β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬など

2020年9月13日

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β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の位置付けと使い分け

高血圧治療ガイドライン2014から第一選択薬ではなくなった

高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)において、β遮断薬は第一選択薬から外された。
α遮断薬も第一選択薬にはなっていない。

以下のとおりである。

「積極的適応がない場合の高血圧に対して,最初に投与すべき降圧薬(第一選択薬)は Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬の中から選択する」。(JSH2014,p.36)

その理由として、「今日の治療薬」2019,p.585は、次のようにまとめている。

「脳・心疾患抑制作用が他薬に劣る臨床試験の成績が存在するためである」。

ただし、高血圧治療の目的は、降圧及び脳心血管系合併症の予防のみとは限らない。
β遮断薬は種々の作用を有しており、様々な積極的適応が有る。

JSH2014では、以下のような疾患を挙げている。

「交感神経活性の亢進が認められる若年者の高血圧や労作性狭心症,慢性心不全,心筋梗塞後,頻脈合併例,甲状腺機能亢進症などを含む高心拍出型症例,高レニン性高血圧,大動脈解離などに適応がある。内因性交感神経刺激作用(ISA)を有さないβ遮断薬は心筋梗塞の再発防止や心不全の予後改善効果が期待できる」。(JSH2014,p.52)

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の作用機序

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)やα遮断薬は、「心拍出量の低下,レニン産生の抑制,中枢での交感神経抑制作用などによって降圧する」。(高血圧治療ガイドライン2014:JSH2014,p.52)

交感神経が興奮すると、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)が分泌されて、アドレナリン受容体に結合する。

心血管系のアドレナリン受容体には、主にα1受容体、β1受容体そしてβ2受容体の三つがある。

アドレナリン(エピネフィリン)は、カテコールアミンに分類される生体内アミンの1つである。
なお、アドレナリン受容体に作用するのはアドレナリンだけではなく、ノルアドレナリンそのほかのカテコールアミンも作用する。

α1受容体

α1受容体は、主に血管平滑筋に分布している。
血管を収縮させることによって末梢血管抵抗を上昇させる。

β1受容体

β1受容体は、心臓の大部分を占めるアドレナリン受容体である。
心筋収縮力や心拍数を増加させる。

β2受容体

β2受容体は、血管平滑筋や気管支平滑筋に存在している。
血管や気管支の拡張作用を有する。

α、β遮断薬の歴史(β1選択性とα遮断作用の追求)

プロプラノロールは、世界で初めて臨床的に応用された交感神経β受容体遮断薬である。
(日本国内の発売は、1966年(昭和41)である)

ビソプロロール(β1選択性が高い)

プロプラノロールは、β1<非選択性>の薬物である。
つまり、β1受容体(心臓)とともにβ2受容体(気管支など)にも作用する。

そうすると、気管支喘息を悪化させたり、糖・脂質代謝に悪影響を与えたりすることになる。
また、β2受容体は血管にも存在しているので、β2受容体を遮断することで血管拡張作用が弱められることになる。

ビソプロロールは、β1選択性(心臓)を高めた薬物である。
β1:β2=75:1となっており、β2(気管支など)に対する影響力を弱めている。

適応症には、心不全、頻脈性心房細動がある。
そして、慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)ながら、
「気管支喘息、気管支痙れんのおそれのある患者〔気管支を収縮させ、症状を発現させるおそれがある。〕」にも使用が可能となっている。(メインテート錠添付文書)

カルベジロール(α遮断作用を併せ持つ)

β遮断薬を使用すると、相対的にα受容体の刺激を強めることになる。
そうすると、血管が収縮(末梢血管抵抗が上昇)して血圧が上がる。

カルベジロールは、β遮断薬にα遮断作用を併せ持たせた「α・β遮断薬」である。
α:β比=1:8となっており、末梢血管抵抗を軽減することで、様々な臓器保護効果を発揮する。

適応症には、ビソプロロールと同じく、心不全、頻脈性心房細動がある。
ただし、β<非>選択性のため、禁忌(次の患者には投与しないこと)として、
「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支筋を収縮させることがあるので喘息症状の誘発、悪化を
起こすおそれがある。]」が挙げられている。(アーチスト錠添付文書)

内因性交感神経刺激作用(ISA)

内因性交感神経刺激作用(ISA:Intrinsic Sympathomimetic Activity)

