薬物動態学

腎機能の程度を判断する指標「クレアチニン・クリアランス値」(CCr)とは

投稿日:2019年6月28日 更新日:

クレアチニン・クリアランス値(CCr)は、腎機能の程度(糸球体ろ過能力)を表す指標の一つである。

具体的には、「血液中のクレアチニンを腎臓で除去して尿中に排泄する能力(クリアランス)」のことを表す。つまり、クレアチニンクリアランスは、腎クリアランス(腎臓が薬物を排泄する能力)の指標として用いられる。

さて、加齢とともに腎機能は低下していく。あるいは何らかの原因で、腎機能が低下した人がいたとする。その場合、血清クレアチニン値は上昇し、クレアチニンクリアランスの値は低下することになる。

そこでもしも、腎排泄型の薬を服用していれば、薬物が体内で蓄積しやすくなり、薬効が増強されたり予期しない副作用が現れることがあるかもしれない。

高齢者や腎機能低下患者の投与量(減量や投与間隔の延長など)を決定するのに、クレアチニン・クリアランス値(CCr)をどのように使ったらよいのであろうか。覚えのためまとめてみた。

クレアチニンは日々筋肉で作られる

エキスパート患者会ホームページ(広島大学病院栄養管理部)では、「患者さんの立場に立って、私たち慢性疾患の患者が、疑問・質問に答えます」とのこと。Web上の「腎臓の働きと検査」の項では、クレアチニンについて次のように説明している。(2019/06/28確認)

クレアチニンとは、筋肉内にあるクレアチン(アミノ酸の一種)が筋肉を動かすエネルギーとして使われた後にできる老廃物のひとつである。

つまり、クレアチニンは筋肉の最終代謝産物であり、私たちの体内では、毎日ほぼ一定量のクレアチニンが筋肉で作られている。クレアチニンは血中に入った後、腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄される。

クリアランスとは単位時間当たりに処理できる血液量(容積)のこと

一般的にクリアランス(処理能力)とは、ある物質を血液中から完全に取り除く能力のことを言う。(「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」pp.98-100)

クリアランスとは、全血流量のうち処理できた(薬物量をゼロにした)血液量に相当する値のことであり、単位時間当たりに処理できる血液量(容積)で表される。

そのため、クリアランスの単位は、「mL/分」などと表現される。血流量を表す単位と同じである。(注:このページでは、見た目を分かりやすくするため、あえてmin⇒分で表している)

つまり、クリアランスとは、決して取り除く物質の量のことではない。

クリアランス=全血流量×処理能力(割合)で表される

例えば腎臓の中を、血液が毎分100mLで10分間流れ続けたとする。そしてその結果、薬物濃度が10mg/mLから2mg/mLに低下したとする。

つまり、全体の4/5の薬物が除去されたとする。

この場合のクリアランスは、血流量100mL/分の4/5(処理できた薬物の割合)に相当する値となり、クリアランス⇒100×4/5=80(mL/分)で求めることができる。

もちろん、その単位は「mL/分」である。

「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」p.99の図を見てみよう

  • 10分間に流れた血液の量は、100mL/分×10分⇒1,000mLとなる。
  • そのとき流れた薬物量は、10mg/mL×1,000mL=10gとなる。
  • 残った薬物量は、2mg/mL×1,000mL=2gである。
  • したがって、除去された薬物量は、10g-2g=8gとなる。

これを次のように考えてみる。

「全血流量の4/5が浄化されて薬物濃度がゼロになり、残りの1/5の中に2gが残っている」

ここで、濃度がゼロになる血液量は、1,000mL(10分間に流れた血液量)×4/5=800mLである。

同様にして、薬物が2g残っている血液量は、1,000mL(10分間に流れた血液量)×1/5=200mLとなる。したがって、その濃度は2g/200mL⇒10mg/mLとなり、元の血液中の濃度と同じであることが分かる

つまり、血液1,000mL(薬物濃度10mg/mL)が10分間浄化された結果、血液800mLが完全に浄化されて薬物濃度ゼロとなり、残りの血液200mLが元の濃度(10mg/mL)のままの処理されずに残ったと考える。

