急性腰痛にはNSAIDs(ロキソニンなど)がお薦め
急性の腰痛や座骨神経痛に対する治療薬としては、ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が推奨度No.1(「腰痛診療ガイドライン2019」p.34)となっている。
注)NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug
注)『腰痛診療ガイドライン2019』(編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/腰痛診療ガイドライン策定委員会)
- 1. 各種の痛みにロキソニンがよく使われている
- 2. 薬物動態学から
- 3. 医薬品各種(NSAIDsなど)
- 3.1. ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)
- 3.2. ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)
- 3.3. セレコックス(一般名:セレコキシブ)
- 3.4. モービック(一般名:メロキシカム)
- 3.5. ハイペン(一般名:エトドラク)
- 3.6. ブルフェン(一般名:イブプロフェン)
- 3.7. バキソ(一般名:ピロキシカム)
- 3.8. ロルカム(一般名:ロルノキシカム)
- 3.9. インダシン、インテバン、インドメタシン(一般名:インドメタシン)
- 3.10. ソレトン(一般名:ザルトプロフェン)
- 3.11. ポンタール(一般名:メフェナム酸)
- 3.12. ナイキサン(一般名:ナプロキセン)
- 3.13. ソランタール(一般名:チアラミド)
- 4. 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)
- 5. 関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)
各種の痛みにロキソニンがよく使われている
NSAIDsはプロスタグランジン(PG)を抑えて痛みを軽減する
- プロスタグランジン(PG)は、アラキドン酸から生合成される生理活性脂質である。
- プロスタグランジン(PG)は、胃腸の粘膜保護作用、炎症や痛み・発熱などに関わっている。
- プロスタグランジン(PG)は、酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」によって生合成が促進される。
- NSAIDs(ロキソニンなど)は、酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」を阻害することによって、プロスタグランジン(PG)の生合成を抑制する。
- その結果、炎症や痛み・発熱を抑える。
ただし副作用として、生体の胃粘膜保護作用が弱くなることによって、胃腸障害が起きる可能性もある。
NSAIDsには解熱作用もある
発熱時には、種々のサイトカインの産生が促進されて、視床下部にある体温調節中枢に働きかける。
その結果、PGE2の合成が増加して体温が上昇する。
NSAIDsは、発熱時に産生されるPGE2の合成を阻害することで解熱作用をもたらす。
アラキドン酸カスケード
アラキドン酸カスケード:
組織が損傷を受けると、ホスホリパーゼA2によって細胞膜にあるリン脂質からアラキドン酸が遊離される。
さらにそこから、プロスタグランジン(PG)、ロイコトリエン(LT)などの化学伝達物質が合成されて、損傷組織へ放出される。
いわゆるアラキドン酸カスケードである。
PGは、酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX1,COX2)」によって生合成が促進される
プロスタグランジン(PG)の合成過程では、酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」が重要な役割を果たしている。
シクロオキシゲナーゼ(COX)には、2つのサブタイプ(アイソザイム)が存在しており、それぞれプロスタグランジン(PG)の生合成を促進する。
- COX-1:生体の恒常性維持に関与しており、大部分の正常細胞や組織では定常的に発現している。
(産生されたプロスタグランジン(PG)は、胃腸の粘膜保護作用などにも関わっている) - COX-2:けがなどで組織が傷ついたときに誘導される。
また、腎臓や脳の特定の領域では定常的に発現している。
(産生されたプロスタグランジン(PG)は、炎症や痛み・発熱などに関わっている)
各種鎮痛薬によって、シクロオキシゲナーゼ(COX1,COX2)に対する作用の程度が異なっており、薬剤使い分けの目安となる。
