神経障害性疼痛緩和薬など(リリカなど)

2020年8月23日

高齢者における薬物治療の注意点(特にプレガバリンを中心として)

高齢者では、加齢による腎機能低下の影響は避けられない。
消失半減期は延長し、血中濃度は上昇する可能性が高い。
腎機能低下に合わせた薬物投与量の調整が必要となる。
「リリカカプセル適正使用に関するお願い(2017年2月)」
(どんぐり2019,p.148)

通常の痛み止めと違って、痛いときだけではなく、一定期間飲み続けることで効果を発揮する。
飲み始めて2~3日(下記計算参照)すると、効果が出始めるとともに副作用が出る可能性もある。
薬理作用による重大な副作用である「めまい、傾眠、意識消失など」による転倒・骨折に注意する。

腎機能低下患者においては、プレガバリンを適切に減量しても有害事象の発生率が高い。
特に、低体重の患者でその傾向が強い。
全般的に、腎機能障害患者ではより低用量とする必要がある。(実践薬学2017,p.180)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」(下記)においても、高度腎機能障害者では、リリカ添付文書よりも少量投与を推奨している。
なお、ミロガバリンの場合も、Giusti-Hayton法により求めた投与量は、添付文書記載の数値よりも厳しく(少なく)なっている(下記)。

プレガバリンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.143-150)

75歳男性、体重58kg(身長163cm)、血清クレアチニン値0.9mg/dL
整形外科受診中(腰から足にかけて腫れがひどくなり)、プレガバリン処方追加。
プレガバリン口腔内崩壊錠75mg、1回1錠、1日1回夕食後、14日分

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-75)/(72×(0.9+0.2))}×58
=(65/79.2)×58
=47.6mg/dL

本剤は主として未変化体が尿中に排泄されるため、 腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し、 慎重に投与する必要がある。腎機能障害患者に本剤を投与する場合は、下表に示すクレアチニンクリアランス値を参考として本剤の投与量及び投与間隔を調節すること。(リリカ添付文書)

添付文書掲載の表から、
60>CCr≧30の欄について検討する。
初期用量は、「1回25mg1日3回投与、または1回75mg1日1回投与」、つまり1日75mg投与である。

上記の「プレガバリン口腔内崩壊錠75mg、1回1錠、1日1回夕食後」は妥当と考えられる。

プレガバリンの尿中未変化体排泄率(fu)

尿中未変化体排泄率(fu)=尿中未変化体排泄量/(投与量×バイオアベイラビリティ)

下記(リリカ添付文書及びインタビューフォーム)記載のとおり、尿中排泄率=絶対バイオアベイラビリティとなっており、「体内に入った薬物のほとんど全てが未変化体のまま尿中に排泄される」と考えられる。

したがって、尿中未変化体排泄率(fu)=1.0(100%)とする。(もちろん腎排泄型である)

  • ヒトにおいてプレガバリンはほとんど代謝を受けず、主に未変化のまま尿中へ排泄される。
  • 日本人健康成人に、プレガバリン50、100、200、250及び300 mg(各投与量 6 例)を絶食時に単回経口投与した時のCL/Fは4.64~5.15 L/hであった。
    この時の尿中排泄率は83.9~97.7%であった。
  • 絶対バイオアベイラビリティ 83.9~97.7%
    日本人健康成人男性にプレガバリンを 50、100、200、250 及び 300mg 単回経口投与したとき、投与後60 時間までの各投与群の平均累積尿中未変化体排泄率は、それぞれ 83.9%、95.0%、91.8%、95.6%及び 97.7%であった。
    健康成人におけるプレガバリンの尿中排泄率はその用量に影響されなかったことから、絶対バイオアベイラビリティは投与量の増加によって影響を受けないことが示唆された。

参考)ミロガバリンの尿中未変化体排泄率(fu)の計算(下記参照)

プレガバリンの高齢者における消失半減期を推算する

高齢者消失半減期
=若年者消失半減期/{1-尿中未変化体排泄率(fu)×[(若年者CCr-高齢者CCr)/若年者CCr]}
=5.95/{1-1.0×[(100-47.6)/100]}
=5.95/0.476
=12.5(hr)⇒ 5.95時間から12.5時間へ2倍以上延長している

