ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)を比較する
心房細動に対する抗不整脈薬の実際
⇒「抗不整脈薬(Vaughan Williams分類からSicilian Gambitへ)」
⇒「β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬など」
ビソプロロール(メインテート)などは、上記の抗不整脈薬のページではなく、β遮断薬のページにまとめている。
医薬品各種(抗凝固薬)
抗凝固薬と抗血小板薬の使い分け
抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、血管内で血栓ができにくくする性質を持っている。
主として心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的として使用される薬物である。
抗血栓薬は、抗凝固薬と抗血小板薬の二つに大別され、対象となる血栓のでき方(病態)によって明確に使い分けられている。
ワルファリンは、代表的な抗凝固薬であり、不整脈がある患者などでよく使用される。
不整脈や心不全のある患者では、特に左心房で血液の流れが滞って血液が固まりやすくなる。
こうしてできた血栓が心臓や脳の血管を詰まらせると突然死につながる恐れがある。
そこで、血液が固まらないようにするために抗凝固薬が使われる。
具体的には、心房細動(不整脈の一種)による心原性脳塞栓症を防ぐ目的や、肺塞栓を予防するために深部静脈血栓症に対して用いたりする。
一方、バイアスピリンなどの抗血小板薬は、生活習慣病の患者でよく使用される。
生活習慣病の患者では、動脈硬化の進展に伴って生じたプラークが、はがれたり破れたりすることがある。
そして、そこに血小板が集まり血栓を生じやすい状態になっている。
そこで、血液が固まらないようにするために抗血小板薬が使われている。
出血傾向(薬の効き過ぎに注意)
- いつの間にか打ち身・青あざ
- 鼻血、歯ぐきから出血、皮下出血
- 血痰、血尿
- 下血、吐血、黒色便(タール便)・・・消化器症状
- 吐気、めまい、激しい頭痛・・・頭蓋内出血
ワーファリン(一般名:ワルファリン)
クマリン系薬:
「ビタミンK作用に拮抗し、肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制」。(今日の治療薬2021,p.598)
- ワーファリン:錠(0.5mg、1mg、5mg)
- ワーファリン:顆粒(0.2%)
【効能・効果】
血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防【用法・用量】
本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である。(中略)
成人における初回投与量は、ワルファリンカリウムとして、通常1~5mg1日1回である。(ワーファリン添付文書)
ワルファリンとDOACのどちらを用いるべきか
- ワルファリンは、CYP2C9基質薬である。
- DOAC(直接経口抗凝固薬)は、CYP3A(あるいはP糖蛋白)基質薬である。
- DOACは、至適濃度域を維持するため、薬剤ごとに1日1回または2回投与と定められている。
- DOACには、減量基準がある。
ワルファリンは、弁膜症性心房細動の患者にも適応となる。
DOAC(直接経口抗凝固薬)は、弁膜症性心房細動や重度の腎機能障害のある症例では適応とならない。
非弁膜症性心房細動では、DOACの方が、ワルファリンと比べて脳梗塞予防効果は同等かそれ以上で、かつ副作用が少ないとして第一選択薬とされている。
『不整脈薬物治療ガイドライン2020』p.10,44,51
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
- 「弁膜症性」とは、リウマチ性僧帽弁疾患(おもに狭窄症)、機械弁置換術後をさす。p.44
- 一般的には、僧帽弁狭窄症および機械弁置換術後以外は、すべて非弁膜症性心房細動として差し支えない。p.44
- 「生体弁を用いた人工弁は「非弁膜症」」と定義される。p.10
- ただし、ワルファリンは重度の肝障害時だけでなく、重度の腎障害がある場合にも、薬剤排泄の遅延による出血リスクの増大が懸念され、添付文書上はワルファリン投与が原則禁忌となっている点に注意を要する。pp.51-52
- 正常腎機能~中等度腎機能障害(CCr ≧ 30mL/ 分)の場合、非弁膜症性心房細動の脳梗塞予防としてワルファリンとDOACのどちらを選択するかについては、投与の簡便性、効果の安定性、食事や他の薬剤との相互作用の少なさ、頭蓋内出血の少なさなどから、新規開始の第1選択としてはDOACを推奨する意見が欧米のガイドラインにはみられる。
わが国においてもDOACは、ワルファリンと同等あるいはそれ以上の有効性や安全性を示す報告が多い。p.51
周術期(抜歯、消化管内視鏡、外科手術など)の抗凝固療法
(不整脈薬物治療ガイドライン2020,pp.57-59)
抜歯時にワルファリンを休薬すると約1%に重篤な脳梗塞を発症し、死亡例も報告されていることから、ワルファリンを継続したまま抜歯することが望ましい。(中略)
DOAC療法中もワルファリンに準じて継続下での抜歯が望ましいと考えられる。p.57心房細動患者において内視鏡処置時にワルファリンを休薬した場合,約1%で脳卒中を発症したことが報告されている。(中略)
出血リスクにより①通常消化器内視鏡(観察など)、②内視鏡的粘膜生検(超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く)、③出血低リスクの消化器内視鏡、④出血高リスクの消化器内視鏡の4つに分類している。
①はワルファリン・DOACともに休薬不要とされる(以下略)。pp.57-59
ワルファリンは、CYP2C9の基質薬である(影響を強く受けやすい)
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
- 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
S-ワルファリン:CR(CYP2C9)0.99、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
ワルファリンは、ラセミ体(光学異性体の等量混合物)として存在している
- S-ワルファリン(R体の約5倍の抗凝固能)
ほぼCYP2C9のみで代謝される - R-ワルファリン
CYP3A、CYP1A2など複数の酵素で代謝される
両者の抗凝固能は、S体:R体=約5:1であることから、ワルファリンの臨床を考える場合には、S-ワルファリンにおけるCYP2C9の活性変動による薬物相互作用が問題となる。(PISCS2021,p.146)
薬物相互マネジメント(PISCS)―CYP2C9阻害薬―
ワルファリンは、CYP2C9基質薬である。
CYP2C9阻害薬との併用によって、ワルファリンの代謝は抑制される。
その結果、ワルファリンの抗凝固作用は増強される。
(プロトロンビン時間(PT)延長→出血傾向)
- フルオロウラシル系抗がん薬(代謝拮抗薬:ピリミジン代謝拮抗薬)は、ワルファリンの作用を増強させる。(明確な機序は不明、PISCS,p.148)併用注意
- 経口アゾール系抗真菌薬(各種CYP阻害薬)の中で、「ミコナゾールは特にCYP2C9の阻害作用が強い薬剤です」。(PISCS2021,p.150)併用禁忌
- ワルファリン服用患者にアミオダロン(抗不整脈薬)を併用開始後、数日でINRの延長がみられ、重大な出血が生じることがある。(PISCS2021,p.150)併用注意
