ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)を比較する

2019年11月9日

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、血管内で血栓ができにくくする性質を持っている。主として心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的として使用される薬物である。

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、抗凝固薬と抗血小板薬の二つに大別され、対象となる血栓のでき方(病態)によって明確に使い分けられている。

抗凝固薬と抗血小板薬の使い分け

ワルファリンは、代表的な抗凝固薬であり、不整脈がある患者などでよく使用される。

不整脈や心不全のある患者では、血液の流れが滞って血液が固まりやすくなる。こうしてできた血栓が心臓や脳の血管を詰まらせると突然死につながる恐れがある。

そこで、血液が固まらないように抗凝固薬が使われるのである。具体的には、心房細動(不整脈の一種)による心原性脳塞栓症を防ぐ目的や、肺塞栓を予防するために深部静脈血栓症に対して用いたりする。

一方、バイアスピリンなどの抗血小板薬は、生活習慣病の患者でよく使用される。

生活習慣病の患者では、動脈硬化の進展に伴って生じたプラークが、はがれたり破れたりすることがある。そして、そこに血小板が集まり血栓を生じやすい状態になっている。そこで、血液が固まらないように抗血小板薬を使用するのである。

出血傾向(薬の効き過ぎに注意)

いつの間にか打ち身・青あざ
鼻血、歯ぐきから出血、皮下出血
血痰、血尿
下血、吐血、黒色便(タール便)・・・消化器症状
吐気、めまい、激しい頭痛・・・頭蓋内出血

古い薬であるワルファリン方が新薬(DOAC)よりも優れている点が幾つもある

ワルファリンの作用機序と納豆などの食べ合わせ(ビタミンK)

ワルファリンの作用機序は以下のとおりである。以下「」内:ワーファリン錠添付文書(エーザイ)、ワーファリン⇒商品名

「本剤は、ビタミンK作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第Ⅶ、第Ⅸ、及び第Ⅹ因子)の生合成を抑制して抗凝固効果及び抗血栓効果を発揮する」。

つまり、ワルファリンは、ビタミンK依存性凝固因子の合成過程を間接的に阻害する。また、抗血栓作用も同時に発揮する。

ワルファリンは、納豆好きな人にとっては避けなければならない薬物である。しかし、同効薬のDOACの抗凝固作用は全般的にワルファリンよりも強いとされており、通常は変薬することに何ら不都合はない。

ワルファリンと食物摂取で注意すべき点を挙げると以下のようになる。

ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えることによって抗凝固作用を発揮する。したがって、ワルファリン服用患者がビタミンKを多量に含んだ食物を摂取すると、ワルファリンの抗凝固作用が追いつかない状態となる。結果的に、ワルファリンの作用が弱められることになる。

実際の食生活での注意点としては、「納豆、クロレラ食品及び青汁は本剤の抗凝固作用を減弱させるので避けることが望ましい」。この中で、納豆はビタミンKの含有量が非常に多く、また腸内でもビタミンKを産生する働きがあるので、特に注意が必要である。またモロヘイヤも避けた方がよい。

黄緑色野菜は、少量でも継続摂取しなければならない。具体的な目安として、1日に小鉢一杯程度を心掛ける。

1)ワルファリンの消失半減期は非常に長い⇒飲み忘れの影響が少ない

ワルファリンの消失半減期=55~133時間
DOAC4種の消失半減期=約5~14時間

ワルファリンの消失半減期(t1/2)は、1回投与量によって大きなばらつきがあるものの、おおまかには約100時間としてよいであろう。ワルファリンは消失半減期の長い薬物である。

そこで、ワルファリンを規則的に継続服用して血中濃度が安定してきたならば、たまに飲み忘れがあったり、服用時間がずれ込んだとしても血中濃度に大きな変化が出ることはない。つまり、ワルファリンは飲み続けるのに精神的な負担が少ない薬物である。

これに対してDOACの場合には、消失半減期(t1/2)が短いので、少しでも飲み忘れがあるとすぐに血中濃度が下がってしまい、効果が減弱してしまう恐れがある。そして、DOACの方が服薬中止例が多いようである。

2)ワルファリン投与量の目安(PT-INR)⇒効果を客観的に評価しやすい

ワルファリンは、長年にわたって数多く臨床使用されてきており、血液凝固能の数値に基づく標準投与法が既に確立している。したがって、医師の裁量で患者の病態に応じてきめ細かく凝固能を調整することができる。

これに対してDOACは、ワルファリンのような細かい調整をすることなく服用する薬物である。というよりも、モニタリングの基準がないので投与量を細かく調整することができない。

