セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)そのほか

2020年11月27日

抗うつ薬(SNRI、そのほか)概略

  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):
    SNRI(serotonin/noradrenaline reuptake inhibitors)
  • ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):
    NaSSA(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant
  • セロトニン拮抗・再取り込み阻害薬(SARI)
    SARI(serotonin antagonist/reuptake inhibitor)

うつ病患者では、神経伝達物質であるモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)の濃度が減少しているとされている。

  • セロトニンは、精神の安定(安心感や落ち着き)をもたらす。
  • ノルアドレナリンは、意欲・関心(やる気や気力など)を高める。
  • ドーパミンは、興味や楽しみなどを高める。

SNRIは、セロトニンやノルアドレナリン濃度を高めることによって、抗うつ効果を発揮すると考えられている。
SNRIは、セロトニンやノルアドレナリンのシナプスでの回収(再取り込み)を阻害して、シナプス間隙のセロトニンやノルアドレナリン濃度を高める作用を有する。

NaSSAは、セロトニンとノルアドレナリンの分泌を促して、両者の濃度を高める。

セロトニン、ノルアドレナリンは、消化管の活動にかかわっている。
吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがある。

ノルアドレナリンは、交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質である。
したがって、「交感神経のかかわる心臓・前立腺などに対する悪影響や、不眠の副作用も出やすい」→特にサインバルタ。(児島2017,p.268)

ノルアドレナリンには痛みを軽減する作用もあるため、慢性的な痛みがある患者に使われることも多い。例えば、サインバルタがそうである。

なお、多くの抗うつ薬は、痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、慎重投与となる。

元住吉こころみクリニック
「抗うつ剤の副作用と安全性の比較」
cocoromi-cl.jp/knowledge/psychiatry-medicine/antidepressant/dep-side/

⇒「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

医薬品各種(SNRIなど)

  • サインバルタ(SNRI):
    ノルアドレナリン作用強い(慢性疼痛に適応、前立腺肥大・高血圧・心疾患注意)
    肝消失型薬物だが、高度腎機能障害のある患者では尿毒素が蓄積。
    CYP1A2(強い基質薬)、CYP2D6(中程度の阻害薬)。
  • トレドミン(SNRI):
    脂溶性だが腎排泄(尿細管から分泌)。
  • イフェクサーSR(SNRI):
  • リフレックス、レメロン(NaSSA):
    不眠、食思不振(第一選択薬)
  • レスリン、デジレル(SARI):
    もっぱら睡眠薬として使用される。

サインバルタ(一般名:デュロキセチン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):
「投与早期の胃腸症状に注意。肝障害患者への投与は控える。さまざまな疼痛に効果」。(今日の治療薬2020,p.878)

「(SNRIは)セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込みに選択的に働く。SSRIよりも意欲に効果が期待。消化器症状、血圧上昇あり。循環器疾患には慎重投与」。(同上,p.858)

【効能・効果】
〇うつ病・うつ状態
〇下記疾患に伴う疼痛
糖尿病性神経障害
線維筋痛症
慢性腰痛症
変形性関節症

【用法・用量】
〈うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛〉
通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして40mgを経口投与する。
投与は 1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。
なお、効果不十分な場合には、1日60mgまで増量することができる。
〈線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛〉
通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして60mgを経口投与する。
投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。

サインバルタ・カプセル(20mg、30mg)

ノルアドレナリンに対する作用が強い

  • 前立腺肥大症等排尿困難のある患者:
    ノルアドレナリン再取り込み阻害作用により症状が悪化することがある。
  • 高血圧又は心疾患のある患者:
    本剤投与前に適切にコントロールし、定期的に血圧・脈拍数等を測定すること。
    心拍数増加、血圧上昇、高血圧クリーゼがあらわれることがある。

(サインバルタ添付文書)

腎機能低下時の用法・用量(デュロキセチン)

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(0%)、ESKDでのクリアランス(-62%)、ESKDの用量(禁忌)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛:1日40mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量、最大1日量60mg
    2)線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛:1日60mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    中等度腎障害では薬物動態に変化が認められないため減量は不要(Clin Pharmacokinet 49:311-321,2010)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(ほとんど尿中排泄されず、半減期も延長しないものの、AUC、Cmaxが約2倍に上昇する)

デュロキセチンと尿毒素の蓄積

デュロキセチンは、肝消失型の薬物である。
それにもかかわらず、高度腎機能低下のある患者(CCr<30mL/分)及び透析患者には禁忌である。

「糞中及び尿中にデュロキセチンはほとんど存在せず、投与量の72.0%は代謝物として尿中に排泄され、18.5%は糞中に排泄された(外国人によるデータ)」⇒肝消失型であることを示す。(サインバルタ添付文書)