- 高尿酸血症治療薬(尿酸排泄促進薬)であるブコロームおよびベンズブロマロンはCYP2C9阻害作用を有し、ワルファリンの抗凝固作用を増強する。(PISCS2021,p.153)併用注意
- メトロニダゾール(抗寄生虫薬)の代謝酵素への影響は明らかでないが、ワルファリンとの併用による重篤な相互作用の症例報告がある。(PISCS2021,p.154)併用注意
薬物相互マネジメント(PISCS)―CYP2C9誘導薬―
ワルファリンは、CYP2C9基質薬である。
CYP2C9誘導薬との併用によって、ワルファリンの代謝が促進される。
その結果、ワルファリンの抗凝固作用は減弱される。
- リファンピシン(抗結核薬)は、強力なCYP3A4誘導薬であると共に、CYP2C9の強力な誘導薬でもある。
- 抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェノバルビタール)は、CYP2C9の誘導薬である。
- そのほか(アプレピタント(制吐薬)、ボセンタン(肺高血圧症治療薬)、エンザルタミド(抗悪性腫瘍薬))など、CYP2C9誘導薬がある。
いずれも、ワルファリンの抗凝固作用を減弱する作用を有する。(PISCS2021,pp.154-155)
薬物相互マネジメント(PISCS)―蛋白結合置換による―
- 抗てんかん薬(フェニトイン)とワルファリンとの併用開始時は、むしろ蛋白結合置換によると推察されるワルファリンの抗凝固作用増強の報告がある。(PISCS2021,p.155)
参考:「ワルファリンは光学異性体であるSワルファリン(薬理活性が高い)とR-ワルファリンが当量の割合で含有されている。Sワルファリンは主に肝臓細胞のチトクロームP450 (CYP)、特にCYP2C9による代謝により水酸化化合物となり代謝される」。(日本血栓止血学会・用語集/ワルファリン)
腎機能低下時の用法・用量(ワルファリン)
肝消失型薬物である。
- 「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(2%以下)、ESKDでのクリアランス(-50%)、ESKDの用量(禁忌)
「ワルファリンも重篤な腎障害のある患者には禁忌になっている(実際には使われているが・・・)。ワルファリンによる大出血の頻度が腎機能低下に伴って増加することも示唆されている(特にCCr<30mL/分)。そして注目すべきは、腎機能が低下してくると、少ない維持量でコントロールできるようになるという点。つまり、効きが良くなっているわけだ」。(実践薬学2017,p.188-189)
⇒参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)
ただし、以下には収載されていない?
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り。
プラザキサ(一般名:ダビガトラン)
DOAC(経口トロンビン直接阻害薬):
「体内でエステラーゼによって活性代謝物に変換されるプロドラッグ」。(今日の治療薬2021,p.597)
- プラザキサ:カプセル(75mg、110mg)
【効能・効果】
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制【用法・用量】
通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150mg(75mgカプセルを2カプセル)を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。(プラザキサ添付文書)
- 【ダビガトラン】トロンビン直接阻害薬(第Ⅱ因子)、1回150mgを1日2回経口投与
- ダビガトランは、腎排泄型の超ハイリスク薬である
(CCr50mL/分以下減量、30mL/分未満で禁忌、他剤ではCCr15mL/分未満で禁忌) - 減量基準(併用薬を除く)、1回110mgを1日2回経口投与
- 強力なP糖蛋白阻害薬(イトラコナゾール)、併用禁忌、(PISCS2021,p.161,162)
(クラリスロマイシン影響無し、理由不明) - P糖蛋白阻害薬(ベラパミル、アミオダロン、キニジン、タクロリムス、シクロスポリン、リトナビル、サキナビルなど)、併用注意→減量を考慮する、(PISCS2021,p.162,pp.161-165)
(ベラパミル:併用開始から3日間はベラパミル塩酸塩服用の2時間以上前に本剤を服用させること) - P糖蛋白誘導薬(リファンピシン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ含有食品など)、併用注意
(AUC及びCmaxが低下する)、(PISCS2021,p.162,165)
トロンビン直接阻害薬(第Ⅱ因子)、1回150mg、1日2回経口投与
酒石酸製のカプセル剤:胃腸障害、胸やけ、ディスペプシアなど
カプセル剤:一包化及び粉砕不可
生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)は約6.5%
腎排泄の寄与率:全身クリアランスの約80%(腎排泄型)。
P糖蛋白が関与する:経口クリアランスへの寄与率約60%。
(プロドラッグのダビガトランエテキシラートはP糖蛋白の基質である)
減量基準(併用薬を除く)、1回110mgを1日2回
- 中等度の腎障害(CCr30~50mL/min)のある患者
- P糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者
- 70歳以上の患者
- 消化管出血の既往を有する患者
DOAC相互の位置付け(ダビガトラン)
ダビガトランは、1日2回投与である。
1日1回投与時よりも血中濃度ピーク値とトラフ値の振れ幅を小さくして、薬物動態学的な安定性を得ているものと考えられる。
ダビガトランの禁忌基準は、CCr30mL/分未満となっている。
そのほかの直接経口抗凝固薬(DOAC)の禁忌基準(いずれもCCr15mL/分未満)よりも一段と厳しくなっている。
ダビガトランは、腎排泄型の超ハイリスク薬である
ダビガトランは、腎排泄型の超ハイリスク薬である。
平成23年8月12日(2011年)、発売後5か月で安全性速報(ブルーレター)が出された。
その背景は以下のとおりである。
「本剤の発売の2011年3月14日から2011年8月11日までの間に、重篤な出血性の副作用が81例報告されています。そのうち、専門家の評価により、本剤との因果関係が否定できないとされる死亡例が5例報告されています(発売以降の推定使用患者数約6万4千人)」。(実践薬学2017,p.172では死亡15例としている)
【減量】中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者
[ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがある]
【禁忌】透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者
[本剤は主に腎臓を介して排泄されるため、血中濃度が上昇し出血の危険性が増大するおそれがある]
副作用機序別分類(ダビガトラン)
「活性代謝物であるダビガトランは選択的かつ可逆的にトロンビンの活性部位に結合し、フィブリノゲンからフィブリンに変換するトロンビンの触媒反応を阻害する」。(プラザキサ添付文書)
血栓のもととなるフィブリンの産生を抑えることで、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ。
したがって、薬理作用が過剰に発現すると、出血が起こりやすくなる。
(どんぐり2019,pp.118-125)
