抗てんかん薬(デパケン、テグレトールなど)

2021年6月25日

抗てんかん薬(概要)

てんかんとは

「てんかん診療ガイドライン2018」(日本神経学会)は、てんかんについて、次のように要約している。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html

てんかんとは、てんかん性発作を引き起こす持続性素因を特徴とする脳の障害である。
すなわち、慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性に起こる。
発作は突然に起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化などが生じる。
明らかなけいれんがあればてんかんの可能性は高い

また、てんかんの多彩な症状として、次のようなものが挙げられている。

  • ひきつけ、けいれん
  • ボーっとする
  • 体がピクッとする
  • 意識を失ったまま動き回ったりするなど

てんかんの分類と第一選択薬

てんかんの分類は、全般発作と部分発作に大別される。
そして、全般発作、部分発作の別で第一選択薬は異なってくる。
ただし、部分発作という用語はガイドライン2010でなくなり、焦点発作(意識障害あり、なし)に統一された。

  • 全般発作:
    全般性とは、発作が両側大脳半球のネットワーク内に起こり、このネットワークが急速に発作に巻き込まれるものをいう。
  • 焦点発作(意識障害有り、無し):←従来の部分発作という用語はなくなった
    焦点性とは、発作が一側大脳半球だけのネットワークに起始し、はっきりと限局する。
    あるいはそれよりももう少し広汎に一側半球内に広がったものをいう。
    つまり、従来の部分発作という用語はなくなり、焦点性に再定義された。

とはいうものの、同ガイドライン2010においても、全般(発作)・部分(発作)の用語を下記のとおり使用している。

新規発症の全般てんかんでの選択薬はなにか:

  • 全般性強直間代発作に対して、バルプロ酸が第一選択薬として推奨される。
    第二選択薬として、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート、ゾニサミド、クロバザム、フェノバルビタール、フェニトイン、ペランパネルが推奨される。
    妊娠可能年齢女性ではバルプロ酸以外の薬剤治療を優先する。
  • 欠神発作では、バルプロ酸、エトスクシミド、ついでラモトリギンが推奨される。
  • ミオクロニー発作では、バルプロ酸、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマートが推奨される。

新規発症の部分てんかんでの選択薬はなにか:

  • 第一選択薬としてカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、次いでゾニサミド、トピラマートが推奨される。
  • 第二選択薬としてフェニトイン、バルプロ酸、クロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、ガバペンチン、ラコサミド、ペランパネルが推奨される。

治療薬物モニタリング(TDM)を必要とする薬物がある

抗てんかん薬TDM標準化ガイドライン 2018【電子版】
一般社団法人 日本TDM学会 (編)

概要
抗てんかん薬の効果と副作用の発現には個人差が大きい。そのため、日常臨床における治療薬物モニタリング(TDM)が投与計画を決定するうえで重要な手段となり、各種抗てんかん薬の薬物動態に基づいたTDMを行う必要がある。本書では11種類の抗てんかん薬について、TDMの標準的な手法が薬剤別にまとめられた。TDMに携わる薬剤師や臨床検査技師、TDMをオーダーする医師必携のガイドラインである。
https://store.isho.jp/search/detail/productId/1905135190

片頭痛の予防薬

「慢性疼痛治療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛

  • バルプロ酸、1A(使用することを強く推奨する)(片頭痛予防の保険適応有り)
  • トピラマート、1A(使用することを強く推奨する)(片頭痛予防薬として)
  • カルバマゼピン、推奨度なし
  • ラモトリギン、推奨度なし
  • ガバペンチン、推奨度なし

(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)からの引用である。「慢性疼痛治療ガイドライン2018」では、上記のように評価されている)

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

てんかん診療ガイドライン2018(日本神経学会)
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html
てんかんと自動車運転(日本てんかん協会)
https://www.jea-net.jp/epilepsy/drive

