セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)そのほか

2020年5月27日

医薬品各種(SNRI)

サインバルタ(一般名:デュロキセチン)

腎機能低下時の用法・用量(デュロキセチン)

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(0%)、ESKDでのクリアランス(-62%)、ESKDの用量(禁忌)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛:1日40mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量、最大1日量60mg
    2)線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛:1日60mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    中等度腎障害では薬物動態に変化が認められないため減量は不要(Clin Pharmacokinet 49:311-321,2010)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(ほとんど尿中排泄されず、半減期も延長しないものの、AUC、Cmaxが約2倍に上昇する)

デュロキセチンと尿毒素の蓄積

デュロキセチンは、肝消失型の薬物である。それにもかかわらず、高度腎機能低下のある患者(CCr<30mL/分)及び透析患者には禁忌である。

「糞中及び尿中にデュロキセチンはほとんど存在せず、投与量の72.0%は代謝物として尿中に排泄され、18.5%は糞中に排泄された(外国人によるデータ)」⇒肝消失型であることを示す。(サインバルタ添付文書)

高度の腎機能障害のある患者では、健康成人と比べて、CmaxとAUCが約2倍に増大する(それぞれ有意差有り)。(サインバルタ・インタビューフォームより)

「腎機能が正常から中等度の障害の範囲ではデュロキセチンの血漿中濃度変化に及ぼす腎機能の影響は大きくないと考えられた」⇒高度腎機能障害のある患者で問題となる。(サインバルタ審査報告書(2010年01月20日)2 申請資料概要)

ところで、「実践薬学2017,p.191」では、同じく審査報告書からの引用として「正常~中等度障害の腎機能の範囲では、本剤の血漿中未変化体濃度に対する腎機能の影響は大きくない」と記載している。

私の引用箇所(一字一句そのまま記載)と異なる箇所からの引用なのかもしれないが、「血漿中濃度変化に及ぼす腎機能の影響」が「血漿中未変化体濃度に対する腎機能の影響」となっていることによって、少し分かりにくい文章となっている。

それはともかくとして、実践薬学2017では、「高度の腎機能障害のある患者で問題となるのは尿毒素の蓄積である」として、その機序について考察している。大変参考になる意見である。

「(尿毒素の蓄積によって)CYPやトランスポーターなどの機能性蛋白質の翻訳後修飾の阻害を引き起こし、結果として、デュロキセチンやワルファリンの代謝が遅延してしまう。つまりそれらの血中濃度が上昇する」⇒腎機能低下患者ではCYP活性などが低下する」。(実践薬学2017,p.191)

デュロキセチンは、CYP1A2の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

デュロキセチンは、CYP2D6阻害薬(中程度)である

同上

トレドミン(一般名:ミルナシプラン)

腎機能低下時の用法・用量(ミルナシプラン)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(60%)、減量法の記載無し(高齢者への減量法有り)。
⇒参照(デュロキセチン)

リフレックス、レメロン(一般名:ミルタザピン)

「ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):α2受容体を遮断し、セロトニン・ノルアドレナリン放出を促進。SSRI、SNRIで問題となる胃腸症状や性機能障害が少ない。体重増加と眠気に注意。適応症:うつ病・うつ状態。適応外使用:不眠症」。(今日の治療薬2020,p.880)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.112)

SSRIやSNRIなどとは異なり、受容体を遮断し、シナプス間隙の遊離アドレナリンやセロトニンを増加させることで抗うつ効果を示す。(実践薬学2017,p.40、以下要約)

睡眠薬として用いるならば、0.25~0.5錠など(1錠の規格は15mg錠)からスタートした方がよいだろう。

米国では、トラゾドンと同様に、不眠に対して多く処方されている。

ミルタザピン(半減期31.7時間)とミアンセリン(半減期18時間)は、化学構造がよく似ている。ただし、ミルタザピンの方が半減期が長いことは注意が必要だろう。

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

腎機能低下時の用法・用量(ミルタザピン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日15mgを初期用量とし、1日15~30mgを分1、就寝前、最大1日量45mg。増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量15mgずつ
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため2/3に減量
  • CCr(15mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため1/2に減量
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    本剤のCLが低下するため1/2以下に減量。
    ただし、透析患者で薬物動態に影響ないという症例報告もある(Pharmacopsychiatry 41:259-260,2008)

レスリン、デジレル(一般名:トラゾドン)

「その他の抗うつ薬:5HT2a受容体を遮断し、またセロトニン再取込みを抑制。抗コリン作用弱く、鎮静が強い。適応症:うつ病、うつ状態。適応外使用:不眠症、せん妄」。(今日の治療薬2020,p.880)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.112)

SARI(serotonin antagonist/reuptake inhibitor:セロトニン拮抗・再取り込み阻害薬)
弱いセロトニン再取り込み阻害作用と強い5-HT2受容体遮断作用を併せ持つ。(実践薬学2017,p.39、以下要約)

睡眠障害に使用する場合は、25~50mgを就寝前に用いる(100mgとしている報告もある)。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の発売以降は抗うつ薬として使われることは少なくなり、精神科ではむしろ睡眠薬として汎用されている。米国では第一選択薬の1つである。

全体の睡眠時間を増加させ、何度も持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らすといわれている。

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など
副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

リーマス(一般名:炭酸リチウム)

腎機能低下時の用法・用量(リチウム)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日400~600mg分2~3より開始し、以後3日ないし1週間毎に1日1,200mgまで漸増。改善後は、維持用量1日200~800mgを分1~3
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    50~75%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    25~50%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
    1回600mgを週3回HD後という報告あり(Am JPsychiatry 167:1409-1410,2010)

イフェクサー(一般名:ベンラファキシン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI):

腎機能低下時の用法・用量(ベンラファキシン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(薬物動態学マスター術第2版、2019,pp.108-111)

ベンラファキシンは、CYP2D6の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)