新しい睡眠薬(ロゼレム、ベルソムラ)

2020年5月24日

睡眠薬の薬理作用のイメージ

不眠症とは、ただ単に眠れないという状態をいうのではなく、その結果として「何らかの昼間の弊害がもたらされる状態」のことをいう。

    睡眠覚醒調節機構

  • GABAa受容体作動薬:
    恒常性維持機構(疲れたら眠る仕組み)に働く
  • メラトニン受容体作動薬:
    体内時計機構(夜になると眠る仕組み)に働く
  • オレキシン受容体拮抗薬:
    覚醒調節機構(目覚めている状態を維持する仕組み)に働く

(実践薬学2017,pp.35-36,42-47、以下「」引用)

医薬品各種(新しい睡眠薬)

ロゼレム(一般名:ラメルテオン)

メラトニン受容体作動薬:MRA(melatonin receptor agonist)

「ベンゾジアゼピン受容体に作用しないため、効果は弱いが副作用は少ない。高齢者や身体疾患患者、睡眠相のずれなどに効果が期待される」。(今日の治療薬2020,p.903)

メラトニンは、間脳の松果体で合成・分泌される脳内ホルモンの一種である。概日リズム(体内時計機構)を調整することによって、日中はきちんとした覚醒状態を保ち、夜になると自然な睡眠が得られるように働く。

ラメルテオンは、メラトニン受容体に結合することによって、乱れた体内時計に働き掛けて睡眠-覚醒のリズムを改善する薬物である。つまり、「睡眠導入剤というより、リズム異常を改善する睡眠改善薬」という位置付けになる。

ラメルテオンは、効果発現までには日数を要する薬物である。服薬指導では、「眠るための薬というよりは、スッキリとした自然な目覚めを取り戻すための薬」と説明するのがよいだろう。

ラメルテオンはマイルドな薬物である。依存性は少なく、離脱も容易である。また、アルコールの影響も少ない。とはいうものの、アルコール自体は睡眠の質を悪化させる物質である。

なお、ラメルテオンの半減期(未変化体)は約1時間であるが、催眠作用はそれよりも長く、まれに持ち越し効果を訴える患者もいる。つまり、半減期は短いが効果の持続時間は長い。半減期と持続時間が一致しない理由は分かっていない。

ラメルテオンは、CYP1A2の基質薬(影響を強く受けやすい)である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ラメルテオンは、CYP1A2の基質薬である。フルボキサミン(CYP1A2阻害薬)と併用しないこと。

「薬剤名等:フルボキサミンマレイン酸塩(ルボックス、デプロメール)
臨床症状・措置方法:本剤の最高血中濃、AUCが顕著に上昇するとの報告があり、本剤の作用が強くあらわれるおそれがある。
機序・危険因子:本剤の主な肝薬物代謝酵素であるCYP1A2を強く阻害する。また、CYP2C9、CYP2C19及びCYP3A4に対する阻害作用の影響も考えられる」。(ロゼレム添付文書)

ラメルテオンには、せん妄予防効果が期待できる

参考:「2011年9月、「器質的疾患に伴うせん妄、精神運動興奮状態、易怒性」に対する、ハロペリドール、ペロスピロンの処方が審査上認められることとなった。せん妄の治療には、半減期の短いクエチアピンやペロスピロンから勧めていくといいだろう」。(実践薬学2017,p.41)

ベルソムラ(一般名:スボレキサント)

デュアルオレキシン受容体拮抗薬:DORA(dual orexin receptor antagonist)

「覚醒物質であるオレキシンの受容体への結合を阻害。中~長期間作用する。悪夢に注意」。(今日の治療薬2020,p.903)

オレキシンは、視床下部のニューロンから産生される神経ペプチドである。覚醒/睡眠の制御などの重要な生理機能を担っている。

スボレキサントは、オレキシンの受容体への結合をブロックすることによって、過剰に働いている覚醒システムを抑制する。その結果、脳を覚醒状態から生理的な睡眠状態へと導く。

スボレキサント(半減期約12時間)は、1日1回反復投与したとき、3日目までには定常状態に達する。つまり、反復投与によって血中濃度がゼロでない状態が続くようになるが、それでも目覚めることができる。

このように、スボレキサントの薬効は、血中濃度だけでは論ずることはできない。そこでは、オレキシン受容体におけるオレキシンとスボレキサントの結合動態の変化を考える必要がある。以下のとおりである。

スボレキサントが睡眠作用を発揮するには、脳内受容体占有率65~80%以上が必要とされている(GABAa受容体の場合、26~29%)。つまり、十分な睡眠作用を発揮するためには、高い受容体占有率が必要である。

その一方で、内因性のオレキシン濃度は、就寝時間中は日中のレベルから急速に減少する。そのため、スボレキサントの受容体占有率が競合的に上昇する。その結果、覚醒から睡眠へと傾く。つまり自然な睡眠状態が得られる。

覚醒時刻付近では、オレキシン濃度は急速に上昇して再び日中のレベルに近づく。そうすると、スボレキサントによる受容体占有率は競合的に減少することになり、睡眠から覚醒へと傾く。つまり自然と目覚めることになる。

食事と同時又は食直後の服用を避ける

「通常、成人にはスボレキサントとして1日1回20mgを、高齢者には1日1回15mgを就寝直前に経口投与する」。実際には、就寝30分くらい前の方がよい。そのように指導する医師も多い。

「入眠効果の発現が遅れるおそれがあるため、本剤の食事と同時又は食直後の服用は避けること。〔食後投与では、空腹時投与に比べ、投与直後のスボレキサントの血漿中濃度が低下することがある〕」。(ベルソムラ添付文書)

減量用の規格として10mg錠がある

スボレキサントの規格として、米国では5mg、10mg製剤があるという。日本でも、2016年12月、減量用の規格として10mg錠が発売された。同時に、以下の添付文書改訂が行われた。

「CYP3Aを阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、これらの薬剤を併用する場合は 1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること」。(ベルソムラ添付文書)

世界初のオレキシン受容体拮抗薬として日本で開発された

ベルソムラは、日本で開発され世界で初めて発売されたオレキシン受容体拮抗薬である。

最も心配なナルコレプシー(居眠り病)の発現増加はみられないようである。とはいうものの、未知の副作用の可能性については、注意深く見守っていく必要がある。

スボレキサントは、CYP3A基質である

「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:CYP3A、P-gp阻害薬・イトラコナゾール(イトリゾール)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)