ビスホスホネート(BP)製剤
ビスホスホネート製剤(概略)
⇒「骨粗鬆症について」
ビスホスホネート製剤(BP)
(参考:今日の治療薬2020,pp.476-480)
- フォサマック、ボナロン(一般名:アレンドロン酸)
- ベネット、アクトネル(一般名:リセドロン酸)
- リカルボン、ボノテオ(一般名:ミノドロン酸)
- ボンビバ(一般名:イバンドロン酸)
BPは、内服薬では腸管からの吸収が悪く、血清中濃度は定量限界未満となる。
ただし、体内に入ったBPは、特異的に骨組織に取り込まれる。
破骨細胞の活性化及び生存を抑制することにより、骨吸収を抑制する。
その結果、優れた骨密度増加効果、骨折予防効果が示されている。
多くの国で、骨粗鬆症の第一選択薬と位置付けられている。
アレンドロン酸、リセドロン酸で同一評価(ガイドライン2015)
- 骨密度:上昇効果がある(A)
- 椎体骨折:抑制する(A)
- 非椎体骨折:抑制する(A)
- 大腿骨近位部骨折:抑制する(A)
ミノドロン酸(ガイドライン2015)
- 骨密度:上昇効果がある(A)
- 椎体骨折:抑制する(A)
- 非椎体骨折:抑制するとの報告はない(C)
- 大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)
イバンドロン酸(ガイドライン2015)
- 骨密度:上昇効果がある(A)
- 椎体骨折:抑制する(A)
- 非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
- 大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)
マグミットの相互作用:
「本剤は吸着作用、制酸作用等を有しているので、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある」。(以下、マグミット添付文書より引用)
- テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤、ビスホスホン酸塩系骨代謝改善剤
- これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。
- マグネシウムと難溶性のキレートを形成し、薬剤の吸収が阻害される。
ビスホスホネート製剤(BP)服用方法
- 起床後、朝食前に多めの水(約180mL)で服用する
薬を食後服用すると、薬の吸収率が大きく低下して、治療効果に影響を与える。
薬が喉や食道に引っかかると、そこで炎症や潰瘍を起こす恐れがある。 - 服薬後、朝食まで30分間、水以外飲まず横にならない
薬を服用してから30分以内に飲食すると、薬の吸収率が大きく低下して、治療効果に影響を与える。
服用後すぐに横になると、薬の成分が逆流して食道で炎症や潰瘍を起こす恐れがある。
顎骨壊死と非定型大腿骨骨折のリスク
近年、ビスホスホネート製剤(BP)投与患者において、歯科治療(抜歯などの観血処置)を契機とした顎骨壊死の発症が大きな問題となっている。(BP系薬剤関連顎骨壊死:Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaws : BRONJ)
侵襲的な歯科治療は、BP製剤(骨吸収抑制剤)投与前に、全て終わらせておくことが大切である。
また、BP製剤投与中に歯科治療の必要性が生じたならば、その都度BP製剤を中止しなければならないかもしれない。
BRONJの発生頻度は極めて低いとは言うものの、予防のためには、BP製剤投与前、投与中及び投与後の医家歯科の緊密な連携が求められる。
そして、それらいずれの時期においても、適切な口腔ケアが欠かせない。
ビスホスホネート製剤を長期使用すると、非定型大腿骨骨折のリスクが高まる。
BP製剤を3~5年使用した時点で、薬を続けるか変更するかの検討が必要である。
医薬品各種(ビスホスホネート(BP)製剤)
フォサマック、ボナロン(一般名:アレンドロン酸)
ビスホスホネート(BP)製剤:
「骨吸収抑制作用で骨密度増加、骨折防止。骨量減少を抑制する投与量では骨石灰化は障害しない」。(今日の治療薬2020,p.483)
- フォサマック錠(5mg、35mg)
- ボナロン錠(5mg、35mg)
- ボナロン経口ゼリー(35mg/2g/包)
- ボナロン点滴静注バッグ(900μg/100mL)
椎骨(背骨)だけでなく大腿骨の骨折予防効果が証明されている。
内服で証明されているのは、アレンドロン酸とリセドロン酸のみである。
ボナロンにはゼリーと点滴製剤がある。
嚥下困難な高齢者などで、錠剤が喉に詰まって食道を荒らすのを防ぐことができる。
【効能・効果】(5mg錠)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはアレンドロン酸として5mgを1日1回、毎朝起床時に水約180mLとともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。【効能・効果】(35mg錠)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはアレンドロン酸として35mgを1週間に1回、朝起床時に水約180mLとともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。(フォサマック錠・各添付文書)
相互作用:
併用注意(併用に注意すること)
- 「薬剤名等」カルシウム、マグネシウム等の金属を含有する経口剤:
カルシウム補給剤、制酸剤、マグネシウム製剤等- 「臨床症状・措置方法」本剤の服用後少なくとも30分経ってから服用すること。
- 「機序・危険因子」本剤は多価の陽イオン(Ca、Mg等)とキレートを形成することがあるので、併用すると本剤の吸収を低下させる。
そのほか、テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤もキレートを形成しやすい薬物である。
ベネット、アクトネル(一般名:リセドロン酸)
ビスホスホネート(BP)製剤:(今日の治療薬2020,p.483)
- ベネット錠(2.5mg、17.5mg、75mg)
