薬物動態学

ワルファリン(抗凝固薬)

投稿日:2019年7月2日 更新日:

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、血管内で血栓ができにくくする性質を持っている。主として心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的として使用される薬物である。

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、抗凝固薬と抗血小板薬の二つに大別され、対象となる血栓のでき方(病態)によって明確に使い分けられている。

抗凝固薬と抗血小板薬の使い分け

ワルファリンは、代表的な抗凝固薬であり、不整脈がある患者などでよく使用される。

不整脈や心不全のある患者では、血液の流れが滞って血液が固まりやすくなる。こうしてできた血栓が心臓や脳の血管を詰まらせると突然死につながる恐れがある。

そこで、血液が固まらないように抗凝固薬が使われるのである。具体的には、心房細動(不整脈の一種)による心原性脳塞栓症を防ぐ目的や、肺塞栓を予防するために深部静脈血栓症に対して用いたりする。

一方、バイアスピリンなどの抗血小板薬は、生活習慣病の患者でよく使用される。

これらの患者では、動脈硬化の進展に伴って生じたプラークがはがれたり破れたりすることがある。そして、そこに血小板が集まり血栓を生じやすい状態になっている。そこで、血液が固まらないように抗血小板薬を使用するのである。

ワルファリンの作用機序と納豆などの食べ合わせ

ワルファリンの作用機序は次のとおりである。以下「」内:ワーファリン錠添付文書(エーザイ)、ワーファリン⇒商品名

「本剤は、ビタミンK作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第Ⅶ、第Ⅸ、及び第Ⅹ因子)の生合成を抑制して抗凝固効果及び抗血栓効果を発揮する」。

つまり、ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えることによって抗凝固作用を発揮する。したがって、ワルファリン服用患者がビタミンKを多量に含んだ食物を摂取すると、ワルファリンの抗凝固作用が追いつかない状態となる。結果的に、ワルファリンの作用が弱められることになる。

実際の食生活での注意点としては、「納豆、クロレラ食品及び青汁は本剤の抗凝固作用を減弱させるので避けることが望ましい」。この中で、納豆はビタミンKの含有量が非常に多く、また腸内でもビタミンKを産生する働きがあるので、特に注意が必要である。またモロヘイヤも避けた方がよい。

黄緑色野菜は、少量でも継続摂取しなければならない。具体的な目安として、1日に小鉢一杯程度を心掛ける。

ワルファリン投与量の目安

用法・用量:「本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である」。

現在では、ワルファリン投与量は、PT-INRを目安に決定するのが標準投与法となっている。PT-INRは、PT(プロトロンビン時間)の検査を行うと、換算式に基づいて自動的に計算される仕組みになっている。

PT(prothrombin time):プロトロンビン時間
PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):プロトロンビン時間 国際標準比

PT-INR=1.0・・・・・・・・・標準(基準値0.9~1.1)
PT-INR=1.5~2.5に保つ・・・肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症の予防の場合
PT-INR=2.0~3.0に保つ・・・人工弁置換患者の場合
PT-INR>4.0・・・・・・・・・出血の危険性が高まる

PT-INRが上昇して(プロトロンビン時間が延長して)出血しやすくなると、鼻血が出やすくなったり、気が付かないうちに内出血をしていたりすることが多くなる。

ワルファリンの消失半減期と他剤からの切り替え時の注意点

プラザキサ(抗凝固薬の一種)の添付文書には、(重要な基本的注意の一つとして)「ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)から本剤へ切り替える際には、ビタミンK拮抗薬を投与中止し、PT-INRが2.0未満になれば投与可能である」と書かれている。

ワルファリンが体内から消失するまでどのくらいかかるだろうか

一般的に、薬物が体内から消失するまでの時間は、消失半減期(t1/2)の5倍を目安に考えられている。そして、そのときの薬物残存量は、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/32=3.13%となる。

ワルファリンの消失半減期(t1/2)は、(ワルファリンカリウムの単回経口投与時の薬物動態パラメータ)から「投与量0.5㎎⇒133±42(hr)、1.0㎎⇒95±27、5.0㎎⇒55±12」となっている。

1回投与量によって消失半減期(t1/2)に大きなばらつきがあるものの、消失半減期を100時間として、ワルファリンが体内から消失するまでの時間を推測すると、消失半減期の5倍で500時間(約21日)かかることになる。

消失半減期を経過すれば、PT-INR<2.0まで低下するだろうか

ワルファリンを服用中の患者のPT-INRが、何らかの原因で例えば3.4まで上昇して、ワルファリンからプラザキサ(抗凝固薬の一種)に変薬を考えた場合、どのようにすべきであろうか。

プラザキサの添付文書には、PT-INRが2.0未満になれば、ワルファリンからプラザキサへの変薬可としている(前述)。

そこで考えられる手段としては、PT-INRが3.4から2.0まで低下するまでの間、まずはワルファリンの投与を中止することである。投与中止期間の目安として、消失半減期(t1/2)=100時間(約4日)が考えられる。

丸4日休薬後、5日目にもう一度PTを測定してPT-INR<2.0であれば、プラザキサに変薬して投与を再開してもよいという判断になる。

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Web管理人

山本明正(やまもと・あきまさ)

1970年3月(昭和45)薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)製薬メーカー入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2019年5月(令和1)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)

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