抗ヘルペスウイルス薬(バルトレックスなど)

2020年11月13日

抗ヘルペスウイルス薬(概要)

アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルは、代表的な腎排泄型薬物である。
腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
腎不全で精神神経障害や痙攣を起こす代表的な薬物の一つである。
(アシクロビル脳症)

  • 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
    別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)
    アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩

単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルス

ヘルペスウイルスは数種類存在するが、一般的には、単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の2種類を「ヘルペス」と呼ぶことが多い。

単純ヘルペスウイルス(HSV)には、HSV-1とHSV-2の2種類の型があり、全身の様々な部位でHSV感染症(単純疱疹)を引き起こす可能性がある。
その中で、HSV-1による口唇ヘルペス(口の周りにできるヘルペス)が最も多く、HSV-2による再発型性器ヘルペス(陰部にできるヘルペス)がそれに続く。
いずれのウイルスも、初発感染後は知覚神経節の神経細胞の核内に潜伏しており、体調の悪化など細胞性免疫の低下などをきっかけに再増殖して、再発を繰り返す。

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって、主に小児で水痘、いわゆる水ぼうそうを発症することがあり、9歳以下での発症が90%以上を占めると言われている。

水ぼうそうが治った後も、ウイルス(VZV)は脊髄から出る神経節に潜伏している。
そして後年(多くは50歳以上で)、加齢、疲労やストレスなどによって免疫力が低下すると、再びウイルスが増殖を始めて、いわゆる「胴巻き」といわれる帯状疱疹を引き起こす。

帯状疱疹は、ウイルス(VZV)が神経の流れに沿って神経節から皮膚へと移動し、帯状に痛みや発疹を生じる疾患である。

なお、小児の水痘(水ぼうそう)も成人の帯状疱疹も、原因となるウイルスは同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)である。
ただし、水痘が感染によって広がるのに対して、帯状疱疹は他人から感染するのではなく、自分自身の体内に潜んでいたウイルスが原因となる。
通常は生涯に一度しか発症することはない。

アシクロビル脳症

1)どんぐり2019,p.107

アシクロビル脳症は、アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルにより引き起こされる精神神経症状である。
めまい、頭痛、ろれつがまわらなくなる、あるいは意識障害などの症状が出る。

発生機序は、副次的な薬理作用によるものである。
アシクロビルは蛋白結合率が低く、中枢に移行して蓄積しやすいため起こると考えられている。

なお、当然ながら、バラシクロビルの血中濃度が高くなると、活性代謝物であるアシクロビルの濃度も高くなる。
バラシクロビルは腎排泄型薬物であり、腎機能低下患者、透析患者、そして高齢者などでは、投与量の調節など特に注意が必要である。

2)平田純生,腎薬ニュース第5号(2007年6月;2012年1月加筆修正)

「添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は?」

2007年2月、バルトレックスの添付文書改訂(自主改訂)
「透析患者に当たる末期腎不全であるクレアチニンクリアランス15mL/min未満の患者には1000mgを1日1回だったのが、クレアチニンクリアランス10mL/minの患者には500mgを24時間間隔と実質上減量となりました」。

「アシクロビルの投与量が高くなればなるほど吸収率が低下するため、小腸における吸収は受動拡散ではなく何らかのトランスポーターを介して吸収されるものと考えられます(トランスポーターによる吸収は飽和過程があるからです)」。

医薬品各種(抗ヘルペスウイルス薬)

ゾビラックス(一般名:アシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「単純ヘルペスウイルス、水痘ヘルペスウイルスに対して効果あり」。(今日の治療薬2020,p.98)

アシクロビルは、腎排泄型薬物である

「代謝・排泄
健康成人にアシクロビル200mg及び800mgを単回経口投与した場合、48時間以内にそれぞれ投与量の25.0%及び12.0%が未変化体として尿中に排泄された」。(ゾビラックス錠添付文書)

