ニューキノロン系薬(クラビットなど)

2021年6月13日

ニューキノロン系薬(概要)

ニューキノロン系薬:
作用機序(DNA、RNA合成阻害作用を有する)。
(キノロン系、リファンピシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが同様の作用を有する)

PK/PD理論(濃度依存性、concentration dependence):
ニューキノロン系やアミノグリコシド系の抗菌薬は、濃度依存性に抗菌力を発揮する。
副作用の出ない安全な範囲で、できるだけ薬物血中濃度を高めた方が効果的である。
1日量を1回にまとめて投与する。
参考)時間依存性→βラクタム系(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など)。

フルオロキノロン系抗菌薬は、濃度依存性(Cmax/MICに依存)抗菌薬であり、濃度依存的に殺菌作用を示す(PAE効果も有する)。(アミノグリコシド系も同様)

フルオロキノロン系抗菌薬は、代表的な腎排泄型薬物である。
また、シプロフロキサシンは、CYP1A2の強い阻害薬である。

フルオロキノロン系抗菌薬は、NSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意すること。

フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、難溶性のキレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空けること。
(テトラサイクリン系抗菌薬も同様)

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

医薬品各種(ニューキノロン系薬)

ニューキノロン系:「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

クラビット(一般名:レボフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「OFLXの光学活性S(-)体でOFLXの約2倍の抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.81)

光学異性体(S体)⇔オフロキサシン(ラセミ体:S + R)
抗菌力の増強、副作用の軽減(実践薬学2017,p.24)

抗菌スペクトル(適応菌種):
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、結核菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
効果がない菌:百日咳菌、ジフテリア菌など

  • 中耳炎や副鼻腔炎(主な起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ菌)⇒βラクタム系
  • 呼吸器感染症(百日咳、マイコプラズマ属が起炎菌の場合)⇒マクロライド系
    百日咳(菌)は、クラリスロマイシンでは適応となっていない。
    エリスロマイシンでは適応(菌)となっている。
  • 肺炎(レジオネラやクレブシエラ属が起炎菌の場合)⇒ニューキノロン系
    (児島2017,p.188)あくまでも参考

腎機能低下時の用法・用量(レボフロキサシン)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(87%)、減量法の記載有り。
  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1回500mgを1日1回
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    初日500mgを1回、以後1回250mgを1日1回
  • CCr(20mg/dL未満、透析患者を含む)
    初日500mgを1回、3日目以降1回250mgを2日に1回

タリビット(一般名:オフロキサシン)

ニューキノロン系薬:(今日の治療薬2020,p.81)

ラセミ体(S+R)である。⇒レボフロキサシン(S体)

腎機能低下時の用法・用量

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日300~600mgを分2~3。ハンセン病の場合は1日400~600mgを分2~3。腸チフスの場合は1回200mgを1日4回、14日間投与
  • CCr(10~50mg/dL未満)
    1回200mgを1日1回
  • CCr(10mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回100mgを1日1回、HD患者はHD日はHD後に投与

アベロックス(一般名:モキシフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「呼吸器感染症の原因菌に強い活性」。(今日の治療薬2020,p.86)

オゼックス(一般名:トスフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「マクロライドやペニシリンに耐性を示す肺炎球菌・インフルエンザ菌に強い活性。小児に適応を有するニューキノロン薬」。(今日の治療薬2020,p.84)

ジェニナック(一般名:ガレノキサシン)

ニューキノロン系薬:
「呼吸器感染症の原因菌であるペニシリン耐性肺炎球菌、多剤耐性肺炎球菌を含む肺炎球菌、マイコプラズマ、レジオネラに強い抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.86)

腎機能低下時の用法・用量(ガレノキサシン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

グレースビット(一般名:シタフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「グラム陰性・陽性菌、マイコプラズマ、レジオネラに強い活性。嫌気性菌に対する抗菌活性も高い」。(今日の治療薬2020,p.87)

腎機能低下時の用法・用量(シタフロキサシン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回50mgを1日2回、又は1回100mgを1日1回。効果不十分の場合は1回100mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回50mgを1日1回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1回50mgを2日に1回
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1回50mg又は00mgを週3回HD後に投与

スオード(一般名:プルリフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「プロドラッグ。活性体UFXが効力。大腸菌、緑膿菌に強い抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.85)

腎機能低下時の用法・用量(プルリフロキサシン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回200mgを1日2回。1回最大量は300mg。肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染には、1回300mgを1日2回
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1 回200mgを24時間毎
  • CCr(15~30mg/dL未満)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回200mgを48時間毎

シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「グラム陰性菌での抗菌力はNFLX,OFLXの2~4倍。但し経口での吸収率は高くない」。(今日の治療薬2020,p.82)

シプロフロキサシンは、CYP1A2阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

CYP1A2(阻害薬)⇒チザニジン(基質薬)

シプロフロキサシンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

ラスビック(一般名:ラスクフロキサシン)

ニューキノロン系薬:(今日の治療薬2020,p.87)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
『サリドマイド事件(第7版)』
世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか(図表も入っています)

www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00V2CRN9G/
2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)