去痰薬(ムコダイン、ムコソルバンなど)

2020年11月7日

医薬品各種(去痰薬)

ムコダイン(一般名:L-カルボシステイン)

気道粘液修復薬:
「気道粘液調整作用、粘膜正常化作用」。(今日の治療薬,p.753)

ムコダインは、痰や鼻水のねばつき、つまり〈粘度〉を減らす薬物(気道粘液調整薬)である

喉や鼻の粘膜は常に粘液を出しており、細菌やウイルスなどの外敵を捕らえて体内への侵入を防いでいる。
こうした外敵が通常以上に増えると、生体はシアル酸やフコースといった糖を増やして、さらに高い粘度の粘液を作るようになる。

しかしながら、あまりにも粘度が高くなり過ぎると、痰や鼻水が絡み付いて体外に排出できなくなる。

ムコダインは、シアル酸とフコースの割合を適度に整えることによって、異常にねばついた痰や鼻水のねばつき(粘度)を減らし、サラサラにして体外に出しやすくする作用を有する。

(以上、児島2017,p.176より引用・要約)

「ムコダインは粘液の調整作用及び粘膜の正常化作用により喀痰、鼻汁、中耳貯留液の排泄を促進する薬剤である。また、滲出性中耳炎の排液については国内で初めて適応(小児のみ)を有した経口剤である」。(ムコダイン・インタビューフォーム)

【効能・効果】(ムコダイン添付文書より)
〇下記疾患の去痰
上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核
〇慢性副鼻腔炎の排膿

ムコソルバン(一般名:アンブロキソール)

気道潤滑薬:
「肺サーファクタントや気道液の分泌促進作用、繊毛運動亢進作用」。(今日の治療薬,p.754)

ムコソルバンは、気道の〈粘膜〉を整えて痰を出しやすくする薬物(気道潤滑薬)である

肺胞からは、肺サーファクタント、つまり肺胞の表面を覆う活性物質(界面活性剤の一種)が分泌されている。
肺サーファクタントは、肺胞表面の表面張力を弱めることで肺胞を膨らんだり縮んだりしやすくして、呼吸による二酸化炭素と酸素の交換(ガス交換)の手助けをする。

ムコソルバンは、肺サーファクタント(肺表面活性物質)を増やすことによって気道の滑りをよくし、痰を出しやすくする作用を有する。

なお、肺サーファクタントは、気道粘膜の潤滑油の役目も果たしており、繊毛運動にも影響を及ぼしている。

「(ムコソルバンは)気管・気管支領域においてサーファクタント(肺表面活性物質)分泌促進作用、気道液分泌促進作用及び線毛運動亢進作用により気道壁を潤滑にして喀痰喀出を促進することが確認されている。また、副鼻腔領域においては、組織学的あるいは粘液・線毛輸送系が重要な役割を演じている点で気管・気管支領域と共通していることから、慢性副鼻腔炎の排膿にも有効であることが確認されている」。(ムコソルバン・インタビューフォーム)

【効能・効果】(ムコソルバン添付文書より)
1.下記疾患の去痰
急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、手術後の喀痰喀出困難
2.慢性副鼻腔炎の排膿

ビソルボン(一般名:ブロムヘキシル)

気道粘液溶解薬(多糖類分解):
「気道分泌液増加作用、痰の繊維網細断化作用」。(今日の治療薬,p.753)

ムコソルバン研究の基になった薬物。

スペリア(一般名:フドステイン)

気道分泌細胞正常化薬:
「粘液修復作用、漿液性気道分泌亢進作用、抗炎症作用の他に、胚細胞過形成抑制作用」。(今日の治療薬,p.754)

セネガ(一般名:セネガ)

刺激性去痰薬(サポニン系製剤):
「エタノール含有。併用には注意」。(今日の治療薬,p.752)

セネガは北アメリカ原産でヒメハギ科の多年草。
日本ではヒロハセネガという品種の根を生薬として用いる。
主成分はトリテルペンサポニンであり、サポニンの粘膜刺激作用により気道の分泌を促し、強い去痰効果を示す。

シロップにはアルコールを含む。

サリパラ(一般名:桜皮エキス)

刺激性去痰薬(販売中止・ブロチンシロップ3.3%):
「セネガ参照」。(今日の治療薬,p.752)

「オウヒ(桜皮)はバラ科のヤマザクラ、その他 Prunus属の樹皮を乾燥したもので、古来より鎮咳・咳嗽に用いられてきた。オウヒエキス製剤・サリパラ液は緩和な鎮咳・去痰作用を有する内用液剤で、急性気管支炎、肺炎、肺結核に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難に有効である」。(サリパラ・インタビューフォーム)

エキスにはアルコールを含む。

気管支喘息の咳・痰は要注意

気管支喘息の患者は、炎症で気道が狭くなっている。
そこに粘度の高い痰がからみつくと、気道を完全に閉塞してしまい、窒息死を招くことがある。

咳止め薬「リン酸コデイン」は、市販薬にも含まれており、気管支喘息患者の咳にも使われがちである。
しかしながら、リン酸コデインは、喘息には禁忌である(理由は以下のとおり)。
「気道分泌抑制作用によって、痰など分泌物の粘度が高まってしまい、気道を閉塞させる恐れがある」。

咳が続く場合には、安易にリン酸コデインを投与するのではなく、咳の原因をよく調べてから、適切な薬物を服用する必要がある。

(児島2017,pp.178,186)

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Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)