この場合のクリアランス(単位時間当たりに処理できる血液量(容積))を計算すると、800mL/10分=80mL/分になる。

クレアチニンクリアランスは腎クリアランスの指標として非常に有用

全ての血流量を完全に処理できた(薬物量をゼロにできた)場合には、クリアランス=全血流量そのものとなる。つまり、クリアランスの最大値は全血流量と同一になり、それよりも大きな値になることはない。

クレアチニンの場合、体内のクレアチニンは腎臓の糸球体を通過してほとんど全て尿中に排泄される。そして、再び吸収(再吸収)されることはない。

したがって、クレアチニン・クリアランス値は、単位時間に腎臓で処理される血液量そのものに相当することになる。

クレアチニン・クリアランス値は、血清クレアチニン値を測定することによって簡単に推算することができるので、腎機能の目安として臨床上非常に有用な検査値となっている。

血清クレアチニン値にはブラインド領域が存在する

血清クレアチニン値は、腎機能の低下に伴って上昇する。ただし、腎機能が軽度に低下している段階では、血清クレアチニン値に大きな変動は見られない。

ところが、血清クレアチニン値が、大まかな目安として男性1.5mg/dLあるいは女性1.0mg/dLまで上昇した段階で、GFR(糸球体ろ過量)は既に約40mL/分(正常値の約40%)まで低下しているのである。

つまり、腎機能をできる限り正確に把握するためには、血清クレアチニン値の測定だけでは不十分である。必ずクレアチニンクリアランスなどを用いて、きめ細かく腎機能(腎クリアランス)を評価する必要がある。

血清クレアチニン値からクレアチニンクリアランスを推算する

腎機能が低下して糸球体ろ過量が低下すると、それに応じて尿中に排泄されるクレアチニンの量が減少することになる。

したがって、尿中に排泄されるクレアチニンの量を測定すれば、腎機能の程度を正確に推測することが可能となる。(下式のとおり)

実測クレアチニンクリアランス(mL/min)
= 尿中クレアチニン濃度(mg/dL)×尿量(L/日)/血清クレアチニン濃度(mg/dL)
={尿中クレアチニン濃度(mg/dL)/血清クレアチニン濃度(mg/dL)}×尿量(L/日)

しかしながら、例えば丸一日分の尿を蓄積して、クレアチニンの全量を測定するというのはなかなか大変なことである。

これに対して、血清クレアチニン(SCr)の値は、採血で簡単に測定することができる。食事の影響を受けることもない。そこで、血清クレアチニン(SCr)の値を使ってクレアチニン・クリアランス(CCr)を推測する計算式が幾つか考案されている。

Cockcroft & Gaultの式(コッククロフト・ゴールト)

Cockcroft & Gault(コッククロフト・ゴールト)の式は、血清クレアチニン値からクレアチニン・クリアランスを推算する計算式の一つであり、古くから汎用されている。(CG式と略記する場合有り)

Cockcroft & Gaultの式

クレアチニン・クリアランス(CCr(mL/分))
={(140-年齢)/(72×Scr(mg/dL)}× 体重(kg)

(注:女性は、上記×0.85)

計算に必要な項目は、血清クレアチニン(Scr:mg/dL)、年齢(性別)そして体重(kg)のみである。

血清クレアチニン(Scr:mg/dL)

腎機能が低下すると血清クレアチニン値は上昇する。そのとき、式の分母が大きくなるので、クレアチニン・クリアランス値は低下することを表している。

年齢

クレアチニン・クリアランス値は、年齢とともに低下する。

CG式に当てはめると、同じ血清クレアチニン値を示す20歳と80歳を比べた場合、80歳のクレアチニン・クリアランス値は、20歳の値のほぼ半分になる。(20歳、血清クレアチニン値1、体重60kg ⇒ クレアチニンクリアランス100.2)

ただし、最近の日本人を対象にしたデータによると、年齢によるCCrの低下割合は、従来考えられていたよりも小さいことが分かってきた。

つまり、高齢者にCG式を用いた場合、加齢による低下率が実際よりも大きくなり、その結果、腎機能を低く推算してしまう恐れがある。(逆に、若年者では高めになる)

「かつて、GFRは1年に1mL/min程度低下すると考えられていましたが、多くの日本人を対象にした実測GFR(イヌリンクリアランス)を測定すると腎機能は1年に0.5mL/min程度しか低下しないことが分かりました」。(平田2012)

