薬害とは何か
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薬害根絶フォーラム(2012広島大会)に参加して
全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)は、薬害根絶フォーラムを毎年1回開催(初回1999年10月23日)して、第21回(2019年10月20日)に至っている。
薬害根絶フォーラム(2012広島大会)参加をきっかけに、「薬害とは何か」について、自分なりに考えてみた。
第14回薬害根絶フォーラム(広島大会)
子どもたちの未来のために、私たちはいま何を伝えるべきか?
日時:2012年11月24日(土) 開場13:00 13:30-17:30
会場:広島大学 霞キャンパス 臨床講義棟1階第5講義室
なお、この大会の司会者が、「MRって不思議な存在ですよね。ほんとうに必要なんでしょうかね」とマイクでつぶやくのを私は聞いた。
それに対する答えとして、私は、『サリドマイド事件』と『塩野義製薬MR生活42年』を書き続けている。いずれも、アマゾンKindle版として発売している。
薬害を防ぐのは医療関係者と患者・家族の信頼関係
薬害とは薬の副作用のことではない
薬害とは、薬を使うことによって生じた健康被害に対して、きちんとした説明がなされず、患者・家族にとって肉体的・精神的に納得感が得られなくなった状態のことをいう。そうした状態が長引くと、最終的には裁判という形になることもある。
副作用のない薬はない
薬は元々、有効性・安全性そして便利性のバランスの上に成り立っている商品である。薬が人体にとって有用なのは当然であるが、一方で不都合な面も併せ持っている。したがって、薬の副作用が出たからといって、それが直ちに薬害ということにはならない。
薬の副作用は、薬が本来持っている特性の一つに過ぎない。薬には何の責任もない。しかし、薬を使う人の側に問題がある場合、薬害と言われるまでに発展する可能性がある。
医療関係者と共に患者・家族の教育が大切である
医療関係者と患者・家族との相互信頼が欠かせない
薬の副作用をできるだけ抑えるためには、患者・家族と医療関係者が、お互いに納得しながら治療を行うことが大切である。つまり、薬害を防ぐためには、患者と医療関係者(特に医師)との意思疎通が欠かせない。
そのために一番大切なことは、教育である。薬害がこのように繰り返され、一向に改善される傾向がみられないのは、教育が足りないためと考えられる。
医師・薬剤師など医療従事者に対する専門教育が必要である。また、治療を受ける側の患者・家族の教育も大切である。
そうしたことを考えると、中学生ごろから、薬害とその歴史について、しっかりと学んでおくことが求められる。そのためには、きちんとした基本図書(教科書作り)が必要である。
文部科学省による薬害教育が欠かせない
薬務行政は厚生労働省の管轄である。しかしながら、教育の分野は、幼稚園から大学まで文部科学省の管轄である。義務教育における薬害教育や、専門教育の中での薬害教育には、いずれも文科省が関わってくる。
したがって、薬に関わる省庁として、文科省を忘れるわけにはいかない。文科省自身も薬害について勉強する必要がある。
製薬企業の役割はもちろん大きい。社内において、どのような薬害教育を行っているか、あるいは全く行っていないかは、その企業の薬に対する誠実度を表す大きなバロメーターと言える。
「お薬手帳」と薬育、そして薬害防止
現在の私は、保健薬局の薬剤師としてパートながら仕事を続けている。そして、患者さんには『お薬手帳』を持つことを強く勧めている。
より良い治療効果を上げるためには、今自分が飲んでいる薬は何か、どうしてその薬が必要なのかを知ることが必須と考えるからである。さらに、重複投与の回避、薬物間相互作用のチェックや残薬の確認など、お薬手帳から得られる大切な情報は少なくない。
中には、自分は薬をほとんど飲まないからお薬手帳はいらない、という患者さんもいる。ほとんど飲まない薬をいつ飲んだかも重要な情報の一つである。ライフスタイルの改善には、血圧、コレステロールやHbA1cなどの値とともに、服薬状況を時系列で記録しておくことが非常に大切となる。
医薬品の正しい使い方を教える「くすり教育」が、2012年4月から全国の中学校で完全義務化されている。より良いライフスタイル確立のために、小さい頃からの「薬育」の成果が期待される。薬剤師としての私も、そうした教育に積極的に関わっていくべきと考えている。
参考ページ:
サリドマイド被害者のための福祉センター「いしずえ」
「いしずえ」は、全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)の構成団体の一つである。上記参考ページで、私は「いしずえでは、薬害教育について積極的に発言をしている」と書いている。
ただし、2020年4月、私は「いしずえ」Webの中にあまりにも非科学的な文章を発見した。それは、「いしずえ」自らが、催奇形性そのものを否定するかのような文章であった。私からは、そのほかの気付きも含めてメールを差し上げている。全面的に見直すとの回答を頂いているが、未だその気配は無い。
初出:2012/12/01(土)