選択的エストロゲン受容体モジュレーター(エビスタなど)

2020年12月15日

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(概要)

⇒「骨粗鬆症について

SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)

(SERM:selective estrogen receptor modulator)

ラロキシフェンバゼドキシフェン共に、閉経後のホルモン補充療法薬(エストロゲン補充)である。
椎体骨折抑制作用が、大規模臨床試験によって確立している。
1日1回の服用でよく、閉経後の早い時期から投与されている。

ラロキシフェンバゼドキシフェンで同一評価(ガイドライン2015)

  • 骨密度:上昇効果がある(A)
  • 椎体骨折:抑制する(A)
  • 非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
  • 大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)

なお、バゼドキシフェンは、ラロキシフェンよりも骨折予防効果をさらに高めた改良版である。
ただし、ガイドラインの評価は両者同一である。

(参考:今日の治療薬2020,pp.476-480)

エストロゲンと骨代謝

女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨代謝(骨の新陳代謝)に関わっている。
すなわち、エストロゲンは、破骨細胞(古い骨を吸収する細胞)と骨芽細胞(新しい骨を作る細胞)の両方に作用している。
そして、閉経にともなうエストロゲン欠乏により、破骨細胞による骨吸収が亢進して、骨量が減少すると考えられている。

「女性では閉経後のエストロゲン低下によって骨代謝回転は亢進し、骨バランスはマイナスに傾き、骨粗鬆症に至る」。(同上,p.476)

閉経後女性に対して、ただ単にエストロゲンを補充(ホルモン補充療法)しても、血栓ができやすくなったり、乳がんのリスクが高まったりする。
SERMは、それらの欠点を改善した薬物となっている。

「SERMはエストロゲン受容体に結合し、組織特異的にエストロゲン作用、抗エストロゲン作用を示す薬物である。骨組織及び脂肪代謝に対してはエストロゲン作用を示すが、乳房や子宮内膜に対してはエストロゲン作用を示さない」。(同上,p.478)

服薬上の注意点(SERM)

(参考:児島2017,p.321)

1)副作用として、特に静脈血栓塞栓症に注意が必要である。

入院や寝たきりの状態など、長時間体を動かさないような生活をしている場合には、血栓ができやすくなることがあるため、避ける必要がある。

2)乳がん治療薬「アリミデックス(一般名:アナストロゾール)」との併用で、「アリミデックス」の効果が減弱する恐れがある。

アリミデックスとSERMの併用に関する注意喚起は、添付文書をはじめ専門書やレセプトコンピューターなどにも記載・登録されていないことが多い。

<エストロゲンとカルシトニンの働く順序>
①女性ホルモン(エストロゲン)が働く→②カルシトニンが分泌→③カルシトニン受容体に作用→④破骨細胞を抑制することで骨吸収を抑える。

医薬品各種(SERM

閉経に伴うエストロゲン欠乏を補充するために用いる薬物である。

エビスタ(一般名:ラロキシフェン)

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM):
「エストロゲン受容体を介して骨にはアゴニストとして作用し骨吸収を抑制、子宮・乳房にはアンタゴニストとして作用し、エストロゲン製剤のデメリットがカバーされる」。(今日の治療薬2020,p.486)

エビスタ錠(60mg)

適応症は、閉経後の骨粗鬆症である。

【効能・効果】
閉経後骨粗鬆症

【 用法・用量】
通常、ラロキシフェン塩酸塩として、1日1回60mgを経口投与する。

(エビスタ添付文書)

ビビアント(一般名:バゼドキシフェン)

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM):
「骨に対してはエストロゲンと同じ作用をしつつ、ホルモン補充療法に伴う副作用は解消又は軽減」。(今日の治療薬2020,p.487)

ビビアント錠(20mg)

ラロキシフェンよりも骨折予防効果が高いとされる。
ただし、ガイドラインの評価は同一である。

【効能・効果】
閉経後骨粗鬆症

【 用法・用量】
通常、バゼドキシフェンとして、1日1回20mgを経口投与する。

(ビビアント添付文書)

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本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)