利尿薬(サイアザイド系・ループ利尿薬そのほか)など

利尿薬(サイアザイド系とループ利尿薬)

利尿薬(サイアザイド系とループ利尿薬)は、「腎臓でのNa再吸収を阻害することで、Naや水の排出を促進する作用」がある。それによって、循環血液量を減らし血圧を低下させる。(児島2017,p.38)

「積極的適応がない場合の高血圧に対しては,最初に投与すべき降圧薬として,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬の中から選択する」。(JSH2014,p.45)

糸球体におけるNaの再吸収

腎臓の糸球体では、血液中の老廃物や塩分を濾過して、1日およそ150L(リットル)の原尿を作っている。

この原尿の中には、老廃物以外に各種栄養素やさまざまな電解質も含まれている。そこで、糸球体では、それらを再吸収することによって体内の水分量や電解質バランスなどを保っている。

その結果、体外に排出される尿量は、1日およそ1.5Lとなる。つまり、原尿の約99%は再吸収されることになる。再吸収が行われる場所とその量は以下のとおりである。(今日の治療薬2016)

場所ごとの再吸収率(%)は、文献によって異なるものの、近位尿細管>ヘンレ上行脚>遠位尿細管の順となっている。

糸球体ろ過

  • 近位尿細管(全体の60%)
  • ヘンレ上行脚(全体の30%)
  • 遠位尿細管(全体の7%)

サイアザイド系薬物(降圧薬)

サイアザイド系薬物は、〈遠位尿細管〉に作用してNaの再吸収を阻害することによって、Naや水の排出を促進する。その利尿作用は弱いものの効果は長続きする。また、少量でも十分な降圧効果を発揮する。

ただし、サイアザイド系薬物が降圧薬として単独で使用されることは少なく、現在では、特にARBとの合剤として盛用されている。

ループ利尿薬(心不全や浮腫などの治療薬)

ループ利尿薬は、〈ヘンレ係蹄(ヘンレループ)〉の上行脚に作用してNaの再吸収を阻害する。その利尿作用(Naや水の排出作用)はサイアザイド系薬物よりも強く、例えば、ラシックスの利尿作用はサイアザイド系薬物の約3倍程度とされている。

「本剤の利尿効果をラットの尿中Na排泄量でみると,その最大Na排泄量はチアジド系薬剤の約3倍を示し,最小有効量10mg/kg から最大有効量100mg/kgと幅広い薬用量を持つ」。(ラシックス・インタビューフォーム)

ループ利尿薬は、「心不全や浮腫などの治療で水分やNaを大量に排出する際によく使用」される。(児島2017,p.38)

脱水や低K血症に注意する

「「ループ利尿薬」は強力な作用をもつため、脱水や「低K血症」の副作用に注意し、また就寝後や通勤中のトイレが問題とならないよう、生活習慣に合わせたタイミングで服用することを指導する必要」がある。(児島2017,p.42)

注)チアジド系のことを一般的にはサイアザイド系と表記することが多い。

低K(カリウム)血症で最も危険な症状は、致死的な不整脈である。以下の症状に注意すること。

  • 消化器症状(吐き気・食欲不振)
  • 骨格筋症状(脱力感・震え)
  • 尿量の異常な増加など

これらの症状を加齢や疲れによるものと見誤らないこと。また、普段からカリウムの豊富な野菜や果物を積極的に摂取することが大切である。

医薬品各種

フルイトラン(一般名:トリクロルメチアジド)

  • イルトラ配合錠:イルベサルタン(ARB)+トリクロルメチアジド(サイアザイド系利尿薬)

高尿酸血症、高血糖症、電解質異常(低ナトリウム、低カリウム)、光線過敏症
高カルシウム血症(骨粗鬆症の積極的適応)

「骨粗鬆症患者ではそれ自体の治療が重要であるが,降圧薬治療が必要な際に,積極的適応となる降圧薬がない場合,サイアザイド系利尿薬が推奨される」。(JSH2014,p.95)

フルイトラン錠の切り込みは割線ではない

フルイトラン(2mg錠)は、淡赤色をした花びら形の錠剤で有名である。(1mg錠は白色)

錠剤の表面には十字に浅く「割線」もどきの線が入っている。その裏には、もっとはっきりとした線が入っており、容易に半分に割ることができる。

ところが、これは「割線」ではない。割線模様(割線のように見える模様)つまりデザインに過ぎない。

なぜならば、添付文書の“性状・剤形”欄には「淡赤色の花形の錠剤である」とあるのみで、「割線入り」とは明記されていないからである。メーカーとして、「質量偏差試験や含量均一性試験によって、そこで割れば含量が半分になると保証」してはいないのである。(児島2017,p.39)

