抗精神病薬(統合失調症治療薬など)

2020年9月5日

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(BPSD

BPSDの原因となりうる心身の要因や環境要因を検討し、対処する。薬剤がBPSD を引き起こすこともあるため、関連が疑われる場合、まずは原因薬剤の中止を検討する。これらの対応で十分な効果が得られない場合は薬物療法を検討する。
(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、行動・心理症状)

  • 薬物療法としては、症状に応じた薬剤の使用を検討する。
  • 抗精神病薬は、幻覚、妄想、焦燥、興奮、攻撃などの症状に対して使用を考慮してもよいが、抗精神病薬のBPSDへの使用は適応外使用であることに留意する。
  • 定型抗精神病薬(ハロペリドール[セレネース]、クロルプロマジン[コントミン]、レボメプロマジン[ヒルナミン、レボトミン]など)の使用はできるだけ控え、
  • 非定型抗精神病薬 (リスペリドン[リスパダール]、オランザピン[ジプレキサ]、アリピプラゾール[エビリファイ]、クエチアピン[セロクエル]など)は必要最小限の使用にとどめる。
  • 抑肝散が使用されることがあるが、甘草が含まれるため、偽アルドステロン症による低カリウム血症に注意する。
  • 抗うつ薬が認知症のうつ状態に用いられる場合がある。三環系抗うつ薬は、認知障害のさらなる悪化のリスクがあるためできる限り使用は控えるべきである。
  • 抗精神病薬は、認知症患者への使用で脳血管障害および死亡率が上昇すると報告があるため、リスクベネフィットを考慮し、有害事象に留意しながら使用する。認知機能低下、錐体外路症状、転倒、誤嚥、 過鎮静等の発現に注意し、低用量から効果をみながら漸増する。効果が認められても漫然と続けず、適宜漸減、中止できるか検討する。半減期の長い薬剤は中止後も有害事象が遷延することがあるので注意が必要である。
  • 非定型抗精神病薬には血糖値上昇のリスクがあり、クエチアピンとオランザピンは糖尿病患者への投与は禁忌である。
  • ブチロフェノン系(ハロペリドールなど)はパーキンソン病に禁忌である。
  • 抗精神病薬や抗うつ薬の多くは肝代謝であり、高齢者では通常量より少ない量から開始することが望ましい。また、てんかん発作の閾値の低下を起こすことがある。
  • 抗精神病薬や抗うつ薬の多くは主にCYPによる肝代謝を受け、 CYPの関与する相互作用に注意が必要である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【抗精神病薬】

  • フェノチアジン系抗精神病薬(クロルプロマジン[コントミン]、レボメプロマジン[ヒルナミン、レボトミン]など)
  • 非定型抗精神病薬 (オランザピン[ジプレキサ]、クロザピン[クロザリル])

【制吐薬として】

  • プロクロルペラジン[ノバミン]

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

薬物動態学から

分布容積の大きな薬物の例(山村ほか2016,p.22など)

ジゴシン錠(一般名:ジゴキシン)、9.51L/kg
アンカロン錠(一般名:アミオダロン)、106L/kg
トリプタノール錠(アミトリプチン)、15.0L/kg
トフラニール錠(一般名:イミプラミン)、11.1L/kg
パキシル錠(一般名:パロキセチン)、17.2L/kg
セレネース錠(一般名:ハロペリドール)、1,300L
ジプレキサ錠(一般名:オランザピン)、954L

医薬品各種(定型・非定型型精神病薬)

クロルプロマジン、クエチアピンなどは、第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。抗ヒスタミン作用を示し、BBBを通過する。つまり、眠気がある。そのほか、三環系抗うつ薬もよく似た構造の三環を持っている。(実践薬学2017,p.416)

コントミン、ウインタミン(一般名:クロルプロマジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(プロピル側鎖):
「鎮静作用強い」。(今日の治療薬2020,p.859)

第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。(実践薬学2017,p.416)
抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

12.5mg錠、25mg錠を除く(劇薬

ヒルナミン、レボトミン(一般名:レボメプロマジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(プロピル側鎖):
「鎮静作用強い。催眠作用もあり、少量で睡眠薬としても使用。注射剤は筋注で鎮静に使用」。(今日の治療薬2020,p.859)

抗コリン作用有り。
抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。

5mg錠、25mg錠を除く(劇薬

セレネース(一般名:ハロペリドール)

