クレストール:国内第1号のICH-E2Eガイドラインに準拠した使用成績調査(PRIME試験)実施

クレストールの発売(2005年)

「抗生物質のシオノギ」の凋落を救ったのは、クレストール(一般名:ロスバスタチン)です。クレストールは、1991年(平成3)、シオノギ製薬が創製したHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、すなわち脂質異常症治療薬の一つです。

シオノギ製薬が前期第Ⅱ相試験まで開発を進めた後、1998年にアストラゼネカ社が引き継ぎ全世界での開発を行いました。日本での発売は2005年(平成17)であり、2009年10月(平成21)現在、100か国以上で承認及び80か国以上で販売されています。

シオノギ製薬に入るロイヤリティーは非常に大きく、同社の業績は2010年以降持ち直しています。

ところで、スタチンは動脈硬化のペニシリンとも言われています。シオノギ製薬は、クレストールによって、循環器系疾患領域でやっと再び本格的な貢献ができる製薬メーカーとなりました。

国内第1号のICH-E2Eガイドラインに準拠した使用成績調査

クレストールの国内での新薬承認データは、海外臨床試験データが大部分(1万例以上)を占めており、日本人のデータはごく少数例(約200例)となっています。

それにもかかわらず新薬承認がなされたのは、ブリッジング試験によって、外国臨床試験データを日本人に外挿(がいそう)することが可能と判断されたことによるものです。つまりこの場合、外国人(特に欧米人)のデータを日本人のデータとして取り扱うことの妥当性が認められ、製造販売承認を得ることができました。

新薬承認後、クレストールの日本人における安全性をより確かなものとするため、シオノギ製薬とアストラゼネカ社は改めて日本人データを収集することにしました(目標症例数、約1万例)。

そのため、国内第1号のICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)-E2Eガイドラインに準拠した医薬品安全性監視の計画に基づく使用成績調査を実施し、市販後の安全性情報の収集と評価を行いました。PRIME試験(PMS for Rosuvastatin: Innovative Medical Experience)です。

私も症例の収集(5例分)に関わりました。アストラゼネカ社分担の病院があり、同社では調査依頼がうまく行かなかったため、私(シオノギ製薬)の分担として調査を実施してもらったのです。

市販後調査(PMS:post marketing surveillance)を正確に実施することが、いかに難しいか実感することができました。

PRIME試験の概要

PRIME試験の登録期間は、発売開始(2005年4月27日)直後から約1年間(2005年5月~2006年3月)でした。そして、その調査対象は、比較的規模の大きい病院のみに限定されました。そのため、ご開業の先生方には、使用成績調査の結果が判明するまでは、クレストールの処方を待ってもらうことになりました。

目標症例数1万例を掲げ、最終的には8,795例で解析が行われました。調査終了のプレスリリースは、2007年4月20日に行われました。途中で中間発表が行われ、特に問題なしとして通常販売(全面販売)が開始されたのは、2006年9月25日のことでした。

ところで、欧米においては、クレストール〈5mg〉とアトルバスタチン〈10mg〉の薬効はほぼ同等とされています。そして、日本におけるクレストールの薬価もそれに基づいて算定されています。

これに対して、クレストールのインタビューフォームによれば、ブリッジングの検討で「本剤の日本人における用量は外国人の用量の2分1にほぼ相当すると判断」(p.9)されています。関連する基礎資料として「日本人における定常状態の血中ロスバスタチン濃度は白人の約2倍」(同p.9)とするデータがあります。

そこで、PRIME試験でのクレストールの開始用量は、2.5mg(5mgの半量)1日1回投与とされました。もちろん、1日薬価もほぼ半額となります。

PRIME試験の結果、クレストール〈2.5mg〉から〈5mg〉に増量するケースは多くはありませんでした。つまり、クレストール〈2.5mg〉投与で、例えばアトルバスタチン〈10mg〉に相当する効果を示し、副作用の程度に差はありませんでした。

結果として、クレストールを日本人に投与した場合、欧米人に比べて相対的に少ない投与量(低い薬価)で、そのほかのスタチンとほぼ同等の効果を有するということが分かりました。

上記文章は、山本明正『塩野義製薬MR生活42年』(電子書籍/アマゾンKindle版)の一部です。

関連URL

動脈硬化のペニシリン:HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
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2016年11月5日(第2版発行)
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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)