薬物相互マネジメント(PISCS)―CYP2C9誘導薬―

抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェノバルビタール)は、CYP2C9の誘導薬であり、ワルファリンの抗凝固作用を明らかに減弱させる。
その作用はリファンピシンよりも弱く、S-ワルファリンのクリアランスの増大は、おおよそ1.25~2倍程度と考えられる。
ただし、ワルファリンとカルマバゼピンとの長期併用でコントロールができていたケースで、カルマバゼピンを中止したところ、プロトロンビン時間の延長がみられたとの報告がある。
併用中の酵素誘導薬を中止する場合、ワルファリンの用量調節を考慮する必要がある。(PISCS2021,p.155)

医薬品各種(抗てんかん薬)

デパケン(一般名:バルプロ酸)

抗てんかん薬(複合作用):
全般発作の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.922)

デパケン細粒(20%、40%)
デパケン錠(100mg、200mg)
シロップ(5%、50mg/mL)

新規発症の全般てんかんでは、第一選択薬となる。
(全般性強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作)
ただし、部分発作での選択順位は高くない。
新規発症の部分てんかんでは、第二選択薬となる。

双極性障害(躁が前景の場合)では、第一選択薬の一つとなる。
なお、妊娠可能年齢女性では、バルプロ酸以外の薬剤治療を優先する(催奇形性有り)。
統合失調症の入院患者で鎮静が必要な場合、統合失調症治療薬に加えることがある。(今日の治療薬,p.845)

【効能・効果】
○各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療
○躁病および躁うつ病の躁状態の治療
○片頭痛発作の発症抑制

【用法・用量】
〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療〉
通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~1,200mgを1日2~3回に分けて経口投与する。
ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。
〈片頭痛発作の発症抑制〉
通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~800mgを1日2~3回に分けて経口投与する。
なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として1,000mgを超えないこと。

(デパケン添付文書)

バルプロ酸は、CYP2C9阻害薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    バルプロ酸:IR(CYP2C9)0.61(800mg/日投与)、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

バルプロ酸は、片頭痛発作の発症抑制が適応となっている

「抗てんかん薬:バルプロ酸は予防薬として国際的にも広く使われている。てんかんよりも少量で有効」。(今日の治療薬2020,p.932)

【適応症の一つ】片頭痛発作の発症抑制
「本剤は、片頭痛発作の急性期治療のみでは日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること」。(デパケン添付文書)

推奨度は高いが、眠気の副作用や催奇形性など注意事項も多い。

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

バルプロ酸は、代表的な「非線形型薬物」である

  • バルプロ酸は、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

バルプロ酸は蛋白結合率の高い薬物であり、タンパク結合の飽和が原因で血中濃度が頭打ちとなる。
⇒「非線形性~肝クリアランス(肝固有クリアランスと代謝の飽和)~

血漿中蛋白結合率
>90%(およそ100μg/mL以上の濃度では結合が飽和する)

(デパケン添付文書)

テグレトール(一般名:カルバマゼピン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
部分発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.916)

新規発症の部分てんかんでは、第一選択薬となる。

カルバマゼピンは、非線形型薬物である

  • カルバマゼピンは、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

カルバマゼピンは、薬物代謝酵素の自己誘導を起こす

カルバマゼピンは、代謝の自己誘導を起こすことが知られている。
日常臨床において、治療薬物モニタリング(TDM)実施の対象となる。
「血清内濃度/投与量の比は投与開始10日までは上昇するが、その後低下し、血清内濃度は服薬日数に依存して変動することが認められる」。(テグレトール添付文書)

主として CYP3A4 による代謝を受ける。
自己誘導を起こすため、消失半減期は投与初期で 10-36 時間であるのに対し、連続投与時では 10-24 時間に短縮される。
抗てんかん薬のTDMガイドライン(案)Draft version 1.2,p.15
http://plaza.umin.ac.jp/~jstdm/news/osirase_public2012_4.pdf