プロスタグランジン(PG)が関与する副作用
(どんぐり2019,pp.34-35)
プロスタグランジン(PG)の合成が抑制されると、胃粘膜の血流が減少したりする。
胃粘膜保護作用などの防御因子が低下し、消化器症状(胃もたれなど)を引き起こす。
プロスタグランジン(PG)の合成が抑制されると、輸入細動脈が収縮し、腎血流量が減少する。
そうすると、代償的に近位尿細管における再吸収が促進され、Na・水の貯留が進み、体重増加や浮腫、そして血圧上昇を引き起こす。
副作用機序別分類(ロキソプロフェン)
薬物過敏症
ショック、アナフィラキシー:無顆粒球症、溶血性貧血、白血球減少、血小板減少:中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群):急性腎障害、ネフローゼ症候群、間質性腎炎:間質性肺炎:肝機能障害、黄疸:無菌性髄膜炎:
薬物毒性
なし
薬理作用
急性腎障害、ネフローゼ症候群、間質性腎炎:うっ血性心不全:消化管出血:消化管穿孔:小腸・大腸の狭窄・閉塞:喘息発作:
機序不明
横紋筋融解症
ロキソニン禁忌:消化性潰瘍のある患者
「消化性潰瘍のある患者」[プロスタグランジン生合成抑制により、胃の血流量が減少し消化性潰瘍が悪化することがある]。(ロキソニン錠添付文書)
ロキソニンは、COX1阻害作用とCOX2阻害作用を併せ持つNSAIDsである。
そのため、痛み止めとして服用した場合でも、胃腸の粘膜上皮細胞に定常的に発現しているCOX-1を阻害してしまう。
つまり、胃腸の粘膜を保護する働きを持つプロスタグランジンを減少させることになる。
症状が悪化すると、小腸や大腸に潰瘍ができて腸管が狭くなったり(狭窄)、詰まったり(閉塞)することもある。
自覚症状として、突然の激しい腹痛や吐き気・嘔吐(おうと)などが起こることがある。
対策としては、「COX-2」阻害選択性が比較的高いNSAIDsの使用が考えられる。
具体的には、セレコックス(一般名:セレコキシブ)、ハイペン(一般名:エトドラク)やモービック(一般名:メロキシカム)が挙げられる。
注)ロキソニンの副作用に「腸の狭窄・閉塞」が追加
厚労省が2016年3月22日付けで添付文書改訂を指示
過去3年間における国内副作用症例のうち、小腸・大腸の狭窄・閉塞関連症例は6例、そのうち因果関係が否定できないものが5例(死亡例はなし)報告されている。
なお、ロキソプロフェンは、COX1阻害作用による防御因子の低下に加えて、血小板凝集の抑制(易出血性)作用も有する(次項参照)。
食後すぐに多めの水(コップ1杯)で飲む
「おくすり110番」は、ロキソニンの服用方法について次のように書いている。
「食後すぐに多めの水(コップ1杯)でお飲みください。頓服の場合も、できるだけ食後にあわせて飲んだほうがよいでしょう。もし、空腹時に飲む場合は、軽食をとるか牛乳で飲めば、胃の負担が軽くてすみます」。
日頃から胃腸の弱い人や胃潰瘍の既往のある人は、医師や薬剤師にそのことをしっかり伝えることが大切だ。
そうすれば、必要に応じて「ムコスタ(一般名:レバミピド)」を一緒に処方してもらえるかもしれない。
レバミピドには、胃粘膜を保護する作用がある。
また、食事の影響を受けないので、空腹時に服用することも多い鎮痛薬と一緒に飲むのに適している。
いずれにしても、 NSAIDs(ロキソニンなど) を長期間服用することは、できるだけ避けるに越したことはない。
ロキソニン禁忌:重篤な血液の異常のある患者
「重篤な血液の異常のある患者」[血小板機能障害を起こし、悪化するおそれがある]。(ロキソニン錠添付文書)
NSAIDsも低用量アスピリン同様に、血小板凝集を抑制(易出血性)することが知られている。
しかしその作用は可逆的であり、NSAIDs単剤の抗血小板作用は限局的であることが推察される。
ロキソニン禁忌:重篤な肝障害のある患者
「重篤な肝障害のある患者」[副作用として肝障害が報告されており、悪化するおそれがある]。(ロキソニン錠添付文書より)
その意味は、「劇症肝炎などの重篤な肝臓の副作用が起こったときに、もともと重篤な肝障害を有していると致死的なことになってしまうから」である。(実践薬学2020,p.293)
ロキソプロフェンやセレコキシブによる劇症肝炎などの肝障害の機序は、アレルギー性である。
したがって、特に注意すべきモニタリング・ピリオドは、投与直後~2か月の間となる。
また、臨床検査値としては、AST・ALTが大切である。
ロキソニン禁忌:重篤な腎障害のある患者
「重篤な腎障害のある患者」[急性腎障害、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがある]。(ロキソニン錠添付文書より)