- 薬理作用による副作用:
出血(消化管出血、頭蓋内出血など)
(鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、血便など) - 薬物過敏症による副作用:
間質性肺炎(息切れ、空咳、発熱など)
アナフィラキシー
急性肝不全、肝機能障害、黄疸 - そのほかの副作用:
鼻出血、皮下出血、血尿(薬理作用による)
そのほか、出血以外に胃腸障害の頻度が高い。
(消化不良、胃食道炎、悪心、腹部不快感など)
- 消化管出血(重大な副作用)に伴う症状
- 酒石酸(添加物)による酸性化で吸収率を高めている
- カプセルが大きく食道に付着する可能性あり
服薬指導(ダビガトラン)
この薬は、腎臓の機能に合わせて飲む量を調整する必要があります。
誰でも薬が体に合わないことがあります。
薬の飲み始めでは、急な発熱や、湿疹、空咳などに注意してください。
薬が効きすぎて起こる副作用として、出血しやすくなります。
鼻出血、歯肉出血やあざなどの症状が出たらすぐにご連絡ください。
この薬は、カプセルが大きいので飲みにくいかもしれません。
ただし、カプセルは開けて飲まないでください。
薬が効きすぎて副作用が出やすくなってしまいます。
カプセルが大きくて喉に引っかかると、食道に炎症の起きる可能性があります。
コップ1杯程度の多めの水で服用してください。
腎機能低下時の用法・用量(ダビガトラン)
「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
- CCr(50mg/dL以上)、常用量
1回150mgを1日2回。ただし、経口P-糖蛋白阻害薬(ベラパミル、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、イトラコナゾール、シクロスポリン、キニジン、リトナビル、ネルフィナビル、プロパフェノン)併用患者、70歳以上の患者、消化管出血の既往のある患者では1回110mgの1日2回投与を考慮 - CCr(30~50mg/dL未満)
1回110mgを1日2回、ただし経口P-糖蛋白阻害薬併用患者には投与を避ける
ただし、Giusti-Hayton法による計算では1日220mgの投与量自体が過量投与である可能性あり - CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
禁忌 (腎排泄型薬物であり出血の危険性が増大する)
ダビガトランの用法・用量を考える
(どんぐり2019,pp.118-125)
69歳男性、体重63kg
血清クレアチニン1.3lmg/dL
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセル75mg
1回2カプセル、1日2回朝夕食後、14日分
Cockcroft&Gaultの式より、
CCr={(140-69)/(72×(1.3+0.2)}×63
=(71/108)×63
=41.42⇒41.4mL/min
尿中未変化体排泄率(fu)=0.85
補正係数(G)=1-fu×(1-(対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr))
=1-0.85×(1-41.4/100)
=1-0.4981
=0.5019⇒50%
投与量=300mg/日×0.5⇒150mg/日
ダビガトランは、P糖蛋白(P-gp)の基質である
「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune
「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬。p.99
主に小腸P-gpに起因する。腎P-gpも関与する。
プラザキサのバイオアベイラビリティは約6.5%(健康成人男性)であり、P糖蛋白(P-gp)阻害剤を併用することによってバイオアベイラビリティは15%上昇した。(参考:プラザキサ・インタビューフォーム)
ダビガトランのようにバイオアベイラビリティ(BA)の小さい薬物は、吸収部位である小腸におけるP-gp阻害の影響を大きく受ける。
また、ダビガトランは腎排泄型薬剤であり、イトラコナゾール(CYP3A4阻害薬、P-gp阻害薬)は胆汁及び腎より排泄される。
以上から、CYP3A4阻害作用よりもP-gp阻害作用の方が大きいと考えられる。
イグザレルト(一般名:リバーロキサバン)
DOAC(経口直接Xa阻害薬):
「日本人用量を設定して治験を実施」。(今日の治療薬2021,p.596)
- イグザレルト:錠(10mg、15mg)
- イグザレルト:OD錠(10mg、15mg)
- イグザレルト:細粒分包(10mg/包、15mg/包)
【効能・効果】
成人
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
小児
○静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制【用法・用量】
〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制〉
通常、成人にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する。なお、腎障害のある患者に対し
ては、腎機能の程度に応じて10mg1日1回に減量する。
〈静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制〉
成人
通常、成人には深部静脈血栓症又は肺血栓塞栓症発症後の初期3週間はリバーロキサバンとして15mgを1日2
回食後に経口投与し、その後は15mgを1日1回食後に経口投与する。
小児
通常、体重30kg以上の小児にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する。(イグザレルト添付文書)
- 【リバーロキサバン】直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子)、1回15mgを1日1回食後投与
- リバーロキサバンは、腎排泄型(中間型薬物)である
- 減量基準(併用薬を除く)、1回10mgを1日1回経口投与
- 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用禁忌、(PISCS2021,p.162,pp.165-166)
(HIVプロテアーゼ阻害剤、コビシスタットを含有する製剤、アゾール系抗真菌剤(フルコナゾールを除く)) - 中程度のCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用注意(PISCS2021,p.162,pp.166-167)
(フルコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシンなど→減量を考慮する、
なお、エリスロマイシンは腎障害時には、AUCがさらに増加するので注意) - 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)誘導薬(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ含有食品など)、併用注意(AUC及びCmaxが低下する)、(PISCS2021,p.162,167)
直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回15mg、1日1回食後投与
腎排泄型(中間型薬物):
腎障害のある患者に対しては、腎機能の程度(クレアチニンクリアランス)に応じて減量する
一包化、粉砕可