これは、投与量が増えると「消化管での吸収が飽和して吸収率が低下する」ことを示している。
いずれにしても、投与した薬物の25.0%(200mg投与時)~12.0%(800mg投与時)が尿中に排泄される。

「腎機能障害者における薬物動態(外国人における成績)
腎機能障害のある患者では点滴静注時、アシクロビルの生体内半減期の延長及び全身クリアランスの低下が認められた。
これらの結果から、患者の腎機能に対応する本剤の減量の目安を算出した(「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照)」。(ゾビラックス錠添付文書)

腎機能障害患者では全身クリアランスの低下が認められることから、腎機能に対応する減量の目安が算出されている。

「バイオアベイラビリティ:10~20%(用量増加により低下)」。(ゾビラックス錠インタビューフォーム)

尿中未変化体排泄率
=(尿中回収率25~12%)/(バイオアベイラビリティ10~20%)
=1.0前後⇒腎排泄型薬物である

腎機能低下時の用法・用量(アシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(75%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(25mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回800mgを1日5回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の発症抑制:1回200mgを1日5回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回200mgを1日5回
  • CCr(10~25mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日3回
    2)3)1回200mgを1日5回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日2回
    2)3)1回200mgを1日2回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)1日1回体重に応じて400~800mg。HD患者では毎HD後
    2)3)1回200mgを1日1~2回

アシクロビルは、CYP1A2阻害薬(弱い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

バルトレックス(一般名:バラシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「アシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.99)

バラシクロビルは、アシクロビルのプロドラッグである

「バラシクロビルはアシクロビルのL-バリルエステルであり、経口投与後、主に肝初回通過効果によりアシクロビルに加水分解され、アシクロビルとして抗ウイルス作用を発現する。プロドラッグ化により経口吸収性が改善され、アシクロビル経口製剤より高いAUCが得られる。なお、バラシクロビルの消化管吸収にはペプチドトランスポーター(PEPT1)の関与が示唆されている」。(バルトレックス添付文書)

プロドラッグ化によって経口吸収性が高まり、1日服用回数はゾビラックスよりも少なくて済むようになっている。

バラシクロビルは、腎排泄型薬物である

「6例の健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合、主な排泄経路は尿中であり、24時間以内の尿中に未変化体、アシクロビル及び9-カルボキシメトキシメチルグアニン(既知のアシクロビルの代謝物)がそれぞれ投与量の0.4%、43.1%及び5.0%排泄された」。(バルトレックス添付文書)

「バイオアベイラビリティー(外国人における成績):健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合のアシクロビルの生物学的利用率は54.2%であった」。(同上)

アシクロビル(活性代謝物)の尿中未変化体排泄率(fu)=
投与量2000mg×アシクロビルの尿中排泄率43.1%/投与量2000mg×アシクロビルのバイオアベイラビリティ54.2%
=0.795⇒腎排泄型薬物

腎機能低下時の用法・用量(バラシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(アシクロビルとして85%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回1,000mgを1日3回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制:1回500mgを1日2回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回500mgを1日2回
    4)水痘:1回1,000mgを1日3回
    5)性器ヘルペスの再発抑制:1日1回500mg。HIV感染症患者には1回500mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを12時間毎
    2)3)1回500mgを12時間毎
    5)1回500mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを12時間毎
  • CCr(10~30mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを24時間毎
    2)3)1回500mgを4時間毎
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)4)1回500mgを24時間毎
    2)3)1日1回500mg、保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)体重60kg以上で非高齢者では1回500mgを週3回HD後、それ以外の症例には他剤を選択。
    3)1回250mgを週3回HD後

アラセナ-A(一般名:ビダラビン)

抗ヘルペスウイルス薬:
「ウイルスのDNA依存DNAポリメラーゼを阻害。アシクロビル耐性のウイルスにも有効」。(今日の治療薬2020,p.101)

ファムビル(一般名:ファムシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「ペンシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.100)

腎機能低下時の用法・用量(ファムシクロビル)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2021年1月(令和3)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)