ブチロフェノン系抗精神病薬:
「抗幻覚妄想作用は強いが、錐体外路症状多い。抗α1作用があり、静注でのQT延長に注意」。(今日の治療薬2020,p.861)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

【禁忌】パーキンソン病又はレビー小体型認知症の患者〔錐体外路症状が悪化するおそれがある〕
(セレネース添付文書)

ドグマチール(一般名:スルピリド)

ベンザミド系抗精神病薬:
「低用量で抗うつ作用、高用量で抗精神病作用。潰瘍治癒促進効果あり。プロラクチン値上昇に注意」。(今日の治療薬2020,p.862)

カプセル、50mg錠を除く(劇薬

腎機能低下時の用法・用量(スルピリド)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)胃・十二指腸潰瘍:[50mg]1日150mgを分3
    2)統合失調症:[50, 100, 200mg]1日300~600mgを分割投与。1日1,200mgまで増量可
    3)うつ病・うつ状態:1日150~300mgを分割投与。1日600mgまで増量可
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1日25~300mgを分3
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日25mgを分3
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日25mgを分1。HD患者ではHD日はHD後

グラマリール(一般名:チアプリド)

ベンザミド系抗精神病薬:(今日の治療薬2020,p.863)

腎機能低下時の用法・用量(チアプリド)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日75~150mgを分3。パーキンソニズムに伴うジスキネジアの患者では、1日1回25mgから開始
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1日50~75mgを分2~3
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日25~50mgを分1

リスパダール(一般名:リスペリドン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「抗幻覚妄想作用は強い。否定型薬の中では錐体外路症状やプロラクチン値上昇を来しやすい」。(今日の治療薬2020,p.864)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

腎機能低下時の用法・用量(リスペリドン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)統合失調症:1回1mgを1日2回より開始し、維持量1日2~6mgを分2、最大1日量12mg
    2)その他の適応は添付文書参照
  • CCr(60mg/dL未満、透析患者を含む)
    活性代謝物が蓄積するため、1日1mgを分2より開始し、維持量2~6mg を分2、最大1日量6mg

インヴェカ(一般名:パリペリドン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「リスペリドンの代謝産物。鎮静は弱い。プロラクチン値上昇に注意」。(今日の治療薬2020,p.865)

腎機能低下時の用法・用量(パリペリドン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1日1回6mg,朝食後より開始。1日12mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は5日間以上の間隔をあけて1日量として3mgずつ行うこと
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1日用量として3mgから開始し、1日用量は6mgを超えないこと
  • CCr(50mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(本剤の排泄が遅延し血中濃度が上昇するおそれがある)

ジプレキサ(一般名:オランザピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「鎮静作用が強い。錐体外路症状を生じにくい。気分安定効果あり。体重増加、血糖上昇が問題」。(今日の治療薬2020,p.867)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

【警告】著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者
(ジプレキサ添付文書)

オランザピンは、CYP1A2の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

セロクエル(一般名:クエチアピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「抗幻覚妄想効果は弱いが、鎮静は強い。錐体外路症状は生じにくい。抗うつ効果もあり。体重増加と血糖上昇が問題」。(今日の治療薬2020,p.867)

第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。(実践薬学2017,p.416)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

【警告】著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者
(セロクエル添付文書)

クエチアピンは、CYP3A4の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)

ドパミン受容体部分作動薬(DPA):
「ドパミンD2受容体の部分アゴニスト。錐体外路症状やプロラクチン値上昇はほとんどみられない。鎮静は弱いが、投与早期の不安、焦燥、アカシジアに注意」。(今日の治療薬2020,p.869)

フルメジン(一般名:フルフェナジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):
抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

錠剤を除く(劇薬

ピーゼットシー、トリラホン(一般名:ペルフェナジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):
抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

散剤、注射剤(劇薬

ペルフェナジンは、CYP2D6の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ノバミン(一般名:プロクロルペラジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):
抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

抗コリン作用、制吐作用有り。

クロザリル(一般名:クロザピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

クロザピンは、CYP1A2の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ロナセン(一般名:ブロナンセリン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):

ブロナンセリンは、CYP3Aの基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
併用禁忌:イトリゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬

オーラップ(一般名:ピモジド)

その他の抗精神病薬:

細粒(劇薬

ピモジドは、CYP3A4の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)