生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)はほぼ100%である。
(空腹時20mg投与時66%、空腹時は溶解性が悪いためとのこと、 メーカーの説明)
肝臓のCYP3A4で代謝されて腎排泄される。
腎排泄の寄与率:経口クリアランスの約1/3
肝代謝の寄与率:経口クリアランスの約2/3
尿中未変化体排泄率(fu):約42%(静注時)
「本剤を静脈内投与した際、全身クリアランスは約10L/hであり、投与量の42%が未変化体のまま腎排泄された。健康成人男子4例に[14C]リバーロキサバン10mgを単回経口投与した際、投与量の約2/3は不活性代謝物として尿中及び糞中に排泄され、残りの約1/3が未変化体のまま腎排泄された(外国人データ)」。(リバーロキサバン添付文書)
減量基準(併用薬を除く)、1回10mgを1日1回
- CCr30~49mL/minの患者⇒10mgを1日1回投与する。
- CCr15~29mL/minの患者⇒本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は、10mgを1日1回投与する。
DOAC相互の位置付け(リバーロキサバン)
リバーロキサバンは、1日1回投与であり、Xa阻害活性のピーク値とトラフ値の振れ幅が、アピキサバン1日2回投与時と比べて大きくなっている。⇒アピキサバン参照
リバーロキサバンの用法・用量の設定試験の結果は以下のとおりである。
- 1日1回投与と1日2回投与で効果に差はない。
- 1日2回投与で出血の副作用が増加した。
(幾つかの大規模臨床試験で、1日1回投与の有効性と安全性が実証されている)
リバーロキサバンの血中消失半減期は、約10時間程度(5~13時間)である。
1日1回投与としたならば、次回投与時には血中の薬物濃度は1/4弱まで減少していると考えられる。
それでも、リバーロキサバンが抗凝固作用を発揮するのは、リバーロキサバン投与によって生理的凝固阻止因子と線溶系が温存されるため、とする考え方が示されている。(実践薬学2017,pp.236-237)
リバーロキサバンの用法・用量を考える
(どんぐり2019,pp.127,248)
70歳男性、体重60kg、血清クレアチニン1.2mg/dL、心房細動による脳卒中予防のため処方。
イグザレルト錠15mg、1回1錠、1日1回朝食後、30日分
Cockcroft&Gaultの式から、
CCr={(140-70)/(72×(1.2+0.2))}×60
=41.7mg/dL
用法及び用量に関連する注意〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制〉
7.1 クレアチニンクリアランス30~49mL/minの患者には、10mgを1日1回投与する。
7.2 クレアチニンクリアランス15~29mL/minの患者には、本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は、10mgを1日1回投与する。(イグザレルト添付文書)
上記添付文書の記載に従い、イグザレルト10mg錠を1日1回投与に変更する。
高齢者や腎機能低下患者では、血中濃度が上昇することで薬理作用による副作用が起こりやすくなるため減量する。
また、出血などに注意する。
腎機能低下時の用法・用量(リバーロキサバン)
- 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
- CCr(50mg/dL以上)、常用量
1)非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制:1日1回15mg
2)静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制:発症後の初期3週間は1回15mgを1日2回、その後1日1回15mg - CCr(30~60mg/dL未満)
1)1日1回10mg - CCr(15~30mg/dL未満)
1)適用について慎重に判断して1日1回10mg
2)禁忌 (使用経験がない) - CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
1)2)禁忌 (使用経験がない)
リバーロキサバンは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
- 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
- 「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune
- 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬
併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬(リスト抜け)
イトラコナゾール(CYP3A4阻害薬、P-gp阻害薬)と併用すると、CYP3A4阻害作用を受ける。
小腸のP-gp(及び小腸のCYP3A4)の関与は少なく、腎のP-gpの関与はあると考えられる。
(主にCYP3A4阻害に起因する。腎P-gpも関与する)
リバーロキサバンは、P糖蛋白(P-gp)基質である
- 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
エリキュース(一般名:アピキサバン)
DOAC(経口直接Xa阻害薬):
「腎排泄率が27%と少ない」。(今日の治療薬2021,p.597)
- エリキュース:錠(2.5mg、5mg)
【効能・効果】
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制【用法・用量】
<非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制>
通常、成人にはアピキサバンとして1回5mgを1日2回経口投与する。
なお、年齢、体重、腎機能に応じて、アピキサバンとして1回2.5mg 1日2回投与へ減量する。
<静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制>
通常、成人にはアピキサバンとして1回10mgを1日2回、7日間経口投与した後、1回5mgを1日2回経口投与する。(エリキュース添付文書)
- 【アピキサバン】直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子)、1回5mg、1日2回経口投与
- 減量基準(併用薬を除く)、1回2.5mgを1日2回経口投与
- 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用注意、(PISCS2021,p.163,pp.167-168)
(アゾール系抗真菌剤(フルコナゾールを除く)、HIVプロテアーゼ阻害剤→減量を考慮する) - 中程度のCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用注意、(PISCS2021,p.162,pp.166-167)
(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、フルコナゾール、ナプロキセン、ジルチアゼム) - 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)誘導薬(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ含有食品など)、併用注意(AUC及びCmaxが低下する)、(PISCS2021,p.163,168)
