薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019

2020年5月5日

薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019/PharmaTribune

この表には、2018年12月現在日本で承認されている薬物で、ヒトで消化管内のpH上昇とキレート形成、あるいは代謝酵素・トランスポーターの活性変化により体内動態が変化し相互作用の起こることが臨床用量で実証、あるいは可能性が高い薬物を示した。本表はガイドラインや添付文書の早見表ではない。相互作用のリスクを考える補助資料として活用されたい。なお、薬物動態の変化の程度と臨床的対処の必要性は一致しない場合があり、さらに薬力学的相互作用も多いことから利用には十分に注意されたい。

重要:
1) 実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無などを確認して、個別の組み合わせごとに判断すること。
2) 分類名は薬の理解を助けるために示した。その薬効に分類される他の薬が,同様の相互作用に関係するとは限らないので注意すること。

監修) 理化学研究所 杉山雄一
編集) 千葉大学・薬 樋坂章博、東京大学・医・病院 大野能之、鈴木洋史/東京大学・薬 前田和哉

参考)医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(厚生労働省)2018年7月
参考)実践薬学2017

消化管内でのpH上昇とキレート形成

消化管内でのpH上昇による吸収阻害(↓)

投与間隔を空けて相互作用を回避する際の注意:特にプロトンポンプ阻害薬は作用の持続性が高く、投与間隔を空けても十分な回避が困難である。その他については、できる限り投与間隔を空ける必要がある。

消化管内でのキレート形成による吸収阻害(↓)

投与間隔を空けて相互作用を回避する際の注意:やむを得ずセフジニルと鉄剤を併用する際には、セフジニル投与後3時間以上の間隔を空けて鉄剤を服用する。エルトロンボパグは服用前後4時間に多価陽イオンの服用を避け、空腹時に服用する。その他の「相互作用を受ける薬物」は、服用時間の4時間以上前あるいは2時間以上後に「血中濃度を低下させる薬物」を服用することが推奨される。

シトクロムP450(CYP)

ヒトでは57種のCYPの遺伝子が知られている。その中で薬物代謝に関連する1~3族には23種類がある。CYP3Aが特に多くの薬物を基質とし、市販薬の半数程度の薬物代謝に関与すると言われる。CYP3Aは肝臓と小腸、その他のCYPは主に肝臓で活性を表す。また、CYP3Aの基質はP糖タンパク(P-gp)の基質でもあることが多い。

CYPの阻害により基質薬の薬効・副作用が増強され、誘導によりそれらが減弱する可能性がある。ただし、注で示した代謝物が薬理学的に活性の場合には、その限りではない。一般に小腸、肝臓に存在する代謝酵素・トランスポーターの活性の変動により基質が受ける相互作用の程度は、経口薬で著しく注射薬では目立たない。

一般的に、CYPの「誘導効果が発現するまでには数日~数週間を要し、投与中止後も誘導効果が持続する場合が多い」。P-gp誘導も同様に時間がかかる。p.86,105

「CYP2D6はCYP2C19と並んで遺伝子多型が問題となる分子種」である。p.141

抱合酵素

グルクロン酸抱合酵素の阻害(↑)または誘導(↓)

グルクロン酸、硫酸、グルタチオンなどの抱合酵素が知られ、それぞれに多くの分子種が存在する。一般に小腸および肝臓で活性が高い。一般に阻害により基質薬の薬効・副作用が増強され、誘導によりそれらが減弱する可能性がある。

第Ⅰ相反応の代謝物のさらなる代謝に関与することが多いために、未変化体の血中濃度を大きく変動させることは比較的少ないが、代謝物の濃度を顕著に変化させることがある。

トランスポーター

「図1:全身に発現する主なトランスポーター」(実践薬学2017,p.90)

MDR1(P-glycoprotein、P糖タンパク)の阻害(↑)または誘導(↓)

注)MDR1(multidrug resistance protein 1、遺伝子名)=P糖蛋白(P-gp:P-glycoprotein)

