β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬など

2020年6月27日

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の作用機序

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)やα遮断薬は、「心拍出量の低下,レニン産生の抑制,中枢での交感神経抑制作用などによって降圧する」。(高血圧治療ガイドライン2014:JSH2014,p.52)

交感神経が興奮すると、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)が分泌されて、アドレナリン受容体に結合する。

心血管系のアドレナリン受容体には、主にα1受容体、β1受容体そしてβ2受容体の三つがある。

アドレナリン(エピネフィリン)は、カテコールアミンに分類される生体内アミンの1つである。なお、アドレナリン受容体に作用するのはアドレナリンだけではなく、ノルアドレナリンそのほかのカテコールアミンも作用する。

α1受容体

α1受容体は、主に血管平滑筋に分布している。

α遮断薬は、α1受容体を遮断することにより、交感神経刺激が末梢血管に伝わるのを抑制して降圧作用を発揮する。(詳しくは以下のとおり)

交感神経が興奮すると、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)が分泌され、α1受容体に結合する。すると末梢血管が収縮し、末梢血管抵抗が増加して血流が減少する。その結果、心臓の働きが活発になり、心拍出量が増加して血圧は上昇する。α遮断薬はその作用を抑制して降圧する。

β1受容体

β1受容体は、心臓の大部分を占めるアドレナリン受容体である。

アドレナリンがβ1受容体に結合すると、心拍出量が増加して血圧が上昇する。β遮断薬はβ1受容体を遮断することにより、交感神経刺激が心筋に伝わるのを抑制して降圧作用を発揮する。

β2受容体

β2受容体は、血管平滑筋や気管支平滑筋に存在している。血管や気管支を拡張する作用を発揮する。

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の位置付けと使い分け

高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)において、β遮断薬は第一選択薬から外された。α遮断薬も第一選択薬にはなっていない。

「積極的適応がない場合の高血圧に対して,最初に投与すべき降圧薬(第一選択薬)は Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬の中から選択する」。(JSH2014,p.36)

その理由として、「今日の治療指針2019,p.585」は、次のようにまとめている。

「脳・心疾患抑制作用が他薬に劣る臨床試験の成績が存在するためである」。

ただし、高血圧治療の目的は、降圧及び脳心血管系合併症の予防のみとは限らない。β遮断薬は種々の作用を有しており、様々な積極的適応が有る。

「交感神経活性の亢進が認められる若年者の高血圧や労作性狭心症,慢性心不全,心筋梗塞後,頻脈合併例,甲状腺機能亢進症などを含む高心拍出型症例,高レニン性高血圧,大動脈解離などに適応がある。内因性交感神経刺激作用(ISA)を有さないβ遮断薬は心筋梗塞の再発防止や心不全の予後改善効果が期待できる」。(JSH2014,p.52)

医薬品各種(α・β遮断薬)

「降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響」(実践薬学2017,p.309)
α1阻害薬が尿酸値に及ぼす影響は、<下降ないしは不変>である。
β遮断薬(αβ遮断薬を含む)が尿酸値に及ぼす影響は、<上昇>である。

インデラル(一般名:プロプラノロール)

β遮断薬(β1非選択性、ISA-)であり、高血圧・狭心症・不整脈・片頭痛の治療薬である。

「インデラルは1964年に英国ICI社(現 AstraZeneca社)で開発され、初めて臨床的に応用された交感神経β受容体遮断剤である。(中略)新しいβ遮断剤が発見され研究される場合の標準薬(比較対照薬)としても広く認められている」。(インデラル・インタビューフォーム)

〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支を収縮し、喘息症状が誘発又は悪化するおそれがある。]」(インデラル添付文書)

プロプラノロールは、CYP2D6の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

セレクトール(一般名:セリプロロール)

