抗ヘルペスウイルス薬(バルトレックスなど)

2020年9月6日

抗ヘルペスウイルス薬(概要)

アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルは、代表的な腎排泄型薬物である。
腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意すること。
腎不全で精神神経障害や痙攣を起こす代表的な薬物の一つである。
(アシクロビル脳症)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

アシクロビル脳症

(どんぐり2019,p.107)

アシクロビル脳症は、アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルにより引き起こされる精神神経症状である。
めまい、頭痛、ろれつがまわらなくなる、あるいは意識障害などの症状が出る。

発生機序は、副次的な薬理作用によるものである。
アシクロビルは蛋白結合率が低く、中枢に移行して蓄積しやすいため起こると考えられている。

なお、当然ながら、バラシクロビルの血中濃度が高くなると、活性代謝物であるアシクロビルの濃度も高くなる。
バラシクロビルは腎排泄型薬物であり、腎機能低下患者、透析患者、そして高齢者などでは、投与量の調節など特に注意が必要である。

(平田純生,腎薬ニュース第5号(2007年6月;2012年1月加筆修正))

「添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は?」

2007年2月、バルトレックスの添付文書改訂(自主改訂)
「透析患者に当たる末期腎不全であるクレアチニンクリアランス15mL/min未満の患者には1000mgを1日1回だったのが、クレアチニンクリアランス10mL/minの患者には500mgを24時間間隔と実質上減量となりました」。

「アシクロビルの投与量が高くなればなるほど吸収率が低下するため、小腸における吸収は受動拡散ではなく何らかのトランスポーターを介して吸収されるものと考えられます(トランスポーターによる吸収は飽和過程があるからです)」。

医薬品各種(抗ヘルペスウイルス薬)

ゾビラックス(一般名:アシクロビル)

「単純ヘルペスウイルス、水痘ヘルペスウイルスに対して効果あり」。(今日の治療薬2020,p.98)

アシクロビルは、腎排泄型薬物である

「代謝・排泄
健康成人にアシクロビル200mg及び800mgを単回経口投与した場合、48時間以内にそれぞれ投与量の25.0%及び12.0%が未変化体として尿中に排泄された」。(ゾビラックス錠添付文書)

投与量が増えると「消化管での吸収が飽和して吸収率が低下する」ことを示している。
いずれにしても、投与した薬物の25.0%(200mg投与時)~12.0%(800mg投与時)が尿中に排泄される。

「腎機能障害者における薬物動態(外国人における成績)
腎機能障害のある患者では点滴静注時、アシクロビルの生体内半減期の延長及び全身クリアランスの低下が認められた。
これらの結果から、患者の腎機能に対応する本剤の減量の目安を算出した(「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照)」。(ゾビラックス錠添付文書)

腎機能障害患者では全身クリアランスの低下が認められることから、腎機能に対応する減量の目安が算出されている。

「バイオアベイラビリティ:10~20%(用量増加により低下)」。(ゾビラックス錠インタビューフォーム)

尿中未変化体排泄率
=(尿中回収率25~12%)/(バイオアベイラビリティ10~20%)
=1.0前後⇒腎排泄型薬物である

腎機能低下時の用法・用量(アシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(75%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(25mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回800mgを1日5回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の発症抑制:1回200mgを1日5回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回200mgを1日5回
  • CCr(10~25mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日3回
    2)3)1回200mgを1日5回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日2回
    2)3)1回200mgを1日2回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)1日1回体重に応じて400~800mg。HD患者では毎HD後
    2)3)1回200mgを1日1~2回

アシクロビルは、CYP1A2阻害薬(弱い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

バルトレックス(一般名:バラシクロビル)

「アシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.99)

「バラシクロビルはアシクロビルのL-バリルエステルであり、経口投与後、主に肝初回通過効果によりアシクロビルに加水分解され、アシクロビルとして抗ウイルス作用を発現する。プロドラッグ化により経口吸収性が改善され、アシクロビル経口製剤より高いAUCが得られる。なお、バラシクロビルの消化管吸収にはペプチドトランスポーター(PEPT1)の関与が示唆されている」。(バルトレックス添付文書)

バラシクロビルは、腎排泄型薬物である

「6例の健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合、主な排泄経路は尿中であり、24時間以内の尿中に未変化体、アシクロビル及び9-カルボキシメトキシメチルグアニン(既知のアシクロビルの代謝物)がそれぞれ投与量の0.4%、43.1%及び5.0%排泄された」。(バルトレックス添付文書)

「バイオアベイラビリティー(外国人における成績):健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合のアシクロビルの生物学的利用率は54.2%であった」。(同上)

アシクロビル(活性代謝物)の尿中未変化体排泄率(fu)=
投与量2000mg×アシクロビルの尿中排泄率43.1%/投与量2000mg×アシクロビルのバイオアベイラビリティ54.2%
=0.795⇒腎排泄型薬物

腎機能低下時の用法・用量(バラシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(アシクロビルとして85%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回1,000mgを1日3回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制:1回500mgを1日2回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回500mgを1日2回
    4)水痘:1回1,000mgを1日3回
    5)性器ヘルペスの再発抑制:1日1回500mg。HIV感染症患者には1回500mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを12時間毎
    2)3)1回500mgを12時間毎
    5)1回500mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを12時間毎
  • CCr(10~30mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを24時間毎
    2)3)1回500mgを4時間毎
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)4)1回500mgを24時間毎
    2)3)1日1回500mg、保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)体重60kg以上で非高齢者では1回500mgを週3回HD後、それ以外の症例には他剤を選択。
    3)1回250mgを週3回HD後

アラセナ-A(一般名:ビダラビン)

「ウイルスのDNA依存DNAポリメラーゼを阻害。アシクロビル耐性のウイルスにも有効」。(今日の治療薬2020,p.101)

ファムビル(一般名:ファムシクロビル)

「ペンシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.100)

腎機能低下時の用法・用量(ファムシクロビル)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)