選択的エストロゲン受容体モジュレーター(エビスタなど)

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(概要)

⇒「骨粗鬆症について」

SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)

(SERM:selective estrogen receptor modulator)

ラロキシフェン、バゼドキシフェン共に、閉経後のホルモン補充療法薬(エストロゲン補充)である。
椎体骨折抑制作用が、大規模臨床試験によって確立している。
1日1回の服用でよく、閉経後の早い時期から投与されている。

ラロキシフェン、バゼドキシフェンで同一評価(ガイドライン2015)

  • 骨密度:上昇効果がある(A)
  • 椎体骨折:抑制する(A)
  • 非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
  • 大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)

なお、バゼドキシフェンは、ラロキシフェンよりも骨折予防効果をさらに高めた改良版である。
ただし、ガイドラインの評価は両者同一である。

(参考:今日の治療薬2020,pp.476-480)

エストロゲンと骨代謝

女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、骨代謝(骨の新陳代謝)に関わっている。
すなわち、エストロゲンは、破骨細胞(古い骨を吸収する細胞)と骨芽細胞(新しい骨を作る細胞)の両方に作用している。
そして、閉経にともなうエストロゲン欠乏により、破骨細胞による骨吸収が亢進して、骨量が減少すると考えられている。

「女性では閉経後のエストロゲン低下によって骨代謝回転は亢進し、骨バランスはマイナスに傾き、骨粗鬆症に至る」。(同上,p.476)

閉経後女性に対して、ただ単にエストロゲンを補充(ホルモン補充療法)しても、血栓ができやすくなったり、乳がんのリスクが高まったりする。
SERMは、それらの欠点を改善した薬物となっている。

「SERMはエストロゲン受容体に結合し、組織特異的にエストロゲン作用、抗エストロゲン作用を示す薬物である。骨組織及び脂肪代謝に対してはエストロゲン作用を示すが、乳房や子宮内膜に対してはエストロゲン作用を示さない」。(同上,p.478)

服薬上の注意点(SERM)

(参考:児島2017,p.321)

1)副作用として、特に静脈血栓塞栓症に注意が必要である。

入院や寝たきりの状態など、長時間体を動かさないような生活をしている場合には、血栓ができやすくなることがあるため、避ける必要がある。

2)乳がん治療薬「アリミデックス(一般名:アナストロゾール)」との併用で、「アリミデックス」の効果が減弱する恐れがある。

アリミデックスとSERMの併用に関する注意喚起は、添付文書をはじめ専門書やレセプトコンピューターなどにも記載・登録されていないことが多い。

<エストロゲンとカルシトニンの働く順序>
①女性ホルモン(エストロゲン)が働く→②カルシトニンが分泌→③カルシトニン受容体に作用→④破骨細胞を抑制することで骨吸収を抑える。

医薬品各種(SERM)

閉経に伴うエストロゲン欠乏を補充するために用いる薬物である。

エビスタ(一般名:ラロキシフェン)

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM):
「エストロゲン受容体を介して骨にはアゴニストとして作用し骨吸収を抑制、子宮・乳房にはアンタゴニストとして作用し、エストロゲン製剤のデメリットがカバーされる」。(今日の治療薬2020,p.486)

エビスタ錠(60mg)

適応症は、閉経後の骨粗鬆症である。

【効能・効果】
閉経後骨粗鬆症

【 用法・用量】
通常、ラロキシフェン塩酸塩として、1日1回60mgを経口投与する。

(エビスタ添付文書)

ビビアント(一般名:バゼドキシフェン)

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM):
「骨に対してはエストロゲンと同じ作用をしつつ、ホルモン補充療法に伴う副作用は解消又は軽減」。(今日の治療薬2020,p.487)

ビビアント錠(20mg)

ラロキシフェンよりも骨折予防効果が高いとされる。
ただし、ガイドラインの評価は同一である。

【効能・効果】
閉経後骨粗鬆症

【 用法・用量】
通常、バゼドキシフェンとして、1日1回20mgを経口投与する。

(ビビアント添付文書)

活性型ビタミンD3製剤(エディロールなど)

活性型ビタミンD3製剤(概要)

⇒「骨粗鬆症について」

(参考:児島2017,p317)

活性型ビタミンD3製剤

活性型ビタミンD3(カルシトリオール)は、腸管からのカルシウム吸収を促進し、副甲状腺ホルモンの生成、分布を抑制する。
また、骨代謝に影響を与えて椎体骨折抑制作用を示す。
1日1回の服用でよく、盛用されている。

ガイドライン上の推奨度は、エルデカルシトールの方が、アルファカルシドールよりも一段高くなっている。
その理由は、エルデカルシトールの方が、有意に骨密度を上昇させ、新規椎体骨折の発生を抑制するからである。

エルデカルシトール ← アルファカルシドール(ガイドライン2015)

  • 骨密度:上昇効果がある(A)← 上昇するとの報告がある(B)
  • 椎体骨折:抑制する(A)← 抑制するとの報告がある(B)
  • 非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)← 同左
  • 大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)← 同左

エルデカルシトールは、アルファカルシドール(あるいはカルシトリオール)に骨代謝の効果を上乗せした改良版ということができる。
これには、「ビタミンD結合蛋白(DBP)との親和性がアルファロールよりも4倍以上高く、薬が全身に広く運搬されやすい」ことも関係していると考えられる。

ビタミンD3製剤は、1日1回の服用でよく、ビスホスホネート製剤(第一選択薬)のような複雑な服用方法も必要ないため、非常に使いやすい薬物である。

また最近では、筋力維持による骨折防止(転倒防止)効果が注目されている。

つまり、ビタミンD3製剤の骨折防止(転倒防止)効果について、「ビタミンDがカルシウム吸収を促すだけでなく、筋力や歩行能力を維持する効果を持つ」と考えられるようになっている。

