ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第二世代)

2020年9月4日

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第二世代)概要

脳内H1受容体占拠率

参考)実践薬学2017,p.415「各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率」
(Hum Psychopharmacol.2011;26:133-9.より引用)

脳内H1受容体占拠率が20%以上になると、インペアードパフォーマンス(眠気を自覚しているかどうかにかかわらず、集中・判断力、作業効率が低下すること)が起こりやすくなる。(鎮静性薬物:20%以上、非鎮静性薬物:20%以下)

ケトチフェン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、d-クロルフェニラミンの脳内H1受容体占拠率は50%を超えており、投与に際して慎重さが求められる。(オキサトミド、販売中止)

お薬手帳の工夫:
熱性痙攣の既往がある患児のお薬手帳の表紙に「熱性痙攣の既往あり、抗ヒスタミン剤の投与に注意」等のシールを貼る。http://www.kmpa.or.jp/com/keiren-a-4.html

第二世代抗ヒスタミン薬のセチリジンは、第一世代のヒドロキシジンとよく似た構造をしている。
そして、セチリジンでは、カルボキシル基(-COOH)を導入してBBBの通過性を低下させている。

カルボキシル基が導入された第二世代抗ヒスタミン薬は、P-gp(p糖蛋白質)の基質となる。
そこで、脳内からくみ出されることによって、脳内移行性を弱めていると考えられる。

医薬品各種(ヒスタミンH1受容体拮抗薬、第二世代)

アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)

腎機能低下時の用法・用量

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(11%)、ESKDでのクリアランス(-65%)、ESKDの用量(1/4から1/3に減量)
参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

ディレグラ(一般名:フェキソフェナジン/プソイドエフェドリン)

腎機能低下時の用法・用量

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回2錠を1日2回、朝夕の空腹時
  • CCr(60mg/dL未満、透析患者を含む)
    プソイドエフェドリンの尿中未変化体排泄率のデータに幅があるため、至適投与量が定めにくいが1回1錠を1日1~2回

アレジオン(一般名:エピナスチン)

エピナスチン(抗アレルギー薬)とよく似た構造式を持つ薬物に、ミルタザピン(NaSSA)とミアンセリン(四環系抗うつ薬)がある。

ミルタザピンとミアンセリンの構造式中には、メチル基(-CH3)が含まれている。血液脳関門(BBB)を通過しやすくするため、脂溶性を高めていると考えられる。それに対して、エピナスチン(抗アレルギー薬)では、BBBを通過しないように、親水性のアミノ基(-NH2)が採用されている。(実践薬学2017,pp.414)

アレロック(一般名:オロパタジン)

Tmax:1.00±0.32(h)、Cmax:107.66±22.01(ng/mL)、t1/2:8.75±4.63(h)、1回5mg単回投与時

投与間隔/消失半減期
=12/8.75≒1.37 ⇒ 定常状態のある薬物
消失半減期×5
=8.75×5=43.75時間(約2日で体内から消失する)

作用機序(アレロック添付文書)

「オロパタジン塩酸塩は、選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主作用とし、更に化学伝達物質(ロイコトリエン、トロンボキサン、PAF等)の産生・遊離抑制作用を有し、神経伝達物質タキキニン遊離抑制作用も有する」。

ヒスタミンが中枢神経に存在するH1受容体に結合することで、覚醒や興奮が保たれている。
H1受容体拮抗薬によってヒスタミンのH1受容体への結合が阻害されると、眠気倦怠感などが起こる。

中枢神経に存在するH1受容体は、痙攣の抑制系にも関わっている。
H1受容体の遮断作用が強くなると、痙攣の抑制系が抑えられなくなり、痙攣が起きてしまうこともある。
不随意運動(顔面・四肢等)、頻度不明

「GABA(γ-アミノ酪酸)などによる中枢神経の抑制系が十分に発達していない乳幼児では、ヒスタミン系が神経の抑制系として働いています。特にてんかん素因のある小児や脳内の神経細胞の未熟な乳幼児では痙攣等を誘発するため注意しましょう」。(どんぐり2019,p.64)

ただし、オロパタジンは、脳内H1受容体占拠率20%以下であり、重大な副作用(痙攣)などの添付文書上の記載は無い。

オロパタジンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.128-251)

56歳女性、体重45kg、血清クレアチニン1.0mg/dL
アレルギー性鼻炎で初めての処方、配送関係の仕事(鼻炎症状が悪化すると運転に支障あり)
オロパタジン塩酸塩錠5mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-56)/(72×(1.0+0.2))}×45×0.85
=(84/86.4)×45×0.85
=37.1875⇒37.2mL/min

