ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ハルシオンなど)

2020年5月25日

BZD系薬の作用機序

BZD系薬(ベンゾジアゼピン骨格を有する)は、GABAa受容体のαサブユニットとγサブユニットの境界領域に結合することによって、神経活動を抑制する。つまり、GABA受容体作動薬である。(GABA受容体:中枢神経系に存在する5量体のイオンチャネル)

BZD系薬は、GABA受容体のαサブユニット(α1とα2)に非選択的に作用する。

そして、Z-Drug(非BZD系薬)もGABA受容体作動薬である。

Z-Drug(非BZD系薬)は、各薬物ごとにαサブユニット(α1~6に細分化)に対する効力の差あり、それが各薬物の薬理学的な特徴となって現れる。⇒非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリーなど)

BZD系薬の用量と作用

BZD系睡眠薬は、もちろん鎮静睡眠作用を有している。しかしながら、主作用を発揮する用量よりも少量で、そのほかの様々な作用を発揮する薬物でもある。そして、それらの作用の多くは副作用として捉えられることになる。(実践薬学2017,p.16)

  • 健忘作用、一番最後に出現する作用
  • 鎮静睡眠作用
  • 筋弛緩作用
  • 抗痙攣作用
  • 抗不安作用、一番最初に(少量で)出現する作用

例えば、筋弛緩作用は鎮静睡眠作用よりも少ない用量で出現する。したがって、BZD系睡眠薬を服用する場合、筋弛緩作用によるふらつきや転倒に十分注意する必要がある。

⾼齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される

「現在では、特にBZD系による身体依存や持ち越し効果による認知機能への影響、そして筋弛緩作用による転倒や骨折が問題となっている」。そのため、2013年6月に下記ガイドラインが作成されている。(実践薬学2017,pp.18)

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)

⾼齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される。ベンゾジゼピン系睡眠薬は転倒・⾻折リスクを⾼めるため推奨されない。メラトニン受容体作動薬については転倒・⾻折リスクに関するデータが乏しく推奨に⾄らなかった。⾼齢者では睡眠薬による不眠症の改善効果のエフェクトサイズに⽐較して、相対的に副作⽤のリスクが⾼いため、不眠の重症度、基礎疾患の有無や⾝体的コンディションなどを総合的に勘案して睡眠薬の処⽅の是⾮を決定すべきである。【推奨グレードA】

  • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)/「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」の策定と発出について
  • 調剤と情報,2013.9(Vol.19 No.9),pp.57-63(1185-1191)/ガイドライン作成責任者・三島和夫先生に対するインタビュー記事
  • 週刊医学界新聞,第3043号,2013年09月16日/ガイドライン作成責任者・三島和夫先生に対するインタビュー記事

医薬品各種(BZD系睡眠薬)

ハルシオン(一般名:トリアゾラム)

超短時間作用型:半減期(2~4時間)。

トリアゾラムは、CYP3Aの基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬・フルコナゾール(ジフルカン)
併用禁忌:CYP2C9、CYP3A阻害薬・ミコナゾール(フロリード)
併用禁忌:CYP3A、P-gp阻害薬・イトリゾール(イトリゾール)
併用禁忌:CYP2C19、CYP3A阻害薬・ボリコナゾール(ブイフェンド)

併用禁忌:CYP3A4誘導薬・リファンピシン(リファジン)

トリアゾラムは、CYP3A4で代謝される。主な代謝物には、トリアゾラムと同等か1/2程度の活性が有る。(実践薬学2017,p.20)

トリアゾラムはCYP3A4で代謝されるため、薬物相互作用が問題となる。そこで例えば、ロルメタゼパム(エバミール)に変薬するならば、相互作用は何ら問題無くなる。

トリアゾラムは、アルプラゾラムの水素(H)を塩素(Cl)に置き換えた構造をしている。その結果、トリアゾラムは分子中に塩素を2つ持つことになり、薬物代謝酵素の標的となりやすく代謝されやすくなる。血中濃度半減期は、トリアゾラム2.9時間に対して、アルプラゾラム14時間となっている。水素原子よりも塩素原子の方が大きいため標的になりやすいと考えられている。(実践薬学2017,p.22)

レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)

短時間作用型:半減期(7時間)。

薬物相互作用

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
CYP3A基質。

エバミール(一般名:ロルメタゼパム)

短時間作用型:半減期(10時間)。

「CYPで代謝されないため、肝疾患や高齢者でも使いやすく相互作用の心配が少ない」。(今日の治療薬2020,p.900)

ロルメダゼパムは、CYPでの代謝を受けることはない。分子中に水酸基(-OH)を有しており、いきなりグルクロン酸抱合を受けて活性を失う。なお通常、抱合体には活性は無い。

以上から、「腎機能障害や肝機能障害がある場合に推奨」されており、また「高齢者に使いやすいといえる」。

例えば、CYPの影響を受けやすいトリアゾラム(上記)から変薬することによって、相互作用の影響を排除することが可能となる。

(実践薬学2017,pp.18-22)

リスミー(一般名:リルマザホン)

短時間作用型:半減期(10時間)。

サイレース(一般名:フルニトラゼパム)

中間作用型:半減期(24時間)。

ユーロジン(一般名:エスタゾラム)

中間作用型:半減期(24時間)。

「健康成人(5例)に1回4mgを経口投与した場合の血中濃度は、投与約5時間後に最高値約107ng/mLに達し、半減期は約24時間である」。(ユーロジン添付文書)

エスタゾラムを毎日(4~5日間)、つまり半減期(約24時間)×4~5回飲み続けると、定常状態に達すると考えられる。つまりある一定量の睡眠薬濃度が持続する状態となる。しかし、それでもちゃんと目覚めることができる。「それは、脳にある強力な覚醒機構が発動するからである」。(実践薬学2017,p.14-15)

ベンザリン(一般名:ニトラゼパム)

中間作用型:半減期(28時間)。

ドラール(一般名:クアゼアム)

長時間作用型:半減期(36時間)。

「ちなみに、フッ素(F)はその構造を安定させ、代謝を受けにくくする。例えば、フッ素をたくさん持つクアゼパム(ドラール他)の半減期は36時間と長い」。(実践薬学2017,p.22)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)