直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回5mg、1日2回経口投与
生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)は、約50%である。
腎排泄の寄与率:全身クリアランスの約27%
CYP3Aが関与する:経口クリアランスへの寄与率約50%
(そのほかP糖蛋白)
減量基準(併用薬を除く)、1回2.5mgを1日2回
次の基準の2つ以上に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、1回2.5mg 1日2回経口投与する。
- 80歳以上(年齢)
- 体重60kg以下(体重)
- 血清クレアチニン1.5mg/dL以上(腎機能)
エリキュースの安全性・適正使用情報
https://www.eliquis.jp/eliquis/product/direction/page01
DOAC相互の位置づけ(アピキサバン)
アピキサバンは、1日2回投与であり、Xa阻害活性のピーク値とトラフ値の振れ幅が小さくなっている。(実践薬学2017,p.232「リバーロキサバンとアピキサバンのXa阻害活性の比較」)
リバーロキサバン(1日1回投与)と比較した場合、ピーク値は約60%低下しており、トラフ値は約40%上昇している。つまり、アピキサバン(1日2回投与)は、薬物動態学的には安定していると言えそうである。
アピキサバンもワルファリン同様、腎機能が低下するほど出血リスクが高まる。
これは、抗凝固薬全般にみられる傾向である。
ただし、アピキサバンでは、ワルファリンと比べて、腎機能低下に伴う大出血発現率の上昇幅が小さい。
裏を返せば、「アピキサバンは腎機能が低下している患者ほど、ワルファリンと比較した相対的な安全性が高まる」ことを意味する。(実践薬学2017,p.242「ワルファリンとアピキサバンの大出血発現率とeGFRの関係」)
アピキサバンには、そのほかのDOACにはない腸管からの排泄経路がある。
この排泄経路は、「腎機能や肝機能には影響されない」ので、アピキサバンでは、腎機能低下例や肝機能低下例における薬物動態の変化が緩和される可能性がある。(実践薬学2017,pp.240-243「アピキサバンの吸収・代謝・排泄経路」)
実際にアピキサバンを投与されている患者では、「腎機能低下例にも安心して使えるDOAC」的な考え方で投与されているケースがあるかもしれない。
いずれにしても、抗凝固薬使用例では腎機能のチェックが欠かせない。
腎機能低下時の用法・用量(アピキサバン)
「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))
- CCr(50mg/dL以上)、常用量
1)非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制: 1回5mg を1日2回。80歳以上,体重60kg以下,SCr 1.5mg/dL以上の3項目のうち2つ以上に該当する患者は,1回2.5mgを1日2回
2)静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制:1回10mgを1日2回、7日間投与後、1回5mgを1日2回 - CCr(30~50mg/dL未満)
1)1回2.5mg を1日2回への減量を考慮する
2)腎機能正常者と同じだが、適応について慎重に判断し、減量も考慮する
腎機能正常者に比しAUCが1.3倍上昇する - CCr(15~30mg/dL未満)
1)1回2.5 mg を1日2回
2)禁忌(使用経験が少ない)
腎機能正常者に比しAUCが1.4倍上昇する - CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
1)2)禁忌(使用経験がない)
リクシアナ(一般名:エドキサバン)
DOAC(経口直接Xa阻害薬):(今日の治療薬2021,p.596)
- リクシアナ:錠(15mg、30mg、60mg)
- リクシアナ:OD錠(15mg、30mg、60mg)
【効能・効果】
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
○下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術【用法・用量】
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
通常、成人には、エドキサバンとして以下の用量を1日1回経口投与する。
体重60kg以下:30mg
体重60kg超:60mg なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する。
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
同上
○下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
通常、成人には、エドキサバンとして30mgを1日1回経口投与する。(リクシアナ添付文書)
- 【エドキサバン】直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子)、1回60mgで1日1回経口投与
- 減量基準(併用薬を除く)、1回30mgを1日1回経口投与
- P糖蛋白阻害薬、併用注意、(PISCS2021,p.163,169)
(キニジン、ベラパミル、エリスロマイシン、シクロスポリン・・・減量30mg1日1回
アジスロマイシン、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ジルチアゼム、アミオダ
ロン塩酸塩、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビルなど)など→減量を考慮)
直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回60mgで1日1回経口投与
体重60kg超では1回60mgで腎機能・併用薬に応じて1回30mgに減量
一番新しい薬剤で薬価が多少高めである。
生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)は、約60%である。
腎排泄の寄与率:全身クリアランスの約50%
P糖蛋白が関与する:経口クリアランスへの寄与率約50%
減量基準(併用薬を除く)、1日30mgを1日1回
- 体重60kg以下
- CCr30~50mL/minの患者⇒30mgを1日1回投与する。
- CCr15~30mL未満/minの患者⇒有効性及び安全性は確立していないので、本剤投与の適否を慎重に判断すること。投与する場合は30mgを1日1回経口投与すること。
DOAC相互の位置付け(エドキサバン)
エドキサバンは、なぜ1日1回投与となっているのであろうか。
エドキサバンの分布容積(107L)は、DOAC薬の中では一番大きくなっている。
分布容積の大きさと1日1回投与を結びつける理論的根拠として、以下のようなヒントが示されている。(実践薬学2017,p.233←山下武志著からの引用)
一般的に、分布容積が大きくなると、血中濃度の半減期は、血液からの代謝・排泄という要素(速い半減期)以外に、組織から血液への薬物移行(遅い半減期)が生じ、血液で作用する薬物ではその効果が長時間維持されやすくなります。エドキサバンの1日1回というコンセプトは、この分布容積の大きさにも理論根拠がありそうです。
ところで、エドキサバン1日1回投与から1日2回投与にすれば、もっと理想的な動態になるであろうか。