- アクトネル錠(2.5mg、17.5mg、75mg)
椎骨(背骨)だけでなく大腿骨の骨折予防効果が証明されている。
内服で証明されているのは、アレンドロン酸とリセドロン酸のみである。
リセドロン酸には、1日1回、週1回、そして月1回の製剤がある。
なお、骨ページェット病(17.5mg錠のみ)の適応がある。
【効能・効果】(2.5mg錠)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして2.5mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。【効能・効果】(17.5mg錠)
〇骨粗鬆症
〇骨ページェット病【用法・用量】
〈骨粗鬆症〉
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして17.5mgを1週間に1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。
〈骨ページェット病〉
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして17.5mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに8週間連続経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。【効能・効果】(75mg錠)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして75mgを月1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。(ベネット錠・各添付文書)
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
- CCr(60mg/dL以上)、常用量
骨粗鬆症:[2.5mg]1日1回2.5mg。[17.5mg]1週間に1回17.5mg。[75mg]1ヵ月に1回75mg
骨ページェット病:[17.5mg]1日1回17.5mgを8週間連日 - CCr(30~60mg/dL未満)
慎重投与(排泄が遅延するおそれがある) - CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
禁忌(CCr30mL/min未満では排泄が遅延するおそれがある)
リカルボン、ボノテオ(一般名:ミノドロン酸)
ビスホスホネート(BP)製剤:
「日本で創薬された製剤。日本人での骨折予防効果が立証」。(今日の治療薬2020,p.483)
- リカルボン錠(1mg、50mg)
- ボノテオ錠(1mg、50mg)
日本人の椎骨(背骨)の骨折予防効果が実証されている。
なお、大腿骨への効果は臨床試験中である。
【効能・効果】(1mg錠)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはミノドロン酸水和物として1mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水(又は
ぬるま湯)とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。【効能・効果】(50mg錠)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはミノドロン酸水和物として50mgを4週に1回、起床時に十分量(約180mL)の水(又はぬるま湯)とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。(リカルボン錠・各添付文書)
ボンビバ(一般名:イバンドロン酸)
ビスホスホネート(BP)製剤:
「月1回のワンショット静注(又は経口)で骨粗鬆症治療が可能」。(今日の治療薬2020,p.484)
- ボンビバ錠(100mg)
- ボンビバ静注シリンジ(1mg/1mL)
月1回製剤(錠、静注シリンジ)である。
【効能・効果】(100mg錠)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはイバンドロン酸として100mgを1カ月に1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも60分は横にならず、飲食(水を除く)及び他の薬剤の経口摂取を避けること。【効能・効果】(1mgシリンジ)
骨粗鬆症【用法・用量】
通常、成人にはイバンドロン酸として1mgを1カ月に1回、静脈内投与する。(ボンビバ・各添付文書)
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
- CCr(60mg/dL以上)、常用量
1カ月に1回100mg、起床時 - CCr(30~60mg/dL未満)
減量の必要なし(Up to Date) - CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
投与を推奨しない (Up to Date)
関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)
1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
⇒サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
『サリドマイド事件(第7版)』
世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか(図表も入っています)
www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00V2CRN9G/
2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。
Web管理人
山本明正(やまもと あきまさ)
1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)