インフルエンザや小児・妊婦でも使えるカロナール(やさしめ)

2019年11月1日

カロナールは、やさしめの解熱・鎮痛薬

カロナール(一般名:アセトアミノフェン)は、NSAIDs(ロキソニンなど)と同じく熱や痛みを和らげる解熱鎮痛薬である。

ただし、カロナールの鎮痛作用はNSAIDs(ロキソニンなど)よりも弱い。また、抗炎症作用は無い。したがって、カロナールはNSAIDs(ロキソニンなど)とは区別して分類されることが多い。

カロナールは、中枢に作用することで解熱・鎮痛効果を発揮する。COX阻害作用はほとんど無いとされている。

「シクロオキシゲナーゼ阻害作用は殆どなく,視床下部の体温調節中枢に作用して皮膚血管を拡張させて体温を下げる。鎮痛作用は視床と大脳皮質の痛覚閾値をたかめることによると推定される」。(カロナール添付文書より)

インフルエンザ脳症とカロナール

インフルエンザ脳症

インフルエンザ脳症を発症すると、異常言動や異常行動に続いて、けいれんや意識障害などの神経症状が現れる。幼児に多く(大部分が1~5歳)死亡率も高い。また、重篤な神経学的後遺症(知能障害、運動障害、てんかんなど)が残ることも少なくない。

インフルエンザ脳症では、血液・脳脊髄液中の炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)が異常高値を示すことから、サイトカインストーム(サイトカインの嵐)を引き起こしていると考えられている。

注)サイトカインストーム:感染症や薬剤投与などの原因により,血中サイトカイン(IL-1,IL-6,TNF-αなど)の異常上昇が起こり,その作用が全身に及ぶ結果,好中球の活性化,血液凝固機構活性化,血管拡張などを介して,ショック・播種性血管内凝固症候群(DIC)・多臓器不全にまで進行する.この状態をサイトカインストーム(cytokine storm)という.実験医学増刊 Vol.31 No.12 特集「腫瘍免疫学とがん免疫療法」

インフルエンザの解熱にはカロナール

日本小児科学会では、2000年11月(平成12)、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればカロナール(一般名:アセトアミノフェン)が適切との見解を示した。

そして、インフルエンザ患者の解熱に従来から使用されてきた薬物(NSAIDs)のうち、ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)が禁忌、そしてポンタール(一般名:メフェナム酸)が原則禁忌となった。これらの薬物をインフルエンザ罹患時に使用することによって、死亡率が有意に上昇したからである。

ただし、これらの薬物を使用しない場合でも、死亡に至るケースが存在している。今現在、これらの薬物をはじめとするNSAIDsがインフルエンザ脳症を引き起こす原因薬物であるとは断定できていない。

とはいえ、何らかの関与をしている可能性が考えられる以上、慎重な薬剤選択が求められる。さらに、カロナールを使用した場合でも、死亡率は低下していない点にも留意する必要がある。

インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について
(医薬品等安全対策部会における合意事項)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0530-4.html

  • ジクロフェナクナトリウム又はメフェナム酸の使用群は、解熱剤未使用群と比較してわずかながら有意に死亡率が高い。
  • 日本小児科学会では、平成12年11月、インフルエンザに伴う発熱に対して使用するのであればアセトアミノフェンが適切であり、非ステロイド系消炎剤の使用は慎重にすべきである旨の見解を公表した。
  • 我が国のインフルエンザの学童における罹患数は、年間50万~100万人とされ、このうち、脳炎・脳症となる症例(インフルエンザ脳炎・脳症)は100~300人、その死亡率は30%前後とされている。

インフルエンザ注意事項

日頃の予防には、手洗い・うがいなど。
重篤な合併症を予防したり死亡率を低下させるには、インフルエンザワクチンを接種することが最も効果的である。

薬以外で体温を低下させる方法としてクーリングがある。

一般的には、首や脇の下、そして足の付け根を保冷剤や氷水などで冷やすことが推奨されている。それらの場所には太い動脈が通っており、深部体温を速やかに冷やす効果がある。

この方法は、例えば熱中症が疑われる症状が出ている場合にも有効である。

症状が起きる前の予防法としては、冷たいペットボトルを握って「手のひらを冷やす」のが最も簡単で効果が高い。

手のひらには、AVA(動静脈吻合)と呼ばれる特別な血管があり、全身を温めたり冷やしたりする効果がある。AVAは、そのほか足の裏、ほほにも多く存在しており、同様の効果が得られる。

ペットボトルの温度は15℃くらいが適当である。冷蔵庫から出したばかりの状態(5℃くらい)では、AVA(動静脈吻合)が閉じてしまってあまり効果がない。

子ども(幼小児)にも使えるカロナール

NSAIDs(ロキソニンなど)の大半は小児など(15歳未満)に使うことができない。

ロキソニン錠60mgの添付文書では以下のようになっている。

小児等への投与:
低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。

これに対して、カロナールは幼小児(満1歳以上)にも使うことができる。

小児科領域における解熱・鎮痛:
通常,幼児及び小児にはアセトアミノフェンとして,体重1kgあたり1回10~15mgを経口投与し,投与間隔は4~6時間以上とする。

カロナールで痛みが治まらない場合、
×大人用のロキソニンを使う。
〇ボルタレン坐剤(サポ)を使う(満1歳以上から使用可)。

1日1~2回、直腸内に挿入する。
年齢別投与量の目安は1回量として下記のとおりである。
1才以上3才未満:6.25mg
以下略。

妊婦に最も安全なカロナール

「妊娠中はNSAIDs (非ステロイド性抗炎症剤) を用いてはならない 」(プレスクリール誌)とする強いメッセージが発信されている。Rev Prescrire November2016;36(397):827-828

妊婦、産婦、授乳婦等への投与(ロキソニン錠60mgの添付文書)

  1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
  2. 妊娠末期の婦人には投与しないこと。[動物実験(ラット)で分娩遅延が報告されている。]
  3. 妊娠末期のラットに投与した実験で、胎児の動脈管収縮が報告されている。

これに対して、カロナールは豪州ADEC基準でカテゴリー【A】に分類されている。つまり、極めて安全な薬物として評価が高い。

胎児骨系統疾患フォーラムは、カロナールについて、「妊娠中のアセトアミノフェン使用について」(胎児骨系統疾患フォーラムWiki)の中で次のように評価している。

「妊娠中の薬剤使用については慎重に対処すべきなのは当然ですが,妊婦が軽度~中等度までの痛みをやわらげるために鎮痛剤を必要とするときは,現時点においてもアセトアミノフェンが第一選択となるでしょう」。

なお、上記記事は、「医薬品・医療機器等安全性情報第290号」(2012年4月25日付け)に掲載されたアセトアミノフェンの重要な副作用等に関する情報(動脈管収縮など)を巡るまとめ記事となっている。

カロナールの大量・長期投与は肝臓に注意

カロナールにはCOX阻害作用がほとんど無いため、プロスタグランジンの胃粘膜保護作用を阻害することはない。つまり、胃にはやさしい薬物である。

カロナールで問題となるのは、肝機能障害である。(以下添付文書より)

    【警告】

  1. 本剤により重篤な肝障害が発現するおそれがあることに注意し,1日総量1500mgを超す高用量で長期投与する場合には,定期的に肝機能等を確認するなど慎重に投与すること。
  2. 本剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤(一般用医薬品を含む)との併用により,アセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害が発現するおそれがあることから,これらの薬剤との併用を避けること。

「高用量でなくとも長期投与する場合にあっては定期的に肝機能検査を行うことが望ましい」。

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サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)