腎機能低下患者(血液透析導入前)
クレアチニンクリアランスが2.3〜34.4mL/minの腎機能低下患者にオロパタジン塩酸塩10mgを朝食後単回経口投与した場合の平均血漿中濃度の推移は下記のとおりである。健康成人と比較して、腎機能低下患者のCmaxは2.3倍、AUCは約8倍であった。(測定法:RIA法)(アレロック添付文書)

添付文書の基準は上回っているが、日常的に車を運転しており、眠気の副作用もできる限り避けたいところである。
減量や、肝消失型薬物への変更などを処方提案する。

クラリチン(一般名:ロラタジン)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

ジルテック(一般名:セチリジン)

ラセミ体(S+R)である。⇒レボセチリジン(R体)
抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

第一世代抗ヒスタミン薬のヒドロキシジンに構造式が似ている。カルボキシル基(-COOH)を導入することによって、BBB通過性を弱めている。

腎機能低下時の用法・用量(セチリジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ザイザル(一般名:レボセチリジン)

光学異性体(R体)⇔セチリジン(ラセミ体:S + R)
効果の増強(実践薬学2017,p.24)

ザイザル・インタビューフォーム(以下)より
腎排泄型薬物と考えられる。

  • 健康成人男女 20 例にレボセチリジン塩酸塩 5mg を空腹時単回経口投与したときの投与後 48 時間までのレボセチリジン塩酸塩の累積尿中排泄率は約 73%であった。(外国人データ)
  • レボセチリジンは主に尿中に未変化体として排泄される。
  • 分配係数(log P):1.32(pH7.4、1-オクタノール/水系)

腎機能低下患者では、レボセチリジンの排泄遅延が起こり、血中濃度が上昇する。
薬理作用の副作用である眠気めまいふらつきが起きる可能性がある。

成人患者の腎機能に対応する用法・用量の目安(外国人データ)では、
CCr(50~80mg/dL未満)1日1回2.5mgとなっている。
つまり、軽度の腎機能低下患者あるいは高齢者では、ザイザル錠5mg1錠投与は過量となる。

腎機能低下時の用法・用量

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1日1回5mg、就寝前、最大1日10mg
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1日1回2.5mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回2.5mgを2日に1回
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1回2.5mgを週2回(3~4日毎)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(腎機能正常者に比しAUCが1.8~5.7倍増加する)

ビラノア(一般名:ビラスチン)

ルパフィン(一般名:ルパタジン)

タリオン(一般名:ベボタスチン)

ニポラジン、ゼスラン(一般名:メキタジン)

ザジテン(一般名:ケトチフェン)

ケトチフェンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.174-179、服薬指導例・薬歴記載例有り)

2歳(男性)、体重12kg、アトピー性皮膚炎
ケトチフェンシロップ0.02%、1回4mL、1日2回朝食前および寝る前、28日分
3週間前、熱性けいれんを起こした。
数日前、再度熱性けいれんを起こした。

ケトチフェンは、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第二世代)にもかかわらず、脳内移行性の非常に高い薬物である。
参考)実践薬学2017,p.415「各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率」
(Hum Psychopharmacol.2011;26:133-9.より引用)

ケトチフェンには、下記のような禁忌及び慎重投与の項目がある。(ザジテン添付文書より)

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.てんかん又はその既往歴のある患者〔痙攣閾値を低下させることがある。〕

【使用上の注意】
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
てんかんを除く痙攣性疾患、又はこれらの既往歴のある患者〔痙攣閾値を低下させることがある。〕(【禁忌】の項参照)
6.小児等への投与
乳児、幼児に投与する場合には、観察を十分に行い慎重に投与すること。〔痙攣、興奮等の中枢神経症状があらわれることがある。〕

レボセチリジンシロップ(脳内移行性低い、痙攣に関する添付文書上の記載無し)などへの変更を考える。

ケトチフェンは、定常状態のある薬物である。(下記ザジテン添付文書参考)
そして、薬物が体内から消失するまでには、1.67日かかる。

以下のとおりである。

投与間隔12時間/消失半減期8時間=1.5<3.0
消失半減期8時間×5=40時間(1.67日)

したがって、ヒドロキシジンシロップからレボセチリジンシロップに変更した後も、1日半以上は今までと同様のリスクがあると考えられる。

1.血中濃度
健康成人に本剤10mL(ケトチフェンとして 2 mg)を 1 回経口投与した場合の薬物動態は、下表及び図のごとくであり、ザジテンカプセルとほぼ同じと推定された。
また、本剤を小児患者に投与した場合、健康成人に比べやや吸収が遅く、血中からの消失が速いことが示された。

T1/2(hr)=8.03±1.24(表の一部のみ転記)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)