(食事が終わってから10分以内)に服用する。
ロトリガの場合も同様である。

「絶食下において血漿中EPA濃度の上昇が認められなかったのは、EPAの腸からリンパ中への移行には、胆汁酸の分泌や食物からの成分が担体として必要であるためと考えられた」。(エパデール・インタビューフォーム)

高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(脂質異常症治療薬)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」
(以下、引用)

生活習慣の指導に重点を置きつつ薬物治療を考慮する必要がある。
(脂質異常症治療薬)、ただしEPA製剤については、特に言及されていない。

  • スタチン(ロスバスタチン[クレストール]、アトルバスタチン [リピトール]、ピタバスタチン[リバロ]など)投与により、65歳以上74歳以下の前期高齢者において心血管イベントの一次予防、二次予防の両者共に有意な低下を認めたため、特に高LDL血症に対してはスタチンが第一選択薬として推奨される。
  • 75歳以上の後期高齢者では、スタチンによる心血管イベントの二次予防の有意な低下が認められている一方、一次予防の有効性は証明されておらず、一次予防目的の使用は推奨されない。
  • スタチン以外の薬剤については十分なエビデンスがないため、慎重な投与を要する。
  • スタチンの使用においては、高齢者においても筋肉痛や消化器症状、 糖尿病の新規発症が多いとされており、これらに対する注意が必要である。
  • スタチンとフィブラート系薬剤(フェノフィブラート[リピディル、トライコア]、ベザフィブラート[ベザトール]、クリノフィブラート[リポクリン]、クロフィブラート)の併用は横紋筋融解症の発症リスクがあり、腎機能低下例には原則併用禁忌である。
  • シンバスタチン[リポバス]、アトルバスタチンは主にCYP3A、フルバスタチン[ローコール]は主にCYP2C9で代謝されるため、これらのCYP阻害薬との併用によりスタチンの血中濃度が増加する可能性があり、その有害作用に注意を要する。
  • 肝取り込みトランスポーターであるOATPを阻害するシクロスポリン[ネオーラル]はスタチンの血中濃度を増加させる。
    特にロスバスタチン、ピタバスタチンはシクロスポリンとの併用は禁忌である。

EPA製剤各種

エパデール(一般名:イコサペント酸)

効能・効果:
閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善
高脂血症

日本で開発された純粋のEPA製剤(イコサペント酸)である。

日本人を対象とした臨床試験で、心筋梗塞などの冠動脈疾患を防ぐ効果が示されている。
EPA含有量が多いイワシ油を精製することによって、多種類の不飽和脂肪酸の中から純度の高いEPAを得ている。

中性脂肪を下げる効果はロトリガと同等であり、両者の間に差は無い。

ロトリガ(一般名:ω-3脂肪酸)

効能・効果:
高脂血症

ノルウェーで開発されたEPA(イコサペント酸)+DHA(ドコサヘキサエン酸)を主成分とするω-3脂肪酸製剤である。「海外の大規模臨床試験では、CAD予防効果が示されている」。(今日の治療薬2019,p.395)

通常1日1回で服用する。
エパデールは1日2~3回服用する必要がある。
ロトリガの方が、食直後の慌ただしさを避けることができるかもしれない。

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)