抗不整脈薬(Vaughan Williams分類からSicilian Gambitへ)

2020年3月21日

怖い不整脈、怖くない不整脈

全ての不整脈が治療対象となるわけではない

不整脈とは、脈の打ち方がおかしくなる状態をいい、大きく分けて3つの種類がある。脈の遅くなる「徐脈」、速くなる「頻脈」、さらに、脈が飛ぶ「期外収縮」である。

そうした中で、全ての不整脈が治療対象となるわけではない。

「無害な不整脈もあり、その際は何もせずに放置します。診察の結果、治療が必要となった場合は、薬物療法、カテーテルアブレーション、ペースメーカー治療の中から治療方法を選択します。それぞれの治療方法にメリット、デメリットがあり、すべてを考慮した上で、医師から患者さんに最適と思われれる治療方法を提示します。患者さんがそれに同意するようであれば、その治療方法を実行いたしますが、他の治療方法を希望される場合もあります」。
(引用:不整脈なら東京ハートリズムクリニック/https://www.tokyo-heart-rhythm.clinic/)

薬物療法と共に、非薬物療法が重要である

不整脈の治療では、薬物療法と共に、非薬物療法(カテーテルアブレーション、ペースメーカーや植え込み型除細動器などによる治療)が重要である。

薬物療法に反応しない不整脈をそのまま継続治療していると、ますます治療に反応しなくなる。漫然と薬物投与を続けることは避けなければならない。

不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では、症候性AF(心房細動)の場合、薬物療法を全く行うことなく最初からアブレーションを施行する場合もあり得るとしている。

心房細動は、脳梗塞のリスクが高い疾患である。早期に薬物療法・非薬物療法を見極めることが大切となる。

不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン 班長、
筑波大学医学医療系循環器不整脈学教授 野上昭彦 先生

「今回、「不整脈非薬物治療ガイドライン」が8年ぶりに改訂された。カテーテルアブレーション(以下、アブレーション)治療の技術向上や植込み型心臓電気デバイスの進歩に伴い、不整脈非薬物治療が急速に発展したことを背景に、2018年改訂版では、最新のエビデンスを踏まえて内容が改められた。近年、増加が著しい心房細動(AF)に対するアブレーションの治療適応に関する記述では、症候性AFの場合、抗不整脈薬の投与を経ずにアブレーションを施行することも第一選択として妥当性があるとされた。また、AFに対するアブレーション周術期の抗凝固療法として、ダビガトラン継続投与もしくはワルファリン継続投与が推奨クラスⅠ、エビデンスレベルAと明記された」。
(引用:不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)改定のポイント(プラザキサ 製品紹介)
https://www.boehringerplus.jp/product-pages/prazaxa/product-description/guideline2018/interview/commentary)

Vaughan Williams分類からSicilian Gambitへ

Vaughan Williams分類は、「抗不整脈薬の分類法の標準として用いられてきた。この分類法は各種薬剤の薬理学的作用の特徴を簡潔に表現している点で優れており、多くの臨床家により利用されてきた」。(下記ガイドラインp.3)

「しかし、いくつかの問題点が指摘されて」おり、その改良を目指したSicilian Gambitは、「不整脈の発生機序に基づく論理的薬剤使用を推奨するもので、エビデンスに基づいたガイドラインとは根本的に異なるが、不整脈診療における意義と有用性は証明されつつあり、今回のガイドライン改訂にあたっても、その根幹となる概念である」。(同上p.3)

Sicilian Gambitには、従来含まれていなかった薬物(ジゴシン)を含めることができた。また、日本のみで発売されている薬物も含んだ日本版が発表されている。臨床的に有用な様々な情報が含まれており、今後の大規模臨床試験のエビデンス蓄積が期待されている。

抗不整脈剤のVaughan Williams 分類
http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/bunruihyo04.pdfhttp://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/clpharm/database/docs/bunruihyo04.pdf
(熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・平田純生 2014年12月作成)

不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)【ダイジェスト版】
Guidelines for Drug Treatment of Arrhythmias(JCS 2009)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_d.pdf

医薬品各種(抗不整脈薬)

Sicilian Gambitが提唱する薬剤分類枠組(日本版)(JSC2009,p.4)