  • カルシトリオール(活性型ビタミンD3)
    1,25水酸化ビタミンD3(1α,25(OH)2-D3)
  • アルファカルシドール(ビタミンD3誘導体)
    25水酸化ビタミンD3(1α-OH-D3)
  • エルデカルシトール(活性型ビタミンD3誘導体)
    活性型ビタミンD3の2β位にヒドロキシプロピルオキシ基を導入

服薬上の注意点(活性型ビタミンD3製剤)

カルシウムの吸収が過剰になって、高カルシウム血症を生じる恐れがある。
サプリメントなどの摂取には注意が必要である。

医薬品各種(活性型ビタミンD3製剤)

ワンアルファ、アルファロール(一般名:アルファカルシドール)

活性型ビタミンD3製剤:
「肝臓で側鎖の25位が水酸化され活性代謝体になる。腸管からのCa吸収促進、血清Caレベル上昇作用」。(今日の治療薬,p.485)

ワンアルファ錠(0.25μg、0.5μg、1.0μg)
アルファロール散(1μg/gほか)
アルファロール・カプセル(0.25μg、0.5μg、1μg、3μg)
アルファロール内用液(0.5μg/mL、10mL)

アルファカルシドールは、ビタミンD3誘導体の一種である。
肝臓で代謝されて、活性型ビタミンD3(カルシトリオール)に変換される。
副甲状腺ホルモンの生成、分布を抑制し、さらに、骨代謝に影響を与えて椎体骨折抑制作用を有する。

(参考:今日の治療薬2020,pp.477-478)

【効能・効果】
1 .下記の疾患におけるビタミンD代謝異常に伴う諸症状
(低カルシウム血症、テタニー、骨痛、骨病変等)の改善
・慢性腎不全
・副甲状腺機能低下症
・ビタミンD抵抗性クル病・骨軟化症
2 .骨粗鬆症

【用法・用量】
本剤は、患者の血清カルシウム濃度の十分な管理のもとに、投与量を調整する。
・慢性腎不全、骨粗鬆症の場合
通常、成人1日1回アルファカルシドールとして0.5~1.0μgを経口投与する。
ただし、年齢、症状により適宜増減する。
・副甲状腺機能低下症、その他のビタミンD代謝異常に伴う疾患の場合
通常、成人1日1回アルファカルシドールとして1.0~4.0μgを経口投与する。
ただし、疾患、年齢、症状、病型により適宜増減する。
(小児用量)
通常、小児に対しては骨粗鬆症の場合には1 日1回アルファカルシドールとして0.01~0.03μg/kgを、その他の疾患の場合には 1日1回アルファカルシドールとして0.05~0.1μg/kgを経口投与する。
ただし、疾患、症状により適宜増減する。

(ワンアルファ錠添付文書)

エディロール(一般名:エルデカルシトール)

活性型ビタミンD3製剤:
「Ca代謝改善効果に加えBPやSERMに匹敵する骨代謝改善効果を持つ」。(今日の治療薬,p.486)

エディロール・カプセル(0.5μg、0.75μg)

エルデカルシトールは、活性型ビタミンD3(カルシトリオール)の誘導体である。
エルデカルシトールは、カルシトリオールよりも長い半減期を有し、骨吸収を抑制する。
その結果、アルファカルシドールと比較して、有意に骨密度を上昇させ、新規椎体骨折の発生を抑制する。
(参考:今日の治療薬2020,pp.477-478)

【効能・効果】
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはエルデカルシトールとして1日1回0.75μgを経口投与する。
ただし、症状により適宜1日1回0.5μgに減量する。

(エディロール添付文書)

ロカルトロール(一般名:カルシトリオール)

活性型ビタミンD3製剤:
「ビタミンD3の生体内活性代謝体。肝・腎での活性化が不要」。(今日の治療薬,p.485)

ロカルトロール・カプセル(0.25μg、0.5μg)
ロカルトロール注射(0.5μg、1μg、各1mL)→「維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」

カルシトリオールは、活性型ビタミンD3(1α,25(OH)2D3:1,25水酸化ビタミンD3)そのものである。

【効能・効果】(カプセル)
○骨粗鬆症
○下記疾患におけるビタミンD 代謝異常に伴う諸症状(低カルシウム血症、しびれ、テタニー、知覚異常、筋力低下、骨痛、骨病変等)の改善
慢性腎不全
副甲状腺機能低下症
クル病・骨軟化症

【用法・用量】(カプセル)
本剤は患者の血清カルシウム濃度の十分な管理のもとに投与量を調節する。
骨粗鬆症の場合:
通常、成人にはカルシトリオールとして1日0.5μgを2回に分けて経口投与する。
ただし、年齢、症状により適宜増減する。
慢性腎不全の場合:
通常、成人1日1回カルシトリオールとして0.25~0.75μgを経口投与する。
ただし、年齢、症状により適宜増減する。
副甲状腺機能低下症、その他のビタミン D 代謝異常に伴う疾患の場合:
通常、成人1日1回カルシトリオールとして0.5~2.0μgを経口投与する。
ただし、疾患、年齢、症状、病型により適宜増減する。

(ロカルトロール添付文書)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【活性型ビタミンD3製剤】

  • 活性型ビタミンD3製剤
    (アルファカルシドール[アルファロール、ワンアルファ ]、エルデカルシトール[エディロール])
  • サプリメントを含むCa製剤との併用で高カルシウム血症による認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • アルファカルシドールは1μg/日以上の投与は控える。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

頻尿・過活動膀胱治療薬など(ウリトスなど)

