気管支喘息治療薬(吸入薬)

2020年5月26日

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気管支喘息患者の気道は慢性炎症を起こしている

気管支喘息の基本病態は、気道の慢性的な好酸球性炎症である。そして喘息とは、喘ぐ(あえぐ)ように息をすることから名付けられた病名である。

炎症のある気道はとても敏感になっており、ホコリやタバコ、ストレスなどのわずかな刺激でも気道が狭くなってしまう。そこに粘度の高い痰が詰まると、咳、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼーやヒューヒュー)からさらには呼吸困難に陥り、時には死に至ることがある。

成人気管支喘息を完治させることは難しい。そこで、気管支喘息の治療目標は、症状をコントロールし、正常な日常生活や呼吸機能を維持することになる。

治療は長期にわたる。

適切な治療を継続しないと、気道壁が厚く硬くなり気道は狭くなる。これを「気道のリモデリング」という。リモデリングが進行すると、さらに喘息発作を起こしやすい状態となり治療が難しくなる。

ICS(吸入ステロイド)+LABA(長時間作用性β2刺激薬)

気管支喘息の治療の大原則は、ICS(吸入ステロイド)による気道炎症の抑制である。そして、ICS単剤でコントロール不十分な場合には、気管支拡張薬(β2刺激薬)を加えて気道閉塞を改善するための治療が行われる。

実臨床においては、吸入ステロイド(ICS)に加えて、長時間作用性β2刺激薬(LABA:long acting β2 agonist)を併用するため、ICS/LABA配合薬が使用されることが多い。

吸入ステロイドの違い(フルチカゾン/ブデソニドなど)

ステロイドは、過剰な免疫を抑えて炎症を鎮める作用を有している。

ICS(吸入ステロイド)の全身性の副作用は、経口薬や注射薬のステロイドに比べてはるかに少ない。ただし、ICS(吸入ステロイド)を吸入後は「うがいをする」ことが必須である。

「うがいをする」ことは、全身へのステロイド吸入を少なくするとともに、「口腔・咽頭カンジダ症、嗄声、咽頭刺激による咳嗽などの局所副作用の予防にも有効である」。(今日の治療薬2019,p.704)

  • フルタイド(一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル)
      アドエア(ICS/LABA)にも配合されている。
      フルティフォーム(ICS/LABA)にも配合されている。
  • パルミコート(一般名:ブデソニド)
      シムビコート(ICS/LABA)にも配合されている。
  • オルベスコ(一般名:シクレソニド)
  • アニュイティ(一般名:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)
      レルベア(ICS/LABA)にも配合されている。

フルチカゾンの免疫抑制・抗炎症作用は、ブデソニドの10倍くらい強い。また、副作用のリスクも高い。

フルチカゾンは、CYP3A4の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ブデソニドは、CYP3A4の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

β2刺激薬の違い(サルメテロール/ホルモテロールなど)

β2刺激薬は、気管支平滑筋弛緩作用により気管支を広げて呼吸を楽にする作用を有する。また、「粘液繊毛クリアランスを改善し気道分泌液の排泄を促進する作用もある」。(今日の治療薬2019,p.700)

1)サルブタモール(SABA)は水溶性である。β2受容体に速やかに直接結合するものの、その作用は長続きしない。

2)サルメテロール(LABA)は、サルブタモールの基本骨格に長い脂溶性側鎖が結合した形をしている。サルメテロールは、水溶性から脂溶性になることで、β2受容体の選択性を高めている。

サルメテロールは、まず最初に脂溶性の高い細胞膜に取り込まれ、細胞膜内を拡散・移動(translocation)しながら、β2受容体の活性部位に到達する。これは、コニールなど(Ca拮抗薬)のメンブランアプローチと同じ仕組みである。

その後、サルメテロールの脂溶性側鎖は、β2受容体の底部にある非活性部位と強く結合する。そうした状態を長く保つことによって、活性部位に結合した親水性側鎖の効果を長く発揮することができる。つまり、1日2回の吸入で24時間効果を持続することができる。