カルバマゼピンは、CYP3A4阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    カルバマゼピン:IC(CYP3A4)3.0倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

カルバマゼピンの定常状態平均血中濃度を求める

(どんぐり2019,p.90)

86歳女性、体重42kg、三叉神経痛
カルバマゼピン錠100mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、7日分

消失半減期(hr)=約16~24時間
投与間隔/消失半減期=12/16~12/24=0.75~0.5<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=0.75~0.85(中間値をとって0.8とする)
塩係数(S)=1.0
1回投与量(Dose)=100mg
投与間隔(τ)=12時間
分布容積(Vd)=0.8~1.8L/kg(中間値をとって1.3L/kgとする)
消失速度定数(Ke)=0.028/hr

平均血中濃度(Css.ave)
=(0.8×1.0×100mg/12hr)/(1.3L/kg×42kg(体重)×0.028/hr)
=6.6667/1.5288
=4.36mg/L⇒4.4μg/mL

テグレトールの有効血中濃度:
4~8μg/mL
有効血中濃度の範囲に入っている。

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算

リボトリール、ランドセン(一般名:クロナゼパム)

抗てんかん薬(ベンゾジアゼピン系、向精神薬):
「ベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合し、GABAニューロンの作用を増強」。(今日の治療薬2020,p.914)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)。
第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

「作用機序:
抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜に存在するベンゾジアゼピン受容体にアゴニストとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増大させることにより、GABAニューロンの作用を特異的に増強すると考えられている」。(リボトリール添付文書)

クロナゼパムの用法・用量を考える

「健康成人男子6例にクロナゼパム1mgを単回経口投与したとき、未変化体の血中濃度は投与2時間後に最高に達し(6.5ng/mL)、半減期は約27時間であった」。(リボトリール添付文書)

(どんぐり2019,p.203-206、服薬指導例・薬歴記載例有り)

20歳女性、自覚症状(ジストニア症状)に対する対症療法
クロナゼパム錠0.5mg、1回1錠、1日1回、就寝前、14日分
⇒増量(1回1錠、1日2回、朝食後と就寝前、90日分)

投与間隔12~24時間/半減期27時間=0.44~0.89<3.0
⇒半減期のある薬物
半減期27時間×5=135⇒約5.6日
効果が発現するには5日以上かかる。

増量(投与回数1日1回から2回へ)されたことから、薬理作用に伴う副作用として、精神神経系の「眠気(13.9%)、ふらつき、意識障害」が起こる可能性がある。

注)ジストニア:持続的に筋肉が収縮する運動であり、ある特定の肢位を維持し続ける様になる
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル(ジスキネジア)」2009年5月

イーケプラ(一般名:レベチラセタム)

抗てんかん薬(主にSV2a結合):
「特異な作用機序。薬物相互作用がほとんどない」。(今日の治療薬2020,p.922)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)、新規発症の部分てんかん。
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

レベチラセタムは、非線形型薬物である

  • レベチラセタムは、高用量では「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,P.234)
    250mgから3000mgまでの増量では線形、3000mg以降は非線形である。

腎機能低下時の用法・用量(レベチラセタム)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1回500mgを1日2回、最大1回1,500mgを1日2回
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1回500mgを1日2回、最大1回1,000mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回250mgを1日2回、最大1回750mgを1日2回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1回250mgを1日2回、最大1回500mgを1日2回
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回500mgを1日1回、最大1回1,000mgを1日1回、HD患者はHD後に1回250mg、最大1回500㎎を補充

エクセグラン(一般名:ゾニサミド)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「幅広い発作型(部分発作、全般発作)に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

ゾニサミドは、非線形型薬物である

ゾニサミドは、高用量では「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)
ゾニサミドは、治療用量範囲では線形型を示し、高用量では非線形型となる。

