消化管運動機能改善薬(ナウゼリン、プリンペランなど)

2020年12月6日

消化管運動機能改善薬+消化酵素(概要)

消化管運動機能改善薬など(作用機序)

  • アセチルコリン作動薬
    副交感神経を刺激し、消化管運動と消化液分泌を促進する。
  • ドパミン受容体拮抗薬
    ドパミンのD2受容体への結合拮抗作用によりアセチルコリンの遊離を促進する。
    制吐作用を示す。
  • オピアト作動薬
    オピオイド受容体に作用し、消化管運動調律作用を示す。
  • セロトニン(5-HT4)受容体作動薬
    セロトニン(5-HT4)受容体を刺激し、アセチルコリン作動性を示す。
  • アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
    アセチルコリン量を増やし胃運動を促進する。
  • 健胃薬
    いわゆる胃ぐすり、消化酵素、制酸薬、生薬などの合剤、胃の不定愁訴をとり、食欲を増進させる。
  • 消化酵素
    各種消化酵素で消化を助ける目的で用いられる。

以上参照:「今日の治療薬2020」p.764

吐き気止め

制吐薬としては、ドンペリドンメトクロプラミド(いずれもドパミンD2受容体拮抗薬)がある。

両者共に、消化管運動改善作用を有し、末梢性の吐き気を軽減する。
さらに、CTZ(chemoreceptor trigger zone、化学受容器引金帯)を介して起こる中枢性の吐き気を軽減する。
なお、CTZは第四脳室底にあり、そこには血液脳関門(BBB:blood-brain barrier)は存在しない。
したがって、血液脳関門(BBB)を通過できないドンペリドンでも、CTZには到達することができる。

両者共に、「片頭痛の随伴症状である悪心・嘔吐にも有効です」。(児島2017,p.302←慢性疼痛の診療ガイドライン2013)

慢性胃炎における胸やけなど

慢性胃炎における胸やけなどの治療薬としては、イトプリド(ドパミンD2受容体拮抗薬)とモサプリド(セロトニン(5-HT4)受容体作動薬)がある。

両者の作用点は、それぞれドパミン受容体(拮抗)とセロトニン受容体(作動)というように異なるため、副作用の出方が異なってくる。

過敏性腸症候群

トリメプチン(オピアト作動薬)は、上部・下部の消化管に作用する。
適応症として、過敏性腸症候群がある。

医薬品各種(消化管運動機能改善薬)

定常状態のある薬物とない薬物がある。(どんぐり2019,p.236)

ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)

ドパミン受容体拮抗薬:
「ベンズイミダゾロン系消化管運動改善薬。メトクロプラミド類似(血液-脳関門は通過しにくい」。上部消化管並びにCTZに作用し、抗ドパミン作用にて効果発現。胃腸運動も促進」。(今日の治療薬2020,p.782)

1回10mg、1日3回食前投与。
8時間ごと投与/半減期10.3時間=0.78⇒定常状態あり

ドンペリドンは、消化管運動を改善することによって、末梢性の吐き気を軽減する。
ドンペリドンは、血液脳関門(BBB)は通過しにくいものの、CTZには到達して中枢性の吐き気を軽減する。
脳に移行しにくく、錐体外路障害を起こしにくい。

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)、
妊婦又は妊娠している可能性のある女性。
動物実験(ラット)で骨格、内臓異常等の催奇形作用が報告されている。(ナウゼリン添付文書より)
児島(2017,p.304)では、「原因不明の吐き気に『ナウゼリン』を使っていたが、後になって妊娠だと判明した、ということがあっても、妊娠に気付いた時点で主治医に連絡し、対応することで十分」としている。

【豪B2】豪州ADEC基準
【授乳L3】Medications and Mother’s Milk2019基準

注)児島(2017,p.304)では、授乳中の薬の安全性評価において、「『ナウゼリン』は最も安全な【L1】、『プリンペラン』は5段階中2番目の【L2】と評価されています」としている。
しかしながら、少なくとも「今日の治療薬2019」p.746では、既に上記のようにナウゼリンは【授乳L3】となっている。

プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)

ドパミン受容体拮抗薬:
「消化管運動調節。中枢性・末梢性嘔吐のいずれにも制吐作用。長期連用で錐体外路症状が出現することあり」。(今日の治療薬2020,p.781)

1日10~30mg、食前2~3回分服。
8時間ごと投与/半減期5.4時間=1.48⇒定常状態あり
12時間ごと投与/半減期5.4時間=2.22⇒定常状態あり

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

メトクロプラミドは脳まで届くため、錐体外路症状(パーキンソン症候群)が出現しやすい。
メトクロプラミドは、腎機能低下の影響を受けやすい薬物でもある。
したがって、高齢者では「可能な限り使用を控えること」とされている。

メトクロプラミドは、妊婦に安心して使える薬物である。

【豪A】豪州ADEC基準/【米B】米国FDA基準
【授乳L2】Medications and Mother’s Milk2019基準

メトクロプラミドの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.160,260-263)

80歳女性。
数日前から吐き気あり、近医にて処方あり。
メトクロプラミド錠5mg、1回2錠、1日3回毎食前、10日分。
(そのほか服用薬なし)

「【用法・用量】:メトクロプラミドとして、通常成人1日7.67~23.04mg(塩酸メトクロプラミドとして10~30mg、2~6錠)を2~3回に分割し、食前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」。(プリンペラン錠添付文書)

通常成人量の最大量(1日30mg)が処方されている。

「高齢者への投与:本剤は、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続するおそれがあるので、副作用(錐体外路症状等)の発現に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど慎重に投与すること」。(プリンペラン錠添付文書)

高齢者では、腎機能に注意しながら慎重に投与すること、となっている。

「【薬物動態】1.血漿中濃度(外国人データ):
健康成人にメトクロプラミド20mgを経口投与した場合、消化管より速やかに吸収され約1時間後に最高血漿中濃度(54ng/mL)に達し、消失半減期4.7時間で減少した。健康成人にメトクロプラミド10mgを静脈内投与した場合、二相性に消失しβ相の半減期は5.4時間であった」。(プリンペラン錠添付文書)

投与間隔8時間/消失半減期4.7時間
=1.7<3.0 ⇒ 定常状態有り
定常状態に達するまでの時間
=4.7×5 ⇒ 23.5時間

丸1日で定常状態に達すると考えられる。
ただし、投与後約1時間で最高血漿中濃度に達することから、頓用でも有効かもしれない。
しかしながら、添付文書上には頓用に関して何ら記載は無い。

副作用回避のため、ドンペリドンヘの変更を提案する。

腎機能低下時の用法・用量

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(20~30%)、ESKDでのクリアランス(-66%)、ESKDの用量(1/4に減量)
参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))

  • CCr(40mg/dL以上)、常用量
    1日10~30mgを分2~3、食前
  • CCr(40mg/dL未満)
    1日5~15mgを分1~2(Up to Date)総CLが健常者の30%に低下するという報告がある(Eur J Clin Pharmacol 19:437-441,1981)

ガナトン(一般名:イトプリド)

ドパミン受容体拮抗薬:
「抗ドパミンD2(制吐作用)作用、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用。相互作用少ない」。(今日の治療薬2020,p.782)

「ガナトンはドパミンD2受容体拮抗作用によりアセチルコリン(ACh)遊離を促し、更にアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害作用を有しており、遊離されたAChの分解を阻害する。
これらの協力作用により消化管運動亢進作用を示す」。(ガナトン添付文書)

1回50mg、1日3回食前投与。
8時間ごと投与/半減期5.77時間=1.39⇒定常状態あり

ドパミンは、身体の運動機能の調節に関わっている。
イトプリドは、ドパミンD2受容体拮抗薬であり、運動機能障害の副作用として錐体外路症状が出ることがある。

ガスモチン(一般名:モサプリド)