頻尿・過活動膀胱治療薬など(概要)

ムスカリン性コリン受容体拮抗薬が多い。
口渇、便秘のほか、中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などがある。
抗コリン薬以外には、ミラベグロン、ビベグロン、フラボキサートがある。
薬物代謝酵素CYP2D6の基質(トルテロジン)、阻害薬(ミラベグロン)がある。
ソリフェナシン:CR(CYP3A4)0.58M、(PISCS2021,p.46)

医薬品各種(頻尿・過活動膀胱治療薬)

消失半減期は、イミダフェナシン(2.9時間)、ソリフェナシン(40時間)である。
つまり、同系統の薬物でありながら、効果(あるいは副作用)発現時期は異なる可能性が高い。

ウリトス、ステーブラ(一般名:イミダフェナシン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「ムスカリンM1,M3に対して拮抗作用。膀胱選択性が高い」。(今日の治療薬2020,p.1039)

ウリトス(ステーブラ)錠0.1mg
ウリトス(ステーブラ)OD錠0.1mg

「通常、成人にはイミダフェナシンとして1回0.1mgを1日2回、朝食後及び夕食後に経口投与する。効果不十分な場合は、イミダフェナシンとして1回0.2mg、1日0.4mgまで増量できる」。(ウリトス添付文書)

「健康成人男性5例にイミダフェナシン0.25mgを1日2回5日間反復投与した時、初回投与後と最終回投与後の血漿中濃度推移はほぼ同様であった。また、薬物動態パラメータにも変動は認められず、反復投与による蓄積性は認められなかった」。(同上)

Ritschel理論からも、投与間隔12時間/消失半減期2.9時間=4.14>4.0となり、定常状態にはならない薬物と考えられる。
したがって、もし口渇などの副作用が出るとすれば、初回投与時から出現する可能性がある。p.53

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
リスト記載無し⇒ただし、添付文書には以下の関連事項有り。

「重度の腎障害のある患者については、1回0.1mgを1日2回投与とする」。(ウリトス添付文書)
⇒つまり、重度の腎障害があっても使用可(通常用量)だが、増量の余地は無い。

ベシケア(一般名:ソリフェナシン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「ムスカリンM3選択性があるムスカリン受容体拮抗薬」。(今日の治療薬2020,p.1039)

  • 抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
    しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、中等度である。
    CR(CYP3A4)0.58M、(PISCS2021,p.46)

ベシケア錠2.5mg、5mg
ベシケアOD錠2.5mg、5mg

「通常、成人にはコハク酸ソリフェナシンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10mgまでとする」。(ベシケア添付文書)

「健康高齢・非高齢男女に本剤10mgを1日1回28日間反復経口投与したときの血漿中濃度は、非高齢者では投与後1~2週間で、高齢者では投与後2~3週間で定常状態に達した。また、反復投与により血漿中濃度は単回投与時に比べ2~4倍に上昇した」。(同上)

消失半減期約40時間であり、1日1回投与では定常状態に達する。
そして、高齢者の半減期は若年者よりも長くなっており、そのため定常状態に達する時間も若年者よりは長くなっている。
したがって、口渇などの副作用や頻尿の改善傾向は、最初の1週間程度ではよく分からない可能性もある。

  • 「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
    リスト記載無し⇒添付文書には下記の記載有り。

「重度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満):血中濃度が上昇するおそれがある」。(ベシケア添付文書)

ベタニス(一般名:ミラベグロン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1040)

選択的β3アドレナリン受容体作動薬:
「膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する」。(ベタニス添付文書)

ベタニス錠25mg、50mg

腎機能低下時の用法・用量(ミラベグロン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ミラベグロンは、CYP2D6阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

Ic群抗不整脈薬(フレカイニド、プロパフェノン)とは併用禁忌である。
その理由は次のとおりである。

「ともに催不整脈作用があり、また本剤のCYP2D6阻害作用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある」。(ベタニス添付文書より)

フレカイニドとプロパフェノンには、催不整脈作用が有る。
また、ミラベグロンは「弱いながら心拍数を増加させる程度のβ1、β2刺激作用があり、潜在性QT延長症候群を顕在化させる可能性も否定できない」。(ベタニス審査報告書より、実践薬学2017,p.216)。

フレカイニドとプロパフェノンは、共にCYP2D6の基質薬である。
そして、ミラベグロンは中程度のCYP2D6阻害作用を有している。

上記を踏まえた上で、抗不整脈薬としてフレカイニドやプロパフェノンに変わり得る薬物がほかにあることから、あえてミラベグロンとそれら薬物を併用するまでもないと判断された。
そこで、ミラベグロンのCYP2D6阻害作用は中程度ではあるが、併用禁忌(併用しないこと)となっている。

頻尿・過活動膀胱治療薬の抗コリン作用による口渇を避けるために、作用の異なるミラベグロン(抗コリン作用無し)に変薬するケースがあるかもしれない。
しかしその場合には、併用薬(CYP2D6の基質薬)に留意すること。
例えば、ミラベグロンとノルバデックス錠(タモキシフェン、CYP2D6の基質薬)を併用すると、ノルバデックスの代謝が阻害される可能性がある。(実践薬学,pp.139-142)

ベオーバ(一般名:ビベグロン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1040)

ベオーバ錠50mg

ブラダロン(一般名:フラボキサート)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「膀胱容量増大、尿意発現遅延、排尿回数減少、夜間尿の改善」。(今日の治療薬2020,p.1038)

ブラダロン錠200mg

バップフォー(一般名:塩酸プロピベリン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「抗コリン作用とCa拮抗作用により膀胱平滑筋の異常収縮を抑制」。(今日の治療薬2020,p.1040)