プロプラノロールは、β1<非選択性>ISA(-)薬である。
これに対して、ISA(+)薬では、心拍数を減らし過ぎない、つまり、徐脈軽減作用がある。

ただし、様々なISA(+)薬が作られたものの、生命予後を改善する効果は認められなかった。
したがって、今日では、徐脈が問題となる場合を除いて、ISA(+)薬の優位性は無い。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(高血圧治療薬)

高齢者においても降圧目標の達成が第一目標である。降圧薬の併用療法において薬剤数の上限は無いが、服薬アドヒアランス等を考慮して薬剤数はなるべく少なくすることが推奨される。
(高血圧治療薬)

  • Ca拮抗薬(アムロジピン[ノルバスク、アムロジン]、ニフェジピン [アダラートCR]、ベニジピン[コニール]、シルニジピン[アテレック]など)、ARB(オルメサルタン[オルメテック]、テルミサルタン [ミカルディス]、アジルサルタン[アジルバ]など)、ACE阻害薬(イミダプリル[タナトリル]、エナラプリル[レニベース]、ペリンドプリル[コバシル]など)、少量のサイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)が、心血管疾患予防の観点から若年者と同様に第一選択薬であるが、高齢患者では合併症により降圧薬の選択を考慮することも重要である。
  • α遮断薬(ウラピジル[エブランチル]、ドキサゾシン[カルデナリン]など)は、起立性低血圧、転倒のリスクがあり、高齢者では可能な限り使用を控える。
  • β遮断薬(メトプロロール[セロケン]など)の使用は、心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対して考慮する。
  • Ca拮抗薬の多くは主にCYP3Aで代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤との併用に十分に注意する。
  • ACE阻害薬は、誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者には誤嚥予防も含めて有用と考えられる。
  • サイアザイド系利尿薬の使用は、骨折リスクの高い高齢者で他に優先すべき降圧薬がない場合に特に考慮する。
  • 過降圧を予防可能な血圧値の設定は一律にはできないが、低用量(1/2量)からの投与を開始する他、降圧による臓器虚血症状が出現した場合や薬物有害事象が出現した場合に降圧薬の減量や中止、変更を考慮しなければならない。
  • レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬など)、利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]、スピロノラクトン[アルダクトン]、 トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。(消炎鎮痛薬の項より引用)

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【α・β遮断薬】

【非選択的β遮断薬】

  • プロプラノロール[インデラル]、カルテオロール[ ミケラン]
  • 呼吸器疾患の悪化や喘息発作誘発
  • 気管支喘息やCOPDではβ1選択的β遮断薬に限るが、その場合でも適応自体を慎重に検討する。
  • カルベジロール[アーチスト]は、心不全合併COPD例で使用可
    (COPDの増悪の報告が少なく心不全への有用性が上回る。気管支喘息では禁忌)。

【受容体サブタイプ非選択的α1受容体遮断薬 】

  • テラゾシン[ハイトラシン、 バソメット]、プラゾシン[ミニプレス]、ウラピジル[エブランチル]、ドキサゾシン[カルデナリン]など
  • 起立性低血圧、転倒
  • 可能な限り使用を控える。
    代替薬:(高血圧)その他の降圧薬
    代替薬:(前立腺肥大症)シロドシン[ユリーフ]、タムスロシン[ハルナー ル]、ナフトピジル[フリバス]、植物製剤など

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

医薬品各種(α・β遮断薬)

「降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響」(実践薬学2017,p.309)
α1阻害薬が尿酸値に及ぼす影響は、<下降ないしは不変>である。
β遮断薬(αβ遮断薬を含む)が尿酸値に及ぼす影響は、<上昇>である。

インデラル(一般名:プロプラノロール)

β遮断薬(β1非選択性ISA(-)):
「各種の薬物相互作用に注意」。(今日の治療薬,p.614)

高血圧・狭心症・不整脈・片頭痛の治療薬である。

「インデラルは1964年に英国ICI社(現 AstraZeneca社)で開発され、初めて臨床的に応用された交感神経β受容体遮断剤である。(中略)新しいβ遮断剤が発見され研究される場合の標準薬(比較対照薬)としても広く認められている」。(インデラル・インタビューフォーム)

〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。
したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支を収縮し、喘息症状が誘発又は悪化するおそれがある。]」(インデラル添付文書)

プロプラノロールは、CYP2D6の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

セレクトール(一般名:セリプロロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(+)):
「β2受容体刺激による血管作用」。(今日の治療薬,p.613)

