選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

2020年11月27日

抗うつ薬(SSRI)概略

選択的セロトニン再取り込み阻害薬:
SSRI:selective serotonin reuptake inhibitor

うつ病患者では、神経伝達物質であるモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)の濃度が減少しているとされている。

  • セロトニンは、精神の安定(安心感や落ち着き)をもたらす。
  • ノルアドレナリンは、意欲・関心(やる気や気力など)を高める。
  • ドーパミンは、感情(興味や楽しみなど)を高める。

SSRIは、セロトニン濃度を高めることによって、抗うつ効果を発揮すると考えられている。
SSRIは、セロトニンのシナプスでの回収(再取り込み)を阻害して、シナプス間隙のセロトニン濃度を高める作用を有する。

セロトニンは、精神の安定(安心感や落ち着き)をもたらすので、SSRIの多くが、うつ病・うつ状態と共に社会不安障害に適応がある。

セロトニンは、消化管の活動にかかわっている。
吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがある。

高齢者では転倒や消化管出血などのリスクがある。
離脱症状が発現するリスクがある。

なお、多くの抗うつ薬は、痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、慎重投与となる。

元住吉こころみクリニック
「抗うつ剤の副作用と安全性の比較」
cocoromi-cl.jp/knowledge/psychiatry-medicine/antidepressant/dep-side/

⇒「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)など

医薬品各種(SSRI)

  • パキシル:
    抗コリン作用薬、非線形型薬物、CYP2D6阻害薬、分布容積大。
  • ジェイゾロフト:
    QT延長に注意、社会不安障害(適応無し)。
  • レクサプロ:
    QT延長のある患者には禁忌、投与初日から治療用量。
  • デプロメール、ルボックス:
    QT延長、非線形型薬物、CYP1A2阻害薬。

パキシル(一般名:パロキセチン)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「抗不安作用を併せもつ。比較的強力。中断症候群に注意。【CR錠】緩徐に血中濃度が推移」。(今日の治療薬2020,p.877)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○パニック障害
○強迫性障害
○社会不安障害
○外傷後ストレス障害

【用法・用量】〈うつ病・うつ状態〉
通常、成人には1日1回夕食後、パロキセチンとして20~40mgを経口投与する。
投与は1回10~20mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。
なお、症状により1日40mgを超えない範囲で適宜増減する。

パロキセチン錠(5mg、10mg、20mg)

パロキセチンは、非線形型薬物である

パロキセチンは、「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.233)
投与量を10→20→40mgに増量したとき、Cmax及びAUCは投与量に比例せず大幅に上昇している。

パロキセチンは、CYP2D6阻害薬(強い)である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
    表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「薬物相互作用、中断症候群共に少なく、使いやすい」。(今日の治療薬2020,p.876)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

効能・効果、用法・用量(ジェイゾロフト)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○パニック障害
○外傷後ストレス障害

【用法・用量】
通常、成人にはセルトラリンとして1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で適宜増減する。

ジェイゾロフト錠(25mg、50mg、100mg)
ジェイゾロフトOD錠(25mg、50mg、100mg)

海外では、ジェイゾロフトを主に1日200mgで使っている。
これに対して、日本では1日100mgである。
その分、効き目が穏やかになるとともに、副作用も少なくなっていると考えられる。

ジェイゾロフトは、副作用が少なく、病態による禁忌事項もない使いやすい薬物である。

セルトラリンは、CYP2C19の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

セルトラリンは、CYP2D6阻害薬(弱い)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「セロトニンにより選択的に働く。抗不安作用あり。QT延長があるため心疾患患者には投与を控える」。(今日の治療薬2020,p.876)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)リスト漏れ
QT延長のある患者には禁忌である。

効能・効果、用法・用量(レクサプロ)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○社会不安障害

【用法・用量】
通常、成人にはエスシタロプラムとして10mgを1日1回夕食後に経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行い、1日最高用量は20mgを超えないこととする。

レクサプロ錠(10mg、20mg)

抗うつ薬(SSRIやSNRI)は、飲み始めに副作用の出ることが多い薬物である。
そこで一般的には、最初は通常用量よりも少量から投与を開始して、何週間かかけて少しずつ量を増やしていく使い方をすることになる。

つまり、投与開始時には治療効果はないにもかかわらず、副作用ばかりが出やすい状態となっている。
このことは、薬への不信感や苛立ちを招きやすく、抗うつ薬の大きな弱点である。