β遮断薬(β1選択性、ISA+、徐脈軽減)。

内因性交感神経刺激作用(ISA:Intrinsic Sympathomimetic Activity)を有する。

ISA+薬には、心拍数を減らし過ぎないという利点があるものの、生命予後を改善する効果は認められていない。したがって、徐脈が問題となる場合を除いて、ISA+薬に優位性は無い。

テノーミン(一般名:アテノロール)

β遮断薬(β1選択性、ISA-)。
テノーミンのβ1:β2=35:1である。

腎機能低下時の用法・用量(アテノロール)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回50mg、最大1日1回100mg
  • CCr(35~60mg/dL未満)
    日1回25~50mg
  • CCr(15~35mg/dL未満)
    1日1回25mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回12.5mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回25mgを週3回HD後。PDでは25mgを週3回

メインテート(一般名:ビソプロロール)

β遮断薬(β1選択性、ISA-)、心臓の負担軽減。

適応疾患ごとに剤形が異なる

メインテートには、含量が大きく異なる製剤があり適応疾患が異なる。

【効能・効果及び用法・用量】

メインテート錠には、0.625mg錠、2.5mg錠、5mg錠の3種類がある。

    • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
    • 狭心症
    • 心室性期外収縮

2.5mg錠、5mg錠に効能あり。

    • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
      虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全

0.625mg錠、2.5mg錠、5mg錠に効能あり。

    • 頻脈性心房細動

2.5mg錠、5mg錠に効能あり。

慢性心不全が適応となっている(1日1回投与)

β遮断薬は、心機能抑制作用があるため慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い。例えば、インデラル、セレクトール、テノーミンなどである。そうした中で、メインテートにはアーチストとともに慢性心不全の適応が有る。

メインテートのβ1:β2=75:1である。つまり、β1選択性が一番高い薬物であり、心臓に特化した薬物と言える。

β2受容体に対する作用が非常に弱いことから、「気管支喘息を悪化させたり、糖・脂質代謝に悪影響を与えたり」する副作用が少ない。また、β2受容体における血管拡張作用を妨げない。(児島2017,p.34)

メインテートは、国内における臨床成績及び海外の承認状況に基いて、公知申請により慢性心不全の適応追加承認を取得した。ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。

さて、心不全患者にβ遮断薬を導入する場合、心不全の増悪を防ぐため少量から投与を開始して、段階的に増量していくのが常識である。

日本におけるメインテートの初期投与量(1日1回投与)は、海外のエビデンスを参考にして、目標投与量(1回5mg)の1/8量(1回0.625mg)に設定されている。

アーチスト(一般名:カルベジロール)

αβ遮断薬、末梢血管抵抗減→臓器保護。

適応疾患ごとに剤形及び1日投与回数が異なる

アーチストには、含量が大きく異なる製剤があり、それぞれ適応疾患及び用法が異なる。(山村2015,pp.38-39)

【効能・効果及び用法・用量】

アーチスト錠には、1.25mg錠、2.5mg錠、10mg錠、20mg錠の4種類がある。

    • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
    • 腎実質性高血圧症
    • 狭心症

10mg錠、20mg錠に効能あり。

    • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
      虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全

1.25mg錠、2.5mg錠、10mg錠に効能あり。
慢性心不全に対しては1日2回投与、そのほかでは1日1回投与。

    • 頻脈性心房細動

2.5mg錠、10mg錠、20mg錠に効能あり。

高血圧症など(1日1回投与)

カルベジロールの半減期は、投与量ごとに次のようになっており、1日1回24時間ごとの投与では定常状態にはなりにくい。

5mg投与(半減期1.95±0.39)、10mg投与(同3.60±1.82)、20mg投与(同7.72±2.2)。(カルベジロール添付文書)

なぜならば、Ritschel理論値は、最大用量の20mgの場合に24/7.72=3.1となり4を下回っているものの、5mg:24/1.95=12.3倍、10mg:24/3.60=6.7倍となっているからである。