注)尿中未変化体排泄率(fu)が大きいことから、分母は小さくなる。
その結果、分子(若年者消失半減期)に対する数値は大きくなる。
つまり、若年者消失半減期との解離が大きくなる。

Giusti-Hayton法より、補正係数(G)を求める。

補正係数(G)=1-尿中未変化体排泄率(fu)×(1-対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr)
=1-1.0×(1-47.6/100)
=1-0.524
=0.476 ⇒ 47.6%

腎機能低下患者の投与量=常用量×補正係数(G)
=150×0.476 ⇒ 71.4mg/日

これは、添付文書に記載された初期用法・用量である「1回25mg1日3回投与、または1回75mg1日1回投与」とほぼ同じ用量である。

医薬品各種(神経障害性疼痛緩和薬など)

片頭痛の予防薬:
「慢性疼痛の診療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛

  • プレガバリン:2C(使用することを弱く推奨する)
  • ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液:2D(使用することを弱く推奨する)

(実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」、ただし、この表はガイドライン2013に基づくものである。ガイドライン2018では品目数はかなり絞られている)

リリカ(一般名:プレガバリン)

【効能・効果】
神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛。

「神経障害性疼痛の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.286,305)
(帯状疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、脊髄損傷後疼痛など)

「抗炎症作用はなく、神経系に分布するCaイオンチャネルの一部に結合して鎮痛作用を発揮する」。(同上,p.286)

「副作用としては、めまい、頭痛、傾眠、霧視、便秘、口渇、体重増加などがあり、開始時は漸増、中止時は漸減が必要である。高齢者では転倒に特に注意する」。(同上,pp.286-287)

腎機能低下時の用法・用量(プレガバリン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

腎機能低下時内服投与注意:(以下、リリカ添付文書を参考にした)

「本剤は主として未変化体が尿中に排泄されるため、 腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与する必要がある。腎機能障害患者に本剤を投与する場合は、下表に示すクレアチニンクリアランス値を参考として本剤の投与量及び投与間隔を調節すること」。

「日本人健康成人に、プレガバリン50、100、200、250及び300mg(各投与量6例)を絶食時に単回経口投与した時、・・・Ae(単回投与後60時間までの未変化体の尿中排泄率(%))は、83.9%~97.7%であった」⇒腎排泄型であることを示す。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)神経障害性疼痛:初期用量1日150mgを分2、その後1週間以上かけて1日量として300mgまで漸増、最大1日600mg
    2)線維筋痛症に伴う疼痛:初期用量1日150mgを分2、その後1週間以上かけて1日量として300mgまで漸増し、300~450mgで維持、最大1日450mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1)初期用量1日75mgを分1又は分3、維持量1日150mgを分2又は分3、最大1日300mgを分2又は分3
    2)初期用量1日75mgを分1又は分3、維持量1日150mgを分2又は分3、最大1日225mgを分3
  • CCr(10~30mg/dL未満)
    1)初期用量1日25~50mgを分1又は分2、維持量1日75mgを分1、最大1日150mgを分1又は分2
    2)初期用量1日25~50mgを分1又は分2、維持量1日75mgを分1、最大1日100もしくは125mgを分1、又は1日150mgを分2
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)初期用量1日25mgを分1、維持量25~50mgを分1、最大1日75mgを分1
    2)初期用量1日25mgを分1、維持量25~50mgを分1、最大1日50~75mgを分1
    添付文書は上記だが、1日25mg、最大1日50mgの投与を推奨する。
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1)2)初期用量25mgを分1、維持量25~75mgを分1、HD後の補充用量は投与量により25~150mgをHD後に補充。
    PDでは初期用量25mgを分1、維持量25~75mgを分1
    添付文書は上記だが、1日25mgでHD日にはHD後の投与を推奨する。1日50mgの投与が必要な時はより慎重に行う。

食事摂取とプレガバリンの血中濃度の関係

(実践薬学2017,p.182)

プレガバリン150mg単回投与時(日本人健康成人男性)
絶食時、Tmax0.97時間、Cmax4.95μg/mL
食後、Tmax3.37時間、Cmax3.22μg/mL
(参考:リリカ・インタビューフォーム)

