骨粗鬆症について

2020年12月15日

骨代謝

骨もほかの器官と同様に、常に新陳代謝を繰り返している。
つまり、古い骨が壊されて(骨吸収)、その代わりに新しい骨が作られている(骨形成)。
これを骨代謝といい、破骨細胞(骨吸収)と骨芽細胞(骨形成)が関わっている。

  • 破骨細胞
    古い骨を壊す(骨吸収を行う)細胞である。
    古くなった骨のカルシウムやコラーゲンを分解・吸収して、古い骨を壊す働きをする。
  • 骨芽細胞
    新しい骨を作る(骨形成を行う)細胞である。
    骨の表面にコラーゲンを作り、そこに血液から運ばれたカルシウムを付着させて、新しい骨を作る。

骨吸収と骨形成がバランスよく行われることで、健康な骨が維持されている。

注)骨吸収とは、骨から血中にカルシウムが吸収されることをいう。
その結果、骨のカルシウムは減ることになる。

⇒「ビスホスホネート(BP)製剤
⇒「活性型ビタミンD3製剤(エディロールなど)
⇒「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(エビスタなど)

骨粗鬆症の定義

  • 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015
    http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf
  • 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)

骨粗鬆症の定義:WHO(世界保健機関)

骨粗鬆症は骨折リスクが増大した状態である。(ガイドライン2015,p.2)

「WHO(世界保健機関)では、「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義している」。

つまり、「WHOは、骨粗鬆症は疾患であり、骨折を生じるに至る病的過程であり、骨折は結果として生じる合併症の一つであるとした」。

なお、2000年米国の国立衛生研究所(NIH)で開催されたコンセンサス会議では、骨粗鬆症について次のように定義している。

「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」。

そして、コンセンサス会議2000では、骨強度は骨密度と骨質の二つの要因によって規定されるとした。
つまり、従来の骨密度を中心とした考え方を改めて、骨質の役割が新たに注目されるようになった。

骨粗鬆症の診断基準とその対策

骨粗鬆症の診断は、「既存脆弱性骨折の有無と骨密度」により行う。(診断基準2012)

原発性骨粗鬆症の診断基準は、「脆弱性骨折なしの場合、骨密度がYAMの70%未満」としている。
(YAM:若年成人平均値(20~44 歳))

ヒトの骨量は、20~44歳で最大骨量を迎える。
そしてその後は、年齢を重ねるごとに骨吸収と骨形成のバランスが崩れてゆく。
その結果、骨はもろくなりスカスカとなる。

骨粗鬆症をめぐっては以下の観点が重要である。(ガイドライン2015,序文ⅱ)

  • 成長期に骨量を十分に増加させて高い最大骨量を獲得すること。
  • 女性においては閉経後急速に骨量が減少するので、閉経後女性の急速な骨量減少者を早期にスクリーニングし、骨量のさらなる減少をくい止めること。
  • 骨量がすでに著しく低下している高齢者においては、骨量の維持とともに転倒の防止が重要である。

続発性骨粗鬆症とは

「骨粗鬆症の病態は骨吸収と骨形成の平衡状態の破綻による骨量減少(骨密度低下)と酸化ストレスの蓄積などによる骨質の劣化であり、このような病態を惹起する遺伝的素質、生活習慣、自然閉経および加齢以外の特定の原因が認められる場合に、それを続発性骨粗鬆症と称する」。(ガイドライン,p.127)

「糖尿病は骨密度に依存せずに骨折リスクを上昇させる。その原因は骨質の劣化」と言われている。糖尿病以外では、「ステロイドや飲酒、タバコ、そして関節リウマチ」もその原因となる。(実践薬学p.148)

「罹病期間が長くHbA1cが高くインスリンを必要とするような糖尿病では、骨質劣化が原因となって大腿骨近位部骨折のリスクが上昇する。薬物治療の開始は原発性骨粗鬆症に対する薬物治療開始基準を参考にする。SERM、ビスホスホネート藥、テリパラチドは糖尿病関連骨粗鬆症にも有効と考えられる」。(ガイドライン,p.131)

「骨粗鬆症は長期ステロイド薬(GC)治療における最も重要な副作用の1つであり、長期GC治療を受けている患者の30~50%に骨折が起こるとの報告がある」。(ガイドライン,p.138)

「ステロイド性骨粗鬆症(glucocorticoid-induced osteoporosis:GIO)は患者数が多く、また小児から高齢者まで、閉経前女性や男性にも幅広く起きるため、社会生活への影響は大きい」。(ガイドライン,p.138)

「脂質異常症と高血圧についてはさまざまな因子が関与することもあり、疾患自体の骨への影響については一定の見解は得られていない。一方、COPDによる骨密度低下と骨折リスク上昇の相関についてはエビデンスが集積されつつある。COPDでは男性でも骨折リスクが高まること、また、椎体骨折による脊柱変形は呼吸機能低下に悪影響を及ぼすことから、性別にかかわらずCOPD患者では骨粗鬆症の評価が推奨される」。(ガイドライン,p.135)

「RAは骨折リスクの上昇をきたす疾患である。日本人女性RA患者ではビタミンD欠乏例が多いことが予想され、食物やサプリメントによるビタミンDの積極的な摂取や適度な日光浴などの生活指導が望まれる(グレードB)。骨粗鬆症治療薬の中でRA患者に対し有意な骨折抑制効果が確認されているのは、ビスホスホネート薬(グレードA)とテノスマブ(グレードA)である」。(ガイドライン,p.137)

「骨折リスクの上昇を来すと考えられている内分泌疾患(中略)のなかで骨折リスクがもっとも広く検討されているのが原発性副甲状腺機能亢進症である」。(ガイドライン,p.128)

「CKDと骨折罹患率はいずれも加齢とともに上昇するため、高齢者での両者の併存率は高くなる。因果関係は必ずしも明確ではなかったが、最近、両疾患ともにもう一方の病態を増悪させることが示されてきている。日本骨粗鬆症学会の「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド」ではCKDを糖尿病と並んで二次的に骨折リスクを上昇させる疾患と述べている」。(ガイドライン,p.132)

「乳癌または前立腺癌に対する内分泌療法は有意な骨密度低下を伴う(レベルⅠ)。乳癌に対するアロマターゼ阻害薬については有意な骨折リスクの上昇を伴い(レベルⅠ)、前立腺癌に対するADTについても骨折の増加を伴う可能性が高い(レベルⅡ)」。(ガイドライン,p.141)

「チアゾリジン薬は、閉経後女性において骨量を減少させ骨折リスクを高める(レベルⅡ)。SSRIは骨折リスクを高める(レベルⅠ)。プロトンポンプ阻害薬(レベルⅣa)、抗けいれん薬(レベルⅣb)ならびにループ利尿薬(レベルⅣa)は、長期間の使用により骨折リスクを高める可能性がある。抗凝固薬ならびに抗うつ薬の骨折リスクについては今後の検討が必要である」。(ガイドライン,p.143)

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2019年10月12日(第3版発行)
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2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)