  • 抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
    しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。

バップフォー細粒2%(10mg/0.5g/包、20mg/g/包)
バップフォー錠10mg、20mg

ネオキシ、ポラキス(一般名:オキシブチニン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1039)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

ネオキシ・テープ73.5mg/枚

トビエース(一般名:フェソテロジン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1038)

トビエース錠4mg、8mg

腎機能低下時の用法・用量(フェソテロジン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

デトルシトール(一般名:トルテロジン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「ムスカリン受容体拮抗薬。徐放性」。(今日の治療薬2020,p.1038)

  • 抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

デトルシトール・カプセル2mg、4mg

トルテロジンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    トルテロジン:CR(CYP2D6)0.81、(PISCS2021,p.50)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【過活動膀胱治療薬】

  • オキシブチニン[ポラキス]、 プロピベリン[バップフォー]、 ソリフェナシン[ベシケア]など

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【過活動膀胱
治療薬】

上記の表1.抗コリン作用に基づく注意と同じである。

  • オキシブチニン(経口)[ポラキス]
  • 尿閉、認知機能低下、せん妄のリスクあり。
    口腔乾燥、便秘の頻度が高い。
  • 可能な限り使用しない。
    代替薬として:他のムスカリン受容体拮抗薬
  • ムスカリン受容体拮抗薬:
    (ソリフェナシン[ベシケア]、トルテロジン[デトルシトール]、フェソテロジン[トビエース]、イミダフェナシン[ ウリトス、ステーブ ラ]、プロピベリン[バップフォー]、オキシブチニン経皮吸収型[ネオキシテープ])
  • 口腔乾燥、便秘、排尿症状の悪化、尿閉
  • 低用量から使用。
    前立腺肥大症の場合はα1受容体遮断薬との併用。
    必要時、緩下剤を併用する。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬など

心房細動に対する抗不整脈薬の実際

⇒「抗不整脈薬(Vaughan Williams分類からSicilian Gambitへ)」
⇒「ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)を比較する」

頻脈性心房細動に対する心拍数調節療法
目標安静時心拍数<110/分(徐脈傾向に注意)
心機能低下(LVEF<40%):ビソプロロール経口/貼付、カルベジロール経口(少量から開始)
心機能温存(LVEF>=40%):ビソプロロール経口/貼付、カルベジロール経口、ベラパミル経口・ジルチアゼム経口(いずれかを通常量で使用)

発作性心房細動に対する洞調律維持療法
発作時のみ頓用(pill-in-the-pocket)
ピルシカイニド100mg、フレカイニド100mg

医薬品各種(α・β遮断薬)

インデラル(一般名:プロプラノロール)

β遮断薬(β1非選択性ISA(-)):
「各種の薬物相互作用に注意」。(今日の治療薬2020,p.614)

  • インデラル:錠(10mg)
  • インデラル:注射液(2mg/2mL)

高血圧・狭心症・不整脈・片頭痛の治療薬である。

「インデラルは1964年に英国ICI社(現 AstraZeneca社)で開発され、初めて臨床的に応用された交感神経β受容体遮断剤である。(中略)新しいβ遮断剤が発見され研究される場合の標準薬(比較対照薬)としても広く認められている」。(インデラル・インタビューフォーム)

〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。
したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支を収縮し、喘息症状が誘発又は悪化するおそれがある。]」(インデラル添付文書)

効能・効果および用法・用量(インデラル)

【効能・効果】
本態性高血圧症(軽症~中等症)
狭心症
褐色細胞腫手術時
期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防、頻拍性心房細動(徐脈
効果)、洞性頻脈、新鮮心房細動、発作性心房細動の予防
片頭痛発作の発症抑制
右心室流出路狭窄による低酸素発作の発症抑制

【用法・用量】
1. 本態性高血圧症(軽症~中等症)に使用する場合
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日30~60mgより投与をはじめ、効果不十分な場合は120mgまで漸増し、1日3回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
2. 狭心症、褐色細胞腫手術時に使用する場合
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日30mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mg、90mgと漸増し、1日3回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
3.期外収縮(上室性、心室性)、発作性頻拍の予防、頻拍性心房細動(徐脈効果)、洞性頻脈、新鮮心房細動、発作性心房細動の予防に使用する場合
成人
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日30mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mg、90mgと漸増し、1日3回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
小児
通常、小児にはプロプラノロール塩酸塩として1日0.5~2mg/kgを、低用量から開始し、1日3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。効果不十分な場合には1日4mg/kgまで増量することができるが、1日投与量として90mgを超えないこと。
4. 片頭痛発作の発症抑制に使用する場合
通常、成人にはプロプラノロール塩酸塩として1日20~30mgより投与をはじめ、効果が不十分な場合は60mgまで漸増し、1日2回あるいは3回に分割経口投与する。
5. 右心室流出路狭窄による低酸素発作の発症抑制に使用する場合
通常、乳幼児にはプロプラノロール塩酸塩として1日0.5~2mg/kgを、低用量から開始し、1日3~4回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。効果不十分な場合には1日4mg/kgまで増量することができる。

(インデラル添付文書)

プロプラノロールは、片頭痛発作の発症抑制が適応となっている

「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」(日本頭痛学会)←「実践薬学2017,p.316表4」
https://www.jhsnet.net/guideline_GL2013.html
注)「慢性疼痛診療ガイドライン2018」ではリストアップされていない。

豪州ADEC基準【C】:「「デパケン」や「ミグシス」と比べると妊娠中でも比較的安全に使える」。(児島2027,p.298)
気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者には禁忌である。(上記添付文書参照)
マクサルト(一般名:リザトリプタン)とは併用禁忌である。