絶食時投与の立ち上がり(Tmax)が早いものの、Cmax、AUCに両者の差はあまりなく、食事の影響はないものと考えられる。

ただし、不動性めまいの発現率は、食後投与5.3%、絶食時投与30.8%で顕著な差がみられる。

なお、プレガバリンを就寝前に服用してすぐ床に就けば、空腹時投与ではあるものの、不動性めいまいの副作用を避けることができるかもしれない。
また、プレガバリン服用によって徐波睡眠が増えるという研究報告もあり、睡眠薬の多剤併用を減じるチャンスとすることができるかもしれない。

タリージェ(一般名:ミロガバリン)

【効能・効果】
末梢性神経障害性疼痛

腎機能低下時の用法・用量(ミロガバリン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    初期用量1回5mg を1日2回。その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し,1回10~15mgを1日2回
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    初期用量1回2.5mgを1日2回。有効用量1回5~7.5mgを1日2回
  • CCr(30mg/dL未満)
    初期用量1日1回2.5mg。有効用量1日1回5~7.5mg
    (HD(血液透析)・PD(腹膜透析)を含む)

ミロガバリンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.129,256)

53歳男性、体重70kg、血清クレアチニン値1.2mg/dL
整形外科受診(お尻から足にかけての痛み、痺れ、麻痺が続いている)、末梢性神経障害性疼痛と診断。
ミロガバリンベシル酸塩錠15mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分
(ミロガバリンは4週間前に初処方、継続服用中)

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-53)/(72×(1.2+0.2))}×70
=(87/100.8)×70
=60.42mg/dL

腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し、 慎重に投与すること。腎機能障害患者に投与する場合は、次の表に示すクレアチニンクリアランス値を参考として投与量及び投与間隔を調節すること。低用量から開始し、忍容性が確認され、効果不十分な場合は増量すること。(タリージェ添付文書)

添付文書掲載の表から、
CCr(60以上~90未満)であり、腎機能軽度低下と判断する。
1回5mg1日2回投与(初期用量)、その後、1回10~15mg1日2回まで増量する。
(1週ごとに5mgずつ増量して、有効用量の推奨用量1回15mg1日2回まで増量する)

上記の「ミロガバリンベシル酸塩錠15mg、1回1錠、1日2回朝夕食後」は妥当と考えられる。

尿中未変化体排泄率(fu)

尿中未変化体排泄率(fu)=尿中未変化体排泄量/(投与量×バイオアベイラビリティ)

  • 健康成人男性 6 例に 14C 標識ミロガバリン 30mg(150µCi)を単回経口投与したとき、投与 168 時間後までに放射能の累積排泄率は 98%以上に達し、投与放射能の約 97%が尿中に、約 1%が糞中に排泄された。
    尿中に回収された放射能の約 76%が未変化体であった。
  • ラット及びカニクイザルにミロガバリンを単回経口投与したときの生物学的利用率は、ラットで 97.6%、カニクイザルで 85.2%であった。(ヒトの該当資料なし)
    (タリージェ・インタビューフォーム)

尿中排泄率97%及び未変化体排泄率76%は経口投与時のデータであり、バイオアベイラビリティで補正をする必要がある。
つまり、「体内に吸収された薬物量(投与量×バイオアベイラビリティ)」と「尿中に未変化のまま排泄された薬物量(尿中未変化体排泄量)」の比を求める。

なおここで、バイオアベイラビリティは、「ラットで 97.6%、カニクイザルで 85.2%」の中間をとって、90%とする。

尿中未変化体排泄率(fu)
=(投与量×尿中排泄率×未変化体率)/(投与量×バイオアベイラビリティ(生物学的利用率))
=(30×0.97×0.76)/30×0.9(1日投与量30mgとして)
=0.819⇒約82%(腎排泄型)

Giusti-Hayton法より、補正係数(G)を求める。

補正係数(G)=1-尿中未変化体排泄率(fu)×(1-対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr)
=1-0.819×(1-60.42/100)
=1-0.819×0.396
=0.6757⇒68%

腎機能低下患者の投与量=常用量×補正係数(G)
=30×0.68⇒20.4mg/日

これは、添付文書に記載された用法・用量である「1回10~15mgを1日2回」よりも厳しい(少ない)投与量になっている。

ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液(一般名:ノイロトロピン)

鎮痛補助薬(生物組織抽出物):
「下行性疼痛抑制系賦活型」。(今日の治療薬2020,p.306)

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サリドマイド事件のあらまし(概要)
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Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)