ワルファリンの用法・用量:「本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である」。

現在では、ワルファリン投与量は、PT-INRを目安に決定するのが標準投与法となっている。PT-INRは、PT(プロトロンビン時間)の検査を行うと、換算式に基づいて自動的に計算される仕組みになっている。

PT(prothrombin time):プロトロンビン時間
PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):プロトロンビン時間 国際標準比

PT-INR=1.0・・・・・・・・・標準(基準値0.9~1.1)
PT-INR=1.5~2.5に保つ・・・肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症の予防の場合
PT-INR=2.0~3.0に保つ・・・人工弁置換患者の場合
PT-INR>4.0・・・・・・・・・出血の危険性が高まる

3)ワルファリンは薬価が安い

古い薬であり、薬価はDOACの1/10以下である。コストパフォーマンスに勝り、年金生活者などの懐には優しい。

4)ワルファリンのそのほかの長所

解毒剤がある(ビタミンK)、INRが正常化するには12時間程度かかる
一包化が可能(錠剤)
微調整が可能(顆粒)

直接経口抗凝固薬(DOAC)4種類

直接経口抗凝固薬DOAC(direct oral anticoagulant)は、いずれも単一の凝固因子(トロンビンあるいはXa)の「活性部位へ直接かつ選択的に結合して活性を阻害する」。今日の治療薬2019,p.564

非弁膜症性心房細動による脳卒中の予防に用いる
予防効果は、ワルファリンと同等もしくは上回る
脳出血の頻度は、ワルファリンと比較して少ない
INRのモニターは不要(定期的な血液検査不要)
納豆などの食事制限無し

プラザキサ(一般名:ダビガトラン)

トロンビン直接阻害薬(第Ⅱ因子)、1回150㎎1日2回経口投与
腎排泄型:中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者
[ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがある]減量
酒石酸製のカプセル剤:胃腸障害、胸やけ、ディスペプシアなど
カプセル剤:一包化及び粉砕不可

イグザレルト(一般名:リバーロキサバン)

直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1日1回15mg食後投与
腎排泄型:腎障害のある患者に対しては、腎機能の程度(クレアチニンクリアランス)に応じて減量する
一包化、粉砕可

エリキュース(一般名:アピキサバン)

直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回5mg1日2回経口投与
減量の基準が明確:80歳以上、血清クレアチニン1.5mg/dL以上、体重60kg未満
エリキュースの安全性・適正使用情報
https://www.eliquis.jp/eliquis/product/direction/page01

リクシアナ(一般名:エドキサバン)

直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回30mg1日1回経口投与、体重60kg超では1回60mgで腎機能・併用薬に応じて1回30mgに減量
一番新しい薬剤で薬価が多少高めである。

ワルファリンの消失半減期と他剤への切り替え時の注意点

プラザキサ(抗凝固薬の一種)の添付文書には、(重要な基本的注意の一つとして)「ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)から本剤へ切り替える際には、ビタミンK拮抗薬を投与中止し、PT-INRが2.0未満になれば投与可能である」と書かれている。

ワルファリンが体内から消失するまでどのくらいかかるだろうか

一般的に、薬物が体内から消失するまでの時間は、消失半減期(t1/2)の5倍を目安に考えられている。そして、そのときの薬物残存量は、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/32=3.13%となる。

ワルファリンの消失半減期(t1/2)は、(ワルファリンカリウムの単回経口投与時の薬物動態パラメータ)から「投与量0.5㎎⇒133±42(hr)、1.0㎎⇒95±27、5.0㎎⇒55±12」となっている。

1回投与量によって消失半減期(t1/2)に大きなばらつきがあるものの、消失半減期を100時間として、ワルファリンが体内から消失するまでの時間を推測すると、消失半減期の5倍で500時間(約21日)かかることになる。

消失半減期を経過すれば、PT-INR<2.0まで低下するだろうか

ワルファリンを服用中の患者のPT-INRが、何らかの原因で例えば3.4まで上昇して、ワルファリンからプラザキサ(抗凝固薬の一種)に変薬を考えた場合、どのようにすべきであろうか。

プラザキサの添付文書には、PT-INRが2.0未満になれば、ワルファリンからプラザキサへの変薬可としている(前述)。

そこで考えられる手段としては、PT-INRが3.4から2.0まで低下するまでの間、まずはワルファリンの投与を中止することである。投与中止期間の目安として、消失半減期(t1/2)=100時間(約4日)が考えられる。

丸4日休薬後、5日目にもう一度PTを測定してPT-INR<2.0であれば、プラザキサに変薬して投与を再開してもよいという判断になる。

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Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)