免疫調節薬(ペンタサ、アサコールなど)

2021年7月22日

免疫調節薬(概要)

炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)
一般的には、原因不明の「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」の2つを指す。
共に比較的若年に発症し、10歳代後半から30歳代前半に好発する。
治療薬は、従来の炎症抑制を主体としたものから、2000年以降、免疫抑制を主体としたものに変化している。

潰瘍性大腸炎(UC:ulcerative colitis):
大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性疾患である。
病変は直腸から連続的に、そして上行性に広がる(最大で直腸から結腸全体まで)。
持続性または反復性の血性下痢で、腹痛や頻回の便意を伴う。
クローン病(CD:crohn’s disease):
病変は口腔から肛門まで消化管のどの部位にも生じる可能性がある。

5-ASA製剤が、軽症~中等症の潰瘍性大腸炎に対する寛解導入、寛解維持の第一選択薬として用いられる。

「(潰瘍性大腸炎(UC)では)重症度と罹患範囲に応じて薬剤を選択する。軽症~中等症の活動期潰瘍性大腸炎の寛解導入では5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤(SASP、メサラジン)を用いる」。(今日の治療薬2020,p.318)

メサラジンは、内服することによって、通常は小腸で吸収されてしまう。
これを、大腸まで届けるため、各薬剤で製剤的特徴を凝らしている。
このドラッグ・デリバリー・システム(Drug Delivery System:DDS)の違いによって、適応症に差が出てくる。

潰瘍性大腸炎は、ペンタサやアサコールの服用で9割近くが寛解を維持できる。
ただし、飲み忘れなどがあると、その効果は4割程度にまで落ち込んでしまう。

免疫調節薬では、炎症性腸疾患のほかに、関節リウマチや乾癬などが治療対象となる。

医薬品各種(免疫調節薬)

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs:Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs)

ペンタサ(一般名:メサラジン、5-ASA)

免疫調節薬:
「5-ASAをエチルセルロースでコーティング。小腸から大腸にかけて徐々に5-ASAを放出」。(今日の治療薬2020,p.325)

有効成分のメサラジンを、エチルセルロースでコーティングした放出調整製剤である。
つまり、コーティングの小さな穴から薬が徐々に放出されていく仕組みになっている。

小腸から回腸・大腸にかけて広い範囲で作用する。
小腸に病変のあるクローン病にも効果がある。

【共通】潰瘍性大腸炎(重症を除く)
【内服のみ】クローン病
通常、成人にはメサラジンとして1日1,500mgを3回に分けて食後経口投与する。

かんだり砕いたりしないこと(ペンタサは、2分割までは可)。

ペンタサ:顆粒(94%、250mg/包、500mg/包、1,000mg/包、2,000mg/包)
ペンタサ:錠(250mg、500mg)
ペンタサ:注腸液(1g/100mL)
ペンタサ:坐剤(1g)

アサコール(一般名:メサラジン、5-ASA)

免疫調節薬:
「pH依存性(pH7.0以上でコーディングが崩壊)に大腸で5-ASAを放出」。(今日の治療薬2020,p.326)

有効成分のメサラジンを、pH7.0以上で崩壊する皮膜で包んでいる。
つまり、pH酸性に傾いている胃内では崩壊せず、pH7以上になる回腸・大腸に達してはじめて崩壊する仕組みになっている。

大腸に高濃度のメサラジンを届けることができる。
かまずに服用、粉砕も不可。

○潰瘍性大腸炎(重症を除く)
通常,成人にはメサラジンとして1日2,400mgを3回に分けて食後経口投与する。

アサコール:錠(400mg)

リアルダ(一般名:メサラジン、5-ASA)

免疫調節薬:
「pH依存性コーティング及び親水性・親油性基剤によって5-ASAを大腸で徐々に放出」。(今日の治療薬2020,p.326)

アサコールに準ずる。
高用量製剤となっており、1日1回の服用で済む。

○潰瘍性大腸炎(重症を除く)
通常、成人にはメサラジンとして1日1回2,400mgを食後経口投与する。

リアルダ:錠(1,200mg)

サラゾピリン(一般名:サラゾスルファピリジン、SASP)

免疫調節薬:
「大腸で腸内細菌によってアゾ結合が切断されて5-ASAを放出。副作用に注意」。(今日の治療薬2020,p.325)

潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、非特異性大腸炎
通常1日4~8錠(2~4g)を4~6回に分服する。

サラゾピリン:錠(500mg)
サラゾピリン:坐剤(500mg)

アザルフィジンEN(一般名:サラゾスルファピリジン、SASP)

免疫調節薬(DMARDs):
「わが国の承認用量は海外の半量。ガイドラインで強い推奨」。(今日の治療薬2020,p.324)

○関節リウマチ
本剤は、消炎鎮痛剤などで十分な効果が得られない場合に使用すること。
通常、サラゾスルファピリジンとして成人1日投与量1gを朝食及び夕食後の2回に分割経口投与する。

アザルフィジンEN:腸溶錠(250mg、500mg)

腸溶錠であるため、原則として噛まずに服用すること。

ケアラム(一般名:イグラチモド)

免疫調整薬:
「25mgより漸増することにより肝障害軽減」。(今日の治療薬2021,p.330)

○関節リウマチ

ケアラム:錠(25mg)

リマチル(一般名:ブシラミン)

免疫調節薬(DMARDs):
「わが国発のペニシラミンと同様SH基製剤。安全性から200mg/日以下の投与が推奨」。(今日の治療薬2020,p.324)

○関節リウマチ
本剤は消炎鎮痛剤などで十分な効果が得られない場合に使用すること。
通常成人、1回ブシラミンとして100mgを1日3回(300mg)食後に経口投与する。

リマチル:錠(50mg、100mg)

腎機能低下時の用法・用量(ブシラミン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日300mgを分3、食後、最大1日300mg
  • CCr(60mg/dL未満)
    禁忌(ネフローゼ症候群等の重篤な腎障害を起こすおそれがある)
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    腎機能の廃絶した透析患者の用量は1回100mgを週3回HD後

シオゾール(一般名:金チオリンゴ酸ナトリウム)

免疫調整薬(DMARDs):
「水溶性金製剤。ときに寛解例あるが、重篤な副作用多く使用は減少」。(今日の治療薬2020,p.322)

○関節リウマチ

オテズラ(一般名:アプレミラスト)

免疫調整薬(PDE4阻害薬):
「主に炎症性細胞に分布するPDE4を阻害することで、炎症性サイトカインの産生を抑制する」。(今日の治療薬2020,p.327)

○局所療法で効果不十分な尋常性乾癬
○関節症性乾癬
○局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍

腎機能低下時の用法・用量(アプレミラスト)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)