急性腰痛にはNSAIDs(ロキソニンなど)がお薦め

2019年11月5日

急性の腰痛や座骨神経痛に対する治療薬としては、ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が推奨度No.1(「腰痛診療ガイドライン2019」p.34)となっている。

注)NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug
注)『腰痛診療ガイドライン2019』(編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/腰痛診療ガイドライン策定委員会)

各種の痛みにロキソニンがよく使われている

NSAIDsはプロスタグランジンを抑えて痛みを軽減する

組織が損傷を受けると、ホスホリパーゼA2によって細胞膜にあるリン脂質からアラキドン酸が遊離される。さらにそこから、プロスタグランジンなどの化学伝達物質が合成されて、損傷組織へ放出される。いわゆるアラキドン酸カスケードである。

NSAIDs(ロキソニンなど)は、酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」を阻害することによって、炎症や痛み・発熱の原因となるプロスタグランジンの生合成を抑制する。

シクロオキシゲナーゼ(COX)には、2つのサブタイプ(アイソザイム)が存在しており、それぞれプロスタグランジンの生合成を促進する。

  • COX-1:生体の恒常性維持に関与しており、大部分の正常細胞や組織では定常的に発現している。
    (産生されたプロスタグランジンは、胃腸の粘膜保護作用などにも関わっている)
  • COX-2:けがなどで組織が傷ついたときに誘導される。また、腎臓や脳の特定の領域では定常的に発現している。
    (産生されたプロスタグランジンは、炎症や痛み・発熱などに関わっている)

NSAIDsには解熱作用もある

発熱時には、種々のサイトカインの産生が促進されて、視床下部にある体温調節中枢に働きかける。その結果、PGE2の合成が増加して体温が上昇する。NSAIDsは、発熱時に産生されるPGE2の合成を阻害することで解熱作用をもたらす。

ロキソニン禁忌:消化性潰瘍のある患者

ロキソニンは、COX1阻害作用とCOX2阻害作用を併せ持っている。

そのため、痛み止めとして服用した場合でも、胃腸の粘膜上皮細胞に定常的に発現しているCOX-1を阻害してしまう。つまり、胃腸の粘膜を保護する働きを持つプロスタグランジンを減少させることになる。

したがって、消化性潰瘍のある患者では【禁忌】である。ロキソニン錠の添付文書では、「プロスタグランジン生合成抑制により、胃の血流量が減少し消化性潰瘍が悪化することがある」としている。

その結果、小腸や大腸に潰瘍ができて腸管が狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)することもある。自覚症状として、突然の激しい腹痛や吐き気・嘔吐(おうと)などが起こることがある。

注)ロキソニンの副作用に「腸の狭窄・閉塞」が追加
厚労省が2016年3月22日付けで添付文書改訂を指示
過去3年間における国内副作用症例のうち、小腸・大腸の狭窄・閉塞関連症例は6例、そのうち因果関係が否定できないものが5例(死亡例はなし)報告されている。

食後すぐに多めの水(コップ1杯)で飲む

「おくすり110番」は、ロキソニンの服用方法について次のように書いている。

「食後すぐに多めの水(コップ1杯)でお飲みください。頓服の場合も、できるだけ食後にあわせて飲んだほうがよいでしょう。もし、空腹時に飲む場合は、軽食をとるか牛乳で飲めば、胃の負担が軽くてすみます」。

日頃から胃腸の弱い人や胃潰瘍の既往のある人は、医師や薬剤師にそのことをしっかり伝えることが大切だ。

そうすれば、必要に応じて「ムコスタ(一般名:レバミピド)」を一緒に処方してもらえるかもしれない。レバミピドには、胃粘膜を保護する作用がある。また、食事の影響を受けないので、空腹時に服用することも多い鎮痛薬と一緒に飲むのに適している。

いずれにしても、 NSAIDs(ロキソニンなど) を長期間服用することは、できるだけ避けるに越したことはない。

ロキソニン禁忌:重篤な腎障害のある患者

「急性腎障害、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある」。(添付文書より)

プロスタグランジンの生合成が抑制されると、糸球体輸入細動脈が収縮し、腎血流量が低下して急性腎不全を起こすことがある。尿量の減少に注意する。また長期間の投与により、体液量が増加して、体重増加・浮腫が起こることがある。

ロキソニン禁忌:重篤な心機能不全のある患者

「腎のプロスタグランジン生合成抑制により浮腫、循環体液量の増加が起こり、心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある」。(添付文書より)

ロキソニンとそのほかの鎮痛薬を比べてみる

NSAIDsの薬物動態

  • ロキソニン錠60㎎
    Tmax:0.45±0.03(h)、Cmax:5.04±0.27(μg/mL)、t1/2:1.22±0.07(h)
  • ボルタレン錠25㎎
    Tmax:2.72±0.55(h)、Cmax:415±57(ng/mL)、t1/2:1.2(h)
  • ボルタレンサポ25mg・50mg
    Tmax:0.81~1.00(h)、Cmax:570~881(ng/mL)、t1/2:1.3(h)
  • セレコックス錠100㎎
    Tmax:2±1.4(h)、Cmax:553±212.2(ng/mL)、t1/2:7±3.2(h)
  • (参照:山村2016,p.77より)