NSAIDsによる急性腎不全は、プロスタグランジンの生合成が抑制されることによって、糸球体輸入細動脈が収縮し、腎血流量(腎糸球体濾過量(GFR))が急激に低下することによって生じる。
尿量の減少に注意する。
また長期間の投与により、体液量が増加して、体重増加・浮腫が起こることがある。
急性腎不全の発症リスクは、COX2(腎臓などでは定常的に発現している)選択性の薬物で低下するかと言えば、そうではない。
例えばモービック(一般名:メロキシカム)は、NSAIDsの中でCOX2選択性が比較的高い薬物であるが、急性腎不全のリスクは一番高い。
メロキシカムの半減期は長く(1日1回投与)、そのことが原因と考えられる。
「NSAIDsの影響が及ばない無尿期の透析患者」を除いた保存期腎不全患者(腹膜透析(CAPD)患者を含む)では、解熱鎮痛薬としてはアセトアミノフェンが積極的な適応となる。
NSAIDsは、「腎障害を悪化させる恐れがあるため重篤な腎障害には禁忌」である。
参照)日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」付表:腎機能低下時の薬剤投与量←(どんぐり2019,p.196)
ロキソニン禁忌:アスピリン喘息の患者
「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤等による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者」[アスピリン喘息発作を誘発することがある]。(ロキソニン錠添付文書)
NSAIDsによる気管支喘息(いわゆるアスピリン喘息)は、プロスタグランジン(PG)の合成が抑制されることによって、アラキドン酸からのロイコトリエン(LT)産生が亢進して、気道収縮を起こすためと考えられる。
カロナール(一般名:アセトアミノフェン)には、NSAIDsの4大副作用(消化性潰瘍、抗血小板作用(易出血性)、腎障害の悪化、アスピリン喘息)は無い。
ただし、アセトアミノフェンの禁忌(添付文書)は、NSAIDsに合わせたものとなっている。
- アスピリン喘息には、カロナールやCOX1阻害作用の無いNSAIDsを選択する。
⇒ https://yakugai.akimasa21.net/aspirin-asthma/
ロキソニン禁忌:重篤な心機能不全のある患者
「腎のプロスタグランジン生合成抑制により浮腫、循環体液量の増加が起こり、心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある」。(ロキソニン錠添付文書より)
NSAIDsの半減期と用法
短時間作用型:
- ロキソニン錠60㎎
Tmax:0.45±0.03(h)、Cmax:5.04±0.27(μg/mL)、t1/2:1.22±0.07(h)
1回60mg、1日3回投与。(急性上気道炎の解熱・鎮痛の場合は、頓用で原則1日2回まで) - ボルタレン錠25㎎
Tmax:2.72±0.55(h)、Cmax:415±57(ng/mL)、t1/2:1.2(h)
1日75~100mg、3回分服。 - ブルフェン錠200
Tmax:2.1±0.2(h)、Cmax:16.6±0.9(μg/mL)、t1/2:1.8±0.1(h)
1回200mg、1日3回。(急性上気道炎の解熱・鎮痛の場合、頓用、原則1日2回、1日最大600mgまで)
中間型:
- セレコックス錠100㎎
Tmax:2±1.4(h)、Cmax:553±212.2(ng/mL)、t1/2:7±3.2(h)
1回100mg、1日2回(朝・夕食後)。(変形性関節症の消炎・鎮痛の場合) - ハイペン錠200mg
Tmax:1.4±0.2(h)、Cmax:12.2±0.8(ng/mL)、t1/2:6.03(h)
1回200mg、1日2回、朝・夕食後。
長時間作用型:
- モービック錠10mg
Tmax:8.0±8.0(h)、Cmax:0.741±0.101(μg/mL)、t1/2:28.7±5.6(h)
1日1回10mg、食後。
薬物動態学から
分布容積の小さな薬物の例(山村ほか2016,p.20など)
エスポ―注射液(一般名:エリスロポエチン)、30mL/kg
ヘパリン、58mL/kg
ナイキサン錠(一般名:ナプロキセン)、約140mL/kg
ブルフェン錠(一般名:イブプロフェン)、120mL/kg
ワーファリン錠(一般名:ワルファリン)、140mL/kg
アスピリン(サリチル酸として)、200mL/kg
ハベカシン注射液(一般名:アルベカシン)、200~250mL/kg
アミノグリコシド系抗菌薬、300mL/kg
医薬品各種(NSAIDsなど)
NSAIDs各剤の1日投与回数は、薬物動態(特にt1/2)の違いによって、1日1回、2回あるいは3回投与となる。(山村2016,p.77)
