β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬

2020年1月22日

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の作用機序

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)やα遮断薬は、「心拍出量の低下,レニン産生の抑制,中枢での交感神経抑制作用などによって降圧する」。(高血圧治療ガイドライン2014:JSH2014,p.52)

交感神経が興奮すると、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)が分泌されて、アドレナリン受容体に結合する。

心血管系のアドレナリン受容体には、主にα1受容体、β1受容体そしてβ2受容体の三つがある。

アドレナリン(エピネフィリン)は、カテコールアミンに分類される生体内アミンの1つである。なお、アドレナリン受容体に作用するのはアドレナリンだけではなく、ノルアドレナリンそのほかのカテコールアミンも作用する。

α1受容体

α1受容体は、主に血管平滑筋に分布している。

α遮断薬は、α1受容体を遮断することにより、交感神経刺激が末梢血管に伝わるのを抑制して降圧作用を発揮する。(詳しくは以下のとおり)

交感神経が興奮すると、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)が分泌され、α1受容体に結合する。すると末梢血管が収縮し、末梢血管抵抗が増加して血流が減少する。その結果、心臓の働きが活発になり、心拍出量が増加して血圧は上昇する。α遮断薬はその作用を抑制して降圧する。

β1受容体

β1受容体は、心臓の大部分を占めるアドレナリン受容体である。

アドレナリンがβ1受容体に結合すると、心拍出量が増加して血圧が上昇する。β遮断薬はβ1受容体を遮断することにより、交感神経刺激が心筋に伝わるのを抑制して降圧作用を発揮する。

β2受容体

β2受容体は、血管平滑筋や気管支平滑筋に存在している。血管や気管支を拡張する作用を発揮する。

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の位置付けと使い分け

高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)において、β遮断薬は第一選択薬から外された。α遮断薬も第一選択薬にはなっていない。

「積極的適応がない場合の高血圧に対して,最初に投与すべき降圧薬(第一選択薬)は Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬の中から選択する」。(JSH2014,p.36)

その理由として、「今日の治療指針2019,p.585」は、次のようにまとめている。

「脳・心疾患抑制作用が他薬に劣る臨床試験の成績が存在するためである」。

ただし、高血圧治療の目的は、降圧及び脳心血管系合併症の予防のみとは限らない。β遮断薬は種々の作用を有しており、様々な積極的適応が有る。

「交感神経活性の亢進が認められる若年者の高血圧や労作性狭心症,慢性心不全,心筋梗塞後,頻脈合併例,甲状腺機能亢進症などを含む高心拍出型症例,高レニン性高血圧,大動脈解離などに適応がある。内因性交感神経刺激作用(ISA)を有さないβ遮断薬は心筋梗塞の再発防止や心不全の予後改善効果が期待できる」。(JSH2014,p.52)

医薬品各種

インデラル(一般名:プロプラノロール)

β遮断薬(β1非選択性、ISA-)であり、高血圧・狭心症・不整脈・片頭痛の治療薬である。

「インデラルは1964年に英国ICI社(現 AstraZeneca社)で開発され、初めて臨床的に応用された交感神経β受容体遮断剤である。(中略)新しいβ遮断剤が発見され研究される場合の標準薬(比較対照薬)としても広く認められている」。(インデラル・インタビューフォーム)

〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支を収縮し、喘息症状が誘発又は悪化するおそれがある。]」(インデラル添付文書)

セレクトール(一般名:セリプロロール)

β遮断薬(β1選択性、ISA+、徐脈軽減)。

内因性交感神経刺激作用(ISA:Intrinsic Sympathomimetic Activity)を有する。

ISA+薬には、心拍数を減らし過ぎないという利点があるものの、生命予後を改善する効果は認められていない。したがって、徐脈が問題となる場合を除いて、ISA+薬に優位性は無い。

テノーミン(一般名:アテノロール)

β遮断薬(β1選択性、ISA-)。
テノーミンのβ1:β2=35:1である。

メインテート(一般名:ビソプロロール)

β遮断薬(β1選択性、ISA-)、心臓の負担軽減。

含量が異なる製剤があり適応疾患が異なる。

【効能・効果及び用法・用量】

メインテート錠には、0.625mg錠、2.5mg錠、5mg錠がある。

  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
  • 狭心症
  • 心室性期外収縮
  • 2.5mg錠、5mg錠に効能あり。

  • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
     虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
  • 0.625mg錠、2.5mg錠、5mg錠に効能あり。

  • 頻脈性心房細動
  • 2.5mg錠、5mg錠に効能あり。

メインテートのβ1:β2=75:1である。つまり、β1選択性が一番高い薬物であり、心臓に特化した薬物と言える。

β2受容体に対する作用が非常に弱いことから、「気管支喘息を悪化させたり、糖・脂質代謝に悪影響を与えたり」する副作用が少ない。また、β2受容体における血管拡張作用を妨げない。(児島2017,p.34)

β遮断薬は心機能抑制作用があるため、慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い(インデラル、セレクトール、テノーミンなど)。

メインテートは、国内における臨床成績及び海外の承認状況に基いて、公知申請により慢性心不全の適応追加承認を取得した。ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。

アーチスト(一般名:カルベジロール)

αβ遮断薬、末梢血管抵抗減→臓器保護。

含量が大きく異なる製剤があり、それぞれ適応疾患が異なる。(山村2015,pp.38-39)

【効能・効果及び用法・用量】

アーチスト錠には、1.25mg錠、2.5mg錠、10mg錠、20mg錠の4種類がある。

  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
  • 腎実質性高血圧症
  • 狭心症
  • 10mg錠、20mg錠に効能あり。

  • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
     虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全
  • 1.25mg錠、2.5mg錠、10mg錠に効能あり。
    慢性心不全に対しては1日2回投与、そのほかでは1日1回投与。

  • 頻脈性心房細動
  • 2.5mg錠、10mg錠、20mg錠に効能あり。

β遮断作用に加えてα遮断作用を有する

アーチストのα:β比=1:8であり、「β遮断薬でありながら「α遮断作用」も併せもっている」。(児島2017,p.35)

β遮断薬を使用していると、相対的にα受容体の刺激が高まることになる。そうすると、末梢血管が収縮し、末梢血管抵抗が増加して血圧が上昇する。つまり、薬の効果が弱まってしまうことがある。

α遮断作用を併せ持つアーチストは、末梢血管抵抗を減じて、治療効果を高めることができる。

ただし〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支筋を収縮させることがあるので喘息症状の誘発、悪化を起こすおそれがある。]」(アーチスト添付文書)

慢性心不全が適応となっている

β遮断薬は心機能抑制作用があるため、慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い(インデラル、セレクトール、テノーミンなど)。

「カルベジロールは大規模臨床試験で心不全患者の死亡リスクを下げることが証明されて」おり、適応症には、“虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全”が含まれている。ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。

(山村2015,p.39)

アロチノロール(一般名:アロチノロール)

αβ遮断薬。

カルデナリン(一般名:ドキサゾシン)

α1遮断薬(高血圧治療薬)。

エブランチル(一般名:ウラピジル)

α1遮断薬(高血圧治療薬、前立腺肥大症治療薬)、神経因性膀胱に伴う排尿障害。

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)