プロプラノロールは、CYP2D6の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    プロプラノロール:CR(CYP2D6)0.62、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

セレクトール(一般名:セリプロロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(+)):
「β2受容体刺激による血管作用」。(今日の治療薬2020,p.613)

内因性交感神経刺激作用(ISA:Intrinsic Sympathomimetic Activity)を有する。
つまり、徐脈軽減作用がある。

ISA+薬には、心拍数を減らし過ぎないという利点があるものの、生命予後を改善する効果は認められていない。
したがって、徐脈が問題となる場合を除いて、ISA(+)薬に優位性は無い。

テノーミン(一般名:アテノロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):
「作用が強く25~50mgを投与。海外の臨床で多用。腎排泄」。(今日の治療薬2020,p.611)

  • テノーミン:錠(25mg、50mg)

テノーミンのβ1:β2=35:1である。

アテノロールは、腎排泄型薬物である

(テノーミン錠添付文書)より

吸収
約50%が消化管から吸収された(英国での成績)。
肝臓で初回通過効果を受けずに体循環に入る。

代謝
アテノロールは肝臓でほとんど代謝を受けないが、健康男子にアテノロールを経口投与した場合、グルクロン酸抱合体、アミド側鎖の水酸化体等をわずかに生成する(英国での成績)。

分布(略)

排泄
健康男子にアテノロールを経口投与した場合、尿中、糞中から投与量のそれぞれ約50%が回収されたが、その約90%は未変化体であった。

排泄:
尿中に50%が回収され、その約90%は未変化体であった。
つまり、尿中回収率50%である。

吸収:
投与された薬物の約50%が消化管から吸収される。
そして、肝臓で初回通過効果を受けずにそのまま体循環に入る。
つまり、バイオアベイラビリティ50%である。

代謝:
アテノロールは肝臓でほとんど代謝を受けない。
したがって、腎排泄型薬物であることを示唆している。

尿中未変化体排泄率
={尿中回収率50%/バイオアベイラビリティ50%}×90%
=0.9⇒腎排泄型薬物である

腎機能低下時の用法・用量(アテノロール)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回50mg、最大1日1回100mg
  • CCr(35~60mg/dL未満)
    日1回25~50mg
  • CCr(15~35mg/dL未満)
    1日1回25mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回12.5mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回25mgを週3回HD後。PDでは25mgを週3回

メインテート(一般名:ビソプロロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):
「心不全、頻脈性心房細動にも適応あり。腎排泄」。(今日の治療薬2020,p.611)

  • メインテート:錠(0.625mg、2.5mg、5mg)
  • ビソノ:テープ(2mg、4mg、8mg)

心臓の負担軽減。

適応疾患ごとに剤形が異なる

メインテートは、慢性心不全が適応となっており、そのため含量の大きく異なる製剤が用意されている。

2.5mg錠、5mg錠に効能あり

  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
  • 狭心症
  • 心室性期外収縮

0.625mg錠、2.5mg錠、5mg錠に効能あり

  • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
    虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全

2.5mg錠、5mg錠に効能あり

  • 頻脈性心房細動

慢性心不全が適応となっている(1日1回投与)

β遮断薬は、心機能抑制作用があるため慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い。
例えば、インデラル、セレクトール、テノーミンなどである。
そうした中で、メインテートにはアーチストとともに慢性心不全の適応が有る。

メインテートのβ1:β2=75:1である。
つまり、β1選択性が一番高い薬物であり、心臓に特化した薬物と言える。

β2受容体に対する作用が非常に弱いことから、「気管支喘息を悪化させたり、糖・脂質代謝に悪影響を与えたり」する副作用が少ない。
また、β2受容体における血管拡張作用を妨げない。(児島2017,p.34)

メインテートは、国内における臨床成績及び海外の承認状況に基いて、公知申請により慢性心不全の適応追加承認を取得した。
ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。

さて、心不全患者にβ遮断薬を導入する場合、心不全の増悪を防ぐため少量から投与を開始して、段階的に増量していくのが常識である。

日本におけるメインテートの初期投与量(1日1回投与)は、海外のエビデンスを参考にして、目標投与量(1回5mg)の1/8量(1回0.625mg)に設定されている。

併用注意(併用に注意すること)

添付文書上は、血糖降下剤(インスリン製剤,トルブタミド等)との併用は、併用注意(併用に注意すること)となっている。(β2遮断作用のため)

血糖降下剤(インスリン製剤,トルブタミド等):
肝臓でのグリコーゲン分解は、β2受容体遮断により抑制される。このため、β遮断剤を投与していると低血糖状態になりやすくなる。また低血糖時に分泌されるエピネフリンにより生じる低血糖症状(頻脈、振戦や発汗等)をマスクし、より重篤な低血糖症状に移行させたり、血糖上昇作用を抑制し低血糖からの回復を遅らせるおそれがある。(メインテート添付文書)

ビソプロロールの用法・用量を考える

(どんぐり2019,p.166)

血中濃度:
健康成人にビソプロロールフマル酸塩5㎎を単回経口投与した場合、3.1±0.4時間で最高血漿中濃度(23.7±1.0ng/mL)に達し、半減期は8.6±0.3 時間であった。(n=10)
反復経口投与においては、血漿中濃度は3~4日で定常状態に達した。(メインテート添付文書)

ビソプロロールは、定常状態のある薬物である。
1日1回24時間ごと投与/消失半減期8.6時間=2.79<3.0

計算上は、消失半減期8.6時間×5=43時間(1.79日)で定常状態に達する。
ただし、上記添付文書では「3~4日で定常状態に達した(反復投与)」となっている。

アーチスト(一般名:カルベジロール)

