HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、動脈硬化のペニシリン
医薬品各種(スタチン)
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は、肝臓でのコレステロール生合成にかかわる酵素(HMG-CoA還元酵素)を阻害することで、動脈硬化の原因となる「LDLコレステロール(LDL-C)」を減らす効果がある。
スタチンは、LDLコレステロール低下力の程度によって、レギュラー・スタチン(メバロチンなど3種類)とストロング・スタチン(クレストールなど3種類)に2分される。
コレステロールは夜間に体内で合成されるため、「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」は、朝より夕食後に飲んだ方が高い効果が得られることが知られている。
そこで、通常のスタチンの用法・用量では、夕食後投与が勧められている。
しかし、「ストロング・スタチン」は作用が長続きするため、朝でも夕でも効き目は変わりない。
つまり、用法も「夕食後」にこだわる必要はない。
なお、いずれのスタチンも忍容性に大きな差はない。
つまり、長期間安全に服用できる薬物ばかりである。
したがって、スタチンの使い分けは、必要とするLDLコレステロール値の低下力に応じて行う。(児島2017,pp.63-66)
メバロチン(一般名:プラバスタチン)
レギュラー・スタチン(半減期:2.7時間)
「わが国初のスタチン。水溶性のため肝細胞選択性が高い。相互作用少ない。海外エビデンスとともにわが国のエビデンスも構築」。(今日の治療薬2020,p.411)
メバロチン:錠(5mg、10mg)
- 【プラバスタチン】は、レギュラー・スタチンである。(半減期:2.7時間)
(プラバスタチン1日最大用量20mg < ロスバスタチン通常用量5mgの方が強力) - 用法:1日1回または1日2回(1日1回の場合、夕食後が望ましい)。
- スタチンで唯一水溶性である。油水分配係数:0.47(logP=-0.33)
(クレストールは親水性という程度) - CYP3A4基質薬であるが、相互作用は少ない。CR(CYP3A4)0.35W
(グレープフルーツジュースは併用注意とはなっていない) - OATP1B1基質薬であり、シクロスポリンとの併用でAUCは5~23倍上昇する。(PISCS2021,p.98)
併用注意ではなく、併用禁忌として取り扱うべきである。(実践薬学2017,pp.80-84)
(フルバスタチン(ローコール)が使えるかもしれない)
- 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、軽度である。
プラバスタチン:CR(CYP3A4)0.35W、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬
リポバス(一般名:シンバスタチン)
レギュラー・スタチン(半減期3.2時間)
「プロドラッグ。脂溶性。海外エビデンスが豊富」。(今日の治療薬2020,p.412)
リポバス:錠(5mg、10mg、20mg)
- 【シンバスタチン】は、レギュラー・スタチン(半減期3.2時間)である。
- 用法:1日1回(夕食後が望ましい)。
- 脂溶性である。油水分配係数:100,000(logP=5)
(そのほか、プラバスタチン水溶性、ロスバスタチン親水性) - CYP3A4基質薬(影響を強く受けやすい)であり、相互作用が多い。CR(CYP3A4)1.0VS
グレープフルーツジュースとは、アトルバスタチンと共に併用注意となっている。 - マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、エリスロマイシン)と併用注意。(PISCS2021,p.96)
(ただし、クラリスロマイシンのAUC11.9倍 ― 限りなく併用禁忌)。 - Ca拮抗薬(ジルチアゼム、ベラパミル)とは、併用注意。(PISCS2021,p.98)
- アゾール系抗真菌薬との相互作用では、併用禁忌薬が最も多い(3種類)。(PISCS2021,p.94)
(イトラコナゾール、ミコナゾール、ポサコナゾールである。
ただし、ボリコナゾールのAUC↑であり、併用禁忌とすべきである。
フルコナゾール、ラブコナゾールは、併用注意) - HIVプロテアーゼ阻害薬との相互作用では、併用禁忌薬がある。(PISCS2021,p.90)
- OATP1B1基質薬であり、シクロスポリンとの併用でAUCが上昇する(併用注意)。(PISCS2021,p.98)
(フルバスタチン(ローコール)が使えるかもしれない)
シンバスタチンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
- 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて高度である。
シンバスタチン:CR(CYP3A4)1.0VS、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬
- 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
併用禁忌:イトリゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬
併用禁忌:ノクサフィル(ポサコナゾール)、2020年4月収載(Web作者にて追加)
リポバス錠添付文書:
「併用により本剤のAUCが上昇したとの報告がある。本剤の投与中はグレープフルーツジュースの摂取は避けること」。
⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)」
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
シンバスタチン:IR(CYP2C9)0.20、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用
ローコール(一般名:フルバスタチン)
レギュラー・スタチン(半減期1.3時間)
「化学合成のスタチン。脂溶性。抗酸化作用が強い」。(今日の治療薬2020,p.412)
ローコール:錠(10mg、20mg、30mg)
- 【フルバスタチン】は、レギュラー・スタチン(半減期1.3時間)である。
- 用法:1日1回夕食後。
- 脂溶性である。油水分配係数:55.00(logP=1.74)
(そのほか、プラバスタチン水溶性、ロスバスタチン親水性) - CYP3A4基質薬としての作用は弱い。CR(CYP3A4)0.24←PISCS2021,p.94
マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン)と併用注意。(PISCS2021,p.96)
アゾール系抗真菌薬との相互作用では、多少AUCが上昇する(併用注意2種類)。(PISCS2021,p.94) - CYP2C9基質薬(影響を中程度に受けやすい)である。CR(CYP2C9)0.90~0.70
- OATP1B1基質薬ではない(スタチンで唯一)と考えられる。(実践薬学2017,p.82)
シクロスポリンとの併用で多少AUCが上昇するものの、血中濃度の上昇度(4倍)は、最低・最大用量の倍率(6倍)の範囲内に収まっている。
併用注意だが、唯一使える薬剤と言える。(実践薬学2017,p.82、PISCS2021,p.98)
フルバスタチンは、CYP2C9の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147) - 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
3S-5R フルバスタチン:CR(CYP2C9)0.90、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
3R-5S フルバスタチン:CR(CYP2C9)0.70、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
フルバスタチン:IR(CYP2C9)0.20、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用
リピトール(一般名:アトルバスタチン)
ストロング・スタチン(半減期10時間)
「血中半減期が長く、強力なコレステロール低下作用。脂溶性。海外エビデンスが豊富」。(今日の治療薬,p.412)
リピトール:錠(5mg、10mg)
- 【アトルバスタチン】は、ストロング・スタチンである。(半減期10時間)
(ロスバスタチン2.5mg=アトルバスタチン10mg=ピタバスタチン2mg) - 用法:1日1回(朝・夕のしばり無し)。
- 脂溶性である。油水分配係数:16.22(logP=1.21)
(そのほか、プラバスタチン水溶性、ロスバスタチン親水性) - CYP3A4基質薬(影響を中程度に受けやすい)であり、相互作用が多い。CR(CYP3A4)0.68M
グレープフルーツジュースとは、シンバスタチンと共に併用注意となっている。 - マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン)と併用注意。(PISCS2021,p.97)
- アゾール系抗真菌薬との相互作用では、併用禁忌薬がある(ポサコナゾール)。(PISCS2021,p.95)