残念ながら、エドキサバンでは、1日投与回数を1回から2回に増やすことによって、出血のリスクが高まるという結果が出ている。
エドキサバンを1日1回で投与した場合、1日投与量を30mgから60mgへ倍増しても、出血リスクはワルファリンとほぼ同じであまり変化しなかった。
ところが、例えば1日投与量60mgを30mg分2で投与すると、60mg分1で投与した場合と比較して有意に出血リスクが高くなった。
(実践薬学2017,p.235「エドキサバンの用量と大出血または臨床的に重要な出血の発現率」(外国人データ)←リクシアナ・インタビューフォームの第2相試験の結果より引用)
1日2回投与とすることで、ピーク濃度を低く抑えることはできるが、トラフ濃度は逆に高くなってしまう。そのため、出血イベントが増えてしまったと考えられる。(実践薬学2017,p.236)
腎機能低下時の用法・用量(エドキサバン)
「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))
- CCr(50mg/dL以上)、常用量
1)非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症,静脈血栓塞栓症の発症抑制: 体重に応じて次の用量を1日1回。60kg以下30mg,60kg超60mg
2)下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症発症抑制:体重に関係なく1日1回30mg - CCr(30~50mg/dL未満)
1)1日1回30mg
2)1日1回15mg
腎機能正常者に比し、AUCが1.8倍上昇し、t1/2が1.1倍延長する - CCr(15~30mg/dL未満)
1)1日1回30mg
2)禁忌(CCr30mL/min未満の患者では使用経験が少ない)
腎機能正常者に比し、AUCが1.9倍上昇、t1/2が2.0倍延長する - CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
1)2)禁忌(使用経験がなく, ベネフィットを上回る出血のリスクが生じるおそれがある)
古い薬であるワルファリン方が新薬(DOAC)よりも優れている点が幾つもある
ワルファリンは古い薬である。
例えば、ワーファリン錠(エーザイ)の発売開始は1976年12月(昭和51)である。
現在では、新しいDOAC(直接経口抗凝固薬)の方が、ワルファリンと比べて脳梗塞予防効果は同等かそれ以上で、かつ副作用が少ないとして第一選択薬とされている。
ただし、ワルファリンには、納豆など食べ合わせに注意すべき食品があるものの、そのほかの利点が幾つもあり現在でも盛用されている。
ワルファリンの作用機序と納豆などの食べ合わせ(ビタミンK)
ワルファリンの作用機序は以下のとおりである。
以下「」内:ワーファリン錠添付文書(エーザイ)より
(ワーファリン⇒商品名)
「本剤は、ビタミンK作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第Ⅶ、第Ⅸ、及び第Ⅹ因子)の生合成を抑制して抗凝固効果及び抗血栓効果を発揮する」。
注)プロトロンビン⇒第Ⅱ因子
- ビタミンKは、脂溶性ビタミンの一種である。
- 正常な血液凝固(止血作用)の維持に必要なビタミンとして発見された。
(Koagulation(ドイツ語で凝固)にちなんで命名された)
肝臓での血液凝固因子(プロトロンビンなど)の合成過程において、補酵素として作用する。 - 近年、骨粗鬆症や動脈硬化の予防に効果があることが明らかとなってきている。
カルシウムを骨に取り込む作用をもつオステオカルシンの合成にも必要である。
これに対して、ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えることによって、ビタミンK依存性凝固因子(プロトロンビンなど)の生合成を間接的に阻害する。
つまり、ワルファリンの抗凝固作用は、ビタミンKの働きを抑えることによる。
(ワルファリンは、同時に抗血栓作用も有する)
したがって、ワルファリン服用患者が、ビタミンKを多量に含んだ食物(納豆など)を摂取すると、ワルファリンの抗凝固作用が追いつかない状態となる。
結果的に、ワルファリンの作用が弱められることになる。
実際の食生活での注意点としては、「納豆、クロレラ食品及び青汁は本剤の抗凝固作用を減弱させるので避けることが望ましい」。
この中で、納豆はビタミンKの含有量が非常に多く、また腸内でもビタミンKを産生する働きがあるので、特に注意が必要である。
またモロヘイヤも避けた方がよい。
黄緑色野菜は、逆に避けてはならない食品である。
少量ずつでも継続摂取する必要がある。
具体的な目安として、1日に小鉢一杯程度を心掛ける。
1)ワルファリンの消失半減期は非常に長い⇒飲み忘れの影響が少ない
ワルファリンの消失半減期=55~133時間
DOAC4種の消失半減期=約5~14時間
ワルファリンは消失半減期の長い薬物である。
ワルファリンの消失半減期(t1/2)は、1回投与量によって大きなばらつきがあるものの、おおまかには約100時間としてよいであろう。
そこで、ワルファリンを規則的に継続服用して血中濃度が安定してきたならば、たまに飲み忘れがあったり、服用時間がずれ込んだとしても血中濃度に大きな変化が出ることはない。
つまり、ワルファリンは飲み続けるのに精神的な負担が少ない薬物である。
これに対してDOACの場合には、消失半減期(t1/2)が短いので、少しでも飲み忘れがあるとすぐに血中濃度が下がってしまい、効果が減弱してしまう恐れがある。
なお、DOACの方が服薬中止例が多いようである。
2)ワルファリン投与量の目安(PT-INR)⇒効果を客観的に評価しやすい
ワルファリンは、長年にわたって数多く臨床使用されてきており、血液凝固能の数値に基づく標準投与法が既に確立している。
したがって、医師の裁量で患者の病態に応じてきめ細かく凝固能を調整することができる。
これに対してDOACは、ワルファリンのような細かい調整をすることなく服用する薬物である。
というよりも、モニタリングの基準がないので投与量を細かく調整することができない。
ワルファリンの用法・用量:「本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である」。
現在では、ワルファリン投与量は、PT-INRを目安に決定するのが標準投与法となっている。
PT-INRは、PT(プロトロンビン時間)の検査を行うと、換算式に基づいて自動的に計算される仕組みになっている。
PT(prothrombin time):プロトロンビン時間
PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):プロトロンビン時間 国際標準比
- PT-INR=1.0・・・・・・・・・標準(基準値0.9~1.1)
- PT-INR 1.6~2.6(なるべく2に近づけるようにする)
- PT-INR>4.0・・・・・・・・・出血の危険性が高まる
不整脈薬物治療ガイドライン2020,p.52
(PISCS,pp.144-145にて引用)
- 脳梗塞既往のない一次予防で比較的低リスク(例えば、CHADS2スコア2点以下)の患者
年齢によらずINR 1.6~2.6で管理する(なるべく2に近づけるようにする) - 脳梗塞既往を有する二次予防の患者や高リスク(例えば、CHADS2スコア3点以上、がん患者など)
年齢70歳以上、1.6~2.6で管理する
(ただし、出血リスクを勘案しつつ、なるべくINR 2.0以上で管理する)
年齢70歳未満、2.0~3.0で管理する
INRが目標治療域に保たれている割合(time in therapeutic range:TTR)は、治療効果に大きく影響する。(PISCS,p.145)