内因性交感神経刺激作用(ISA:Intrinsic Sympathomimetic Activity)を有する。
つまり、徐脈軽減作用がある。

ISA+薬には、心拍数を減らし過ぎないという利点があるものの、生命予後を改善する効果は認められていない。
したがって、徐脈が問題となる場合を除いて、ISA(+)薬に優位性は無い。

テノーミン(一般名:アテノロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):
「作用が強く25~50mgを投与。海外の臨床で多用。腎排泄」。(今日の治療薬,p.611)

テノーミンのβ1:β2=35:1である。

アテノロールは、腎排泄型薬物である

(テノーミン錠添付文書)より

吸収
約50%が消化管から吸収された(英国での成績)。
肝臓で初回通過効果を受けずに体循環に入る。

代謝
アテノロールは肝臓でほとんど代謝を受けないが、健康男子にアテノロールを経口投与した場合、グルクロン酸抱合体、アミド側鎖の水酸化体等をわずかに生成する(英国での成績)。

分布(略)

排泄
健康男子にアテノロールを経口投与した場合、尿中、糞中から投与量のそれぞれ約50%が回収されたが、その約90%は未変化体であった。

排泄:
尿中に50%が回収され、その約90%は未変化体であった。
つまり、尿中回収率50%である。

吸収:
投与された薬物の約50%が消化管から吸収される。
そして、肝臓で初回通過効果を受けずにそのまま体循環に入る。
つまり、バイオアベイラビリティ50%である。

代謝:
アテノロールは肝臓でほとんど代謝を受けない。
したがって、腎排泄型薬物であることを示唆している。

尿中未変化体排泄率
={尿中回収率50%/バイオアベイラビリティ50%}×90%
=0.9⇒腎排泄型薬物である

腎機能低下時の用法・用量(アテノロール)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回50mg、最大1日1回100mg
  • CCr(35~60mg/dL未満)
    日1回25~50mg
  • CCr(15~35mg/dL未満)
    1日1回25mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回12.5mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回25mgを週3回HD後。PDでは25mgを週3回

メインテート(一般名:ビソプロロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):
「心不全、頻脈性心房細動にも適応あり。腎排泄」。(今日の治療薬,p.611)

心臓の負担軽減。

ビソプロロールの用法・用量を考える

(どんぐり2019,p.166)

血中濃度:
健康成人にビソプロロールフマル酸塩5㎎を単回経口投与した場合、3.1±0.4時間で最高血漿中濃度(23.7±1.0ng/mL)に達し、半減期は8.6±0.3 時間であった。(n=10)
反復経口投与においては、血漿中濃度は3~4日で定常状態に達した。(メインテート添付文書)

ビソプロロールは、定常状態のある薬物である。
1日1回24時間ごと投与/消失半減期8.6時間=2.79<3.0

計算上は、消失半減期8.6時間×5=43時間(1.79日)で定常状態に達する。
ただし、上記添付文書では「3~4日で定常状態に達した(反復投与)」となっている。

適応疾患ごとに剤形が異なる

メインテートには、含量が大きく異なる製剤があり適応疾患が異なる。

【効能・効果及び用法・用量】

メインテート錠には、0.625mg錠、2.5mg錠、5mg錠の3種類がある。

2.5mg錠、5mg錠に効能あり

  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
  • 狭心症
  • 心室性期外収縮

0.625mg錠、2.5mg錠、5mg錠に効能あり

  • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
    虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全

2.5mg錠、5mg錠に効能あり

  • 頻脈性心房細動

慢性心不全が適応となっている(1日1回投与)

β遮断薬は、心機能抑制作用があるため慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い。
例えば、インデラル、セレクトール、テノーミンなどである。
そうした中で、メインテートにはアーチストとともに慢性心不全の適応が有る。

メインテートのβ1:β2=75:1である。
つまり、β1選択性が一番高い薬物であり、心臓に特化した薬物と言える。

β2受容体に対する作用が非常に弱いことから、「気管支喘息を悪化させたり、糖・脂質代謝に悪影響を与えたり」する副作用が少ない。
また、β2受容体における血管拡張作用を妨げない。(児島2017,p.34)

ただし、添付文書上は、血糖降下剤(インスリン製剤,トルブタミド等)との併用は、併用注意(併用に注意すること)となっている。

メインテートは、国内における臨床成績及び海外の承認状況に基いて、公知申請により慢性心不全の適応追加承認を取得した。
ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。

