プロトンポンプ阻害薬(PPI)胃酸分泌抑制薬

2021年1月27日

胃酸分泌抑制薬(PPI)概略

「上部消化管疾患では、高齢者の増加、H.pylori感染者の減少と除菌治療の普及(毎年100~150万人が除菌治療を受けている)などにより、疾患分布が大きく変化している。
すなわち、消化性潰瘍が減少し、胃食道逆流症(GERD)や機能性ディスペプシア(FD)が増加している」。(今日の治療薬2020,p.756)

  • H2ブロッカーは、胃粘膜にある胃壁細胞の「ヒスタミンH2受容体」に拮抗することで酸の分泌を抑える。
  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、酸分泌の最終段階である「プロトンポンプ(H+/K+ ATPase)」を阻害することで酸の分泌を抑える。

PPIは、消化性潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群に効果があり、第一選択薬とされる。
ただしPPIでは、保険適応上の投与日数に上限があるため、長期間の治療ではH2ブロッカーを使用することになる。

つまり、使い分けとしては、PPI(初期)→ H2ブロッカー(長期維持療法)となる。
また、1日投与回数は、PPI(1日1回)、H2ブロッカー(多くの場合、1日2回)となる。

注)機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)
症状の原因となる明らかな異常(器質的、全身性、代謝性疾患)がないにもかかわらず、慢性的にみぞおちの痛み(心窩部痛)や胃もたれなどの腹部症状(ディスペプシア症状)を呈する疾患
「機能性ディスペプシア(FD)ガイドQ&A」(日本消化器病学会ガイドライン)

PPIは安全性が高い薬剤であるが、長期投与により大腿骨頚部骨折などの骨折リスクの上昇やクロストリジウム・ディフィシル感染症のリスクが高まることが報告されている。

胃食道逆流症/逆流性食道炎(GERD)とは

日本消化器病学会ガイドライン(診療ガイドライン/患者とご家族のためのガイドライン)
https://www.jsge.or.jp/guideline/

胃食道逆流症(GERD:ガード)

胃食道逆流症(GERD:ガード)は、主に胃酸が食道に逆流することによって、胸やけや呑酸(どんさん)などの不快な自覚症状を感じたり、食道の粘膜がただれたりする病気である。
(GERD:Gastro Esophageal Reflux Disease)

胃食道逆流症(GERD)には、次の3つのタイプがある。
この内、食道炎(食道粘膜のただれ)がある場合、自覚症状の有無にかかわらず「逆流性食道炎」という。

  • 自覚症状のみで食道炎はない(非びらん性胃食道逆流症:NERD)
  • 食道炎があり自覚症状もある(症状のある「逆流性食道炎:GERD」)
  • 食道炎はあるが自覚症状はない(症状のない「逆流性食道炎:GERD」)

胸やけ:みぞおちの上の焼けるようなジリジリする感じ、しみる感じなど
呑酸:酸っぱい液体が上がってくる感じ
そのほか、胸が詰まるような痛み、喉(のど)の違和感や慢性的な咳の持続 GERDの患者は、欧米と比較して日本では少ないとされていたが、近年患者数が増加している。以下のような理由が考えられている。(成人の10~15%)

  • 病気の認知度が高まった
  • 食生活の欧米化
  • ピロリ菌感染症率が減少して、元気な胃(胃酸が活発に出る胃)を持つ人が多くなった

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の世代分類と用法・用量

PPIは、いずれもCYP2C19の基質である。
そして、CYP2C19には遺伝子多型が存在するため、PPIの薬効に患者個々でバラツキの出る可能性がある。
この中で、ボノプラザンではCYP2C19の影響はあまり大きくないとされている。

  • homo-EM(homo-extensive metabolizer)、CYP2C19活性が高く代謝が速い(日本人の約35%)
    PPIの効き目が弱くなる。
  • hetero-EM、中間(日本人の約45%)
  • poor metabolizer(PM)、CYP2C19活性が低く代謝が遅い(日本人の約20%)
    PPIの効き目が強くなる。

第一世代: オメプラゾール、ランソプラゾール

CYP2C19の基質薬として「影響を強く受けやすい」薬物であり、遺伝子多型の影響を受けやすい。
特に、オメプラゾールでその傾向が強い。
homo-EMの人では、通常量のオメプラゾールでは治療効果が十分に得られない可能性があり、逆にPMの人では、投与量が多すぎる場合がある。

「逆流性食道炎」には、通常用量で1日1回投与(8週間まで)。
「非びらん性胃食道逆流症」には、通常用量で1日1回投与(4週間まで)、ただし実際の投与量は、「逆流性食道炎」の場合の半量がめどになっていると考えてよい。