- OATP1B1基質薬であり、シクロスポリンとの併用でAUCは最大15倍上昇する。(PISCS2021,p.99)
併用注意ではなく、併用禁忌として取り扱うべきである。(実践薬学2017,pp.80-84)
(フルバスタチン(ローコール)が使えるかもしれない)
リピトール錠添付文書:
「シクロスポリンとの併用により、本剤のAUC0-24hが8.7倍に上昇したとの報告がある」。
アトルバスタチンも、ピタバスタチン、ロスバスタチン同様、シクロスポリンとの併用禁忌にすべきである。(児島2017,p.69)
アトルバスタチンは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147) - 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、中等度である。
アトルバスタチン:CR(CYP3A4)0.68M、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬
リピトール錠添付文書:
「グレープフルーツジュース1.2L/日との併用により、本剤のAUC0-72hが約2.5倍に上昇したとの報告がある」。
⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)」
- 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:ノクサフィル(ポサコナゾール)、2020年4月収載(Web作者にて追加)
リバロ(一般名:ピタバスタチン)
ストロング・スタチン(半減期11時間)
「強いLDL-C低下作用。HDL-C上昇効果。脂溶性」。(今日の治療薬2020,p.413)
リバロ:錠(1mg、2mg、4mg)、OD錠(1mg、2mg、4mg)
- 【ピタバスタチン】は、ストロング・スタチンである。(半減期11時間)
(ロスバスタチン2.5mg=アトルバスタチン10mg=ピタバスタチン2mg) - 用法:1日1回(朝・夕のしばり無し)。
- 脂溶性である。油水分配係数:31.7(logP=1.49)
(そのほか、プラバスタチン水溶性、ロスバスタチン親水性) - CYP3A4基質薬ではない、CR(CYP3A4)データ無し。
- マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン)と併用注意。(PISCS2021,p.97)
- アゾール系抗真菌薬との相互作用では、AUC上昇比は不明(ボリコナゾール注意)。(PISCS2021,p.95)
- OATP1B1基質薬であり、シクロスポリンとの併用でAUCは5倍程度上昇する。(PISCS2021,p.99)
比較的新しい薬であり、初めから併用禁忌となっている。(実践薬学2017,pp.80-84)
(フルバスタチン(ローコール)が使えるかもしれない)
ピタバスタチンは、代謝酵素の影響が少ないとされている。
「代謝酵素CYPに影響する抗菌薬や抗真菌薬などを併用している場合は、相互作用の少ない『リバロ』が適した薬」と言える。(児島2017,p.68)
クレストール(一般名:ロスバスタチン)
ストロング・スタチン(半減期14時間)
「強いLDL-C低下作用。HDL-C上昇効果。親水性」(今日の治療薬2020,p.413)
クレストール:錠(2.5mg、5㎎)、OD錠(2.5mg、5㎎)
- 【ロスバスタチン】は、ストロング・スタチンである。(半減期14時間)
(ロスバスタチン2.5mg=アトルバスタチン10mg=ピタバスタチン2mg) - 用法:1日1回(朝・夕のしばり無し)。
- 親水性である。油水分配係数:-(logP=-0.3)
- CYP3A4基質薬ではない、CR(CYP3A4)0.02-。
- マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン)と併用注意。(PISCS2021,p.97)
- アゾール系抗真菌薬との相互作用では、AUC軽度上昇(併用注意4種)。(PISCS2021,p.95)
- OATP1B1基質薬であり、シクロスポリンとの併用でAUCは10倍程度上昇する。(PISCS2021,p.99)
比較的新しい薬であり、初めから併用禁忌となっている。(実践薬学2017,pp.80-84)
(フルバスタチン(ローコール)が使えるかもしれない) - 尿毒素の蓄積:胆汁排泄型の薬物であるにもかかわらず、重度腎障害のある患者では、血中濃度が約3倍上昇する。(実践薬学2017,p.192)
- 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、ほとんど無視できる。