高度の腎機能障害のある患者では、健康成人と比べて、CmaxとAUCが約2倍に増大する(それぞれ有意差有り)。(サインバルタ・インタビューフォームより)

「腎機能が正常から中等度の障害の範囲ではデュロキセチンの血漿中濃度変化に及ぼす腎機能の影響は大きくないと考えられた」⇒高度腎機能障害のある患者のみ問題となる。(サインバルタ審査報告書(2010年01月20日)2 申請資料概要)

ところで、「実践薬学2017,p.191」では、同じく審査報告書からの引用として「正常~中等度障害の腎機能の範囲では、本剤の血漿中未変化体濃度に対する腎機能の影響は大きくない」と記載している。

それはともかくとして、実践薬学2017では、「高度の腎機能障害のある患者で問題となるのは尿毒素の蓄積である」として、その機序について考察している。
大変参考になる意見である。

「(尿毒素の蓄積によって)CYPやトランスポーターなどの機能性蛋白質の翻訳後修飾の阻害を引き起こし、結果として、デュロキセチンやワルファリンの代謝が遅延してしまう。つまりそれらの血中濃度が上昇する」⇒腎機能低下患者ではCYP活性などが低下する。(実践薬学2017,p.191)

デュロキセチンは、CYP1A2の基質薬(影響を強く受けやすい)である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
    表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

フルボキサミン(CYP1A2阻害薬)とは、併用注意である。
チザニジン、ラメルテオン(CYP1A2の強い基質薬)は、フルボキサミンと併用禁忌である。

デュロキセチンは、CYP2D6阻害薬(中程度)である

同上

トレドミン(一般名:ミルナシプラン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):(今日の治療薬2020,p.879)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人には、ミルナシプラン塩酸塩として1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、1日2~3回に分けて食後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ただし、高齢者には、1日25mgを初期用量とし、1日60mgまで漸増し、1日2~3回に分けて食後に経口投与する。

トレドミン錠(12.5mg、15mg、25mg、50mg)

腎機能低下時の用法・用量(ミルナシプラン)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(60%)、減量法の記載無し(高齢者への減量法有り)。
⇒参照(デュロキセチン)

イフェクサーSR(一般名:ベンラファキシン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI):
「少量ではSSRI的に、高用量ではノルアドレナリンが作用する。用量の幅は広い」。(今日の治療薬2020,p.879)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人にはベンラファキシンとして1日37.5mgを初期用量とし、1週後より1日75mgを1日1回食後に経口投与する。
なお、年齢、症状に応じ1日225mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として75mgずつ行うこと。

イフェクサーSR徐放カプセル(37.5mg、75mg)

腎機能低下時の用法・用量(ベンラファキシン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ベンラファキシンは、CYP2D6の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

リフレックスレメロン(一般名:ミルタザピン)

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):
「α2受容体を遮断し、セロトニン・ノルアドレナリン放出を促進。SSRI、SNRIで問題となる胃腸症状や性機能障害が少ない。体重増加と眠気に注意」。(今日の治療薬2020,p.880)

SSRIやSNRIなどとは異なり、受容体を遮断し、シナプス間隙の遊離アドレナリンやセロトニンを増加させることで抗うつ効果を示す。(実践薬学2017,p.40)
つまり、直接分泌を増やす作用を持つ。(児島2017,p.268)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人にはミルタザピンとして1日15mgを初期用量とし、15~30mgを1日1回就寝前に経口投与する。
なお、年齢、症状に応じ1日45mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として15mgずつ行うこと。

リフレックス錠(15mg、30mg)

ミルタザピンの作用機序

  1. ミルタザピンは、NA細胞体(及び神経線維)のα2自己受容体を遮断することで、ノルアドレナリンの遊離を促進する
  2. 放出されたノルアドレナリンの刺激が、α1自己受容体を介して5-HT細胞体に伝わり、5-HT神経活動を促進する
  3. ミルタザピンは、5-HT神経前シナプスのα2ヘテロ受容体を遮断することで、セロトニンの遊離を促進する
  4. ミルタザピンは、後シナプスの5-HT2、5-HT3受容体を遮断するため、増加したセロトニンは5-HT1受容体への刺激を選択的に増強する
  5. その結果、抗うつ効果をもたらす

(実践薬学2017,p.412-413「ミルタザピン(NaSSA)の作用機序の模式図」)

ミルタザピンの適応外使用(不眠症)

「適応症:うつ病・うつ状態。適応外使用:不眠症」。(今日の治療薬2020,p.880)

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

米国では、トラゾドンと同様に、不眠に対して多く処方されている。
睡眠薬として用いるならば、0.25~0.5錠など(1錠の規格は15mg錠)からスタートした方がよいだろう。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

