インフルエンザ治療薬

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」(2019/10/24)

「日本感染症学会では、2009年にA(H1N1)pdm09による新型インフルエンザ発生の際に、新型インフルエンザ対策委員会・診療ガイドラインワーキンググループを組織して幾つかの提言を行って」以来今日まで、新薬の発売などの節目節目で様々な提言を行ってきている。

以下は、最も最近(2019年10月24日)の提言の中から、抗インフルエンザ薬投与に関する基本的な考え方について、私なりにポイントを抜き出したものである。

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」
http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

インフルエンザは、自然軽快傾向のみられる上気道炎様症状から生命の危機におよぶ呼吸不全や脳症まで、幅広い臨床像を呈する疾患です。特に、高齢者や幼児、妊婦、基礎疾患を有する人は、重症化のリスクを有しており、続発性の細菌性肺炎による高齢者の超過死亡も問題となっています。

オセルタミビルを含めたノイラミニダーゼ阻害薬の早期治療による、症状緩和、罹病期間の短縮は、これまでの報告により確認されています。

それに従い、オセルタミビルの適用は、合併症のないインフルエンザ感染症患者における48時間以内の投与となっています。

わが国では、この適用に従う形で、症状緩和の目的で軽症の外来患者から投与され、それが結果として、重症化や入院の必要性の抑制につながってきたという背景があります。早期治療が、入院防止、下気道感染症合併防止に有効なことも報告されています。

医療機関へのアクセスが容易で、迅速診断法が普及しているわが国の状況を鑑みると、インフルエンザが確定あるいは疑われる患者について、発症後48時間以内に抗ウイルス薬の投与を開始して症状の緩和を試みることは、ノイラミニダーゼ阻害薬の適応に沿った治療です。

繰り返しますが、発症早期に重症化するかどうかの判断は困難です。もし、医師の判断により抗ウイルス薬の投与を行わない場合でも、症状の増悪があればすぐに受診するように指導することが必要です。

医薬品各種

タミフル(一般名:オセタミビル)内服薬

タミフルの効能・効果、用法・用量など

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防。

タミフルカプセル75の用法・用量
通常、成人及び体重37.5kg以上の小児にはオセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間経口投与する。

タミフルドライシロップ3%の用法・用量
成人
通常、オセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する。
小児
通常、オセルタミビルとして以下の1回用量を1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する。ただし、1回最高用量はオセルタミビルとして75mgとする。
幼小児の場合:2mg/kg(ドライシロップ剤として66.7mg/kg)
新生児、乳児の場合:3mg/kg(ドライシロップ剤として100mg/kg)

タミフルは、1日2回5日間継続して内服するため、幼小児や高齢者でも分かりやすい薬物である。また、吸入がうまくできない幼小児や高齢者にはドライシロップで対応することができる。

ノイラミニダーゼ阻害薬(48時間以内に服用開始)

インフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始すること。(各剤添付文書より、ほぼ同じ意味の文章)

タミフル、リレンザ、イナビル、そしてラピアクタは、いずれも「ノイラミニダーゼ阻害薬」である。

細胞内で増殖をしたウィルスが細胞外に飛び出す時に必要な「ノイラミニダーゼ」の働きを阻害することによって、ウィルスの増殖を抑制する薬物である。したがって、インフルエンザ様症状が出てから48時間を経過して、ウィルスの数が増えてしまってからでは、薬の効果を発揮することができない。

インフルエンザ罹患時の異常行動について

(各剤添付文書共に同じ内容)

抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。

異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、
1)異常行動の発現のおそれがあること、
2)自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、
について患者・家族に対し説明を行うこと。

なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。

以上、適宜改行した。

注)異常行動(急に走り出す、徘徊するなど)
注)インフルエンザ脳症(大部分が1~5歳)

中外製薬(株)
タミフルカプセル75、タミフルドライシロップ3% 適正使用のお願い
https://chugai-pharm.jp/content/dam/chugai/product/notice/2019/20191101_tam_oshirase.pdf

インフルエンザや小児・妊婦でも使えるカロナール(やさしめ)Akimasa Net
インフルエンザ脳症など

リレンザ(一般名:ザナミビル)吸入薬

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防

通常、成人及び小児には、ザナミビルとして1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を用いて吸入する。

リレンザは、タミフルやイナビルと比べて、B型インフルエンザに対して早く熱を下げることが期待できる、とするデータがある。

B型の流行に留意を、治療薬にはリレンザを推奨
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201203/523863.html

イナビル(一般名:ラニナミビル)1回のみの吸入薬

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防。

成人・小児(10歳以上):ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。
小児(10歳未満):ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。

成人及び小児には、ラニナミビルオクタン酸エステルとして160mgを日本薬局方生理食塩液2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入投与する。

一回の吸入だけで治療が完了する。
海外では使用されていない。

ラピアクタ(一般名:ベラミビル)点滴薬

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又は B型インフルエンザウイルス感染症。

本剤の投与は、症状発現後、可能な限り速やかに開始することが望ましい。

〈成人〉
通常、ペラミビルとして 300mgを 15分以上かけて単回点滴静注する。合併症等により重症化するおそれのある患者には、1日1回600mgを15分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。なお、年齢、症状に応じて適宜減量する。
〈小児〉
通常、ペラミビルとして1日1回10mg/kgを15分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。投与量の上限は、1回量として600mgまでとする。
なお、3日間以上反復投与した経験は限られている。

インフルエンザが重症化して肺炎を合併した場合など、咳や呼吸困難によって吸入薬(リレンザやイナビル)がうまく吸えなくなる。また吐き気や喉の異常によって内服薬(タミフル)を服用できないなど、重症例への使用が推奨されている。

ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)単回経口投与

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ(Cap-Dependent Endonuclease)阻害薬:
A 型又はB型インフルエンザウイルス感染症。

通常,成人及び12歳以上の小児には,20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして 40mg)を単回経口投与する。ただし,体重80kg以上の患者には20mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80mg)を単回経口投与する。
通常,12 歳未満の小児には,以下の用量を単回経口投与する(略)。

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」では、ゾフルーザに関して、次のような提言をしている。

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」
http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

当委員会では、バロキサビルの使用に関し、現在までに得られたエビデンスを検討した結果、以下のような提言を行います(バロキサビルの単独使用を前提としています)。

(1)12-19歳および成人:臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。
(2)12歳未満の小児:低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。
(3)免疫不全患者や重症患者では、単独での積極的な投与は推奨しない。

(以下、わたしなりに同提言の根拠をピックアップしてみた)

日米で行われた12歳以上65歳未満の健康人を対象とした国際共同第Ⅲ相試験の成績では、臨床的な有効性、罹病期間の短縮はオセルタミビルと同等でしたが、ウイルス感染価を早期に大幅に低下させることが示されました。

一方、臨床試験の段階から、高率でアミノ酸変異が生じることが判明しており、変異ウイルスは、バロキサビルに対する感受性が低下し、健常者において、罹病期間の延長とウイルス排泄の遷延化が認められました。

しかしながら、バロキサビル低感受性ウイルスが、臨床経過に与える影響については、エビデンスが十分ではありません。

バロキサビルは、ノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序を有するため、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスには有効性が期待でき、新型インフルエンザ出現時での使用も期待されています。

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)