CR(CYP3A4)0.02-、(PISCS2021,p.46)
ロスバスタチンと尿毒素の蓄積
- 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)
- 「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(10%)、ESKDでのクリアランス(-67%)、ESKDの用量(1/4に減量)
⇒参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)
「ロスバスタチンは、脂質親和性が比較的低くCYPを介した代謝を受けにくい。
そして、そのほとんどが未変化体のまま胆汁から排泄される」。(実践薬学2017,p.192)
つまり、ロスバスタチンは胆汁排泄型の薬物であるにもかかわらず、「重度腎障害のある患者においては、血中濃度は健康成人に比べ、約3倍に上昇することが報告されている。
一方、軽症から中等症の患者では血中濃度への影響は認められていない」。(同上,p.192)
これもまたデュロキセチンやワルファリンと同じく、高度腎機能低下のある患者における尿毒素の蓄積が原因と考えられる。
尿毒素によって、肝臓の取り込みトランスポーターであるOATP1B1の働きや発現が阻害される。
その結果、肝細胞に取り込まれるロスバスタチンの量が減少して、逆に血中濃度が上昇することになる。(同上,p.192)
ところで、「スタチン系薬剤は全てOATP1B1によって肝に取り込まれる」にもかかわらず、高度腎機能低下のある患者における血中濃度の上昇は、ロスバスタチンのみに見られる現象である。
全くの“例外”というほかはない。(同上,pp.192-194)
ロスバスタチンの用法・用量を考える
(どんぐり2019,pp.127,249)
80歳男性、身長150㎝、体重45kg、血清クレアチニン1.4mg/dL
ロスバスタチン錠5mg、1回1錠、1日1回朝食後、30日分
⇒ロスバスタチン1回2錠に増量を検討
eGFR、CCrを計算する
日本腎臓病薬物療法学会
「eGFR・CCrの計算」に数値を代入して自動計算する。
https://jsnp.org/egfr/
下記数値左側(SCr1.4mg/dLを代入)、数値右側(SCr1.4+0.2mg/dLを代入)
- eGFRcreat
38.17mL/min/1.73m2⇔32.98
(体表面積1.73m2で補正した値である)
CKD重症度分類より、G3bであり、中等度~高度低下と判断できる。 - 体表面積未補正eGFRcreat
30.22mL/min⇔26.12 - CCr(CG式)
33.83mL/min/1.73m2⇔29.6
(体表面積1.73m2で補正した値である) - 体表面積未補正CCr
26.79mL/min⇔23.44mL/min
血清クレアチニン値をSCr(1.4+0.2mg/dL)として、Cockcroft&Gaultの式で手計算した結果と同一の値となる(下記のとおり)。
Cockcroft&Gaultの式より、
CCr={(140-80)/(72×(1.4+0.2))}×45
=(60/115.2)×45
=23.4375mL/min
「クレアチニンクリアランスが30mL/min/1.73m2未満の患者に投与する場合には、2.5mgより投与を開始し、1日最大投与量は5mgとする」。(クレストール添付文書)
CCr=23.4mL/min ⇒ 29.6mL/min/1.73m2(体表面積1.73m2で補正した値)
したがって、ロスバスタチン1回2錠(合計10mg)に増量の余地は無い。
他剤変更を提案する。
カデュエット配合錠(アムロジピン/アトルバスタチン)
ロスーゼット配合錠(エゼチミブ/ロスバスタチン)
HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は、脂質異常症(高脂血症)の治療薬であり、血中のLDLコレステロール濃度を強力に低下させる作用を持っている。
大規模臨床試験の結果、スタチン投与によって冠動脈疾患の発症率及び死亡率を有意に低下させることが証明されており、スタチンは、過去30年間に世界で最も多くの患者に使われた薬物となっている。
スタチンが血中LDL-Cを低下させるメカニズム
コレステロールは脂質の一種であり、真核生物の生体膜の構成成分の1つであるとともに、ステロイドホルモン、ビタミンDあるいは胆汁酸などの生合成原料として重要な化合物である。
コレステロールは、主に肝臓においてアセチルCoAからカスケード反応を経て合成される。
その律速酵素が、HMG-CoA還元酵素、つまり、HMG-CoA(アセチルCoAから変換される)を次の段階であるメバロン酸に変換する酵素である。
- スタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害することによって、ステロイドの合成を抑制する。
⇒細胞内のコレステロール・プールが減少する。 - 減少したコレステロールを補うために、LDLレセプターが増加する。
⇒血中から細胞内へLDL-Cの取り込みが促進される。 - その結果、血中のLDL-Cが減少する。
ノーベル生理学・医学賞とコレステロール
- 1964年、ブロッホ(アメリカ)・リュネン(ドイツ)
コレステロール及び脂肪酸代謝の機構と調節に関する発見(ラット) - 1985年、ブラウン(アメリカ)・ゴールドスタイン(アメリカ)
コレステロール代謝とその関与する疾患の研究(WHHLウサギ)
スタチンは、青カビから作られた第二のペニシリン(夢の新薬)とも称される。
開発者の遠藤章氏(当時三共株式会社研究員)は、現在、“ノーベル賞に最も近い日本人”の1人と目されている。
m3臨床ニュース(シリーズ)【平成の医療史30年◆スタチン編】
平成の30年間に世界で一番使われた薬
遠藤章氏、開発までの道のり過去30年間に世界で最も多くの患者に使われ、最も多くの人々の健康寿命を延ばしてきた薬といえば、スタチンをおいて他にないだろう。現代医療に多大な影響を与えたコトやモノの中心人物に取材しているm3.comの特集「平成の医療史30年」。今回は、スタチンを開発した遠藤章氏(東京農工大学特別栄誉教授、株式会社バイオファーム研究所代表取締役所長)にご登場いただく。
参考資料)遠藤章『新薬スタチンの発見 コレステロールに挑む』岩波科学ライブラリー 123(2006年)
Amazonオンディマンド版(2016年)がある。
脂質異常症とは
脂質異常症診断基準(空腹時採血)では、下記の各脂質の値を基準として診断を行う(境界域は省略した)。
- LDLコレステロール(140mg/dL以上) ⇒ 高LDLコレステロール血症
- HDLコレステロール(40mg/dL未満) ⇒ 低HDLコレステロール血症
- トリグリセライド(150mg/dL以上) ⇒ 高トリグリセライド血症
- non-HDLコレステロール(170mg/dL以上) ⇒ 高non-HDLコレステロール血症
「脂質異常症」とは、従来から言われていた「高脂血症」のことである。
脂質異常症診断基準には、高LDLコレステロール血症や高トリグリセライド血症などと共に、低HDLコレステロール血症が含まれている。
つまり、脂質に異常をきたす疾患には、検査値の高くなる疾患だけでなく低くなる疾患も含まれている。
そうした疾患を一括して高脂血症とする従来の呼称には違和感があった。
そこで、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」において、「高脂血症」から「脂質異常症」に変更された。
参考)日本動脈硬化学会
-脂質異常症治療のQ&A-
http://www.j-athero.org/qanda/q_and_A.html
参考)最新ガイドライン
日本動脈硬化学会(編): 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版. 日本動脈硬化学会, 2017
注)空腹時とは10時間以上の絶食のこと、ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可。
注)e-ヘルスネット(厚生労働省)のメタボリックシンドロームの診断基準では、“高トリグリセリド血症”。
LDLコレステロール値が最も大切(Friedewaldの式で求める)
LDLコレステロール値は、動脈硬化性疾患予防のために最も重要な指標である。
年齢が進むにつれて血管は硬くなり柔軟性がなくなっていく。
こうした動脈硬化の進展に大きく関係しているのがコレステロール、特にLDLコレステロールである。
LDLコレステロールを低下させることで動脈硬化性疾患が減少することが確認されている。
LDL-コレステロール値を求める方法には、Friedewaldの式を用いる方法と直接測定法の二つがある。
LDLコレステロール値(Friedewaldの式で求める)
=総コレステロール値(TC)-HDLコレステロール値(HDL-C)-トリグリセライド値(TG:中性脂肪)×1/5
日本動脈硬化学会では、直接測定法ではなくFriedewaldの式を用いる方法が望ましいとしている。
その理由あるは注意点は以下のとおりである。
- 現在までのエビデンスが豊富である
- 直接測定法はまだ十分に標準化されていない
試薬メーカーごと(測定試薬ごと)のバラつきがある - なお、Friedewaldの式はトリグリセライド値400mg/dL未満の場合に使用できる
non HDL-コレステロールが注目されている