3)ビランテロール(LABA)は、サルメテロールと基本骨格は全く同じと言ってよい。自由度を高める酸素(O)原子と脂溶性を高める塩素(cl)原子を2つ導入することによって、β2受容体との結合時間を延長して1日1回の吸入を実現している。

4)ホルモテロール(LABA)の脂溶性側鎖は、サルメテロールやビランテロールとは異なっている。そして、全体としての親水性と脂溶性のバランスが絶妙になっており、即効性と持続性を併せ持っている。

ホルモテロールでは、β2受容体の活性部位にSABAのように速やかに直接作用するルートと、一旦「細胞膜に取り込まれて貯蔵庫(depot)を形成し、そこから徐々に放出されて活性部位に到達するルート」の2つが存在する。p.67

長時間作用性β2刺激薬(LABA)

喘息の長期管理では、LABAの吸入薬が中心的に使用される(ICSの併用が必須)。ICSを併用する限り、LABAの長期使用に伴う増悪リスクは増加しない。

  • セレベント(一般名:サルメテロール)
      アドエア(ICS/LABA)にも配合されている。
  • オーキシス(一般名:ホルモテロール)
      シムビコート(ICS/LABA)にも配合されている。
      フルティフォーム(ICS/LABA)にも配合されている。
  • 単剤無し(一般名:ビランテロール)
      レルベア(ICS/LABA)にも配合されている。
      アノーロ(LAMA/LABA)にも配合されている。
  • オンブレス(一般名:インダカテロール)
      ウルティブロ(LAMA/LABA)にも配合されている。
  • 単剤無し(一般名:オロダテロール)
      スピオルト(LAMA/LABA)にも配合されている。

短時間作用性β2刺激薬(SABA)

短時間作用性β2刺激薬(SABA)は、喘息の急性増悪時に使用する。ただし、気道炎症の改善作用はないので注意が必要である。SABAの使用頻度を喘息コントロールの指標として、週1回以上吸入している場合には、ICSの増量も含めた治療のステップアップを考慮する。(今日の治療指針2019,p.706)

  • メプチン(一般名:プロカテロール)
  • サルタノール、ベネトリン(一般名:サルブタモール)

自分に適した吸入器を使って正しい吸入を続けることが大切

定量噴霧吸入器(MDI)は、息を吸う力の弱い高齢者や子どもに適する。ただし、薬を出すタイミングと息を吸い込むタイミングを合わせる必要がある。吸入はゆっくり行う。なお、噴霧剤(ガス)が使用されているので、においや刺激がある。

ドライパウダー吸入器(DPI)では、吸入器に充填されている粉末状の薬を、自分の力で吸い込む。強く早く吸い込む必要があるので、吸う力が弱いと必要な量を吸い込めないことがある。

また、ソフトミスト定量吸入器(SMI:Soft Mist Inhaler)といって、ゆっくりと噴霧される吸入液を吸い込むタイプの吸入器もある。

正しい吸入方法を身につけよう

正しい吸入方法を身につけよう/環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/feature01.html

喘息の治療に大きな影響を与えることの一つに、正しく吸入することが挙げられる。喘息の吸入治療を続けているうちに、だんだんと自己流の間違った癖を身に付けてしまうことが多い。そうすると、薬の効き目が不十分となり病状が悪化することもある。時々、吸入薬の正しい使い方を再確認する必要がある。(児島2017,p.173)

各種の喘息吸入薬(ICS+LABA)

アドエア(一般名:フルチカゾン/サルメテロール)

通常は、1回1~2吸入を1日2回(合計2~4吸入)である。

サルメテロール(LABA)は、効果発現まで15分程度かかる。また、吸入量を増やしても効果はそれほど変わらない(用量反応性は無い)。

したがって、アドエアは喘息発作時の使用には適さない。レルベア(ビランテロール含有)と同じく、固定の用法用量を遵守して定期的に吸入を繰り返すタイプの薬剤である。p.72

[気管支喘息の治療に使用する場合]
・この薬は、毎日規則正しく使用する薬で、喘息の発作を速やかに鎮める薬ではありません。発作時には、別に処方された発作止め薬を使用するか、ただちに受診してください。(アドエア患者向医薬品ガイドより)