αβ遮断薬:
「α1遮断:β遮断=1:8、血管拡張作用。抗酸化作用、糖脂質代謝を悪化させない。心不全に適応あり」。(今日の治療薬2020,p.617)

  • アーチスト:錠(1.25mg、2.5mg、10mg、20mg)

末梢血管抵抗減→臓器保護。
参考)実践薬学2017,pp.61-63

適応疾患ごとに剤形及び1日投与回数が異なる

アーチストには、含量が大きく異なる製剤があり、それぞれ適応疾患及び用法が異なる。(山村2015,pp.38-39)

10mg錠、20mg錠に効能あり

  • 本態性高血圧症(軽症~中等症)
  • 腎実質性高血圧症
  • 狭心症

1.25mg錠、2.5mg錠、10mg錠に効能あり

  • 次の状態で、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者
    虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全

2.5mg錠、10mg錠、20mg錠に効能あり

  • 頻脈性心房細動

高血圧症など(1日1回投与)

カルベジロールの半減期は、投与量ごとに次のようになっており、1日1回24時間ごとの投与では定常状態にはなりにくい。

5mg投与(半減期1.95±0.39)、10mg投与(同3.60±1.82)、20mg投与(同7.72±2.2)。(カルベジロール添付文書)

なぜならば、Ritschel理論値は、最大用量の20mgの場合に24/7.72=3.1となり4を下回っているものの、5mg:24/1.95=12.3倍、10mg:24/3.60=6.7倍となっているからである。

それでも血圧はしっかりとコントロールできている。
「カルベジロールは脂溶性が高いために、血中濃度として確認できなくなっても受容体にはとどまっており、β遮断作用は持続する。その証拠に、カルベジロールのT/P比は収縮期血圧で77%、拡張期血圧で83%と、効果は確かに持続している」。(分配係数:n-オクタノール-水(pH7.1);184.2)

これには、「ベニジピン塩酸塩(コニールなど)やアゼルニジピン(カルブロック)などの説明でよく耳にする、「メンブランアプローチ」という結合様式と同じ考え方」が適用できる。

ただし米国では、高血圧症でも、次に説明する心不全と同じく1日2回投与となっている。

慢性心不全が適応となっている(1日2回投与)

β遮断薬は、心機能抑制作用があるため慢性心不全に対して禁忌とされている薬物が多い。
例えば、インデラル、セレクトール、テノーミンなどである。
そうした中で、アーチストにはメインテートとともに慢性心不全の適応が有る。

「カルベジロールは大規模臨床試験で心不全患者の死亡リスクを下げることが証明されて」おり、適応症には、“虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全”が含まれている。ただし、添付文書では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている患者、という条件が付されている。(山村2015,p.39)

さて、心不全患者にβ遮断薬を導入する場合、心不全の増悪を防ぐため少量から投与を開始して、段階的に増量していくのが常識である。

また、カルベジロール単回経口投与でのTmaxは、0.8±0.3時間(10mg投与の場合)と非常に短くなっている。
1日1回投与では、血中濃度の立ち上がりが早いため、一過性のめまいなどが生じやすく継続的に増量していくことができなくなる可能性がある。

そこで、心不全の場合には、米国と同様に1日2回投与となっている。
理由は、血中濃度の急激な上昇を防ぎ、副作用を軽減して、段階的な増量を可能にするためである。(米国の場合、高血圧症も1日2回)

なお、日本におけるカルベジロールの初期投与量(1日2回投与)は、海外のエビデンスを参考にして、目標投与量(1回10mg)の1/8量(1回1.25mg)に設定されている。

β遮断作用に加えてα遮断作用を有する

アーチストのα:β比=1:8であり、「β遮断薬でありながら「α遮断作用」も併せもっている」。(児島2017,p.35)

β遮断薬を使用していると、相対的にα受容体の刺激が高まることになる。
そうすると、末梢血管が収縮し、末梢血管抵抗が増加して血圧が上昇する。
つまり、薬の効果が弱まってしまうことがある。

α遮断作用を併せ持つアーチストは、末梢血管抵抗を減じて、治療効果を高めることができる。

ただし〈β1非選択性〉であり、気管支拡張に関わる〈β2受容体〉に対しても遮断作用を有する。
したがって、【禁忌】(次の患者には投与しないこと)として以下がある。

「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支筋を収縮させることがあるので喘息症状の誘発、悪化を起こすおそれがある。]」(アーチスト添付文書)

カルベジロールは、CYP2C9基質である

アミオダロンは、中程度のCYP2C9阻害薬であり、カルベジロールは、CYP2C9基質である。
「アミオダロンの活性代謝物であるデスエチルアミオダロンはCYP2C9を阻害し、β遮断作用の強いカルベジロールのS体の代謝を妨げてしまう」。(実践薬学2017,pp.129-131)
その結果、カルベジロールS体の代謝が阻害され、β遮断作用が強く現れる。⇒アミオダロン

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R-カルベジロール:CR(CYP2D6)0.55、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
    R,S-カルベジロール:CR(CYP2D6)0.48、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
    S-カルベジロール:CR(CYP2D6)0.43、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

アロチノロール(一般名:アロチノロール)

αβ遮断薬:
「α遮断:β遮断=1:8」。(今日の治療薬2020,p.616)

カルデナリン(一般名:ドキサゾシン)

α1遮断薬(高血圧治療薬):
「キナゾリン誘導体、α1選択性。長時間作用型で、副作用が少ない」。(今日の治療薬2020,p.618)

エブランチル(一般名:ウラピジル)

α1遮断薬(高血圧治療薬、前立腺肥大症治療薬)、神経因性膀胱に伴う排尿障害:
「α1選択性」。(今日の治療薬2020,p.618)