さて、心不全患者にβ遮断薬を導入する場合、心不全の増悪を防ぐため少量から投与を開始して、段階的に増量していくのが常識である。

日本におけるメインテートの初期投与量(1日1回投与)は、海外のエビデンスを参考にして、目標投与量(1回5mg)の1/8量(1回0.625mg)に設定されている。

併用注意(併用に注意すること)

血糖降下剤(インスリン製剤,トルブタミド等):
肝臓でのグリコーゲン分解は、β2受容体遮断により抑制される。このため、β遮断剤を投与していると低血糖状態になりやすくなる。また低血糖時に分泌されるエピネフリンにより生じる低血糖症状(頻脈、振戦や発汗等)をマスクし、より重篤な低血糖症状に移行させたり、血糖上昇作用を抑制し低血糖からの回復を遅らせるおそれがある。(メインテート添付文書)

アーチスト(一般名:カルベジロール)

αβ遮断薬:
「α1遮断:β遮断=1:8、血管拡張作用、抗酸化作用、糖脂質代謝を悪化させない。心不全に適応あり」。(今日の治療薬,p.617)

末梢血管抵抗減→臓器保護。

適応疾患ごとに剤形及び1日投与回数が異なる

アーチストには、含量が大きく異なる製剤があり、それぞれ適応疾患及び用法が異なる。(山村2015,pp.38-39)

【効能・効果及び用法・用量】

アーチスト錠には、1.25mg錠、2.5mg錠、10mg錠、20mg錠の4種類がある。

10mg錠、20mg錠に効能あり

  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
  • 腎実質性高血圧症
  • 狭心症

1.25mg錠、2.5mg錠、10mg錠に効能あり

  • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
    虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全

2.5mg錠、10mg錠、20mg錠に効能あり

  • 頻脈性心房細動

高血圧症など(1日1回投与)

カルベジロールの半減期は、投与量ごとに次のようになっており、1日1回24時間ごとの投与では定常状態にはなりにくい。

5mg投与(半減期1.95±0.39)、10mg投与(同3.60±1.82)、20mg投与(同7.72±2.2)。(カルベジロール添付文書)

なぜならば、Ritschel理論値は、最大用量の20mgの場合に24/7.72=3.1となり4を下回っているものの、5mg:24/1.95=12.3倍、10mg:24/3.60=6.7倍となっているからである。

それでも血圧はしっかりとコントロールできている。
「カルベジロールは脂溶性が高いために、血中濃度として確認できなくなっても受容体にはとどまっており、β遮断作用は持続する。その証拠に、カルベジロールのT/P比は収縮期血圧で77%、拡張期血圧で83%と、効果は確かに持続している」。(分配係数:n-オクタノール-水(pH7.1);184.2)

これには、「ベニジピン塩酸塩(コニールなど)やアゼルニジピン(カルブロック)などの説明でよく耳にする、「メンブランアプローチ」という結合様式と同じ考え方」が適用できる。

ただし米国では、高血圧症でも、次に説明する心不全と同じく1日2回投与となっている。

慢性心不全が適応となっている(1日2回投与)

β遮断薬は、心機能抑制作用があるため慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い。
例えば、インデラル、セレクトール、テノーミンなどである。
そうした中で、アーチストにはメインテートとともに慢性心不全の適応が有る。

「カルベジロールは大規模臨床試験で心不全患者の死亡リスクを下げることが証明されて」おり、適応症には、“虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全”が含まれている。ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。(山村2015,p.39)

さて、心不全患者にβ遮断薬を導入する場合、心不全の増悪を防ぐため少量から投与を開始して、段階的に増量していくのが常識である。

また、カルベジロール単回経口投与でのTmaxは、0.8±0.3時間(10mg投与の場合)と非常に短くなっている。
1日1回投与では、血中濃度の立ち上がりが早いため、一過性のめまいなどが生じやすく継続的に増量していくことができなくなる可能性がある。

そこで、心不全の場合には、米国と同様に1日2回投与となっている。
理由は、血中濃度の急激な上昇を防ぎ、副作用を軽減して、段階的な増量を可能にするためである。(米国の場合、高血圧症も1日2回)

なお、日本におけるカルベジロールの初期投与量(1日2回投与)は、海外のエビデンスを参考にして、目標投与量(1回10mg)の1/8量(1回1.25mg)に設定されている。

β遮断作用に加えてα遮断作用を有する

アーチストのα:β比=1:8であり、「β遮断薬でありながら「α遮断作用」も併せもっている」。(児島2017,p.35)

β遮断薬を使用していると、相対的にα受容体の刺激が高まることになる。
そうすると、末梢血管が収縮し、末梢血管抵抗が増加して血圧が上昇する。
つまり、薬の効果が弱まってしまうことがある。