速く効くロキソニン、強く効くボルタレン

ロキソニンは、血中に入るスピードが速いため、内服してから15分、遅くとも1時間以内に効き始める。ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)は、多少効き始めるのが遅い。(参照:Tmaxの比較)

鎮痛薬としてはロキソニンよりもボルタレンの方が強力である。ただしその分、胃粘膜を傷つける作用も強い。

速さと強さを兼ね備えたボルタレンサポ(坐剤)

投与経路を変えることによって、

  • 内服よりも速く効く
  • 胃腸障害が少ない
  • 1歳の幼児から使える

ただし、サポ(坐剤)は冷所保存となる。

速く効くロキソニン、長く効くセルベックス

ロキソニンとセルベックス(一般名:セレコキシブ)の鎮痛効果はほぼ同じである。

ロキソニン(あるいはボルタレン)は、通常1日3回投与であるのに対して、セレコックスは、薬の効果が長く続くため、通常1日2回投与になっている。(参照:t1/2の比較)

「『ロキソニン』を1日3回で服用するよりも、『セレコックス 』 を1日2回で服用する方が鎮痛効果は長続きし、特に夜間の痛みに対してより効果的であることが報告されています」。「昼夜を問わず痛みが続くような場合」、特に夜間の痛みを和らげるためにはセルベックスが適している。(児島2017,p.109)

ただし、セレコックスのジェネリック医薬品はまだ発売されていない(2019/10/22現在)。したがって、薬代を考慮すると、ロキソニン・ボルタレンで特に問題無ければ、あえてセレコックスを服用する必要はないであろう。

胃の負担が少ないセルベックス(COX2選択的阻害薬)

通常、一般的なNSAIDs(ロキソニンやボルタレンなど)は、「COX-1」(胃粘膜保護作用などに関与している)と「COX-2」(組織が損傷したとき発現する)の両方の酵素を阻害する。つまり、痛みを抑える作用とともに胃粘膜を損傷する作用も併せ持っている。

これに対して、セレコックスは「COX2」選択的阻害薬とされている。したがって、「COX-1」を阻害する作用は無く、プロスタグランジンの胃粘膜保護作用を低下させることは無い。

「COX2阻害薬の有効性は従来薬のNSAIDsと変わらないが、胃・十二指腸潰瘍合併を明らかに減らし、消化管出血・穿孔・閉塞の合併率もある程度減らす」。(今日の治療薬2019,p.296)

ただし、既に「消化性潰瘍のある患者」では禁忌となっている。

なお、セレコックス以外で、「COX-2」阻害選択性が比較的高いNSAIDsとして、ハイペン(一般名:エトドラク)やモービック(一般名:メロキシカム)がある。

セレコックスの警告(致命的な心血管系血栓塞栓)は今現在どうなっているのか

「【警告】外国において、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリスクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使用期間とともに増大する可能性があると報告されている」。(セレコックス錠添付文書より)

この副作用(致命的な心血管系血栓塞栓)に関しては、現在では、以下のとおりセレコックス特有のものではなく、NSAIDs全般で注意すべき副作用と考えられる。

「心血管系副作用については、セレコキシブと従来型のNSAIDsは同等であることが、わが国(2014年)及び米国(2016年)の臨床試験で示された(文献名略)」。(今日の治療薬2019,p.296)

COX阻害作用の無いソランタール(塩基性)

  • 酸性NSAIDs:ロキソニン、ボルタレンなど(COX1、COX2阻害作用を併せ持つ)
  • 中性NSAIDs:セレコックス(COX2選択的阻害作用を有する)
  • 塩基性NSAIDs:ソランタール(COX阻害作用無し)

ソランタール(一般名:チアラミド)は、COX阻害作用が無いため解熱効果はほとんど無い。添付文書上の効能・効果も「鎮痛・消炎」に限られている。

鎮痛薬の使い分け

カロナールには抗炎症作用が無く、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とは区別して分類されるのが一般的である。

  • インフルエンザや小児・妊婦に対しては、カロナールを選択する。
    ⇒ https://yakugai.akimasa21.net/caronal/
  • アスピリン喘息には、カロナールやCOX1阻害作用の無いNSAIDsを選択する。
    ⇒ https://yakugai.akimasa21.net/aspirin-asthma/

NSAIDsでは効かない痛みもある

  • 片頭痛:トリプタン製剤
  • 胃潰瘍:PPIまたはH2ブロッカー
  • 神経因性疼痛:リリカやノイロトロピンなど

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)