第二世代: ラベプラゾール、エソメプラゾール

CYP2C19の基質薬として「影響を中程度に受けやすい」薬物である。
遺伝子多型による影響は受けにくい。

「PPIはCYP2C19で代謝されるが、代謝における同酵素の寄与率は薬剤により異なる」。(上記指針(総論編))

代謝に関与する酵素(CYP等)の分子種、寄与率

①相互作用
非酵素的還元反応によるチオエーテル体の生成が主代謝経路であり、脱メチル化に関与するCYP2C19及びスルホン化に関与するCYP3A4の寄与は小さい。
したがって、類薬(オメプラゾール)でCYP2C19への代謝競合により相互作用が認められているジアゼパム、ワルファリン(R-ワルファリン)、フェニトインに対して本剤はこれらの薬剤の血中濃度に影響を与えないことが報告されている。
さらに、CYP1A2の誘導により相互作用が認められているテオフィリンに対しても本剤は血中濃度に影響を与えないことが報告されている」。(パリエット錠・インタビューフォーム)

「逆流性食道炎」、「非びらん性胃食道逆流症」に対する用法・用量の考え方は、第一世代と同じである。

PPI抵抗性GERD(変薬などを考える)

第一世代から第二世代へ変薬する

第一世代のPPIで症状の改善が見られない場合、患者はhomo-EM(CYP2C19活性が高い)である可能性が高い。
その場合、CYP2C19の遺伝子多型の影響が少ない第二世代PPIに変薬する。

1日1回から1日2回投与に変更する

同じ1日量でも、投与回数を増やす方が酸分泌抑制効果は高くなる。
これは、新たにできたプロトンポンプを阻害するためと考えられている。
例えば、ピロリ除菌の場合には、いずれも1日2回投与となっている。

食後投与から、1日1回食前30~60前に服用(夕食前)に変更する

PPIのTmaxは、空腹時で2時間程度である。
したがって、経口摂取したPPIがターゲットであるプロトンポンプに効率よく作用するためには、<食前>30~60分という用法は理にかなっていると言える。

以下のとおりである。

PPIのターゲットであるプロトンポンプは、胃体部の胃底腺にある壁細胞に存在している。
プロトンポンプは、食物摂取などの分泌刺激を受け取ると、H+を分泌細管に輸送し胃酸を生成する。
これに対して、経口投与されたPPIは、腸粘膜から吸収され門脈を通過して肝臓に運ばれる。
さらに血流に乗って胃の壁細胞に達する。
そこで高濃度のH+(食事による胃酸分泌)に接すると、PPIは活性化されてプロトンポンプの働きを抑制し、胃酸分泌抑制効果を発揮する。

欧米においては、PPIは食前投与が一般的となっている。
プロトンポンプの働きが最も強くなり、PPIの活性化が最も促進される時期を狙った投与法ということができる。

日本の添付文書では、「1日1回経口投与する」としか書かれていない。
食前・食後あるいは朝・昼・夕食の決まりは無い。
日本では、生活習慣病薬の多くが1日1回朝食後投与となっており、アドヒアランス向上の観点から、それに合わせた処方が多くなっているものと思われる。

PPI(ボノプラザンを除く)は酸に弱いため、全て腸溶錠となっている。
また、H+によって活性化するプロドラッグでもある。
(実践薬学2017,p.263「胃酸分泌機序のイメージ」など)

新規PPI(ボノプラザン)とピロリ除菌

ボノプラザン(P-CAB:カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)は、既存のPPIの弱点を克服するために開発された新しいタイプの薬物である。

「強力な酸分泌抑制効果を示す新機序PPIボノプラザンは、GERDや消化性潰瘍などの酸関連疾患の治療期間の短縮とH.pylori除菌率の向上が示されている」。(今日の治療薬2020,p.756)

  • 立ち上がりが速い
  • 酸分泌抑制効果が強く、しかも持続性がある
  • 代謝酵素による個人差が少ない

ボノプラザンは、代謝酵素〈CYP2C19〉の影響をあまり受けないとされている。
つまり、遺伝的体質による個人差を小さく抑えることができる薬物である。
さらに、酸分泌抑制効果の発現が速く、しかも強い効果が持続することから、ピロリ菌の一次除菌成功率を確実に高めることができる。

既存のPPIの弱点

  • 最大効果を発揮するまで時間がかかる(数日)
  • 夜間の酸分泌を十分に抑制できない
  • 腸溶製剤である(酸に不安定)
  • CYP2C19で代謝される(遺伝子多型が多い)

ボノプラザンを用いた3剤併用によるピロリ一次除菌率は高い

(実践薬学2017,pp.268-272)