α遮断作用を併せ持つアーチストは、末梢血管抵抗を減じて、治療効果を高めることができる。

ただし〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。
したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支筋を収縮させることがあるので喘息症状の誘発、悪化を起こすおそれがある。]」(アーチスト添付文書)

カルベジロールは、CYP2C9基質である

アミオダロンは、中程度のCYP2C9阻害薬であり、カルベジロールは、CYP2C9基質である。

「アミオダロンの活性代謝物であるデスエチルアミオダロンはCYP2C9を阻害し、β遮断作用の強いカルベジロールのS体の代謝を妨げてしまう」。(実践薬学2017,pp.129-131)

その結果、カルベジロールS体の代謝が阻害され、β遮断作用が強く現れる。⇒アミオダロン

アロチノロール(一般名:アロチノロール)

αβ遮断薬:
「α遮断:β遮断=1:8」。(今日の治療薬,p.616)

カルデナリン(一般名:ドキサゾシン)

α1遮断薬(高血圧治療薬):
「キナゾリン誘導体、α1選択性。長時間作用型で、副作用が少ない」。(今日の治療薬,p.618)

エブランチル(一般名:ウラピジル)

α1遮断薬(高血圧治療薬、前立腺肥大症治療薬)、神経因性膀胱に伴う排尿障害:
「α1選択性」。(今日の治療薬,p.618)

ケルロング(一般名:ベタキソロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):(今日の治療薬,p.612)

選択的β1受容体遮断薬である。

ベタキソロールの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.185-188、服薬指導例・薬歴記載例有り)

ノルアドレナリン(交感神経系の伝達物質)が心臓のβ1受容体に結合することで、心収縮力・心拍数が増加し血圧の上昇を引き起こす。
β受容体遮断薬は、心臓のβ1受容体を遮断することによって、心収縮力・心拍数を低下して降圧作用を示す。
β受容体は、心臓(β1受容体)や気管支(β2受容体)などに分布している。
β1、β2への選択性がないβ受容体遮断薬は、心臓(β1受容体)だけでなく気管支(β2受容体)にも働いて、気管支喘息を悪化させる。

ベタキソロールは、脂溶性の薬物であり、血液脳関門を通過しやすい。
中枢のセロトニン受容体を遮断する可能性がある。
自律神経系を介する中枢の反射機構に影響を与える可能性がある。

そのほかの副作用(精神神経系)
ふらふら感、頭痛、めまい、ぼんやり(0.1~5%未満)
眠気、不眠、幻覚、悪夢、蟻走感、うつ状態(0.1%未満)
(ケルロング錠添付文書)

ベタキソロールは、定常状態のある薬物である。
「腎機能低下を伴う高血圧症患者に5mg7日間反復経口投与したとき、4日目にほぼ定常状態に達した」。
「消失半減期、 12.9±4.7hr(健康成人6人)」。(ケルロング錠添付文書)

消失半減期12.9時間×5=64.5⇒約2.7日
服薬を中止しても、2~3にちは症状が続くかもしれない。

セロケンロプレソール(一般名:メトプロロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):
「肝代謝、心不全の予後を改善するという臨床試験あり」。(今日の治療薬,p.613)

メトプロロールは、CYP2D6の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ミケラン(一般名:カルテオロール)

β遮断薬(β1非選択性ISA(+)):
「心拍数の低下作用弱い。【カプセル】2層顆粒含有の持続性製剤」。(今日の治療薬,p.615)

トランデート(一般名:ラベタロール)

αβ遮断薬:
「α遮断:β遮断=1:3、早期覚醒時の急激な血圧上昇を抑制。妊婦高血圧に使用可」。(今日の治療薬,p.617)

ラベタロールは、CYP2D6阻害薬(弱い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ハイトラシン、バソメット(一般名:テラゾシン)

α遮断薬:
「キナゾリン誘導体、α1選択性」。(今日の治療薬,p.618)

デムサー(一般名:メチロシン)

チロシン水酸化酵素阻害薬:
「カテコールアミンの生合成を抑制して過剰分泌を抑制」。(今日の治療薬2020,p.619)

腎機能低下時の用法・用量(メチロシン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ミニプレス(一般名:プラゾシン)

排尿障害治療薬(α1遮断薬):
「α1選択性。短時間作用型。降圧薬としては特殊な場合に使用」。(今日の治療薬,p.1041)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)