カロナール(アセトアミノフェン)には抗炎症作用が無く、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とは区別して分類されるのが一般的である。
- インフルエンザや小児・妊婦に対しては、カロナールを選択する。
⇒ https://yakugai.akimasa21.net/caronal/ - アスピリン喘息には、カロナールやCOX1阻害作用の無いNSAIDsを選択する。
⇒ https://yakugai.akimasa21.net/aspirin-asthma/
NSAIDsでは効かない痛みもある。その場合の適応薬物は、以下のとおりである。
- 片頭痛:トリプタン製剤
- 胃潰瘍:PPIまたはH2ブロッカー
- 神経因性疼痛:リリカやノイロトロピンなど
NSAIDsは、肝消失型だが腎毒性のある代表的な薬物である。
慢性疼痛治療に対する使用薬剤:
「慢性疼痛治療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛
- NSAIDs:2B(使用することを弱く推奨する)
片頭痛に対して、予防・改善効果を認める。 - アセトアミノフェン:1A(使用することを強く推奨する)
稀発反復性緊張型頭痛と片頭痛に改善効果を認める。
(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)からの引用である→古い)
ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)
NSAIDs(プロピオン酸系):
「プロドラッグ。鎮痛作用は評価が高い」。(今日の治療薬2020,p.299)
1回60mg、1日3回投与。(急性上気道炎の解熱・鎮痛の場合は、頓用で原則1日2回まで)
- ロキソニン錠60㎎
Tmax:0.45±0.03(hr)、Cmax:5.04±0.27(μg/mL)、t1/2:1.22±0.07(hr)
ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)
NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]:
「作用は強いが副作用も多い」。(今日の治療薬2020,p.292)
1日75~100mg、3回分服。
- ボルタレン錠25㎎
Tmax:2.72±0.55(hr)、Cmax:415±57(ng/mL)、t1/2:1.2(hr) - ボルタレンサポ25mg・50mg
Tmax:0.81~1.00(hr)、Cmax:570~881(ng/mL)、t1/2:1.3(hr)
ジクロフェナクの肝障害は、代謝性特異体質によるものである。
ただし、アレルギー性機序で起こる場合もある。
(厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル:薬物性肝障害」)
強く効くボルタレン、速く効くロキソニン
ロキソニンは、血中に入るスピードが速いため、内服してから15分、遅くとも1時間以内に効き始める。
ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)は、多少効き始めるのが遅い。(参照:Tmaxの比較)
鎮痛薬としてはロキソニンよりもボルタレンの方が強力である。
ただしその分、胃粘膜を傷つける作用も強い。
速さと強さを兼ね備えたボルタレンサポ(坐剤)
投与経路を変えることによって、欠点を補うことができる。
- 内服よりも速く効く
- 胃腸障害が少ない
- 1歳の幼児から使える
ただし、サポ(坐剤)は冷所保存となる。
ジクロフェナクは、CYP2C9の基質薬である(影響を強く受けやすい)
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
ジクロフェナク:CR(CYP2C9)0.12、(PISCS2021,p.52)
ジクロフェナク:IR(CYP2C9)0.09、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用
セレコックス(一般名:セレコキシブ)
NSAIDs(コキシブ系):
「選択的COX-2阻害のため消化管障害は少ない」。(今日の治療薬2020,p.301)
1回100mg、1日2回(朝・夕食後)。(変形性関節症の消炎・鎮痛の場合)
- セレコックス錠100㎎
Tmax:2±1.4(hr)、Cmax:553±212.2(ng/mL)、t1/2:7±3.2(hr)
セレコキシブは、ロキソプロフェンの弱点を改良した薬物といえる。
胃粘膜への影響が少なく適度な作用持続時間は、1日中続く痛みや長期間の服用に適している。
セレコキシブの肝障害は、ロキソプロフェンと同じくアレルギー性によるものである。⇒ロキソプロフェン
