抗認知症薬(アリセプト、メマリーなど)

2019年11月20日

抗認知症薬

認知症の中核症状と周辺症状(行動・心理症状)

以下、「」内は「認知症診療ガイドライン2017」から引用

「認知機能障害のうち、最も中核的な症状は記憶障害である(中略)。約束を忘れたり、物の置き場所がわからなくなったり、話したことを忘れて同じ話を繰り返したりする」。p.207

周辺症状のことは、近年は「行動・心理症状(BPSD)」という名称を使うことが一般的になっている。(BPSD:behavioral and psycological symptoms of dementia)

行動・心理症状について、ガイドライン2017では次のように説明している。すなわち、「認知機能障害に加えて、意欲や感情の障害、妄想、幻覚、徘徊、興奮など(中略)を呈することが多い」。p.208

抗認知症薬の作用機序

日本国内では、現在4種類の抗認知症薬が薬価収載されている。適応はアルツハイマー型認知症あるいはレビー小体型認知症である。(アリセプトのみレビー小体型認知症に適応有り)

抗認知症薬の薬効は、認知症の症状が進行することを抑えることである。つまり、抗認知症薬の治療効果とは、「病状が変わらない・悪化しない」(児島2017,p.291)ということを意味している。

いずれの抗認知症薬の添付文書においても、「病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」としている。

コリンエステラーゼ阻害薬(AChE阻害薬)

アリセプト、レミニール、イクセロン(リバスタッチ)

アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症では、脳内コリン作動性神経系の顕著な障害が認められている。本薬は、アセチルコリン(ACh)を分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を可逆的に阻害することにより脳内ACh量を増加させ、脳内コリン作動性神経系を賦活する。(アリセプト添付文書より)

NMDA受容体チャネル阻害薬(NMDA受容体アゴニスト)

メマリー

アルツハイマー型認知症ではグルタミン酸神経系の機能異常が関与しており、グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体チャネルの過剰な活性化が原因の一つと考えられている。メマンチンはNMDA受容体チャネル阻害作用により、その機能異常を抑制する。(メマリー添付文書より)

治療のアルゴリズム

  • 軽度:各薬剤の特徴を考慮して、ChEIのいずれか1剤を選択して投与する。効果がないか不十分、効果減弱、あるいは、副作用で継続できなくなった場合には、他のChEIへの変更を考慮する。
  • 中等度:各薬剤の特徴を考慮して、ChEIの1剤かメマンチンを選択して投与する。効果がないか不十分、効果減弱、あるいは、副作用で継続できなくなった場合には、他のChEIかメマンチンに変更、あるいは、ChEIとメマンチンとの併用がされていない場合には併用を考慮する。
  • 重度:ドネペジル5~10㎎、あるいは、メマンチン、両者の併用を考慮する。いずれの薬剤も効果がなかったり、副作用で継続できなくなった場合には投与中止も考慮するが、薬剤の中断により認知機能低下が急速に進行する例があり、投与中止の判断は慎重に行う。

以上、全て引用「認知症診療ガイドライン2017,p.226-227」より。

医薬品各種

アリセプト(一般名:ドネペジル)

アリセプトの効能・効果、用法・用量

アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制。

*アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制
アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで 4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により適宜減量する。

*レビー小体型認知症における認知症症状の進行抑制
通常、成人にはドネペジル塩酸塩として1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量し、経口投与する。5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する。なお、症状により5mgまで減量できる。

アリセプトの特徴(特長)

  • レビー小体型認知症にも適応がある。
  • 軽度から中等度、そして重度まで一貫して使用可能である。
  • BPSDのうち、不安・抑うつ状態(陰性症状)を和らげる作用がある。
    全般的に少し活発になる。
  • 初期投与量は1日1回3mgから開始する。
  • 適宜〈減量〉の記載がある。

初期投与量の1日1回3mgは有効投与量ではなく、消化器症状など服薬継続不可能な副作用が出ないかどうか確認するための投与量となっている。⇒「3mg/日投与は有効用量ではなく、消化器系副作用の発現を抑える目的なので、原則として1~2週間を超えて使用しないこと」。(アリセプト添付文書より)