それでも血圧はしっかりとコントロールできている。「カルベジロールは脂溶性が高いために、血中濃度として確認できなくなっても受容体にはとどまっており、β遮断作用は持続する。その証拠に、カルベジロールのT/P比は収縮期血圧で77%、拡張期血圧で83%と、効果は確かに持続している」。(分配係数:n-オクタノール-水(pH7.1);184.2)

これには、「ベニジピン塩酸塩(コニールなど)やアゼルニジピン(カルブロック)などの説明でよく耳にする、「メンブランアプローチ」という結合様式と同じ考え方」が適用できる。

ただし米国では、高血圧症でも、次に説明する心不全と同じく1日2回投与となっている。

慢性心不全が適応となっている(1日2回投与)

β遮断薬は、心機能抑制作用があるため慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い。例えば、インデラル、セレクトール、テノーミンなどである。そうした中で、アーチストにはメインテートとともに慢性心不全の適応が有る。

「カルベジロールは大規模臨床試験で心不全患者の死亡リスクを下げることが証明されて」おり、適応症には、“虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全”が含まれている。ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。(山村2015,p.39)

さて、心不全患者にβ遮断薬を導入する場合、心不全の増悪を防ぐため少量から投与を開始して、段階的に増量していくのが常識である。

また、カルベジロール単回経口投与でのTmaxは、0.8±0.3時間(10mg投与の場合)と非常に短くなっている。1日1回投与では、血中濃度の立ち上がりが早いため、一過性のめまいなどが生じやすく継続的に増量していくことができなくなる可能性がある。

そこで、心不全の場合には、米国と同様に1日2回投与となっている。理由は、血中濃度の急激な上昇を防ぎ、副作用を軽減して、段階的な増量を可能にするためである。(米国の場合、高血圧症も1日2回)

なお、日本におけるカルベジロールの初期投与量(1日2回投与)は、海外のエビデンスを参考にして、目標投与量(1回10mg)の1/8量(1回1.25mg)に設定されている。

β遮断作用に加えてα遮断作用を有する

アーチストのα:β比=1:8であり、「β遮断薬でありながら「α遮断作用」も併せもっている」。(児島2017,p.35)

β遮断薬を使用していると、相対的にα受容体の刺激が高まることになる。そうすると、末梢血管が収縮し、末梢血管抵抗が増加して血圧が上昇する。つまり、薬の効果が弱まってしまうことがある。

α遮断作用を併せ持つアーチストは、末梢血管抵抗を減じて、治療効果を高めることができる。

ただし〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支筋を収縮させることがあるので喘息症状の誘発、悪化を起こすおそれがある。]」(アーチスト添付文書)

カルベジロールは、CYP2C9基質である

アミオダロンは、中程度のCYP2C9阻害薬であり、カルベジロールは、CYP2C9基質である。

「アミオダロンの活性代謝物であるデスエチルアミオダロンはCYP2C9を阻害し、β遮断作用の強いカルベジロールのS体の代謝を妨げてしまう」。(実践薬学2017,pp.129-131)

その結果、カルベジロールS体の代謝が阻害され、β遮断作用が強く現れる。⇒アミオダロン

アロチノロール(一般名:アロチノロール)

αβ遮断薬:

カルデナリン(一般名:ドキサゾシン)

α1遮断薬(高血圧治療薬):

エブランチル(一般名:ウラピジル)

α1遮断薬(高血圧治療薬、前立腺肥大症治療薬)、神経因性膀胱に伴う排尿障害:

セロケン、ロプレソール(一般名:メトプロロール)

メトプロロールは、CYP2D6の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

トランデート(一般名:ラベタロール)

ラベタロールは、CYP2D6阻害薬(弱い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

デムサー(一般名:メチロシン)

チロシン水酸化酵素阻害薬:
「カテコールアミンの生合成を抑制して過剰分泌を抑制」。(今日の治療薬2020,p.619)

腎機能低下時の用法・用量(メチロシン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(薬物動態学マスター術第2版、2019,pp.108-111)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)