アレビアチン、ヒダントール(一般名:フェニトイン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
「血中濃度は飽和動態に従う(指数関数的に上昇)」。(今日の治療薬2020,p.916)

劇薬(錠を除く)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

フェニトインは、代表的な「非線形型薬物」である

  • フェニトインは、「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

肝消失型薬物であり、投与量が増加して薬物代謝酵素(CYP2C9など)が飽和すると、体内からの消失が遅くなり急激に血中濃度が上昇する。
⇒「非線形性~肝クリアランス(肝固有クリアランスと代謝の飽和)~
(添付文書への記載は無し)

フェニトインは、CYP2C9の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    フェニトイン:CR(CYP2C9)0.72、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
    フェニトイン:IR(CYP2C9)0.68、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

フェニトインは、CYP3A4阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    フェニトイン:IC(CYP3A4)4.7倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬

ラミクタール(一般名:ラモトリギン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
「幅広い抗てんかんスペクトラムを有す」。(今日の治療薬2020,p.918)

第一選択薬:新規発症の部分てんかん
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作、欠神発作)

  • ラモトリギンは、線形型薬物である。(どんぐり2019,P.234)

ガバペン(一般名:ガバペンチン)

抗てんかん薬(複合作用):
「全般発作の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.922)

第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

ガバペンチンは、非線形型薬物である。

  • ガバペンチンは、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(ガバペンチン)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(ほぼ100%)、減量法の記載有り。
  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    初日1日600mg、2日目1日1,200mg、3日目以降は維持量として1日1,200~1,800mgをいずれも分3、最大1日量2,400mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    初日1日400mg、維持量として1日600~800mgをいずれも分2、最大1日量1,000mg
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    初日1日200mg、維持量として1日300~400mgをいずれも分1、最大1日量500mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    初日1日200mgを分1、維持量として1日1回200mg又は2日に1回300mg、最大1日量200mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    初日1日200mgを分1、維持量として1日1回200mg、HD日にはHD後。又は維持量として週3回HD後に1回200~400mg。CAPD患者ではGFR<15mL/minに準じる

フェノバール(一般名:フェノバルビタール)

抗てんかん薬(バルビツール酸系):
「半減期が長い」。(今日の治療薬2020,p.913)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

フェノバルビタールは、CYP2C9基質薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    フェノバルビタール:CR(CYP2C9)0.99、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬

フェノバルビタールは、CYP3A阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)
    フェノバルビタール:CR(CYP3A4)データ無し、(PISCS2021,p.47)
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

マイスタン(一般名:クロバザム)

抗てんかん薬(ベンゾジアゼピン系、向精神薬):
「ベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合し、GABAニューロンの作用を増強」。(今日の治療薬2020,p.915)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

  • クロバザムは、「線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

クロバザムは、CYP2C19の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    クロバザム:CR(CYP2C19)データ無し、(PISCS2021,p.54)

クロバザムは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    クロバザム:IR(CYP2D6)データ無し、(PISCS2021,p.50)

トピナ(一般名:トピラマート)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「難治性部分発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)。
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

  • トピラマートは、線形型薬物である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(トピラマート)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ビムパット(一般名:ラコサミド)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「薬物相互作用が少ない」。(今日の治療薬2020,p.920)

第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

  • ラコサミドは、線形型薬物である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(ラコサミド)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

エピレオプチマル、ザロンチン(一般名:エトスクシミド)

抗てんかん薬(主にCaチャネル阻害):
「欠神発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(欠神発作)。

フィコンパ(一般名:ペランパネル)

抗てんかん薬(AMPA受容体拮抗):
「特異な作用機序」。(今日の治療薬2020,p.924)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

ペランパネルは、非線形型薬物である

  • ペランパネルは、高用量では「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)
    ペランパネルは、2mgから4mgへの増量では線形、4mgから8mgへの増量では非線形を示す。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

薬物動態学から

分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)

テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(一般名:イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg

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1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)

本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。

Web管理人

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)