「肝障害患者では健康成人に比べて、AUCが約1.3倍(Child‐Pugh Class A)から約2.7倍(Child‐Pugh Class B)まで上昇した」。(添付文書より)。
つまり肝障害患者では、セレコキシブの肝からの消失が遅れて、AUCが上昇する傾向がみられる。
セレコキシブは肝消失型だが、腎機能低下に注意する
セレコキシブは、ほかのNSAIDs同様に肝消失型薬物である。
「健康成人男性にセレコキシブを投与したときの未変化体の尿及び糞中排泄率は低く(~3%)、本剤のクリアランスは主として代謝クリアランスによると推察された」。(セレコックス錠添付文書)
しかしながら、ほかのNSAIDs同様に、重篤な腎障害のある患者では、腎障害を悪化させる恐れがあるので、禁忌(投与しないこと)となっている。⇒ロキソプロフェン
長く効くセレコックス、速く効くロキソニン
ロキソニンとセレコックス(一般名:セレコキシブ)の鎮痛効果はほぼ同じである。
ロキソニン(あるいはボルタレン)は、通常1日3回投与であるのに対して、セレコックスは、薬の効果が長く続くため、通常1日2回投与になっている。(参照:t1/2の比較)
「『ロキソニン』を1日3回で服用するよりも、『セレコックス 』 を1日2回で服用する方が鎮痛効果は長続きし、特に夜間の痛みに対してより効果的であることが報告されています」。
「昼夜を問わず痛みが続くような場合」、特に夜間の痛みを和らげるためにはセレコックスが適している。
(児島2017,p.109)
ただし、セレコックスのジェネリック医薬品はまだ発売されていない(2019/10/22現在)。
したがって、薬代を考慮すると、ロキソニン・ボルタレンで特に問題無ければ、あえてセレコックスを服用する必要はないであろう。
セレコキシブは、胃の負担が少ない(COX2選択的阻害薬)
通常、一般的なNSAIDs(ロキソニンやボルタレンなど)は、「COX-1」(胃粘膜保護作用などに関与している)と「COX-2」(組織が損傷したとき発現する)の両方の酵素を阻害する。
つまり、痛みを抑える作用とともに胃粘膜を損傷する作用も併せ持っている。
これに対して、セレコックスは「COX-2」選択的阻害薬とされている。
したがって、「COX-1」を阻害する作用は無く、プロスタグランジンの胃粘膜保護作用を低下させることは無い。
「COX2阻害薬の有効性は従来薬のNSAIDsと変わらないが、胃・十二指腸潰瘍合併を明らかに減らし、消化管出血・穿孔・閉塞の合併率もある程度減らす」。(今日の治療薬2019,p.296)
ただし、既に「消化性潰瘍のある患者」では禁忌となっている。
なお、セレコックス以外で、「COX-2」阻害選択性が比較的高いNSAIDsとして、ハイペン(一般名:エトドラク)やモービック(一般名:メロキシカム)が挙げられる。
さらに、アスピリン喘息(解熱鎮痛薬が原因で起こるアレルギー症状)は、主に「COX1」が関与しているとされている。
したがって、「COX-2」阻害選択性の高いセレコキシブは、アスピリン喘息に対して比較的安全に使える薬物であるといえる。
セレコキシブは、高齢女性で血中濃度が有意に上昇する
「加齢の影響(外国人データ)をみたデータ」(セレコックス・インタビューフォーム)から、「非高齢男女に対する健康高齢男女の Cmax及びAUC12h は、男性でそれぞれ幾何平均比で約120%及び約130%、女性でいずれも約220%と高値を示し、加齢の影響は女性で顕著に認められた」。
その内容を確認すると、非高齢女性のt1/2が「12.02±4.60時間」であるのに対して、健康高齢女子では「17.77±7.43時間」(平均値±SD)まで延長している。
つまり、t1/2の振れ幅は健康高齢女子の場合に大きく、10.34時間~25.20時間となる。
したがって、中には1日1回の服用で十分効果を発揮するケースが存在するものと考えられる。
セレコキシブの警告(致命的な心血管系血栓塞栓)は今現在どうなっているのか
「【警告】外国において、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリスクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使用期間とともに増大する可能性があると報告されている」。(セレコックス錠添付文書より)
この副作用(致命的な心血管系血栓塞栓)に関しては、現在では、以下のとおりセレコックス特有のものではなく、NSAIDs全般で注意すべき副作用と考えられる。
「心血管系副作用については、セレコキシブと従来型のNSAIDsは同等であることが、わが国及び米国の臨床試験で示された(文献名下記)」。(今日の治療薬2019,p.296)
なお、2020年版では、同一の内容が次のように書き換えられている。
