気管支喘息、COPD治療薬(吸入以外)

2020年11月7日

咳が長く続く場合には、原因を特定することが大切

(児島2017,p.181)

「咳は体力を奪い、また肋骨の骨折にもつながる」。
適切な薬物を適切に使い分けることが大切である。

とはいうものの、鎮咳薬が全ての咳に効くわけではない。
咳が長引く場合、それぞれの原因疾患別に根本的な治療が必要である。

〇喘息による咳:
鎮咳薬は逆効果となる。
ステロイド吸入薬や抗ロイコトリエン薬を使用する。

〇逆流性食道炎による咳:
胃酸を抑える薬(PPIやH2ブロッカー)が必要である。

〇副鼻腔炎(蓄膿症)による咳:
副鼻腔炎を根本的に治療するため、ステロイド点鼻薬や抗菌薬などを使用する。

〇就寝時横になると咳がひどくなるのは、心不全の兆候かもしれない。
心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液を送り出すことができなくなった状態をいう。
心不全状態では、全身に水分がたまってしまうので、体重増加(1週間で2kg以上の増加)や、横になると咳が出たり息苦しくなったりする。

〇子どもの咳は、家族の喫煙が原因のこともある。

薬物動態学から

分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)

テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg

医薬品各種(気管支喘息薬・吸入以外)

テオドール(一般名:テオフィリン)

テオフィリン薬(キサンチン誘導体):
「血中濃度を上昇させる併用薬に注意」。(今日の治療薬2020,p.730)

「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)
注)テオフィリンは、上記「どんぐり」のリストでは漏れている。

テオフィリンの血中濃度に応じて、非有効域から有効域、中毒域さらに痙攣または死亡に至る。中毒域では、血中濃度に応じて、消化器症状、心拍増加、呼吸困難、そして不整脈さらには痙攣が起きる。

「テオフィリンはテオフィリン中毒の初期症状が起こり得る20μg/mLまでは線形、それ以上になると非線形に血中濃度が上昇していく」。テオフィリンは、CYP1A2の基質薬であり、喫煙はCYP1A2を誘導する。体調が悪化して喫煙ができなくなった場合に、テオフィリンの代謝が阻害されて血中濃度が一気に上昇すると、死に至ることも考えられる。

「テオフィリンの血中濃度と効果および副作用との関係」(実践薬学2017,p.152)
「テオフィリンの投与量と血中濃度の関係」(実践薬学2017,p.153)

テオフィリンは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

テオフィリンの定常状態平均血中濃度を求める

(どんぐり2019,p.90)

63歳女性、体重40kg、非喫煙者、風邪をひいたあと、咳の症状が残っている
テオフィリン徐放錠200mg、1回1錠、1日2回朝食後・就寝前、14日分

消失半減期(hr)= 14.8±2.8(hr)
投与間隔/消失半減期=12/14.8=0.81<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=1.0
塩係数(S)=1.0
1回投与量(Dose)=200mg
投与間隔(τ)=12時間
クリアランス(CL)=(Vd×Ke)
=0.035L/hr/kg(60歳以上の高齢者のクリアランス)

平均血中濃度(Css.ave)
=(1.0×1.0×200mg/12hr)/0.035L/hr/kg×40kg(体重)
=16.67/1.4
=11.9mg/L⇒11.9μg/mL

テオフィリンの有効血中濃度:
5~20μg/mL
有効血中濃度の範囲に入っている。

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)