ケルロング(一般名:ベタキソロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):(今日の治療薬2020,p.612)

選択的β1受容体遮断薬である。

ベタキソロールの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.185-188、服薬指導例・薬歴記載例有り)

ノルアドレナリン(交感神経系の伝達物質)が心臓のβ1受容体に結合することで、心収縮力・心拍数が増加し血圧の上昇を引き起こす。
β受容体遮断薬は、心臓のβ1受容体を遮断することによって、心収縮力・心拍数を低下して降圧作用を示す。
β受容体は、心臓(β1受容体)や気管支(β2受容体)などに分布している。
β1、β2への選択性がないβ受容体遮断薬は、心臓(β1受容体)だけでなく気管支(β2受容体)にも働いて、気管支喘息を悪化させる。

ベタキソロールは、脂溶性の薬物であり、血液脳関門を通過しやすい。
中枢のセロトニン受容体を遮断する可能性がある。
自律神経系を介する中枢の反射機構に影響を与える可能性がある。

そのほかの副作用(精神神経系)
ふらふら感、頭痛、めまい、ぼんやり(0.1~5%未満)
眠気、不眠、幻覚、悪夢、蟻走感、うつ状態(0.1%未満)
(ケルロング錠添付文書)

ベタキソロールは、定常状態のある薬物である。
「腎機能低下を伴う高血圧症患者に5mg7日間反復経口投与したとき、4日目にほぼ定常状態に達した」。
「消失半減期、 12.9±4.7hr(健康成人6人)」。(ケルロング錠添付文書)

消失半減期12.9時間×5=64.5⇒約2.7日
服薬を中止しても、2~3にちは症状が続くかもしれない。

セロケン、ロプレソール(一般名:メトプロロール)

β遮断薬(β1選択性ISA(-)):
「肝代謝、心不全の予後を改善するという臨床試験あり」。(今日の治療薬2020,p.613)

メトプロロールは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R,S-メトプロロール:CR(CYP2D6)0.83、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
    R-メトプロロール:CR(CYP2D6)0.81、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
    S-メトプロロール:CR(CYP2D6)0.74、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

ミケラン(一般名:カルテオロール)

β遮断薬(β1非選択性ISA(+)):
「心拍数の低下作用弱い。【カプセル】2層顆粒含有の持続性製剤」。(今日の治療薬2020,p.615)

トランデート(一般名:ラベタロール)

αβ遮断薬:
「α遮断:β遮断=1:3、早期覚醒時の急激な血圧上昇を抑制。妊婦高血圧に使用可」。(今日の治療薬2020,p.617)

ラベタロールは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

ハイトラシン、バソメット(一般名:テラゾシン)

α遮断薬:
「キナゾリン誘導体、α1選択性」。(今日の治療薬2020,p.618)

デムサー(一般名:メチロシン)

チロシン水酸化酵素阻害薬:
「カテコールアミンの生合成を抑制して過剰分泌を抑制」。(今日の治療薬2020,p.619)

腎機能低下時の用法・用量(メチロシン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ミニプレス(一般名:プラゾシン)

排尿障害治療薬(α1遮断薬):
「α1選択性。短時間作用型。降圧薬としては特殊な場合に使用」。(今日の治療薬2020,p.1041)

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の位置付けと使い分け

高血圧治療ガイドライン2014から第一選択薬ではなくなった

高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)において、β遮断薬は第一選択薬から外された。
α遮断薬も第一選択薬にはなっていない。

以下のとおりである。

「積極的適応がない場合の高血圧に対して,最初に投与すべき降圧薬(第一選択薬)は Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬の中から選択する」。(JSH2014,p.36)

その理由として、「今日の治療薬」2019,p.585は、次のようにまとめている。

「脳・心疾患抑制作用が他薬に劣る臨床試験の成績が存在するためである」。

ただし、高血圧治療の目的は、降圧及び脳心血管系合併症の予防のみとは限らない。
β遮断薬は種々の作用を有しており、様々な積極的適応が有る。

JSH2014では、以下のような疾患を挙げている。

「交感神経活性の亢進が認められる若年者の高血圧や労作性狭心症,慢性心不全,心筋梗塞後,頻脈合併例,甲状腺機能亢進症などを含む高心拍出型症例,高レニン性高血圧,大動脈解離などに適応がある。内因性交感神経刺激作用(ISA)を有さないβ遮断薬は心筋梗塞の再発防止や心不全の予後改善効果が期待できる」。(JSH2014,p.52)

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬の作用機序

β遮断薬(αβ遮断薬を含む)やα遮断薬は、「心拍出量の低下,レニン産生の抑制,中枢での交感神経抑制作用などによって降圧する」。(高血圧治療ガイドライン2014:JSH2014,p.52)

交感神経が興奮すると、アドレナリン(副腎髄質ホルモン)が分泌されて、アドレナリン受容体に結合する。

心血管系のアドレナリン受容体には、主にα1受容体、β1受容体そしてβ2受容体の三つがある。

アドレナリン(エピネフィリン)は、カテコールアミンに分類される生体内アミンの1つである。
なお、アドレナリン受容体に作用するのはアドレナリンだけではなく、ノルアドレナリンそのほかのカテコールアミンも作用する。

「降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響」(実践薬学2017,p.309)
α1阻害薬が尿酸値に及ぼす影響は、<下降ないしは不変>である。
β遮断薬(αβ遮断薬を含む)が尿酸値に及ぼす影響は、<上昇>である。

