サリドマイド被害者のための福祉センター「いしずえ」

2019年11月13日

全国の中学校で、2012年4月から、医薬品の正しい使い方を教える「くすり教育」が完全義務化されています。

サリドマイド被害者のための福祉センター「公益財団法人いしずえ」では、薬害防止の観点から、厚生労働省のみならず文部科学省に対しても積極的に働き掛けています。

例えば、中学3年生を対象とした厚生労働省医薬食品局『薬害を学ぼう』(2013年)p.3には、サリドマイド被害者の一人である増山ゆかり(いしずえ常務理事)さんが、サリドマイドについてコメントしています。

「いしずえ」所属の認定被害者数は309名である

サリドマイド訴訟の損害賠償金は、一時金と年金、そして被害者の今後の活動資金の三つに分けて考えられた。それを受けて、サリドマイド被害者のための福祉センターとして、財団法人「いしずえ」が設立された。

同法人の設立登記は1974年12月11日(昭和49)であり、同月22日に設立記念会を開いた。また最近になって、2013年4月1日(平成25)、公益財団法人として認可された。

なお、和解確認書の覚書で、「確認書の当事者である全国サリドマイド訴訟統一原告団に属しないサリドマイド被害児についても、確認書に準じて適切な措置がとられるものであること」とされている。また、「財団の事業はサリドマイドによる全被害児(原告でない被害児を含む。)を対象とする」となっている。

和解成立後の認定作業の結果、認定被害者数(財団法人いしずえ所属)は、1981年5月(昭和56)、最終的に309名(原告63家族を含む)として確定している。

「いしずえ」の薬害防止活動

「いしずえ」の取り組みとして、「サリドマイド被害者の健康管理と福祉の増進、被害者の交流、薬害防止等に関する事業」(いしずえWebホームページ)が挙げられている。

その中で、薬害防止などに関する事業については、サリドマイド復活問題、学校教育への協力、他団体との交流・連携が挙げられている。

例えば、薬害防止事業に関して、中学3年生を対象とした厚生労働省医薬食品局『薬害を学ぼう』(2013年)p.3で、サリドマイド被害者の一人である増山ゆかり(いしずえ常務理事)は次のように書いている。

「二度と同じような被害者を出さないために、この薬の危険性をよく知って、慎重に使用してほしい」。つまり、サリドマイド剤の復活(サレドカプセルの効能・効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫)を念頭に置いてのことである。

確かに、サリドマイド製剤を今必要としている人たちがいる。しかしながら、サリドマイド被害者にとって、サリドマイドの復活を容認することは苦渋の決断であったと思われる。

第14回薬害根絶フォーラム(広島)に参加して

「いしずえ」は、全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)の構成団体の一つである。その薬被連は、薬害根絶フォーラムを毎年1回開催(初回1999年10月23日)して、第21回(2019年10月20日)に至っている。

第14回薬害根絶フォーラム(広島大会)
子どもたちの未来のために、私たちはいま何を伝えるべきか?
日時:2012年11月24日(土) 開場13:00 13:30-17:30
会場:広島大学 霞キャンパス 臨床講義棟1階第5講義室

私は、上記広島大会に参加した。そして、その時“学んだ”ことを自分なりにまとめてみた。

薬害根絶フォーラム

薬害とは、薬(特に医療用医薬品)を使うことによって生じた不都合な症状に対してきちんとした説明がなされず、患者・家族にとって肉体的・精神的に納得感が得られなくなった状態のことをいう。裁判は、その最終的な形とも言える。

医薬品が人体にとって有用であることは当然である。しかし、薬は不都合な面(副作用の出る可能性は常にある)も併せ持っている。したがって、ただ単に副作用が出たからといって全て薬害というわけではない。薬害は、患者と医療関係者との間の不信感から生じる。

薬の副作用をできるだけ抑えるためには、患者と医療関係者(特に医師)との意思疎通が大切である。お互いに納得のゆく治療を行うことが大切である。そのために一番大切なことは、教育である。薬害がこのように繰り返され、一向に改善される傾向がみられないのは、教育が足りないためと考えられる。

医師・薬剤師など医療従事者に対する専門教育が必要なことは言うまでもない。その一方で、治療を受ける側の患者・家族の教育も欠かせない。そうしたことを考えると、中学生くらいから、薬害について、薬害の歴史について、しっかりと学んでおくことが求められる。そのためには、きちんとした基本図書(教科書作り)が必要である。

薬務行政は厚生労働省の管轄である。しかしながら、教育の分野は、幼稚園から大学まで文部科学省の管轄である。義務教育における薬害教育や、専門教育の中での薬害教育には、いずれも文科省が関わってくる。したがって、薬に関わる省庁として、文科省を忘れるわけにはいかない。文科省自身も薬害について勉強する必要がある。

そして、製薬企業の役割はもちろん大きい。社内において、どのような薬害教育を行っているのか、あるいは全く行っていないのかは、その企業の薬に対する誠実度を表す大きなバロメーターとなる。

「お薬手帳」と育薬、そして薬害防止

現在の私は、保健薬局の薬剤師としてパートながら仕事を続けている。そして、患者さんには『お薬手帳』を持つことを強く勧めている。

より良い治療効果を上げるためには、今自分が飲んでいる薬は何か、どうしてその薬が必要なのかを知ることが必須と考えるからである。さらに、重複投与の回避、薬物間相互作用のチェックや残薬の確認など、お薬手帳から得られる大切な情報は少なくない。

中には、自分は薬をほとんど飲まないからお薬手帳はいらない、という患者さんもいる。ほとんど飲まない薬をいつ飲んだかも重要な情報の一つである。ライフスタイルの改善には、血圧、コレステロールやHbA1cなどの値とともに、服薬状況を時系列で記録しておくことが非常に大切となる。

医薬品の正しい使い方を教える「くすり教育」が、2012年4月から全国の中学校で完全義務化されている。より良いライフスタイル確立のために、小さい頃からの「薬育」の成果が期待される。薬剤師としての私も、そうした教育に積極的に関わっていくべきと考えている。

いしずえホームページの資料から

「日本におけるサリドマイド被害者数」 ⇒ サリドマイド事件(回避できたはずの症例、生まれたはずの症例)Akimasa Net
「日本におけるサリドマイド被害者の障害の種類と内訳」 ⇒ サリドマイド胎芽病と催奇形性 Akimasa Net

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関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)

1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
『サリドマイド事件(第3版)』
世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか
加筆修正⇒2019年10月12日(第3版発行)

www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00V2CRN9G/
2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)