サリドマイド被害者のための福祉センター「いしずえ」

2020年6月29日

全国の中学校で、2012年4月から、医薬品の正しい使い方を教える「くすり教育」が完全義務化されています。

サリドマイド被害者のための福祉センター「公益財団法人いしずえ」では、薬害防止の観点から、厚生労働省のみならず文部科学省に対しても積極的に働き掛けています。

例えば、中学3年生を対象とした厚生労働省医薬食品局『薬害を学ぼう』(2013年)p.3には、サリドマイド被害者の一人である増山ゆかり(いしずえ常務理事)さんが、サリドマイドについてコメントしています。

「いしずえ」所属の認定被害者数は309名である

日本のサリドマイド裁判(民事)の和解確認書の中で、損害賠償金は、一時金と年金、そして被害者の今後の活動資金の三つに分けて考えられた。

それを受けて、サリドマイド被害者のための福祉センターとして、財団法人「いしずえ」が設立された。

同法人の設立登記は1974年12月11日(昭和49)であり、同月22日に設立記念会を開いた。また最近になって、2013年4月1日(平成25)、公益財団法人として認可されている。

裁判和解後の認定作業で、認定被害者数309名が確定した

サリドマイド裁判の原告は63家族であった。そして、裁判和解後、訴訟を提起しなかった被害児に対する認定作業が順次行われた。

その結果、認定被害者数(財団法人いしずえ所属の生存被害児)は、1981年5月(昭和56)、最終的に309名として確定し現在に至っている。

なお、和解確認書の覚書では、「確認書の当事者である全国サリドマイド訴訟統一原告団に属しないサリドマイド被害児についても、確認書に準じて適切な措置がとられるものであること」とされている。

また、「財団の事業はサリドマイドによる全被害児(原告でない被害児を含む。)を対象とする」となっている。

認定患者309人以外に被害児はいるのか

川俣修壽(サリドマイド事件支援者)は、「これがこの時点での生存被害者の全てではない」としている。(川俣2010,p.435)

その理由として、「諸般の事情で申請しなかった、申請制度を知らなかった、耳の障害と母指球筋低形成などの被害者は、サリドマイド被害者だと気づいていない家族がいる可能性がある」ことを挙げている。

最近になって、ドイツをはじめ日本でも、「サリドマイドの再使用によって、あるいは50年前の認定に洩れていたなどの理由で、new claimersが出現してきている」。(診療ガイド2017,p.12)

注)New Claimersとは、新しくサリドマイド薬禍者としての認定を希望する人々のこと。

ただし、認定のためのハードルは高い。例えば、50年前の母親のサリドマイド服用証明(カルテの存在や医師の証言)、あるいはサリドマイド胎芽症診断基準などである。

310人目の被害者の方からメールを頂く

安倍晋三内閣総理大臣は、2020年5月4日(令和2)、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を、当初予定の5月6日から5月末まで延長することを決定した。

それと同時に、新型コロナウイルス感染症への効果が期待されるアビガン錠(抗インフルエンザウイルス薬)について、5月中に効能効果の追加承認を行う考えも明らかにした。

アビガン錠には催奇形性があることが分かっている。つまり、「動物実験において、本剤は初期胚の致死及び催奇形性が確認されている」。(アビガン錠200mgインタビューフォーム、2019年4月改訂(第4版))

そうした状況の中で、サリドマイド被害者ご本人から「私もサリドマイド被害者の一人です」と題するメールを頂いた。被害者の方からご連絡をいただくのは初めての経験である。

現在59歳の方で、既にお孫さんもいらっしゃるようである。しかし、認定患者さんではない。

8歳の時に、障害者手帳(4級)は取得した。しかしながら、サリドマイド訴訟に加わることも和解後の認定を受けることもしなかった。そこには、「諸般の事情」で済ますことのできない深い事情があったのであろう。

それはともかくとして、310人目の認定被害者になれなかった方たちが存在するという事実は重い。こうした方々の長年月の思いも込めて、「いしずえ」の活動が今後も発展して行くことを願ってやまない。

「いしずえ」の薬害防止活動(薬育)について

薬害防止活動に関して、全国の中学校では、2012年4月(平成24)から医薬品の正しい使い方を教える「くすり教育」が完全義務化されている。つまり、薬育の充実である。

そうした中で、「いしずえ」の取り組みとして、「サリドマイド被害者の健康管理と福祉の増進、被害者の交流、薬害防止等に関する事業」が挙げられている。(いしずえ公式Web、2020年2月以前に確認)

さらに、薬害防止などに関する事業については、「サリドマイド復活問題、学校教育への協力、他団体との交流・連携」が挙げられている。(同上確認)

例えば、学校教育への協力ということについては、中学3年生を対象とした厚生労働省医薬食品局『薬害を学ぼう』(2013年)p.3で、サリドマイド被害者の一人である増山ゆかり(いしずえ常務理事)は次のように書いている。

「二度と同じような被害者を出さないために、この薬の危険性をよく知って、慎重に使用してほしい」。つまり、サリドマイド剤の復活(サレドカプセルの効能・効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫)を念頭に置いてのことである。

確かに、サリドマイド製剤を今必要としている人たちがいる。しかしながら、サリドマイド被害者にとって、サリドマイドの復活を容認することは苦渋の決断であったと思われる。

「いしずえ」オフィシャルWebは直ちに書き直すべきである

「いしずえ」のオフィシャルWebを閲覧していて、信じられない文章を発見した(2020/04/29閲覧)。

「西ドイツでは幼児の睡眠薬「シネマジュース」として販売されたために妊婦の服用が増え、被害の増加につながりました」というのである。

もちろん、「幼児の睡眠薬を妊婦が服用した結果、サリドマイド被害児が増加した」はずはない。当然ながら、この文章は事務局で直ちに書き換えられた。

なお、そのほか幾つかの疑問点があり、現在問合せをしているところである。

いしずえのオフィシャルWebは、2020年2月(令和2)ごろ、「今のものへ切り替えました」とのことである。その時に、上記事業内容の項目なども書き換えられたようである。

このWebサイトリニューアルに際して、「いしずえ」理事長(大学薬学部教員)、顧問弁護士、あるいは関係する医師などのチェックを受けなかったのであろうか。薬剤師の私からみて、とても心配な内容である。

いしずえホームページの資料から

「日本におけるサリドマイド被害者数」 ⇒ サリドマイド事件(回避できたはずの症例、生まれたはずの症例)Akimasa Net
「日本におけるサリドマイド被害者の障害の種類と内訳」 ⇒ サリドマイド胎芽病と催奇形性 Akimasa Net

<<前のページ・・・次のページ>>

関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
『サリドマイド事件(第4版)』
世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか

www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00V2CRN9G/
2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2020年4月(令和2)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)