ガイドライン2017では、「non HDL-コレステロール」が新たな診断基準として採用された。
「non HDL-コレステロール」=総コレステロール値-HDL-コレステロール値
「non-HDL-CにはLDL-C以外の動脈硬化惹起性リポ蛋白、例えばトリグリセライド(TG) richなレムナントやLp(a)なども含まれていて、それらの高リスク病態を見つけるきっかけになるという利点があります。実際にLDL-Cよりもnon-HDL-Cのほうがイベント発症リスクとの相関が強いとの報告が増えています」。(Diabetic Complication Topics No.5 2018年2月20日発行)
総コレステロール値(TC)やHDL-コレステロール値は、〈非〉空腹時でも結果はあまり変わりない。
したがって、non HDL-コレステロール値の測定は、空腹時でなくとも正確に測ることができるので便利である。参考)Lipid Journal「採血時、食事の血清脂質への影響はどの程度ありますか?」
横紋筋融解症に注意する
「スタチンの副作用は消化器症状、横紋筋融解症、ミオパチー、肝障害などであるがその頻度は高くない」。(今日の治療薬2019,p.396)
注)ミオパチー:筋疾患のこと。日本を含む多くの国では、慣習的に筋ジストロフィー以外の筋疾患のことをミオパチーと呼んでいる。
副作用疾患別対応マニュアル(横紋筋融解症)
厚生労働省(2006年11月)
https://www.pmda.go.jp/files/000143227.pdf
横紋筋融解症とは、骨格筋の細胞が融解・壊死することにより、筋肉の痛みや脱力などを生じる疾患である。
重篤な事態に陥った場合には生命に関わる。
したがって、頻度は高くないものの、次のような症状に気をつける。
- 手足・肩・腰・そのほかの筋肉が痛む
- 手足がしびれる
- 手足に力がはいらない
- こわばる
- 全身がだるい
- 尿の色が赤褐色になる
「ごく一部分の筋線維壊死は、日常的にも生じているが、広範囲に筋壊死が生じた場合には大量のミオグロビンなど筋細胞内成分が血中に流出して全身に影響が及ぶ。ミオグロビンは、尿細管内に沈着し、またミオグロビンから遊離したヘム構造体も直接作用して、腎尿細管障害を生じさせる。その結果、可逆性あるいは不可逆性の腎不全、DICや多臓器不全などの重篤な全身症状も来しうる」。p.10
横紋筋壊死を生じる医薬品の種類は多岐にわたる。
スタチンの場合が最も多く、そのほかではニューキノロン系に多い。
なお、横紋筋融解症は、夏期には脱水や熱中症によりあらわれる場合がある。
「(スタチンの場合)服用開始後数ヶ月を経過して徐々に発症することが多い。筋痛が先行することが多く、また末梢神経障害の合併もしばしば認められることが知られている」。p.12
「横紋筋融解などの筋毒性は、すべてのスタチンで生じる。米国における調査ではスタチン服用者において筋肉痛は、2~7%で生じ、CK上昇や筋力低下は 0.1%~1.0%で認められる。重篤な筋障害は 0.08%程度で生じ、100万人のスタチン服用者がいた場合には、0.15 名の横紋筋融解による死亡が出ていることになるという」。p.12
多彩な生理・薬理作用(pleiotropic effects)
遠藤章は、スタチンの多彩な生理・薬理作用について幾つかの事例を示している。(遠藤章2016,pp98-103)
- 脳卒中の発症率を2/3に下げる
- 骨形成(補修)を活性化する⇒骨量の増加⇒骨折の発症率を低下させる可能性
- アルツハイマー病の予防につながる可能性
- 抗炎症作用が有り、そのことが冠動脈疾患予防につながっている
- 新しいタイプの免疫抑制剤としての可能性
- 抗ガン活性がある(抗炎症作用も関係する)
なお、大規模臨床試験のメタ解析から、スタチンによって「糖尿病の新規発症がプラセボに比較して9%有意に上昇することが示された」。(今日の治療薬2019,p.397)
ときどき見かける、スタチンの隔日投与は有り得るか
レギュラー・スタチン(3種)の血中濃度半減期は、1.3~3.2時間の間に収まっている。
それに対して、用法はいずれも1日1回投与となっている。
この場合、反復投与しても定常状態には達しないことは確実である。
それでは、なぜスタチンが効果を発揮するかといえば、それは、LDLレセプターの活性が丸1日持続することによると考えられる。
そして、ストロング・スタチン(3種)の血中濃度半減期を確認すると、10~20時間の間に収まっており、レギュラー・スタチンの場合(1.3~3.2時間)よりも長くなっている。
レギュラー・スタチンが丸1日効果を発揮するのであれば、ストロング・スタチンでは丸2日くらいは効果が持続するかもしれない。
ということであろうか、ロスバスタチン隔日投与などの処方を時々見かけることがある。