3)ワルファリンは薬価が安い
ワルファリンの薬価はDOACの1/10以下である。コストパフォーマンスに勝り、年金生活者などの懐には優しい。
4)ワルファリンのそのほかの長所
解毒剤がある(ビタミンK)、なお、INRが正常化するには12時間程度かかる
一包化が可能(錠剤)
微調整が可能(顆粒)
直接経口抗凝固薬(DOAC)とワルファリン比較
直接経口抗凝固薬DOAC(direct oral anticoagulant)は、いずれも単一の凝固因子(トロンビンあるいはXa)の「活性部位へ直接かつ選択的に結合して活性を阻害する」。(今日の治療薬2019,p.564)
- 非弁膜症性心房細動による脳卒中の予防に用いる
- 予防効果は、ワルファリンと同等もしくは上回る
- 脳出血(頭蓋内出血)の頻度は、ワルファリンと比較して少ない
- INRのモニターは不要(定期的な血液検査不要)
- 納豆などの食事制限無し
脳梗塞の予防効果は、ワルファリンとDOACで同等と考えられている。
腎機能を考える
ワルファリンは肝消失型薬物であり、DOACは、いずれも腎排泄型薬物である。
ワルファリンをはじめとする抗凝固薬は、DOACも含めて「腎機能が低下するほど出血リスクが高まる」傾向がある。
ワルファリンは肝消失型薬物であるが、重篤な腎障害のある患者(CCr<30mg/dL)では投与禁忌になっている。
ワルファリンの代謝・排泄が遅延して出血することがあるからである。
その原因は、尿毒素の蓄積にあるとされている。
しかしながら、「腎臓専門医の80%以上がこのことを把握していないというデータ」がある。
ダビガトランはワルファリンと同じく、重篤な腎障害のある患者(CCr<30mg/dL)では禁忌である。
これに対して、ダビガトラン以外のDOACは使用可となっている(減量は必要)。
なお、ダビガトラン以外のDOACも、CCr<15mg/dLでは使用経験がないため禁忌である。
血圧を考える
抗凝固療法中は血圧をコントロールすることが大切である。
「収縮期血圧136mmHg以上は、血栓塞栓症や大出血の独立した危険因子となることが報告されている」。
ワルファリンには、第Ⅶ因子を減少させることによって、頭蓋内出血リスクを高め血腫拡大を引き起こす作用が有る。
DOACでは、消化管出血が多くなるものの、頭蓋内出血を高めるリスクは無い。
血圧が高めの患者には、DOACの方が安全に使用できる。
CHADS2(チャズ・ツー)スコアを考える
CHADS2スコアとは、心房細動による脳梗塞のリスクを測る物差しであり、CHADS2スコアが高いほど、脳梗塞の年間発症率が上昇する。(実践薬学2017,p.251「CHADS2スコアと脳梗塞発症率の関係」)
CHADS2スコア
- C:Congestive heart failure(心不全)、1点
- H:Hypertension(高血圧、治療中も含む)、1点
- A:Age(年齢、75歳以上)、1点
- D:Diabetes mellitus(糖尿病)、1点
- S:Stroke/TIA(脳卒中 /TIAの既往)、2点
(TIA:transient ischemic attack、一過性脳虚血発作)
CHADS2スコアが表しているのは、主に血管の内皮機能である。
そこでは、持続性心房細動か発作性心房細動かには関係なく、血栓を作りやすい病的な内皮機能になっているかどうかを示している。
- CHADS2スコア、0点:
従来は、生活習慣病のない若い患者でそのほかのリスクが無ければ、内皮機能に問題無し=血栓リスクは低い=抗凝固療法を必要としない。つまり、出血のリスクの方が高いとして、原則抗凝固療法は不要と判断されていた。
しかしながら、CHADS2スコアがゼロ点でも抗凝固療法を考慮したい患者は確かに存在しており、新ガイドライン2020では、エビデンスのあるそのほかのリスクを加味して、DOACあるいはワルファリン投与を考慮可となった。(不整脈薬物治療ガイドライン2020,p.49「図12:心房細動における抗凝固療法の推奨」)
- CHADS2スコア、1点以上:
DOAC:推奨、ワルファリン:考慮可とされている。
つまり、新ガイドライン2020では、CHADS2スコアが0点でそのほかのリスクを考慮する場合と、CHADS2スコアが1点以上の2群に大別されている。
(以下、ガイドライン2013の内容である。注:実践薬学2017はガイドライン2013を参考にしている)
- CHADS2スコア、1点:
まずDOAC(第Ⅲ相試験のデータが有るダビガトランとアピキサバン)が「推奨」される。
第Ⅲ相試験でスコア1点の症例が対象に含まれていないリバーロキサバンとエドキサバンは「考慮可」となっている。
ワルファリンは「考慮可」である。
なぜならば、1点では、大出血や頭蓋内出血のリスクと脳梗塞予防効果のベネフィットが拮抗しているからである。 - CHADS2スコア、2点以上:
DOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンそしてエドキサバン)が「推奨」される。
なぜならば、DOACはワルファリンと比べて、脳梗塞予防効果は同等かそれ以上で、かつ大出血は同等かそれ以下、さらに頭蓋内出血は大幅に低下して血腫拡大は起こりにくいからである。
ワルファリンは、副作用リスクの面からDOACの次に「推奨」されている。
抗凝固コントロールを考える
ワルファリンの効果をモニタリングするためには、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が用いられるのが一般的である。
それに対して、DOACにはそのようなバイオマーカーは存在しない。
血圧(高血圧)、コレステロール値(脂質異常症)や血糖値(糖尿病)のような治療の指標となるものは無い。
DOACの効果は、大規模臨床試験の結果から知る以外に無い。
患者個々にその効果を知る方法は存在しない。
クラスエフェクトについて考える
DOACの血中濃度半減期は、全ての薬物で5~15時間の範囲内に収まっており、それ程大きな違いは無い。
それにもかかわらず、用法には1日1回と2回の違いがある。
「新規抗凝固薬はすべてが異なる特徴(強みや弱み)を持つ。クラスエフェクトとして済まされない歴然とした差異がある」。(実践薬学2017,p.243←山下武志著からの引用)
ワルファリンの消失半減期と他剤への切り替え時の注意点
プラザキサ(抗凝固薬の一種)の添付文書には、(重要な基本的注意の一つとして)「ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)から本剤へ切り替える際には、ビタミンK拮抗薬を投与中止し、PT-INRが2.0未満になれば投与可能である」と書かれている。
ワルファリンが体内から消失するまでどのくらいかかるだろうか
一般的に、薬物が体内から消失するまでの時間は、消失半減期(t1/2)の5倍を目安に考えられている。
そして、そのときの薬物残存量は、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/32=3.13%となる。
ワルファリンの消失半減期(t1/2)は、(ワルファリンカリウムの単回経口投与時の薬物動態パラメータ)から「投与量0.5㎎⇒133±42(hr)、1.0㎎⇒95±27、5.0㎎⇒55±12」となっている。
1回投与量によって消失半減期(t1/2)に大きなばらつきがあるものの、消失半減期を100時間として、ワルファリンが体内から消失するまでの時間を推測すると、消失半減期の5倍で500時間(約21日)かかることになる。
消失半減期を経過すれば、PT-INR<2.0まで低下するだろうか