年齢相応の腎機能を推算する(超簡便法)

年齢が25歳を過ぎると、腎機能は1年に0.5mL/分づつ低下すると考える。

CCr(推測値)=100(正常値)-(年齢-25)×0.5で計算する。
80歳ならば、100-(80-25)×0.5=72.5(女性の場合61.6)となる。

つまり、もしも健康体であったとしても、80歳ともなれば腎機能は若い時の7割程度に低下していることを示している。ちなみに、CG式の場合は約50%の低下である(既述)。

体重(kg)

クレアチニン・クリアランス値は、体重に比例して増加する。

ところで、血清クレアチニンは筋肉に含まれるクレアチンの最終代謝産物あり,骨格筋量に大きく影響される。

したがって、CG式で体重を代入する場合、肥満患者(脂肪組織の割合が多い)では標準体重を用いて補正する。また、痩せた高齢者など(筋肉量が落ちている)では、CG式を適用することはできない(後述)。

性別

女性は男性に比べて脂肪組織が多く、体重当たりの筋肉量は少ない傾向にある。そこで、女性のクレアチニン・クリアランス値は、上記計算式(男性用)×0.85で求める。

クレアチニン・クリアランスの正常値は80~100mL/分

クレアチニン・クリアランスの正常値は、80~100mL/分になる。そこで、クレアチニン・クリアランス値が60mL/分であれば、ごく単純に考えると、腎機能が正常時の約60%(60/100)まで低下していることを示している。

「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」p.108では、「おおざっぱな目安として、腎排泄型の薬物の場合、クレアチニンクリアランスが正常値の半分以下になったら、投与方法の変更などを考慮する必要があります」としている。

添付文書の中には、クレアチニン・クリアランス値の範囲ごとの薬物動態パラメーターが示されていることがある。

そこで例えば、クレアチニン・クリアランス値の低下に伴ってT1/2やAUCの値に上昇傾向がみられる場合には、別途クレアチニン・クリアランス値に応じた投与量が示されているのが一般的である。「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」ガバペン錠p.109、クラビット錠p.111

体重に注目する:小柄な患者のクリアランスは低い

血清クレアチニンの基準値は、ごくおおざっぱには以下の範囲にある(もちろん各施設ごとの基準値有り)。

男性:0.5~1.0 mg/dL
女性:0.4~0.8 mg/dL

したがって、血清クレアチニン値がこの範囲内に入っていれば、腎機能に関しては一安心と考えがちになる。ところが、CG式に当てはめて検討すると、そうではない場合が多くあり注意が必要である。

例えば、「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」p.110では、65歳(女性)、体重42kgで血清クレアチニン値0.75mg/dLのケースを取り上げている。小柄で体重の少ない女性の場合である。

この女性の場合、血清クレアチニン値0.75mg/dLは、なるほど基準値の範囲内(女性:0.4~0.8mg/dL)にある。ところが、CG式でクレアチニン・クリアランス値を推算すると49.6mL/分になる。

これは正常値のちょうど半分である。もしも、この女性が腎排泄型の薬物を服用していれば、投与方法(減量や投与間隔の延長など)を検討すべき段階だと言える。

CG式によれば、クレアチニン・クリアランス値は体重(厳密には筋肉量)に比例する。そこで、小柄で体重の少ない女性の場合には、クレアチニン・クリアランス値は意外と低値になることがあるので注意が必要である。

体格に注目する:肥満患者では標準体重を用いて推算する

「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」p.110では、45歳(男性)、身長165cm、体重105kgで血清クレアチニン値1.5mg/dLのケースを取り上げている。

この男性の場合、血清クレアチニン値1.5mg/dLは、基準値の範囲(男性:0.5~1.0 mg/dL)を外れている。腎機能が悪化していることを想像させる数値である。

ところが、CG式でクレアチニン・クリアランス値を推算すると92.4mL/分になる。正常値100mL/分とほとんど変わらない値である。

こうした肥満患者の場合、体重増加の多くの部分は肥満組織が占めている。そして、CG式は、骨格筋量を評価する式でもある。

肥満気味の体重をそのまま代入したのでは、クレアチニン・クリアランスの値が大きくなり過ぎてしまう。単純に考えて、体重が2倍になれば、クレアチニン・クリアランスの値も2倍になってしまう。