「実践薬学2017」には、「半減期が11時間もあるピタバスタチンなら、隔日服用でもきっと効いている」という憶測と、「スタチンの隔日投与の有用性について、少数の報告はあるようだが、エビデンスと呼べるような研究は見当たらなかった」という文章が併記されている。pp.57-60
スタチンの隔日投与が有効なのかどうか私には判断できない。
薬物動態学は、主として薬物血中濃度の時間的推移に注目する学問である。
以上では、それだけでは解明できない薬効として、LDLレセプターの活性持続時間について考えてみた。
薬物相互作用
グレープフルーツジュースとの飲み合わせ(スタチン系薬物)
⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)」
プラバスタチン:CR(CYP3A4)0.35W、(PISCS2021,p.46)
シンバスタチン:CR(CYP3A4)1.0VS、(PISCS2021,p.46)
フルバスタチン:CR(CYP3A4)0.24、(PISCS2021,p.94)
アトルバスタチン:CR(CYP3A4)0.68M、(PISCS2021,p.46)
ピタバスタチン:CR(CYP3A4)データ無し、(PISCS2021,p.46)
ロスバスタチン:CR(CYP3A4)0.02-、(PISCS2021,p.46)
シンバスタチン、アトルバスタチンは、共にCYP3A4基質薬である。
グレープフルーツジュースとは、併用注意(併用に注意すること)となっている。
なお、そのほかのスタチン系薬物には何の記載も無い。リポバス錠添付文書:
「併用により本剤のAUCが上昇したとの報告がある。本剤の投与中はグレープフルーツジュースの摂取は避けること」。リピトール錠添付文書:
「グレープフルーツジュース1.2L/日との併用により、本剤のAUC0-72hが約2.5倍に上昇したとの報告がある」。
スタチン系薬とシクロスポリンの併用(トランスポーターOATP1B1)
(実践薬学2017,pp.80-84)
スタチン系薬(OATP1B1の基質)とシクロスポリン(OATP1B1の阻害薬)の併用は禁忌の場合がある。
参考)「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」厚生労働省2018
ネフローゼ症候群の治療では、ステロイドに加えてシクロスポリン(ネオーラルなど)などの免疫抑制薬を追加投与されることが多い。
そして、ネフローゼ症候群の患者は高LDL血症を合併しやすく、スタチン系薬が併用されることも多い。
スタチン系薬の多くは、OATP1B1(有機アニオントランスポーターの一種)の基質である。
つまり、OATP1B1によって肝臓に取り込まれる。
(OATP1B1:organic anion transporter 1B1、有機アニオン輸送ポリペプチド)pp.80-84
シクロスポリン(ネオーラルなど)は、OATP1B1阻害薬である。
したがって、シクロスポリンとスタチン系薬を併用すると、スタチン系薬の肝臓への取り込みが阻害されて、スタチン系薬の血中濃度が大幅に上昇するという現象が起きる。
「各スタチンの用量とシクロスポリン併用の影響」p.84によれば、各スタチンのAUCの最大上昇幅は、フルバスタチンの4倍からプラバスタチンの23倍までばらついている。
そうした中で、フルバスタチンは、シクロスポリン服用患者のLDL-C値を下げるために使うスタチンとしては唯一の薬物と言えそうである。
その根拠は、以下のとおり。
フルバスタチン最低用量10mgとシクロスポリンを併用したとき、フルバスタチンの血中濃度が4倍に上昇したとする。
フルバスタチンの最高用量60mgは最低用量10mgの6倍であるから、4倍程度の血中濃度上昇は許容範囲と言える。
そのほかのスタチンと比べれば、多少でも安全性は高いと判断できる。
ローコール(フルバスタチン)の添付文書を確認すると、確かにシクロスポリンとの併用注意となっている。
そしてその理由は、「(共に横紋筋融解症の報告があるので)横紋筋融解症があらわれるおそれがある」からとなっている。
なお、添付文書では併用によってフルバスタチンの血中濃度が約4倍になる点には何ら触れられていない。
さて添付文書上は、ピタバスタチンとロスバスタチンではシクロスポリンとの併用禁忌、そのほかの薬剤は併用注意となっている。
ただし、併用禁忌あるいは併用注意の違いについては、次のような背景を考える必要がある。
すなわち、発売年次の新しいピタバスタチンとロスバスタチンでは、治験時に併用試験を行っている。
しかし、それ以前に発売された薬物では、治験段階では相互作用のメカニズムすら分かっていなかった。
だから、併用試験を行っていないというだけの話である。
