頻尿・過活動膀胱治療薬など(ウリトスなど)

2020年11月17日

頻尿・過活動膀胱治療薬など(概要)

ムスカリン性コリン受容体拮抗薬が多い。
口渇、便秘のほか、中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などがある。
抗コリン薬以外には、ミラベグロン、ビベグロン、フラボキサートがある。
薬物代謝酵素CYP2D6の基質(トルテロジン)、阻害薬(ミラベグロン)がある。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【過活動膀胱治療薬】

  • オキシブチニン[ポラキス]、 プロピベリン[バップフォー]、 ソリフェナシン[ベシケア]など

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【過活動膀胱
治療薬】

上記の表1.抗コリン作用に基づく注意と同じである。

  • オキシブチニン(経口)[ポラキス]
  • 尿閉、認知機能低下、せん妄のリスクあり。
    口腔乾燥、便秘の頻度が高い。
  • 可能な限り使用しない。
    代替薬として:他のムスカリン受容体拮抗薬
  • ムスカリン受容体拮抗薬:
    (ソリフェナシン[ベシケア]、トルテロジン[デトルシトール]、フェソテロジン[トビエース]、イミダフェナシン[ ウリトス、ステーブ ラ]、プロピベリン[バップフォー]、オキシブチニン経皮吸収型[ネオキシテープ])
  • 口腔乾燥、便秘、排尿症状の悪化、尿閉
  • 低用量から使用。
    前立腺肥大症の場合はα1受容体遮断薬との併用。
    必要時、緩下剤を併用する。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

医薬品各種(頻尿・過活動膀胱治療薬)

消失半減期は、イミダフェナシン(2.9時間)、ソリフェナシン(40時間)である。
つまり、同系統の薬物でありながら、効果(あるいは副作用)発現時期は異なる可能性が高い。

ウリトス、ステーブラ(一般名:イミダフェナシン)

「ムスカリンM1,M3に対して拮抗作用。膀胱選択性が高い」。(今日の治療薬2020,p.1039)

「通常、成人にはイミダフェナシンとして1回0.1mgを1日2回、朝食後及び夕食後に経口投与する。効果不十分な場合は、イミダフェナシンとして1回0.2mg、1日0.4mgまで増量できる」。(ウリトス添付文書)

「健康成人男性5例にイミダフェナシン0.25mgを1日2回5日間反復投与した時、初回投与後と最終回投与後の血漿中濃度推移はほぼ同様であった。また、薬物動態パラメータにも変動は認められず、反復投与による蓄積性は認められなかった」。(同上)

Ritschel理論からも、投与間隔12時間/消失半減期2.9時間=4.14>4.0となり、定常状態にはならない薬物と考えられる。
したがって、もし口渇などの副作用が出るとすれば、初回投与時から出現する可能性がある。p.53

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))
リスト記載無し⇒ただし、添付文書には以下の関連事項有り。

「重度の腎障害のある患者については、1回0.1mgを1日2回投与とする」。(ウリトス添付文書)
⇒つまり、重度の腎障害があっても使用可(通常用量)だが、増量の余地は無い。

ベシケア(一般名:ソリフェナシン)

「ムスカリンM3選択性があるムスカリン受容体拮抗薬」。(今日の治療薬2020,p.1039)

抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。

「通常、成人にはコハク酸ソリフェナシンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10mgまでとする」。(ベシケア添付文書)

「健康高齢・非高齢男女に本剤10mgを1日1回28日間反復経口投与したときの血漿中濃度は、非高齢者では投与後1~2週間で、高齢者では投与後2~3週間で定常状態に達した。また、反復投与により血漿中濃度は単回投与時に比べ2~4倍に上昇した」。(同上)

消失半減期約40時間であり、1日1回投与では定常状態に達する。
そして、高齢者の半減期は若年者よりも長くなっており、そのため定常状態に達する時間も若年者よりは長くなっている。
したがって、口渇などの副作用や頻尿の改善傾向は、最初の1週間程度ではよく分からない可能性もある。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))
リスト記載無し⇒添付文書には下記の記載有り。

「重度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満):血中濃度が上昇するおそれがある」。(ベシケア添付文書)

ベタニス(一般名:ミラベグロン)

選択的β3アドレナリン受容体作動薬:

「膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する」。(ベタニス添付文書)

腎機能低下時の用法・用量(ミラベグロン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ミラベグロンは、CYP2D6阻害薬(中程度)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

Ic群抗不整脈薬(フレカイニド、プロパフェノン)とは併用禁忌である。その理由は次のとおりである。

「ともに催不整脈作用があり、また本剤のCYP2D6阻害作用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある」。(ベタニス添付文書より)

フレカイニドとプロパフェノンには、催不整脈作用が有る。
また、ミラベグロンは「弱いながら心拍数を増加させる程度のβ1、β2刺激作用があり、潜在性QT延長症候群を顕在化させる可能性も否定できない」。(ベタニス審査報告書より、実践薬学2017,p.216)。

フレカイニドとプロパフェノンは、共にCYP2D6の基質薬である。
そして、ミラベグロンは中程度のCYP2D6阻害作用を有している。

上記を踏まえた上で、抗不整脈薬としてフレカイニドやプロパフェノンに変わり得る薬物がほかにあることから、あえてミラベグロンとそれら薬物を併用するまでもないと判断された。
そこで、ミラベグロンのCYP2D6阻害作用は中程度ではあるが、併用禁忌(併用しないこと)となっている。

頻尿・過活動膀胱治療薬の抗コリン作用による口渇を避けるために、作用の異なるミラベグロン(抗コリン作用無し)に変薬するケースがあるかもしれない。
しかしその場合には、併用薬(CYP2D6の基質薬)に留意すること。
例えば、ミラベグロンとノルバデックス錠(タモキシフェン、CYP2D6の基質薬)を併用すると、ノルバデックスの代謝が阻害される可能性がある。(実践薬学,pp.139-142)

ベオーバ(一般名:ビベグロン)

ブラダロン(一般名:フラボキサート)

バップフォー(一般名:塩酸プロピベリン)

抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。

ネオキシ、ポラキス(一般名:オキシブチニン)

抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

トビエース(一般名:フェソテロジン)

腎機能低下時の用法・用量(フェソテロジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

デトルシトール(一般名:トルテロジン)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

トルテロジンは、CYP2D6の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)