そうした中で、エスシタロプラムは、初日から治療用量を服用することができる。
そのため、エスシタロプラムは、投与開始とともに治療効果を期待できる薬物である。

エスシタロプラムは、CYP2C19の基質薬(影響を中程度に受けやすい)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

エスシタロプラムは、CYP2D6阻害薬(中程度)である

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

デプロメールルボックス(一般名:フルボキサミン)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「抗不安作用あり。相互作用に注意。半減期が短い」。(今日の治療薬2020,p.877)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」。(どんぐり2019,p.232)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○強迫性障害
○社会不安障害

【用法・用量】
通常、成人には、フルボキサミンマレイン酸塩として、1日50mgを初期用量とし、1日150mgまで増量し、1日2回に分割して経口投与する。
なお、年齢・症状に応じて適宜増減する。

デプロメール錠(25mg、50mg、75mg)

フルボキサミンは、非線形型薬物である

添付文書でしか確認できない「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」。(どんぐり2019,p.232)

25mg→50mgは、線形性を保っている。
50mg→100mg→200mgは、非線形性である。
つまり、投与量を倍増するごとに、Cmax及びAUCはそれ以上の上昇率を示している。

  • 25mg、Cmax 9.14±3.97(ng/mL)、AUC 133± 51(ng・hr/mL)
  • 50mg、Cmax 17.25±3.03(ng/mL)、AUC 302± 69(ng・hr/mL)
  • 100mg、Cmax 43.77±15.49(ng/mL)、AUC 804±322(ng・hr/mL)
  • 200mg、Cmax 91.81±16.67(ng/mL)、AUC 2020±655(ng・hr/mL)

フルボキサミンは、CYP1A2阻害薬(強い)である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)
    表:CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)p.45
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

CYP1A2(阻害薬)⇒チザニジン、ラメルテオン(基質薬)

フルボキサミンは、CYP2C19阻害薬(強い)である

同上

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗うつ薬)

高齢者のうつ病の治療には、心理社会的要因への対応や臨床症状の個人差に応じたきめ細かな対応が重要である。高齢者のうつ病に対して三環系抗うつ薬は、特に慎重に使用する薬剤に挙げられている。
(抗うつ薬 (スルピリド含む))

  • 痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、多くの抗うつ薬が慎重投与となる。
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン[トリプタノール]、アモキサピン[アモキサン]、クロミプラミン[アナフラニール]、イミプラミン[トフラニール]など)は、SSRIと比較して抗コリン症状(便秘、口腔乾燥、認知機能低下など)や眠気、めまい等が高率でみられ、副作用による中止率も高いため、高齢発症のうつ病に対して、特に慎重に使用する。
  • 三環系抗うつ薬とマプロチリン[ルジオミール]は、緑内障と心筋梗塞回復初期には禁忌であり、
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。
  • SSRI(セルトラリン[ジェイゾロフト]、エスシタロプラム[レクサプロ]、パロキセチン[パキシル]、フルボキサミン[デプロメール、 ルボックス])も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがある。
  • SSRIは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • SSRIの使用に当たっては、CYPの関与する相互作用などを受けやすいため、併用薬に注意が必要である。特にフルボキサミンは CYP1A2を、パロキセチンはCYP2D6を強く阻害し、併用禁忌の薬剤もあることから、注意が必要である。
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【抗うつ薬】

  • 三環系抗うつ薬(イミプラミン[イミドール、トフラニール]、クロミプラミン[アナフラニール]、アミトリプチリン[トリプタノール]など)
  • パロキセチン[パキシル]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

CYP2C19

【基質】
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、オメプラール、オメプラゾン)
ランソプラゾール (プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケプロン)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

薬物動態学から

分布容積の大きな薬物の例(山村ほか2016,p.22など)

ジゴシン錠(一般名:ジゴキシン)、9.51L/kg
アンカロン錠(一般名:アミオダロン)、106L/kg
トリプタノール錠(アミトリプチン)、15.0L/kg
トフラニール錠(一般名:イミプラミン)、11.1L/kg
パキシル錠(一般名:パロキセチン)、17.2L/kg
セレネース錠(一般名:ハロペリドール)、1,300L
ジプレキサ錠(一般名:オランザピン)、954L

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか(図表も入っています)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)