そこで、肥満患者の体重は適正体重に置き換えて推算する。

適正体重=身長の二乗×22=1.65×1.65×22=59.9kg

クレアチニン・クリアランス値を計算し直すと、52.7L/分となり、正常値の約半分のクリアランス(排泄能力)しかないことが分かる。

病態に注目する:栄養状態が悪いと血清クレアチニン値は低くなる

痩せた高齢者やサルコペニアの長期臥床患者では、筋肉量が極端に少ない患者が多い。低体重かつ生理機能の低下したフレイルの高齢者では、腎機能を正確に推算することはできない。

つまり、血清クレアチニン値を基にした腎機能推算式(CG式やeGFR)を用いることはできない。

もしも血清クレアチニン値が低かった場合、腎機能が良くて血清クレアチニン値が低いのか、あるいは、栄養状態が悪くて血清クレアチニン値が低いのか、簡単にはどちらとも判断できず、個々の症例ごとに検討する必要がある。

注)サルコペニア:筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態
注)フレイル:加齢に伴い身体の予備能力が低下し、健康障害を起こしやすくなった状態(虚弱)

世界の潮流は血清クレアチニンからeGFRへ変化している

クレアチニンクリアランスは、腎機能の指標である糸球体ろ過量(GFR)の近似指標として臨床上よく用いられている。ただし、これはあくまで近似指標であり、真の糸球体ろ過量に対してやや高値傾向を示す。

そこで最近では、eGFR(推算GFR、estimated glomerular filtration rate)が用いられるようになっている。

私の検査報告書

私の検査報告書(近医にて)2019/04/17
クレアチニン0.76(基準範囲:0.56~1.06)
eGFR(推算式)77.1

体表面積補正なしの個別eGFRを推算する必要がある

標準化eGFRは、元々CKD(慢性腎臓病)の重症度判定に使用するためのものであり、薬物の投与設計に用いるものではない。

標準化eGFRは、標準の体格(身長170cm、体重63kgでは体表面積1.73平方メートルになる)を基準に体表面積が補正されている。したがって、標準の体格から外れるほど誤差が大きくなる。

小柄な患者の体表面積を実態に即して算出するには、Du Boisの式を用いる。そしてその結果から、体表面積補正なしの個別eGFRを推算することが大切である。

腎機能評価にはイヌリンクリアランスを用いるのが理想的

イヌリンは、次のような性質を持っている。

  • 生体内で全く代謝されない
  • 血漿タンパクと全く結合しないため100%糸球体でろ過される
  • 尿細管で再吸収されない
  • 尿細管で分泌もされない

したがって、「糸球体ろ過されたイヌリン量=尿中に排泄されたイヌリン量」となる。つまり、イヌリンクリアランスはGFRに相当し、その正常値は100mL/分となる。

ただし、イヌリンクリアランスを測定するには、イヌリン製剤を静注する必要がある。また測定が非常に煩雑であり実臨床ではほとんど用いられない。

クレアチニンクリアランスの利便性

クレアチニンは、筋肉中に存在するクレアチンから一定速度で産生され続けている。したがって、クレアチニンを静注投与する必要はない。そして、イヌリンとほぼ同様の条件を満たしているため、ほぼ「糸球体ろ過されたクレアチニン量=尿中に排泄されたクレアチニン量」となる。

ただし、クレアチニンはわずかに尿細管から分泌されるため,クレアチニンクリアランスは、GFRより20~30%ほど高値となる。より正確な値を求めるには、血清クレアチニン値として実測値に0.2を加えた値を採用するとよい。(平田Q&A)

最後に、複雑な各種計算結果は、以下のWebで簡単に求めることができる。また、「eGFRを含めた腎機能推算式の正しい使い方」については、下記が参考になる。

参考:eGFR・CCrの計算(日本腎臓病薬物療法学会)
https://www.jsnp.org/
参考:「eGFRを含めた腎機能推算式の正しい使い方は?」,平田純生ほか,育薬ニュース第10号(2012年3月)pp.1-6
(熊本大学薬学部付属育薬フロンティアセンター・薬剤師サロン)
参考:腎臓病に関するQ&A(平田純生)
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/qa02.pdf

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)製薬メーカー入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)

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