いずれにしても、2009年5月に1mg錠が発売されたため、半錠に分割した際の自家製剤加算はできなくなっている。なおそれまでも、自家製剤加算の算定要件を完全に満たせていたかどうかは微妙なところであろう。

注)メイラックス半錠の自家製剤加算は算定できる?(DI Online)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/sekirara/201908/561741.html

【編集部追記】2019.8.20 20:15
本記事の内容について、社会保険診療報酬支払基金の審査委員を務める薬剤師から情報提供がありました。支払基金では、半割しても問題ないことを薬剤師として確認した場合には、割線の有無にかかわらず自家製剤加算を算定可能として、全国的に統一を図る動きがあるとのことです。

ヒドロクロロチアジド(一般名:ヒドロクロロチアジド)

  • プロミネント配合錠:ロサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、ロサルヒド
  • エカード配合錠:カンデサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、カデチア
  • コディオ配合錠:バルサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、バルヒディオ
  • ミコンビ配合錠:テルミサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、テルチア
  • ミカトリオ配合錠:テルミサルタン80㎎(ARB)+アムロジピン(Ca拮抗薬)5㎎+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)

ラシックス(一般名:フロセミド)

効能・効果:
高血圧症(本態性高血圧症、腎性高血圧症等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症、末梢血管障害による浮腫、尿路結石排出促進。

特に、心不全や浮腫が対象となる。さらに、高血圧症にも保険適用がある。

ラシックス(ループ利尿薬)には、ほかのループ利用薬と異なり高血圧の保険適用がある。ただし、高血圧の第一選択薬ではない。第一選択薬とされる利尿薬とは、あくまでも降圧効果に優れたサイアザイド系の利尿薬のことである。

ラシックスの作用時間は短く、6時間くらいである。就寝後のトイレを防ぐには、午前~昼に服用するとよい。ただし用法は、1日1回あるいは隔日投与となっている。

「本剤の利尿効果は,健康成人に経口投与した場合,経口投与後1時間以内に発現し,約6時間持続する」。「健康成人3例にフロセミド錠40mgを経口投与した場合,1~2時間後に0.9µg/mLの最高血中濃度に達する。その後,約0.35時間の半減期で血中より消失する(HPLC法)」。(ラシックス・インタビューフォーム)

「本剤は腎血流量,糸球体濾過値を上昇させる作用を持ち,腎機能が低下(慢性腎不全患者)している場合(GFRが20mL/min以下)でも利尿効果が期待できる」。(ラシックス・インタビューフォーム)

ダイアート(一般名:アゾセミド)

効能又は効果:
心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫

利尿作用の強さ:ラシックス40mg=ダイアート60mg。ダイアートの作用は長続きするため、急な体液・血圧変動を起こしにくく、心不全予後の改善効果はラシックスよりも高い。(児島2017,p.43)

日経メディカル
ラシックスとダイアートはどう使い分ける?
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/survey/201803/555352.html
「アゾセミドは効果がマイルドで長時間ゆるやかに効くことを評価する声が目立った」

ルプラック(一般名:トラセミド)

「用量依存的な利尿作用を有する(ラット)。
本剤の効力は類薬フロセミドに比較して,利尿作用で約10~30倍,抗浮腫作用で約10倍強力である」。(ルプラック・インタビューフォーム)

抗アルドステロン作用(K保持性)を併せ持っているため、ほかのループ利用薬と比べて、K(カリウム)の排泄量が少ない。⇒低K血症を起こしにくい。

「尿中ナトリウム/カリウム比が高い(ラット)。
本剤は抗アルドステロン作用を有しており,他のループ利尿剤と比較して尿中へのカリウム排泄量が軽減されていることから,尿中ナトリウム/カリウム比が高い」。(ルプラック・インタビューフォーム)

ダイアモックス(一般名:アセタゾラミド)

炭酸脱水酵素阻害薬:
温和なNa利尿と尿中HCO3-の排泄増加。一般的な利尿薬としてはあまり使用されない。(今日の治療薬2019,p.697)

サムスカ(一般名:トルバプタン)

バソプレシン拮抗薬(選択的V2受容体拮抗作用):
既存利尿薬で効果不十分・低Na血症合併の心不全・肝硬変に有効。(今日の治療薬2019,p.699)

デスモプレシン(一般名:デスモプレシン)

下垂体後葉ホルモン:
バソプレシンV2受容体に作用して抗利尿作用。
スプレー、点鼻液の適応症:尿崩症・夜尿症(規格によって適応外含む)。

参考URL

フルイトランと私の長い付き合い ⇒フルイトランの販売元は塩野義製薬(株)

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
『サリドマイド事件(第3版)』
世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか
加筆修正⇒2019年10月12日(第3版発行)

www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00V2CRN9G/
2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)