ピロリ除菌(3剤併用療法)の除菌率を高めるためには、胃内pHを高く(中性側に)保つ必要がある。

その理由は以下のとおりである。

  • 抗菌薬(アモキシシリンやクラリスロマイシン)は、ピロリ菌の増殖期に作用する。
    ピロリ菌はpH≦5.0ではほとんど増殖せず、pH>5.0で増殖をする。
  • 抗菌薬(アモキシシリンやクラリスロマイシン)の抗菌力は、pH5.5の酸性条件下では弱く、pH7.2の中性条件下で上昇する。

PPIは、強酸性の胃内をできる限り中性側に傾けるために併用される。
ボノプラザンは、従来のPPIよりも立ち上がりが速く、しかも強力かつ持続的な酸分泌抑制作用を有しており、優れた治療効果を発揮する。

その結果は以下のとおりである。

ボノプラザンを用いた3剤併用療法によるピロリ一次除菌率は、ランソプラゾールを用いた場合に比べて高い。
また、「最近、クラリスロマイシンに対する一次耐性率が30~40%と増えているが、ボノプラザン併用では90%の除菌率がある」。(今日の治療薬2020,p.760)

咳が長く続く場合には、原因を特定することが大切

(児島2017,p.181)

「咳は体力を奪い、また肋骨の骨折にもつながる」。
適切な薬物を適切に使い分けることが大切である。

とはいうものの、鎮咳薬が全ての咳に効くわけではない。
咳が長引く場合、それぞれの原因疾患別に根本的な治療が必要である。

〇喘息による咳:
鎮咳薬は逆効果となる。
ステロイド吸入薬や抗ロイコトリエン薬を使用する。

〇逆流性食道炎による咳:
胃酸を抑える薬(PPIやH2ブロッカー)が必要である。

〇副鼻腔炎(蓄膿症)による咳:
副鼻腔炎を根本的に治療するため、ステロイド点鼻薬や抗菌薬などを使用する。

〇就寝時横になると咳がひどくなるのは、心不全の兆候かもしれない。
心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液を送り出すことができなくなった状態をいう。
心不全状態では、全身に水分がたまってしまうので、体重増加(1週間で2kg以上の増加)や、横になると咳が出たり息苦しくなったりする。

〇子どもの咳は、家族の喫煙が原因のこともある。

医薬品各種(プロトンポンプ阻害薬:PPI)

PPIは、肝消失型薬物である。

PPIには、ピロリ菌の活動を抑える静菌作用がある。
PPIを服用中にピロリ菌の検査をすると、〈偽陰性〉になることがある。
(ピロリ菌が存在するのに、陰性の結果が出る)
ピロリ菌検査の少なくとも2週間前から、PPIは中止する必要がある。
一般的には、一時的にH2ブロッカーや胃粘膜保護薬(テプレノンやレバミピド)に切り替える。

従来のPPIは、酸に不安定なため腸溶錠やカプセル(腸溶顆粒入り)になっている。
それを、例えば嚥下困難患者のため粉砕すると、その製剤学的特徴は失われてしまう。
参考までに、胃酸はpH2~3で、薬剤の胃内滞留時間はおよそ1~2時間とされている。
なお、ネキシウム懸濁用顆粒(2018/04/18)が発売されている。

オメプラール、オメプラゾン(一般名:オメプラゾール)

プロトンポンプ阻害薬(PPI):
「強い酸分泌抑制作用。【錠】日中・夜間を問わず酸分泌を確実に抑制。腸溶製剤。除菌時は胃内のpHを高め併用抗菌薬の抗菌力を高める。【注射】強力な胃酸分泌抑制作用により上部消化管出血を抑制」。(今日の治療薬,p.765)

 最も遺伝子多型の影響を受けやすいPPIである(第1世代)。
ラセミ体(S + R)になっている⇒エソメプラゾール(S体)

1日1回20mg
(胃潰瘍、吻合部潰瘍、維持療法除く逆流性食道炎8週間まで、十二指腸潰瘍6週間まで)
1日1回10~20mg
(再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法)
そのほかの長期使用では、H2ブロッカーを選択する。
(保険適用上の問題)

錠(10mg、20mg)
注射(20mg)

オメプラゾールは、CYP2C19阻害薬(弱い)である

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月) (実践薬学2017,pp.146-147)

オメプラゾールは、CYP2C19の基質薬(影響を強く受けやすい)である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月) (実践薬学2017,pp.146-147)

タケプロン(一般名:ランソプラゾール)

プロトンポンプ阻害薬(PPI):
「腸溶性製剤。持続性。【注射】出血性消化性潰瘍に頻用」。(今日の治療薬,p.765)