サルメテロール(LABA)は、β2選択性が非常に高いため、循環器系の副作用は少ないと考えられる。pp.72-73

アドエアには、定量噴霧吸入器(MDI、エアゾール)とドライパウダー吸入器(DPI、ディスカス)の両タイプがある。

シムビコート(一般名:ブデソニド/ホルモテロール)

通常は、1回1~2吸入を1日2回(合計2~4吸入)である。

ホルモテロール(LABA)は、効果の発現が速い。また、用量依存的に気管支拡張効果が高くなるので、喘息発作が起きた場合には頓用で使うことができる。

つまりシムビコートは、喘息の長期管理薬(コントローラー)としてだけではなく、喘息の発作治療薬(リリーバー)としても使用することができる。

シムビコートは、SMART療法(single inhaler maintenance and reliever therapy)として、「維持療法に加えて頓用吸入する」ことのできる薬剤である。

ただし、ホルモテロール(LABA)に用量反応性があるということは、「吸えば吸うほど、動悸や不整脈といった循環器系の副作用リスクが高くなることを意味」している。p.71

服薬指導の難しい薬物である。「SMART療法を実施する上で、患者選択や患者教育」が重要である。患者任せの薬物治療になることは絶対に避けなければならない。

【用法・用量】
1. 気管支喘息通常、成人には、維持療法として1回1吸入(ブデソニドとして160μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として4.5μg)を1日2回吸入投与する。
なお、症状に応じて増減するが、維持療法としての1日の最高量は1回4吸入1日2回(合計8吸入:ブデソニドとして1280μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として36μg)までとする。
維持療法として1回1吸入あるいは2吸入を1日2回投与している患者は、発作発現時に本剤の頓用吸入を追加で行うことができる。本剤を維持療法に加えて頓用吸入する場合は、発作発現時に1吸入する。数分経過しても発作が持続する場合には、さらに追加で1吸入する。必要に応じてこれを繰り返すが、1回の発作発現につき、最大6吸入までとする。
維持療法と頓用吸入を合計した本剤の1日の最高量は、通常8吸入までとするが、一時的に1日合計12吸入(ブデソニドとして1920μg、ホルモテロールフマル酸塩水和物として54μg)まで増量可能である。(シムビコート添付文書より)

フルティフォーム(一般名:フルチカゾン/ホルモテロール)

フルティフォームは、シムビコートと同じくホルモテロール(LABA)を含有している。したがって、シムビコート同様にSMART療法に適していると思われるが、添付文書上は適応にはなっていない。

レルベア(一般名:フルチカゾン/ビランテロール)

ビランテロール(LABA)は、効果発現までは時間がかかる。ただし、サルメテロール(LABA)の15分程度よりは早いものと思われる。とはいうものの、吸入量を増やしても効果はそれほど変わらない(用量反応性は無い)。

したがって、レルベアは喘息発作時の使用には適さない。アドエア(サルメテロール含有)と同じく、固定の用法用量を遵守して定期的に吸入を繰り返すタイプの薬剤である。p.72

各種の喘息吸入薬(LAMA+LABA)

アノーロ(一般名:ウメクリジニウム/ビランテロール)

ウルティブロ(一般名:グリコピロニウム/インダカテロール)

スピオルト(一般名:チオトロピウム/オロダテロール)

各種の喘息吸入薬(単剤)

フルタイド(一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル)

吸入ステロイド

オルベスコ(一般名:シクレソニド)

吸入ステロイド

メプチン(一般名:プロカテロール)

短時間作用型β2刺激薬(SABA)

サルタノール(一般名:サルブタモール)

短時間作用型β2刺激薬(SABA)

オンブレス(一般名:インダカテロール)

長時間作用型β2刺激薬(LABA)

スピリーバ(一般名:チオトロピウム)

長時間作用型抗コリン薬(LAMA)

エクリラ(一般名:アクリジニウム)

長時間作用型抗コリン薬(LAMA)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)