ミルタザピンとミアンセリンは、化学構造がよく似ている。ミルタザピン=6位がN(窒素)、ミアンセリン=6位がC(炭素)となっている。ただし半減期は、ミルタザピン(半減期31.7時間)の方がミアンセリン(半減期18時間)よりも長いことは注意が必要だろう。(実践薬学2017,pp.411-412「ミルタザピンとミアンセリンの6位近傍の結合様式の模式図」)

なお、両者の構造式中には、メチル基(-CH3)が含まれている。血液脳関門(BBB)を通過しやすくするため、脂溶性を高めていると考えられる。それに対して、よく似た構造のエピナスチン(抗アレルギー薬)では、BBBを通過しないように、親水性のアミノ基(-NH2)が採用されている。(実践薬学2017,pp.414)

腎機能低下時の用法・用量(ミルタザピン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日15mgを初期用量とし、1日15~30mgを分1、就寝前、最大1日量45mg。増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量15mgずつ
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため2/3に減量
  • CCr(15mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため1/2に減量
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    本剤のCLが低下するため1/2以下に減量。
    ただし、透析患者で薬物動態に影響ないという症例報告もある(Pharmacopsychiatry 41:259-260,2008)

レスリンデジレル(一般名:トラゾドン)

その他の抗うつ薬:
「5HT2a受容体を遮断し、またセロトニン再取込みを抑制。抗コリン作用弱く、鎮静が強い」。(今日の治療薬2020,p.880)

弱いセロトニン再取り込み阻害作用と強い5-HT2受容体遮断作用を併せ持つ。(実践薬学2017,p.39)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
トラゾドン塩酸塩として、通常、成人には1日75~100mgを初期用量とし、1日200mgまで増量し、1~数回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

レスリン錠(25mg、50mg)

トラゾドンの適応外使用(不眠症、せん妄)

「適応症:うつ病、うつ状態。適応外使用:不眠症、せん妄」。(今日の治療薬2020,p.880)

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の発売以降は抗うつ薬として使われることは少なくなり、精神科ではむしろ睡眠薬として汎用されている。米国では第一選択薬の1つである。

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など
副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

トラゾドンは、全体の睡眠時間を増加させ、何度も持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らすといわれている。
睡眠障害に使用する場合は、25~50mgを就寝前に用いる(100mgとしている報告もある)。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

リーマス(一般名:炭酸リチウム)

気分安定薬:
「双極性障害の再発予防、治療抵抗性うつ病に効果」。(今日の治療薬2020,p.881)

【効能・効果】
躁病および躁うつ病の躁状態

【用法・用量】
炭酸リチウムとして、成人では通常1日400~600mgより開始し、 1日2~3回に分割経口投与する。
以後3日ないし1週間毎に、1日通常1200mgまでの治療量に漸増する。
改善がみられたならば症状を観察しながら、維持量1日通常200~800mgの1~3回分割経口投与に漸減する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

リーマス錠(100mg、200mg)

腎機能低下時の用法・用量(リチウム)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日400~600mg分2~3より開始し、以後3日ないし1週間毎に1日1,200mgまで漸増。改善後は、維持用量1日200~800mgを分1~3
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    50~75%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    25~50%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
    1回600mgを週3回HD後という報告あり(Am JPsychiatry 167:1409-1410,2010)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗うつ薬)

高齢者のうつ病の治療には、心理社会的要因への対応や臨床症状の個人差に応じたきめ細かな対応が重要である。高齢者のうつ病に対して三環系抗うつ薬は、特に慎重に使用する薬剤に挙げられている。
(抗うつ薬 (スルピリド含む))、ただし、SNRIは含まれていない?

  • 痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、多くの抗うつ薬が慎重投与となる。
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン[トリプタノール]、アモキサピン[アモキサン]、クロミプラミン[アナフラニール]、イミプラミン[トフラニール]など)は、SSRIと比較して抗コリン症状(便秘、口腔乾燥、認知機能低下など)や眠気、めまい等が高率でみられ、副作用による中止率も高いため、高齢発症のうつ病に対して、特に慎重に使用する。
  • 三環系抗うつ薬とマプロチリン[ルジオミール]は、緑内障と心筋梗塞回復初期には禁忌であり、
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。
  • SSRI(セルトラリン[ジェイゾロフト]、エスシタロプラム[レクサプロ]、パロキセチン[パキシル]、フルボキサミン[デプロメール、 ルボックス])も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがある。
  • SSRIは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • SSRIの使用に当たっては、CYPの関与する相互作用などを受けやすいため、併用薬に注意が必要である。特にフルボキサミンは CYP1A2を、パロキセチンはCYP2D6を強く阻害し、併用禁忌の薬剤もあることから、注意が必要である。
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)