「セレコキシブと従来型のNSAIDsによる心血管系障害の合併は非劣性であることが、わが国及び米国の臨床試験で示された(文献名下記)」。(今日の治療薬2020,p.287)
- Circ J,78:194-205,2014
- N Engl J Med 375:2519-2529,2016
セレコキシブは、CYP2C9の基質薬である(影響を強く受けやすい)
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
セレコキシブ:CR(CYP2C9)0.97、(PISCS2021,p.52)
セレコキシブは、CYP2D6阻害薬である(中程度)
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
セレコキシブ:CR(CYP2D6)データ無し、(PISCS2021,p.52)
モービック(一般名:メロキシカム)
NSAIDs(オキシカム系):
「COX-2選択性が比較的強く、胃粘膜障害が少ないとされている」。(今日の治療薬2020,p.300)
1日1回10mg、食後。
- モービック錠10mg
Tmax:8.0±8.0(hr)、Cmax:0.741±0.101(μg/mL)、t1/2:28.7±5.6(hr)
「COX-2」阻害選択性が比較的高い(セレコキシブ、メロキシカム、エトドラク)
血中濃度半減期が長く(1日1回投与)、急性腎不全発症のリスクが高い。
(実践薬学2017,p.298「NSAIDsによる急性腎不全の発症リスク」)
ハイペン(一般名:エトドラク)
NSAIDs[アリール酢酸系(ピラノ酢酸系)]:
「COX-2選択性が比較的強い。ブラジキニン抑制作用もある」。(今日の治療薬2020,p.295)
1回200mg、1日2回、朝・夕食後。
- ハイペン錠200mg
Tmax:1.4±0.2(hr)、Cmax:12.2±0.8(ng/mL)、t1/2:6.03(hr)
エトドラクは、定常状態のある薬物である。(どんぐり2019,p.235)
12時間/6.03時間=1.99時間⇒定常状態がある
定常状態に達する時間、6.03時間×5=30.15時間⇒1日と6時間
効果が現れるまでには、1日と6時間かかる。
「COX-2」阻害選択性が比較的高い(セレコキシブ、メロキシカム、エトドラク)
ブルフェン(一般名:イブプロフェン)
NSAIDs(プロピオン酸系):
「OTCとしても広く使われている標準薬。膠原病で無菌性髄膜炎の報告あり」。(今日の治療薬2020,p.296)
1回200mg、1日3回。(急性上気道炎の解熱・鎮痛の場合、頓用、原則1日2回、1日最大600mgまで)
- ブルフェン錠200
Tmax:2.1±0.2(hr)、Cmax:16.6±0.9(μg/mL)、t1/2:1.8±0.1(hr)
イブプロフェンは、非線形型薬物である
インタビューフォームでしか確認できない「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」。(どんぐり2019,p.233)
「血漿蛋白結合率99%(平衡透析法)(外国人でのデータ)」と非常に高い値を示している。
イブプロフェンは、CYP2C9の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
R-イブプロフェン:CR(CYP2C9)0.51、(PISCS2021,p.52)
S-イブプロフェン:CR(CYP2C9)0.70、(PISCS2021,p.52)
イブプロフェン:IR(CYP2C9)0.00、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用
急性の腰痛や座骨神経痛に対する治療薬としては、ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が推奨度No.1(「腰痛診療ガイドライン2019」p.34)となっている。
注)NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug
注)『腰痛診療ガイドライン2019』(編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/腰痛診療ガイドライン策定委員会)医薬品各種(NSAIDsなど)
NSAIDs各剤の1日投与回数は、薬物動態(特にt1/2)の違いによって、1日1回、2回あるいは3回投与となる。(山村2016,p.77)
カロナール(アセトアミノフェン)には抗炎症作用が無く、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とは区別して分類されるのが一般的である。
- インフルエンザや小児・妊婦に対しては、カロナールを選択する。
