防御因子増強薬(ムコスタなど)
医薬品各種(防御因子増強薬)
内因性PGは攻撃因子、防御因子の双方の調整役であるとされているが、粘膜防御因子増強薬の多くは内因性PG増強作用が報告されている。(今日の治療薬2020,p.757)
NSAIDs(ロキソプロフェンなど)の胃腸障害防止のため、防御因子増強薬が併用されることは多い。
中でも、レバミピドとテプレノンがよく使われている。
両者共に胃粘膜保護薬であり、胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカーやPPI)よりもやさしめの薬物である。
また、両者の治療効果には明らかな違いは認められていない。
ただし、NSAIDsの併用薬としては、食事の影響を受けない(吸収に差がでない)レバミピドが適している。
万一空腹時に服用することになったとしても、胃腸障害の程度を極力抑えることができると考えられる。
もちろんその場合でも、胃の負担をできるだけ軽くする工夫をすることが大切である。
⇒「急性腰痛にはNSAIDs(ロキソニンなど)がお薦め」
(もし、空腹時に飲む場合は、軽食をとるか牛乳で飲めば、胃の負担が軽くてすむ)
一方、セルベックスを空腹時服用した場合、吸収が非常に悪くなる。
AUC(血清中濃度曲線下面積)は、健康成人男子で23%、胃潰瘍患者で98%低下した。
(児島2017,p.229より)、参考資料はセルベックス・インタビューフォームなど。
なお、厳密には、サイトテックやネキシウムなど、保険適用のある薬物を使う必要がある。
(レバミピドやテプレノンは保険適用とはなっていない)
各剤の効能・効果は以下のとおりである。
ロキソニン、セルベックス
「胃潰瘍、急性・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善」
サイトテック
「非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍」
ネキシウム(一部のみ)
「非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」
サイトテック(一般名:ミソプロストール)
プロスタグランジン製剤:
「PGE1誘導体。攻撃因子抑制作用と防御因子強化作用の両方あり」。(今日の治療薬2020,p.776)
【効能・効果】
非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍
PGE1製剤ではあるが、下痢などの副作用は少ない。
低用量で防御因子増強、高用量で胃酸分泌抑制作用を有する。
H2ブロッカー、PPIと比べて再発防止効果が強く、H2ブロッカー、PPI抵抗性潰瘍に併用効果が期待される。
NSAIDsによる潰瘍予防に有効性を示す。
(今日の治療薬2020,p.757要約)
ムコスタ(一般名:レバミピド)
防御因子増強薬:
「胃粘膜PG増加作用。胃粘膜保護作用、活性酸素抑制作用、胃粘膜への炎症性細胞浸潤抑制作用、損傷胃粘膜修復作用」。(今日の治療薬2020,p.776)
胃潰瘍
1回100mg、1日3回(朝、夕、就寝前)
急性・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善
1回100mg、1日3回
顆粒(20%、200mg/g)
錠剤(100mg)
セルベックス(一般名:テプレノン)
防御因子増強薬:
「テルペン系、胃粘膜保護作用。胃粘膜PGE2、PGI2増加作用」。(今日の治療薬2020,p.776)
胃潰瘍、急性・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善
1回50mg、1日3回(食後)
細粒(10%、100mg/g)
カプセル(50mg)
ノイエル(一般名:セトラキサート)
防御因子増強薬:
「防御・攻撃両面に作用。胃粘膜微小循環改善が主作用」。(今日の治療薬2020,p.778)
ソロン(一般名:ソファルコン)
防御因子増強薬:
「胃組織内PG増加作用。胃粘膜保護・組織修復」。(今日の治療薬2020,p.778)
アプレース(一般名:トロキシピド)
防御因子増強薬:
「胃粘膜血流増加作用。抗ウレアーゼ活性。組織修復促進作用」。(今日の治療薬2020,p.778)
プロマック(一般名:ポラプレジンク)
防御因子増強薬:
「亜鉛を含み胃粘膜損傷部位に付着し、創傷治癒促進。抗酸化作用、膜安定化作用」。(今日の治療薬2020,p.779)
ガストローム(一般名:エカベト)
防御因子増強薬:
「環状テルペン系誘導体。胃粘膜保護・抗ペプシン作用、抗H.pylori作用。内因性PG量増加」。(今日の治療薬2020,p.776)
アルロイドG(一般名:アルギン酸)
防御因子増強薬:
「粘膜保護作用、止血作用。液剤であり、経管投与も可能。止血治療後に用いられる」。(今日の治療薬2020,p.778)
マーズレンS(一般名:アズレンスルホン酸/L-グルタミン)
防御因子増強薬:
「組織修復作用、抗炎症作用、血管新生作用など」。(今日の治療薬2020,p.779)
ウルグート(一般名:ベネキサート)
防御因子増強薬:
「胃粘膜に直接作用し、胃粘膜血流増加作用・胃粘膜PGE2、PGI2増加作用」。(今日の治療薬2020,p.778)
コランチル(一般名:ジサイクロミンなど配合)
防御因子増強薬:
「鎮痙・制酸作用」。(今日の治療薬2020,p.780)
抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)
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⇒サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2019年10月12日(第3版発行)
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Web管理人
山本明正(やまもと あきまさ)
1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)