遺伝子多型の影響を受けやすいPPIである(第1世代)。
コラーゲン性大腸炎(collagenous colitis:CC)の頻度が高いとされている。(実践薬学2017,pp.273-276)

1日1回30mg
(胃潰瘍、吻合部潰瘍、維持療法除く逆流性食道炎8週間まで、十二指腸潰瘍6週間まで)
1日1回15~30mg
(再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法)
そのほかの長期使用では、H2ブロッカーを選択する。
(保険適用上の問題)

OD錠(15mg、30mg)
カプセル(15mg、30mg)
静注用(30mg)

ランソプラゾールは、CYP2C19の基質薬(影響を強く受けやすい)である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月) (実践薬学2017,pp.146-147)

パリエット(一般名:ラベプラゾール)

プロトンポンプ阻害薬(PPI):
「胃酸分泌を速やかに抑制かつ酸分泌回復性に優れ薬物代謝酵素への影響少ない。リバウンドが少ない」。(今日の治療薬,p.766)

ラベプラゾールは、食前でも食後でも効果に差がない。
日本人向きのPPIと言えるかもしれない。p.266 (第2世代)

1日1回10mg(病状により1日1回20mg)
(胃潰瘍、吻合部潰瘍8週間まで、十二指腸潰瘍6週間まで)
1日1回10mg(病状により1日1回20mgまで)
逆流性食道炎、通常8週間まで)
→ PPIで効果不十分;1回10mg(重度の粘膜障害では20mg)、1日2回
逆流性食道炎、更に8週可)
1日1回10mg(5mg錠、10mg錠のみ)
逆流性食道炎、再発・再燃を繰り返す場合の維持療法)
→ PPIで効果不十分;1回10mg、1日2回
逆流性食道炎、再発・再燃を繰り返す場合の維持療法)
そのほかの長期使用では、H2ブロッカーを選択する。
(保険適用上の問題)

錠(5mg、10mg、20mg)

維持療法(逆流性食道炎)では、ラベプラゾール1回20mgの適応は無い

〈逆流性食道炎〉(ラベプラゾール添付文書)

  • 治療 逆流性食道炎の治療においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与するが、病状により1回20mgを1日1回経口投与することができる。なお、通常、8週間までの投与とする。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な場合、1回10mg又は1回20mgを1日2回、さらに8週間経口投与することができる。ただし、1回20mg1日2回投与は重度の粘膜傷害を有する場合に限る。
  • 維持療法 再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与する。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日2回経口投与することができる。

PPI各剤の投与期間は、必要に応じて、通常用量で1日1回8週間まで認められている。
そうした中で、ラベプラゾールのみ、「1回10mg又は1回20mgを〈1日2回、さらに8週間経口〉投与することができる」。

なお、「再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の〈維持療法〉」では、1回10mgを1日1回経口投与する。
そして、「プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の〈維持療法〉」では、1回10mgを1日2回経口投与することができる。

ただし、いずれの場合でも、1回20mgの適応は無い。
つまり、ラベプラゾールといえども、〈維持療法〉においては1回10mgが限度である。

ラベプラゾールは、CYP2C19の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月) (実践薬学2017,pp.146-147)

ラベプラゾールは、肝消失型の薬物である

「本剤は主として肝臓で代謝される」。(パリエット添付文書)
「投与後24時間までに尿中にラベプラゾールナトリウムの未変化体は検出されず」。(同上)
「(代謝物は)阻害作用を示さなかった」。(パリエット・インタビューフォーム) ←(どんぐり2019,pp.91,241)

ネキシウム(一般名:エソメプラゾール)

プロトンポンプ阻害薬(PPI):
「強力な酸分泌抑制効果で高い有効性を示す」。(今日の治療薬,p.767)

オメプラゾン(ラセミ体:S + R)の光学異性体(S体)である。
「R体」は、全体の98%近くが代謝酵素〈CYP2C19〉によって代謝される。
「S体」は、全体の6~7割が代謝酵素〈CYP2C19〉によって代謝される。
「S体」の代謝には、そのほかの代謝酵素も関与している。

したがって、代謝酵素〈CYP2C19〉の影響が少ない「S体」だけを分離・抽出したネキシウムは、オメプラゾールよりも、遺伝的体質による個人差を小さく抑えることができる。
このことは、ピロリ菌の一次除菌成功率を高めることにもつながる。(児島2017,pp.220-221)

ネキシウムでは、効果が増強され、薬物代謝酵素の影響が軽減されている。(実践薬学2017,p.24)
エソメプラゾールは、食後投与から食前投与に変更することによって、さらに効果がアップする。p.266