⇒ https://yakugai.akimasa21.net/caronal/ - アスピリン喘息には、カロナールやCOX1阻害作用の無いNSAIDsを選択する。
⇒ https://yakugai.akimasa21.net/aspirin-asthma/
NSAIDsでは効かない痛みもある。その場合の適応薬物は、以下のとおりである。
- 片頭痛:トリプタン製剤
- 胃潰瘍:PPIまたはH2ブロッカー
- 神経因性疼痛:リリカやノイロトロピンなど
NSAIDsは、肝消失型だが腎毒性のある代表的な薬物である。
慢性疼痛治療に対する使用薬剤:
「慢性疼痛治療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛
- NSAIDs:2B(使用することを弱く推奨する)
片頭痛に対して、予防・改善効果を認める。 - アセトアミノフェン:1A(使用することを強く推奨する)
稀発反復性緊張型頭痛と片頭痛に改善効果を認める。
(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)からの引用である→古い)
バキソ(一般名:ピロキシカム)
NSAIDs(オキシカム系):
「半減期が長い。高齢者では副作用の発現に注意」。(今日の治療薬2021,p.302)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
ロルノキシカム:CR(CYP2C9)0.84、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
ピロキシカム:IR(CYP2C9)0.13、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用
ロルカム(一般名:ロルノキシカム)
NSAIDs(オキシカム系):
「半減期が短い。血中濃度上昇が速やか」。(今日の治療薬2021,p.303)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
ロルノキシカム:CR(CYP2C9)0.99、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
ロルノキシカム:IR(CYP2C9)0.20、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用
インダシン、インテバン、インドメタシン(一般名:インドメタシン)
NSAIDs[アリール酢酸系(インドール酢酸系)]:
「強力だがCOX-1阻害が強く胃腸障害多い。【静注用】未熟児の動脈管開存症の適応あり」。(今日の治療薬2021,p.296)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
インドメタシン:CR(CYP2C9)0.50、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
ソレトン(一般名:ザルトプロフェン)
NSAIDs(プロピオン酸系):(今日の治療薬2020,p.299)
ポンタール(一般名:メフェナム酸)
NSAIDs(アントラニル酸系):(今日の治療薬2020,p.291)
ナイキサン(一般名:ナプロキセン)
NSAIDs(プロピオン酸系):
「腫瘍熱に有効とされている」。(今日の治療薬2020,p.298)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
ナプロキセン:CR(CYP2C9)0.22、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
ソランタール(一般名:チアラミド)
NSAIDs(塩基性):
「一般に作用は弱い。アスピリン喘息には比較的安全」。(今日の治療薬2020,p.301)
少なくとも日本国内では唯一の塩基性NSAIDsである。
COX阻害作用を有しないNSAIDsである。
- 鎮痛・消炎剤であり、解熱効果は無い(添付文書上の適応は無い)。
NSAIDsによる解熱効果は、NSAIDsのCOX阻害作用によって、プロスタグランジン(発熱・発痛物質)の生合成が抑制されることによる。
チアラミドは、プロスタグランジンの生合成を抑制しない(COX阻害作用がない)ため、解熱効果を発揮することはない。 - 胃粘膜障害が無い。
NSAIDsによってプロスタグランジンの生合成が抑制されると、プロスタグランジンの持つ胃粘膜保護作用が弱まることがある。
チアラミドは、プロスタグランジンの生合成を抑制しない(COX阻害作用がない)ため、胃粘膜を障害することはない。 - アスピリン喘息のリスクが低い
