ペニシリン系抗生物質(サワシリンなど)

2020年11月10日

ペニシリン系抗生物質(概要)

βラクタム系抗生物質:
作用機序(細胞壁合成阻害作用を有する)。
(βラクタム系、グリコペプチド系、ホスホマイシン系が同様の作用を有する)
細胞壁のない「マイコプラズマ属」には効果がない。

PK/PD理論(時間依存性、time above MIC):
βラクタム系(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など)の抗菌薬は、時間依存性に抗菌力を発揮する。
できるだけ長い時間、一定濃度(最小発育阻止濃度:MIC)以上の薬物血中濃度を保つ方が効果的である。
1日量を複数回に分けて服用する。
参考)濃度依存性→ニューキノロン系、アミノグリコシド系など。

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

医薬品各種(ペニシリン系抗生物質)

サワシリン(一般名:アモキシシリン)

広範囲ペニシリン系薬:
「ABPC類似薬。腸管吸収良好、ABPCの抗菌活性を改善」。(今日の治療薬2020,p.37)

参考:
AMPC(アモキシシリン・サワシリン)
ABPC(アミノベンジルペニシリン・アンピシリン・ビクシリン)

抗菌スペクトル:
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、大腸菌、プロテウス・ミラビリス、インフルエンザ菌、ヘリコバクター・ピロリ、梅毒トレポネーマ
効果がない菌:百日咳菌、マイコプラズマ属、レジオネラ属など

  • 中耳炎や副鼻腔炎(主な起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ菌)⇒βラクタム系
  • 呼吸器感染症(百日咳、マイコプラズマ属が起炎菌の場合)⇒マクロライド系
    百日咳(菌)は、エリスロマイシンでは適応(菌)となっている。
    クラリスロマイシンでは適応となっていない。
  • 肺炎(レジオネラやクレブシエラ属が起炎菌の場合)⇒ニューキノロン系
    (児島2017,p.188)あくまでも参考

「アモキシシリン服用後、発熱、発疹、水ぶくれの症状が出た」:

重大な副作用の中の「中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN )、皮膚粘膜眼症候群(Stevens‐Johnson症候群)、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症(剥脱性皮膚炎)」が考えられる。(どんぐり2019,p.28)

ヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎

下記3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。

  • アモキシシリン水和物(抗菌薬)、1回750mg(力価)。
  • クラリスロマイシン(抗菌薬)、1回200mg(力価)、ただし、1回400mgまで増量可。
  • プロトンポンプインヒビター(PPI、酸分泌抑制薬)、PPIも1日2回投与。

2次除菌(1次除菌治療が不成功の場合):

クラリスロマイシンに替えて、メトロニダゾール1回250mgを投与する。
同じく、3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。

オーグメンチン(一般名:アモキシシリン/クラブラン酸)

βラクタマーゼ阻害薬配合剤:
「クラブラン酸のβラクタマーゼ阻害作用により、ペニシリン分解酵素産生菌にも有効」。(今日の治療薬2020,p.39)

オーグメンチンは、アモキシシリン(ペニシリン系抗生物質:サワシリンの有効成分)と、クラブラン酸(βラクタマーゼ阻害薬)を「2:1」で配合した抗菌薬である。
この配合比率のとき、最も抗菌力が強くなる。

クラブラン酸(βラクタマーゼ阻害薬)は、細菌が産生する酵素「βラクタマーゼ」を阻害する作用を有する。
アモキシシリンにクラブラン酸を加えることによって、アモキシシリンが細菌によって分解されることを防ぐことができる。
その結果、アモキシシリンだけでは十分に抗菌力を発揮することのできない耐性菌(βラクタマーゼ産生株)に対しても、効果を発揮することができるようになる。

サワシリンとオーグメンチンの併用はあり得るか

(児島2017,p.193)

オーグメンチンの通常用量は、成人の場合、アモキシシリン1,000mg相当量となっている。
しかしながら、市中肺炎などにおいて、それ以上の高用量アモキシシリン投与が推奨されている場合がある。

添付文書の但し書き(なお、年齢、症状により適宜増減する)に従って、オーグメンチンを増量することは可能と考えられるが、クラブラン酸の量が増えると、副作用のリスクが高まることになる。

そこで、アモキシシリンの高用量投与が必要となった場合、オーグメンチンに加えてアモキシシリンのみを追加投与することがある。

下記ガイドライン参照:
成人肺炎診療ガイドライン2017
JAID/JSC感染症治療ガイドライン2017

クラバモックス(一般名:アモキシシリン/クラブラン酸)

βラクタマーゼ阻害薬配合剤:
「アモキシシリンの割合が高く、抗菌活性の増強がみられる。高用量のアモキシシリン投与が可能。クラブラン酸によりペニシリン分解酵素の活性を阻害」。(今日の治療薬2020,p.40)

小児用製剤(ドライシロップ)である。
アモキシシリン(ペニシリン系抗生物質:サワシリンの有効成分)と、クラブラン酸(βラクタマーゼ阻害薬)を「14:1」で配合した抗菌薬である。

小児感染症の主な起炎菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌などに対して、配合比14:1としても、オーグメンチン(配合比2:1)と抗菌力に差がないことが確かめられている。
結果的に、クラブラン酸の副作用を低く抑えることができている。

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
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2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)