(P糖蛋白(P-gp)は)小腸の管腔側膜に発現し薬物の吸収を抑制する一方、肝臓の胆管側膜および腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の胆汁排泄・腎排泄を促進する。(主に消化管・脳からの排出に影響)

(P糖蛋白の)阻害により、一般には基質薬物の吸収促進・排泄抑制が起こり、血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。一方、脳内への移行抑制にも働ことから、その阻害は、薬物の脳内移行を上昇させる可能性がある。

P-gp阻害薬として特に注意すべき薬物は、キニジン、クラリスロマイシン、アミオダロンである。そして、P糖蛋白(P-gp)の典型的な基質としては、ダビガトラン(プラザキサ)、ジゴキシン(ジゴシン)、フェキソフェナジン(アレグラ)が挙げられる。

1)アミオダロン(アンカロン)

2)クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス)

3)シクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)

併用禁忌の基質薬(アリスキレン(ラジレス))

シクロスポリンは、「臨床血中濃度でOATP1B1およびOATP1B3も阻害することが報告されている」。

4)イトラコナゾール(イトリゾール)

併用禁忌の基質薬(アリスキレン(ラジレス)、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、リオシグアト(アデムパス))

リバーロキサバンは、フルコナゾール以外のアゾール系抗真菌薬と併用禁忌。

5)キニジン(キニジン硫酸塩)

6)ベラパミル(ワソラン)

7)リファンピシン(P-gp誘導薬)

併用注意の基質薬(ジゴキシンなど)

P-gpの誘導は、核内受容体(プレグナンX受容体[PXR])の活性化を介した作用であるため、効果発現までには日数を要する。CYP誘導も同様に時間がかかる。p.86,p.105

リファンピシンは、OATP1B1阻害薬でもある。

BCRPを介した消化管排出の阻害(↑)

(BCRPは)小腸の管腔側膜に発現し薬物の吸収を抑制する一方、肝臓の胆管側膜および腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の胆汁排泄・腎排泄を促進する。

(BCRPの)阻害により、一般には基質薬物の吸収促進・排泄抑制が起こり、血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考え
られる。その他、脳や乳腺などにも発現する。

OATPs(小腸)を介した消化管吸収の阻害(↓)

(OATPsは)小腸の管腔側膜に発現し、薬物の吸収を促進する。阻害により、一般に基質薬物の血中濃度の低下、薬効の減弱が起こると考えられる。

OATP1B1・OATP1B3を介した肝取り込みの阻害(↑)または誘導(↓)

注)OATP1B1:organic anion transporter 1B1(有機アニオン輸送ポリペプチド)

(OATP1B1、OATP1B3は)肝臓の血管側膜に発現し、薬物の肝臓への取り込みを促進する。阻害により、一般に基質薬物の血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。

シクロスポリン:「ネオーラルと併用できるスタチンはどれ?」pp.80-84
併用禁忌の基質薬(ピタバスタチン(リバロ)、ロスバスタチン(クレストール)、ボセンタン(トラクリア)、アソナプレビル(スンベプラ)、バニプレビル(バニヘップ)2016年販売中止)

シクロスポリンは、「臨床血中濃度で消化管のP-gpも阻害することが報告されている」。

リファンピシン:「オイグルコンとリファンピシンの併用で低血糖が起きたのはなぜ?」pp.85-87
併用禁忌の基質薬(バニプレビル(バニヘップ)2016年販売中止)、オイグルコンは禁忌にはなっていない。

OAT1・OAT3を介した腎取り込みの阻害(↑)

(OAT1、OAT3は)腎臓の血管側膜に発現し、薬物の排泄を促進する。阻害により、一般に基質薬物の血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。その他、脳にも発現する。

MATEsを介した腎排出の阻害(↑)

(MATEsは)腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の排泄を促進する。阻害により、一般に基質薬物の血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。その他、肝臓にも発現する。

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)