セロトニン(5-HT4)受容体作動薬:
「5-HT4受容体刺激による消化管運動機能改善薬」。(今日の治療薬2020,p.783)

「本剤は選択的なセロトニン5-HT4受容体アゴニストであり、消化管内在神経叢に存在する5-HT4受容体を刺激し、アセチルコリン遊離の増大を介して上部及び下部消化管運動促進作用を示すと考えられている」。(ガスモチン添付文書)

1回5mg、1日3回食前又は食後投与。
8時間ごと投与/半減期2.0時間=4.0⇒定常状態なし

セロトニンは、消化管の蠕動を活発にする作用がある。
モサプリドは、セロトニン5-HT4受容体作動薬であり、副作用として下痢・軟便(1~2%未満)を起こしやすい。

セレキノン(一般名:トリメブチン)

オピアト作動薬:
「胃・腸運動調律作用。胃腸両方に作用。末梢性鎮吐作用」。(今日の治療薬2020,p.782)

1回100mg、1日3回投与。
8時間ごと投与/半減期2時間=4.0⇒定常状態なし

【効能・効果】
慢性胃炎における消化器症状(腹部疼痛、悪心、噯気、腹部膨満感)
過敏性腸症候群

【用法・用量】
〈慢性胃炎における消化器症状〉
トリメブチンマレイン酸塩として、通常成人1日量300mgを3回に分けて経口投与する。
年齢、症状により適宜増減する。
〈過敏性腸症候群〉
トリメブチンマレイン酸塩として、通常成人1日量300~600mgを3回に分けて経口投与する。

消化管平滑筋に対する作用
トリメブチンは、平滑筋細胞において、弛緩した細胞に対しては、Kチャネルの抑制に基づく脱分極作用により細胞の興奮性を高め、一方、細胞の興奮性に応じてCaチャネルを抑制することで過剰な収縮を抑制することが推測される。
オピオイド受容体を介する作用
トリメブチンは、運動亢進状態にある腸管では、副交感神経終末にあるオピオイドμ及びκ受容体に作用して、アセチルコリン遊離を抑制し、消化管運動を抑制する。
一方、運動低下状態にある腸管では、交感神経終末にあるμ受容体に作用してノルアドレナリン遊離を抑制する。
その結果、副交感神経終末からのアセチルコリン遊離が増加し、消化管運動を亢進する。

(セレキノン添付文書)

⇒「腸機能改善薬(下痢止め、整腸剤、過敏性腸症候群治療薬など)

アコファイド(一般名:アコチアミド)

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬:
「唯一の機能性ディスペプシア治療薬。アセチルコリン量を増やし、副交感神経の刺激を強め胃運動を活発化する」。(今日の治療薬2020,p.783)

1回100mg、1日3回食前投与。
8時間ごと投与/半減期13.31時間=0.60⇒定常状態あり

S・M配合散

健胃薬:

つくしA・M配合散

健胃薬:

タフマックE

消化酵素配合剤:

ベリチーム

消化酵素配合剤:

エクセラーゼ

消化酵素配合剤:

ノバミン(一般名:プロクロルペラジン)

⇒「抗精神病薬(統合失調症治療薬など)

抗コリン作用、制吐作用有り。

ピレチア、ヒベルナ(一般名:プロメタジン)

⇒「ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第一世代)

抗コリン作用、制吐作用有り。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【制吐薬】

  • プロクロルペラジン[ノバミン]、メトクロプラミド[プリンペラン]

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【制吐薬】

  • メトクロプラミド[プリンペラン]、プロクロルペラジン[ノバミン]、プロメタジン[ヒベルナ、ピレチア]
  • ドパミン受容体遮断作用により、パーキンソン症状の出現・悪化が起きやすい。
  • 可能な限り使用を控える。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)

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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2021年1月(令和3)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)