α1受容体

α1受容体は、主に血管平滑筋に分布している。
血管を収縮させることによって末梢血管抵抗を上昇させる。

β1受容体

β1受容体は、心臓の大部分を占めるアドレナリン受容体である。
心筋収縮力や心拍数を増加させる。

β2受容体

β2受容体は、血管平滑筋や気管支平滑筋に存在している。
血管や気管支の拡張作用を有する。

α、β遮断薬の歴史(β1選択性とα遮断作用の追求)

プロプラノロール(β1非選択性である)

プロプラノロールは、世界で初めて臨床的に応用された交感神経β受容体遮断薬である。
(日本国内の発売は、1966年(昭和41)である)

プロプラノロールは、β1<非選択性>の薬物である。
つまり、β1受容体(心臓)とともにβ2受容体(気管支など)にも作用する。

そうすると、気管支喘息を悪化させたり、糖・脂質代謝に悪影響を与えたりすることになる。
また、β2受容体は血管にも存在しているので、β2受容体を遮断することで血管拡張作用が弱められることになる。

ビソプロロール(β1選択性が高い)

ビソプロロールは、β1選択性(心臓)を高めた薬物である。
β1:β2=75:1となっており、β2(気管支など)に対する影響力を弱めている。

適応症には、心不全、頻脈性心房細動がある。
そして、慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)ながら、
「気管支喘息、気管支痙れんのおそれのある患者〔気管支を収縮させ、症状を発現させるおそれがある。〕」にも使用が可能となっている。(メインテート錠添付文書)

カルベジロール(α遮断作用を併せ持つ)

β遮断薬を使用すると、相対的にα受容体の刺激を強めることになる。
そうすると、血管が収縮(末梢血管抵抗が上昇)して血圧が上がる。

カルベジロールは、β遮断薬にα遮断作用を併せ持たせた「α・β遮断薬」である。
α:β比=1:8となっており、末梢血管抵抗を軽減することで、様々な臓器保護効果を発揮する。

適応症には、ビソプロロールと同じく、心不全、頻脈性心房細動がある。
ただし、β<非>選択性のため、禁忌(次の患者には投与しないこと)として、
「気管支喘息、気管支痙攣のおそれのある患者[気管支筋を収縮させることがあるので喘息症状の誘発、悪化を起こすおそれがある。]」が挙げられている。(アーチスト錠添付文書)

内因性交感神経刺激作用(ISA)

内因性交感神経刺激作用(ISA:Intrinsic Sympathomimetic Activity)

プロプラノロールは、β1<非選択性>ISA(-)薬である。
これに対して、ISA(+)薬では、心拍数を減らし過ぎない、つまり、徐脈軽減作用がある。

ただし、様々なISA(+)薬が作られたものの、生命予後を改善する効果は認められなかった。
したがって、今日では、徐脈が問題となる場合を除いて、ISA(+)薬の優位性は無い。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(高血圧治療薬)

高齢者においても降圧目標の達成が第一目標である。降圧薬の併用療法において薬剤数の上限は無いが、服薬アドヒアランス等を考慮して薬剤数はなるべく少なくすることが推奨される。
(高血圧治療薬)

  • Ca拮抗薬(アムロジピン[ノルバスク、アムロジン]、ニフェジピン [アダラートCR]、ベニジピン[コニール]、シルニジピン[アテレック]など)、ARB(オルメサルタン[オルメテック]、テルミサルタン [ミカルディス]、アジルサルタン[アジルバ]など)、ACE阻害薬(イミダプリル[タナトリル]、エナラプリル[レニベース]、ペリンドプリル[コバシル]など)、少量のサイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)が、心血管疾患予防の観点から若年者と同様に第一選択薬であるが、高齢患者では合併症により降圧薬の選択を考慮することも重要である。
  • α遮断薬(ウラピジル[エブランチル]、ドキサゾシン[カルデナリン]など)は、起立性低血圧、転倒のリスクがあり、高齢者では可能な限り使用を控える。
  • β遮断薬(メトプロロール[セロケン]など)の使用は、心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対して考慮する。
  • Ca拮抗薬の多くは主にCYP3Aで代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤との併用に十分に注意する。
  • ACE阻害薬は、誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者には誤嚥予防も含めて有用と考えられる。
  • サイアザイド系利尿薬の使用は、骨折リスクの高い高齢者で他に優先すべき降圧薬がない場合に特に考慮する。
  • 過降圧を予防可能な血圧値の設定は一律にはできないが、低用量(1/2量)からの投与を開始する他、降圧による臓器虚血症状が出現した場合や薬物有害事象が出現した場合に降圧薬の減量や中止、変更を考慮しなければならない。
  • レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬など)、利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]、スピロノラクトン[アルダクトン]、 トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。(消炎鎮痛薬の項より引用)

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【α・β遮断薬】

【非選択的β遮断薬】

  • プロプラノロール[インデラル]、カルテオロール[ ミケラン]
  • 呼吸器疾患の悪化や喘息発作誘発
  • 気管支喘息やCOPDではβ1選択的β遮断薬に限るが、その場合でも適応自体を慎重に検討する。
  • カルベジロール[アーチスト]は、心不全合併COPD例で使用可
    (COPDの増悪の報告が少なく心不全への有用性が上回る。気管支喘息では禁忌)。

【受容体サブタイプ非選択的α1受容体遮断薬 】

  • テラゾシン[ハイトラシン、 バソメット]、プラゾシン[ミニプレス]、ウラピジル[エブランチル]、ドキサゾシン[カルデナリン]など
  • 起立性低血圧、転倒
  • 可能な限り使用を控える。
    代替薬:(高血圧)その他の降圧薬
    代替薬:(前立腺肥大症)シロドシン[ユリーフ]、タムスロシン[ハルナー ル]、ナフトピジル[フリバス]、植物製剤など

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。