1日1回20mg
(胃潰瘍、吻合部潰瘍、維持療法除く逆流性食道炎8週間まで、十二指腸潰瘍6週間まで)
1日1回10~20mg
(再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法)
そのほかの長期使用では、H2ブロッカーを選択する。
(保険適用上の問題)

懸濁用顆粒分包(10mg、20mg)
カプセル(10mg、20mg)

エソメプラゾールは、CYP2C19の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月) (実践薬学2017,pp.146-147)

タケキャブ(一般名:ボノプラザン)

プロトンポンプ阻害薬(PPI):
「新しい機序のPPIで酸分泌抑制効果の出現が速く、強い」。(今日の治療薬2020,p.767)

P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)→ 日本発の新しい系統のPPIである。
酸に対して強いため、従来のPPIとは異なり、腸溶製剤とはなっていない。

ボノプラザンは、代謝酵素〈CYP2C19〉の影響をあまり受けないとされている。
つまり、遺伝的体質による個人差を小さく抑えることができる薬物である。
ボノプラザンは、従来のPPIよりも立ち上がりが速く、しかも強力かつ持続的な酸分泌抑制作用を有しており、優れた治療効果を発揮する。
ピロリ除菌での有用性は、既に実証されている。(既述)

今後、ピロリ除菌やPPI抵抗性GERDなどの症例を中心に使われていくものと思われる。
しかしながら、神経内分泌腫瘍(カルチノイド)やそのほかの副作用を含めて、モニタリングの継続が求められる。
また、新薬で薬価が高いため、既存PPIで治療効果が十分認められる場合は、あえて変薬するまでもない。

タケルダ配合(一般名:ランソプラゾール/アスピリン)

アスピリン・ランソプラゾール配合剤:(今日の治療薬2020,p.592)

本剤はランソプラゾールを含む外層とアスピリンを含む内核で構成される配合剤である。
本剤は低用量アスピリンを長期服用しなければならない患者の胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制及び利便性と服薬遵守率の向上を目的に配合剤として開発された。
(粉砕すると、その製剤学的特徴は失われてしまう)

【効能・効果】
下記疾患又は術後における血栓・塞栓形成の抑制(胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の既往がある患者に限る)
・ 狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)、心筋梗塞、虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)
・ 冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後

配合錠(アスピリン100mg+ランソプラゾール15mg)

なお、オメプラゾール以外のPPIで、次の効能・効果がある。
「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」。
ただし、適用となる剤形が限られる場合があるので注意すること。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(消化性潰瘍治療薬)

消化性潰瘍治療薬は特に逆流性食道炎(GERD)において長期使用される傾向にあるが、薬物有害事象も知られており、長期使用は避けたい薬剤である。(消化性潰瘍治療薬)

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)(エソメプラゾール[ネキシウム]、 ランソプラゾール[タケプロン]、ラベプラゾール[パリエット]、オメプラゾール[オメプラール])は、その有効性に関する報告が多く、 第一選択として使用される。
  • H2受容体拮抗薬も有効な治療薬であるが、腎排泄型薬剤であることから腎機能低下により血中濃度が上昇し有害事象の生じる可能性が高くなる。
    また、高齢者ではせん妄や認知機能低下のリスクの上昇があり、可能な限り使用を控える。
  • ボノプラザン[タケキャブ]はPPI同様に強力な胃酸分泌抑制作用があり、PPI使用時の注意に準じた経過観察を考慮する。
  • PPIは安全性が高い薬剤であるが、長期投与により大腿骨頚部骨折などの骨折リスクの上昇やクロストリジウム・ディフィシル感染症のリスクが高まることが報告されている。
    さらに長期使用によるアルツハイマー型認知症のリスクの上昇についても報告がある。
  • H2受容体拮抗薬(ファモチジン[ガスター]、ニザチジン[アシノン]、 ラニチジン[ザンタック])は、腎排泄型であり、腎機能が低下している患者の使用の際に注意する。
  • PPIはCYP2C19で代謝されるが、代謝における同酵素の寄与率は薬剤により異なる。
    難治性GERDや重症の食道炎、NSAIDs内服による消化管出血リスクの高い症例を除いては、8週間を超える投与は控え、継続する場合にも常にリスクを考慮する。
  • H2受容体拮抗薬のうち、シメチジン[タガメット]は複数のCYP分子種を阻害することから、薬物相互作用に注意を要する。

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(CYP2C19)

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C19

【基質】
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、オメプラール、オメプラゾン)
ランソプラゾール (プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケプロン)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
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2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
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世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか(図表も入っています)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2021年1月(令和3)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)