フルバスタチン以外の薬物では、シクロスポリンとの併用時、血中濃度の上昇度(倍率)は、いずれも最低・最大用量の差(倍率)よりも大きくなっている。(上記「各スタチンの用量とシクロスポリン併用の影響」p.84より)
したがって、プラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチンでも、シクロスポリンとの併用禁忌として取り扱うべきであろう。
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)
厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(脂質異常症薬)
生活習慣の指導に重点を置きつつ薬物治療を考慮する必要がある。
(脂質異常症治療薬)
- スタチン(ロスバスタチン[クレストール]、アトルバスタチン [リピトール]、ピタバスタチン[リバロ]など)投与により、65歳以上74歳以下の前期高齢者において心血管イベントの一次予防、二次予防の両者共に有意な低下を認めたため、特に高LDL血症に対してはスタチンが第一選択薬として推奨される。
- 75歳以上の後期高齢者では、スタチンによる心血管イベントの二次予防の有意な低下が認められている一方、一次予防の有効性は証明されておらず、一次予防目的の使用は推奨されない。
- スタチン以外の薬剤については十分なエビデンスがないため、慎重な投与を要する。
- スタチンの使用においては、高齢者においても筋肉痛や消化器症状、 糖尿病の新規発症が多いとされており、これらに対する注意が必要である。
- スタチンとフィブラート系薬剤(フェノフィブラート[リピディル、トライコア]、ベザフィブラート[ベザトール]、クリノフィブラート[リポクリン]、クロフィブラート)の併用は横紋筋融解症の発症リスクがあり、腎機能低下例には原則併用禁忌である。
- シンバスタチン[リポバス]、アトルバスタチンは主にCYP3A、フルバスタチン[ローコール]は主にCYP2C9で代謝されるため、これらのCYP阻害薬との併用によりスタチンの血中濃度が増加する可能性があり、その有害作用に注意を要する。
- 肝取り込みトランスポーターであるOATPを阻害するシクロスポリン[ネオーラル]はスタチンの血中濃度を増加させる。
特にロスバスタチン、ピタバスタチンはシクロスポリンとの併用は禁忌である。
別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例
( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)
CYP2C9
【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)CYP3A
【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート
- 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
- 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
- 本表はすべてを網羅したものではない。
実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
- ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
- 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。
そのほか
クレストールは、塩野義製薬(株)の研究所で合成されたスタチンである。山本明正『塩野義製薬MR生活42年』(電子書籍/アマゾンKindle版)では、「クレストール:国内第1号のICH-E2Eガイドラインに準拠した使用成績調査(PRIME試験)の概要」について紹介している。
関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)
1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
⇒サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
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2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。
Web管理人
山本明正(やまもと あきまさ)
1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)