リスモダン(一般名:ジソピラミド)

Naチャネル遮断薬(Ia群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(50%以上)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日300mgを分3
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    1日150~200mgを分1~2
  • CCr(20mg/dL未満)
    1日100mgを分1
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日100mgを分1
  • リスモダンR錠:徐放性製剤のため用量調節できないので使用を推奨しない(CCr<60mg/dL未満の場合)。
  • リスモダンR錠:透析患者を含む重篤な腎機能障害のある患者は禁忌(腎排泄で徐放性製剤のため適さない)。

シベノール(一般名:シベンゾリン)

Naチャネル遮断薬(Ia群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(60%)、減量法の記載無し(透析中の患者は禁忌)。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日300mgを分3、1日450mgまで増量可
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1回50mgを1日1~2回
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1日1回50mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回25mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    禁忌 (低血糖などの重篤な副作用を起こしやすい)

メキシチール(一般名:メキシレチン)

Naチャネル遮断薬(Ib群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

アスペノン(一般名:アプリンジン)

Naチャネル遮断薬(Ib群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

タンボコール(一般名:フレカイニド)

Naチャネル遮断薬(Ic群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

サンリズム(一般名:ピルシカイニド)

Naチャネル遮断薬(Ic群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日150mgを分3、1日225mgまで増量可
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1日1回50mg
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1日1回25mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1回25mgを48時間毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回25mgを48時間毎より開始

インデラル(一般名:プロプラノロール)

β遮断薬(Ⅱ群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

アンカロン(一般名:アミオダロン)

Kチャネル遮断薬(Ⅲ群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類)

薬物相互作用(CYP2C9、CYP2D6を阻害する)
血中濃度半減期が極めて長い⇒消失速度定数(ke)と血中濃度半減期(T1/2)⇔ 消失半減期(生物学的半減期)

ワソラン(一般名:ベラパミル)

カルシウム拮抗薬(フェニルアルキルアミン系)、頻脈性不整脈(Vaughan Williams分類Ⅳ)

「本剤は主として肝代謝酵素CYP3A4で代謝される。また、本剤はP‐糖蛋白の基質であるとともに、P‐糖蛋白に対して阻害作用を有する」。(ワソラン添付文書)

以下は、ダビガトランの場合(P‐糖蛋白関連、詳細はダビガトランの項へ)
参考(実践薬学2017,p.172)

併用注意(併用に注意すること):
「ダビガトランの抗凝固作用が増強することがあるので、ダビガトランエテキシラートの用量調節や投与間隔を考慮するなど、投与方法に十分注意すること」。(ワソラン添付文書)

ヘルベッサー(一般名:ジルチアゼム)

カルシウム拮抗薬(ベンゾチアゼピン系)、高血圧+頻脈(Vaughan Williams分類Ⅳ)

ベプリコール(一般名:ベプリジル)

カルシウム拮抗薬(そのほか系)、頻脈性不整脈・狭心症治療剤(Vaughan Williams分類Ⅳ)

ジゴシン(一般名:ジゴキシン)

ジギタリス製剤(強心配糖体)、うっ血性心不全、心房細動による頻脈など

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(75%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    急速飽和療法:初回0.5~1.0mg、以後0.5mgを6~8時間毎。比較的急速飽和療法・緩徐飽和療法も可。
    維持療法:1日0.25~0.5mg
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    維持療法:0.125mgを24時間毎
  • CCr(15mg/dL未満)
    維持療法:0.125mgを48時間毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    維持療法:0.125mgを週3~4回

ラニラピッド(一般名:メチルジゴキシン)

ジギタリス製剤(強心配糖体)、うっ血性心不全、心房細動による頻脈など

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    急速飽和療法:初回0.2~0.3mg、以後1回0.2mgを1日3回。比較的急速飽和療法・緩徐飽和療法も可
    維持療法:1日0.1~0.2mg
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    維持療法:0.05~0.1mgを24時間毎
  • CCr(15mg/dL未満)
    維持療法:0.025~0.05mgを24~48時間毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    維持療法:0.05mgを週3~4回

参考資料

薬物代謝酵素がかかわる薬物相互作用
ファルマシア Vol.50 No.7 pp.654-658(2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)