消化器系の副作用(頻度は1~3%未満)としては、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢が多い。(軽い吐き気や食欲不振、便が軟らかくなる)

レミニール(一般名:ガランタミン)

軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制。

リバスタッチ、イクセロン(一般名:リバスチグミン)

軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制。

メマリー(一般名:メマンチン)

中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制。
中等度以上で使用可能であり、コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)とも併用できる。

認知症患者の多くは介護を必要とする。その時に、患者が「介護者に対して興奮し、暴言を吐いたり暴力を振るったりすると、介護が非常にむつかしく」なる。メマリーは、BPSDのうち興奮・攻撃性(陽性症状)を和らげる作用があるので、こうした介護の負担を特に減らすことのできる薬物である。(児島2017,p.290)

メマリーは腎排泄型の薬物であり、腎機能の程度に応じて用量を調節する必要がある。高齢者、特に認知症の患者では日中の傾眠傾向が強くなることが多く、抗認知症薬メマリ―の過剰投与で傾眠傾向はさらに強まる。

  • 通常、成人にはメマンチン塩酸塩として1日1回5mgから開始し、1週間に5mgずつ増量し、維持量として1日1回20mgを経口投与する。
  • 1日1回5mgからの漸増投与は、副作用の発現を抑える目的であるので、維持量まで増量すること。
  • 高度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス値:30mL/min未満)のある患者には、患者の状態を観察しながら慎重に投与し、維持量は1回10mgとすること。(メマリー添付文書より)

日本腎臓病薬物療法学会
腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧
https://jsnp.org/docs/JSNP-yakuzai_dosing_32.pdf
ホームページ(トップページから)「eGFR・CCRの計算」参照

抗認知症薬以外の薬物のことなど

認知症に使用する漢方(抑肝散など)

実践薬歴2018,pp.126-130

認知症の中核症状に対して

釣藤散、八味地黄丸など
クラシエ加味温胆湯エキス顆粒(第2類医薬品)

BPSDの陽性症状に対して

抑肝散

以下、「」内は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」から引用。

「BPSDのなかでも易怒、幻覚、妄想、昼夜逆転、興奮、暴言、暴力など、いわゆる陽性症状に有効であり、うつ、不安、悲哀、無動、食欲不振といった陰性症状には無効であるのみならず、症状を増悪させることすらある」。p.146

「高齢者では基本的に1日常用量の2/3程度、分2から開始する」。p.146
「抑肝散の使用に当たっては生薬として含まれる甘草による低K血症に注意が必要である」。p.41
「浮腫、高血圧、不整脈など低K血症による諸症状を呈することがある」。p.140
「開始後1カ月ほどで必ず血中K濃度を測定すること」。p.146

陽性症状で胃腸が弱い場合などは、抑肝散加陳皮半夏が適している。

BPSDの陰性症状に対して

人参養栄湯などが用いられる。

抗コリン作用のある薬物は認知機能を低下させる

認知症患者の脳内ACh量は低下している。

こうした患者に抗コリン作用を有する薬物を投与すると、さらなる認知機能低下を招く恐れがある。また抗コリン作用の大小は、単剤の抗コリン作用の強弱だけではなく、複数の薬物を合わせた総コリン負荷が関与することに注意する必要がある。(実践薬歴2018,pp.118-122,138-142)

抗コリン負荷による認知症・アルツハイマー病の発症リスクp.139
抗コリン作用を有する薬剤p.141
抗コリン作用リスクスケールp.142

参考URL

アリセプトを正しく服薬していただくために
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/pharmacy/03/textbook/ikiiki/textbook.pdf

認知症疾患診療ガイドライン2017(日本神経学会)
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo_2017.html

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(日本老年医学会ほか)
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20170808_01.pdf

AnswersNews 2018/06/07
「医療上の利益が不十分」アルツハイマー型認知症治療薬 フランスで保険適用を外されたワケ
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/14317/

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)