ワルファリンを服用中の患者のPT-INRが、何らかの原因で例えば3.4まで上昇して、ワルファリンからプラザキサ(抗凝固薬の一種)に変薬を考えた場合、どのようにすべきであろうか。
プラザキサの添付文書には、PT-INRが2.0未満になれば、ワルファリンからプラザキサへの変薬可としている(前述)。
そこで考えられる手段としては、PT-INRが3.4から2.0まで低下するまでの間、まずはワルファリンの投与を中止することである。
投与中止期間の目安として、消失半減期(t1/2)=100時間(約4日)が考えられる。
丸4日休薬後、5日目にもう一度PTを測定してPT-INR<2.0であれば、プラザキサに変薬して投与を再開してもよいという判断になる。
ワルファリンの服用を中止したら、すぐに納豆を食べてもよいか
ワルファリンの用法・用量を考える
(どんぐり2019,pp.189-194、服薬指導例・薬歴記載例有り)
ワルファリンの消失半減期は、投与量(mg)によって異なるが、55~133時間である。
その平均をとると、約100時間ということになる。
したがって、ワルファリンが体内から消失するまで、500時間(約21日)くらいかかる計算になる。
服薬指導(ワルファリン⇒DOAC変薬時)
ワルファリンの投与を中止しても、その効果がすぐになくなることはありません。
そこで、次の薬を飲み始めるまで、しばらく待つことになります。
ところが、納豆をすぐに食べてしまうと、予想よりも早くワルファリンの効果がなくなって、血栓ができるリスクが高まります。
次の薬を飲み始めるまでは納豆をがまんしましょう。
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)
厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗凝固薬)
高齢者では抗凝固薬投与時の出血リスクが高いことに配慮し、リスク・ベネフィットバランスを評価して投与の可否を判断すべきである。複数の抗血栓薬等の長期(1年以上)併用療法はなるべく避ける。
(抗凝固薬)
- 直接作用型経口阻害薬(DOAC)(アピキサバン[エリキュース]、ダビガトラン[プラザキサ]、リバーロキサバン[イグザレルト]、エドキサバン[リクシアナ])は、アジア人ではワルファリンと比較して消化管出血のリスクは少ないとされ、高齢患者では使用しやすい薬剤であると思われる。
ただし、高度の腎障害のある患者にDOACは使用禁忌である。- 抗血小板薬や抗凝固薬、糖質ステロイドの併用患者ではNSAIDs潰瘍のリスクが上昇するため、これらの薬剤を使用する場合は、なるべくNSAIDsの変更・早期中止を検討する。(消炎鎮痛薬の項より引用して追加)
- DOACの抗血小板薬との併用療法においては、出血リスクが上昇するため、冠動脈ステント留置後など投与せざるを得ない場合においても長期間投与は避けるべきである。
脳卒中のリスク評価にはCHA2DS2-VAScスコアが、抗凝固薬投与時の出血リスクの評価にはHAS-BLEDスコアがそれぞれ有用である。
このほか、高齢患者ではがんや転倒の既往、ポリファーマシーも大出血のリスクとされる。- ワルファリン[ワーファリン]は定期的にPT-INRを確認することにより抗凝固作用がモニターできるが、DOACはモニターができないため、定期的に腎機能を確認し、用量が適正であるか見直しが必要である。
- ワルファリンおよびDOACはそれぞれ、併用薬との相互作用に十分注意が必要である。
- リバーロキサバンは強いCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬である複数の薬剤が併用禁忌に指定されている。
- ダビガトランやエドキサバンはP糖蛋白阻害薬との相互作用に注意が必要である。
特にダビガトランは強力なP糖蛋白阻害薬であるイトラコナゾールは併用禁忌である。- ワルファリンはビタミンKを多く含む食品や健康食品の摂取にも注意が必要であり、納豆、クロレラ、青汁に関しては摂取しないように指導する。
別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗凝固薬)
- ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩
- リバーロキサバン 他
別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例
( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)
CYP2C9
【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)CYP3A
【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート
- 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
- 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
- 本表はすべてを網羅したものではない。
実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
- ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。- 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。
薬物動態学から
分布容積の小さな薬物の例(山村ほか2016,p.20など)
エスポ―注射液(一般名:エリスロポエチン)、30mL/kg
ヘパリン、58mL/kg
ナイキサン錠(一般名:ナプロキセン)、約140mL/kg
ブルフェン錠(一般名:イブプロフェン)、120mL/kg
ワーファリン錠(一般名:ワルファリン)、140mL/kg
アスピリン(サリチル酸として)、200mL/kg
ハベカシン注射液(一般名:アルベカシン)、200~250mL/kg
アミノグリコシド系抗菌薬、300mL/kg
関連URL及び電子書籍(アマゾンKindle版)
1)サリドマイド事件全般について、以下で概要をまとめています。
⇒サリドマイド事件のあらまし(概要)
上記まとめ記事から各詳細ページにリンクを張っています。
(現在の詳細ページ数、20数ページ)2)サリドマイド事件に関する全ページをまとめて電子出版しています。(アマゾンKindle版)
『サリドマイド事件(第7版)』
世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか(図表も入っています)
www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00V2CRN9G/
2015年3月21日(電子書籍:Amazon Kindle版)
2016年11月5日(第2版発行)
2019年10月12日(第3版発行)
2020年05月20日(第4版発行)
2021年08月25日(第5版発行)
2022年03月10日(第6版発行)
2023年02月20日(第7版発行)、最新刷(2023/02/25)本書は、『サリドマイド胎芽症診療ガイド2017』で参考書籍の一つに挙げられています。
Web管理人
山本明正(やまもと あきまさ)
1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社 入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2023年1月(令和5)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)