アスピリン喘息には、COX阻害作用(特にCOX-1)が関与していると考えられている。
チアラミドはCOX阻害作用を有しないので、アスピリン喘息のリスクは低いとされている。
アスピリン喘息⇒「アスピリンとアスピリン喘息(NSAIDs過敏症)」
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)
厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(消炎鎮痛薬)
NSAIDsは上部消化管出血や腎機能障害、心血管障害などの薬物有害事象のリスクを有しており、高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬剤の一つである。(消炎鎮痛薬)
- NSAIDs(セレコキシブ[セレコックス]、ロキソプロフェン[ロキソニン]、ロルノキシカム[ロルカム]、ジクロフェナク[ボルタレン]など)の使用はなるべく短期間にとどめるとともに、上部消化管出血の危険があるため、プロトンポンプ阻害薬やミソプロストール[サイトテック]の併用を考慮する。
- セレコキシブ、メロキシカム[モービック]等の選択的COX-2阻害薬はNSAIDs潰瘍発生のリスクの低減が期待できるため、特に消化性潰瘍の既往のある高齢者でNSAIDsを使用せざるを得ない場合に使用を考慮する。
- アセトアミノフェン[カロナール]はNSAIDsには分類されないが、消化管出血や腎機能障害、心血管障害などの薬物有害事象のリスクがNSAIDsに比べて低いと考えられるため、高齢者に鎮痛薬を用いる場合の選択肢として考慮される。
- NSAIDsは腎機能を低下させるリスクが高いため、軽度の腎機能障害を認めることが多い高齢者においては、可能な限り使用を控え、やむを得ず使用する場合でもなるべく短期間・低用量での使用を考慮する。
また、心血管疾患のリスクも高めるため、これらの基礎疾患を合併する高齢者への投与についても注意が必要である。- NSAIDsの外用剤と内服薬の併用や、NSAIDsを含有する一般用医薬品等との併用でも薬物有害事象が問題となる可能性があるため、注意が必要である。
- アセトアミノフェンを高用量で用いる場合は肝機能障害のリスクが高くなるため注意が必要である。
一般用医薬品等を含めて総合感冒剤等に含まれるアセトアミノフェンとの重複にも注意する。- いずれの鎮痛薬を用いるにしても、疼痛の原因・種類を評価した上でその内容に応じた治療を行うことが重要であり、適切な評価を行うことなく鎮痛薬を漫然と継続することは避けるべきである。
- 抗血小板薬や抗凝固薬、糖質ステロイドの併用患者ではNSAIDs潰瘍のリスクが上昇するため、これらの薬剤を使用する場合は、なるべくNSAIDsの変更・早期中止を検討する。
- レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬など)、利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]、スピロノラクトン[アルダクトン]、 トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。
別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(CYP2C9)
( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)
【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
- 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
- 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
- 本表はすべてを網羅したものではない。
実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
- ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。- 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。
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⇒サリドマイド事件のあらまし(概要)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。
Web管理人
山本明正(やまもと あきまさ)
1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)